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ミステリの祭典

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触身仏
蓮丈那智フィールドファイル2

作家 北森鴻
出版日2002年08月
平均点7.00点
書評数5人

No.5 6点 tider-tiger
(2019/04/30 23:19登録)
蓮城那智フィールドファイルと銘打たれた民俗学ミステリの短編集で本作はその第二弾です。本シリーズは五冊出ているそうですが、一冊目の『凶笑面』と本作のみ既読です。中性的な美貌を持つ民俗学の教授蓮城那智と助手の内藤三國が民俗学の調査を通じて事件に巻き込まれるのが基本の筋ですが、一冊目と二冊目で多少の変化が見られます。
一冊目の『凶笑面』では那智と三國の両名が調査に赴き、そこで事件が起こって、民俗学的考察が事件の解決に繋がっていくという結構になっております。個人的にはこの形式が望ましいのですが、二冊目の『触身仏』ではフィールドワークの比重が軽くなり、大学内部で事件が起きたり、大学、学会などでの人間模様も描かれます。
ミステリと民俗学の融合をガチで目指していた(ように思える)硬派な印象の前作と比して、本作はキャラを立たせて、民俗学ネタも派手なものを選び、ミステリの形式に忠実であることより、話の面白さに重心を移したように見受けられました。
確かに読みものとしてはこちらの方が面白かったように思います。
ただ、全体的にかなり強引さが目立ちました。ミステリ的な無理、決めつけ、論理の飛躍などなどすべての作品になんらかの強引さがあります。
一篇をのぞいてどの作品も楽しく読めたので、その一篇以外は6点以上をつけたいのですが、欠点に着目して減点すると以下のような感じでしょうか。
秘供養 6点 仮説に根拠がありません。  
大黒闇 5点 神々の変貌うーん。さらに結末が安易。
死満瓊 4点 ミステリ的に強引。民俗学ネタはわりと納得できましたが、本作だけは話自体もあまり面白くありませんでした。
触身仏 7点 あそこに閉じ込める必然性が???
御蔭講 6点 ユニークな作品で評価したいのですが、そんな奴いるのか?

No.4 8点 TON2
(2013/04/01 18:35登録)
新潮社
 蓮杖那智シリーズの第2弾。「秘供養」「大黒闇」「死満たま」「触身仏」「御蔭講」の5編。
 第1弾の「狂笑面」は民俗学的内容の薀蓄がイマイチでしたが、この本は馬鹿に面白かったです。那智の助手の三国がからむ事件はそこそこでしたが、大学の研究室の雰囲気と民俗学的考察がつぼにドンピシャリとはまりました。体調がよかったせいかな?

No.3 6点 makomako
(2010/03/08 21:58登録)
北森のメインキャストはいずれも魅力的でそれが彼の作品を好む大きな理由となっているのだが、残念ながら蓮丈那智はあまり好きなキャラクターではない。他のキャラクターがかもし出す孤独感や隠れた愛情が薄いからかもしれない。古典も民俗学も好きなテーマなので期待できそうなのだが、かなり強引なストーリー展開にはちょっとついていけないところがある。これだけの話を短編で比較的短い時間に何編もかくのは大変だったのだろう。北森の才能からすればもう少し推敲して長編にしてくれたらもっとすばらしいものとなったのではないかと思うが、若くして亡くなられたのでもはや望むべくもない。残念。

No.2 7点 由良小三郎
(2003/01/21 19:36登録)
しゃんさんのかかれているように、蓮丈那智と、助手の内藤三國の書かれ方が、かなり変わっていて、雰囲気が変わっています。前作の蓮丈先生は、超人探偵風でしたが、この短編集では、生意気で、わがままな困ったおばさん風になっていますが、こちらのほうが、好きです。事件よりも民俗学的蘊蓄の部分がメインみたいになっています。

No.1 8点 しゃん
(2002/11/11 18:37登録)
 前作『凶笑面』よりも、民俗学の薀蓄が理解しやすくかかれていたように思う。
 一話目では「山人と五百羅漢」が二話目では「大黒とスサノオ」三話目では「三種の神器」という言うようにそれぞれの短編で描かれる民俗学的な要素が、微妙に間れっがあるせいもあると思う。
また、前作よりも、キャラクターが面白く描けていると思う。ミクニはさらに情けなく割愛すべき人物になっているし、那智はさらにエキセントリックに。この二人だけではなくほかにも魅力的な人物が新たに登場している。
 解き明かされる真相も面白いし、説得力があり、民俗学に興味がもてる内容である
 
 此処からネタバレになるが、いくつか疑問がある
 二話目で杉本尚子が内藤をけしかけたのは、最初からアースライフたくらみではなかったのか?
 「密教という奴は解釈次第で恐ろしい思想に変貌する」と一言であっさり書かれているが本当にそうなのか?
 それぞれの事件の真相解明後、警察が犯人を逮捕するには、やや証拠不十分ではないのか?

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