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ミステリの祭典

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しゃんさんの登録情報
平均点:6.75点 書評数:88件

プロフィール| 書評

No.88 6点 放課後
東野圭吾
(2003/02/11 00:02登録)
 最近の作である『秘密』や『白夜行』に比べれば、文章はずいぶんと見劣りする気がする。
 主人公にもなかなか感情移入できない。というより、主人公が何を考えているのか、どのように生きようとしているのかがはっきりしなかった。
 ただし、第7章の犯人とのやり取りやその後には、胸に打たれるものがあった。ミステリ的な驚きはそうでもなかったが、それでも衝撃は凄かった。やはり東野氏は凄い。
 しかし、密室トリックはなくても楽しめたかもしれない。


No.87 4点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2003/02/04 07:11登録)
 世間では非常に評価されているということで興味を持って読み始めたが、正直言って私には楽しむことができなかった。
 事件が起こり、警察の捜査について客観的な視点から描くことに多くのページが費やされている。
 しかし、私には事件に関して、どうしてもそれほど興味を描くことができなかった。いや、事件が起こった段階ではある程度の興味はあったのだが、事件の状況、容疑者の取調べにあまりにページが割かれて、冗長に感じてしまい、興味を持続することができなかった。途中からは理解しようという意欲がなくなってしまった。なぜ、こうも退屈な事件の話を延々と読まなくてはいけないのか?
 語り手である女性に感情移入ができなかったのも、この小説を楽しめなかった、そして、この小説の事件に集中できなかった原因のひとつである。なぜ語り手が矢吹のような変人に惹かれるのか、なぜ事件に対して積極的に関わろうとするのか、よくわからなかった。事件に関わる理由については、語り手の女性は関係者の一人と友人であることがあげられるかもしれない。(後に恋愛関係に落ちるのだが)しかし、友人から頼まれたわけでもないのに、解決しようとする心情が今ひとつ理解できない。彼女は推理小説のファンであるから事件に興味を持ったというように書かれていたように読んだが、推理小説のファンであるから、事件にのめりこむというのも今ひとつ判らない。
 また、最後の矢吹氏と犯人の対決についても私の理解力の範疇を超えているし、唐突な感じがして、しらけてしまった。

 もっとも本格推理小説のファンなら、事件についても関心をもてるかもしれないし、語り手にもリアリティを観じれれるのかもしれない。もっと知識と理解力のある人間ならば、矢吹氏の推理法や最後の対決についてももっと感じるところがあるのだろう。
 自分の理解力の無さを思い知らされた。


No.86 5点 QED 竹取伝説
高田崇史
(2003/02/02 20:16登録)
 論証が結論先行型のように思え、非論理的で、こじ付けがましく感じた。難しいことをわざわざ難しく説明しているように思えるのも理解しづらく、私の好みには合わなかった。
 現実の事件に関しては、到底あれだけでは論理的に真相が導けるとは思えない。そして、直感的に真相を導くタイプの探偵役にも思えない。


No.85 6点 街の灯
北村薫
(2003/01/30 21:23登録)
 主人公たちがいかにも上品で品があり、古風(当時はそれが普通だったのだろうけども)のは北村氏らしいと感じた。だけど、私はもっと下品な人間についてかかれたものが好きかもしれない。
 事件そのものも興味をかきたてられなかったし、また時折垣間見えるベッキーさんの超人ぶりも謙虚さも好きにはなれそうに無い。
 しかし、時折、上品さや、自分たちの常識に縛られてしか生きようとしないことや、傲慢さなどに対する毒があちこちに見られるような気がして、しかもその毒はそのまま私たち現代人に向けられているような気がして、ぞっとさせられた。


No.84 8点 秘密
東野圭吾
(2003/01/30 21:21登録)
 この話の主人公は、とことん情けなく、弱く、惨めさを感じさせる、でも人のよい中年男性である。その中年男性が、不可思議で複雑な事態に翻弄され、混乱し、傷つき、それでも必死で生きていく様が非常に上手く描かれているように思える。そのため、主人公には非常に共感できた。
 ラストのどんでん返しは予想できたが、それは読者の客観的な目で見ているからで、主人公が殆ど最後まで気づかないわけも納得できる。むしろ主人公が最後まで気が付かず、明確な証拠なしにはその可能性さえ考えつかった(?)ところに主人公の人間臭さが出てて良い。
 しかし、匂わす程度でこんなはっきりとした証拠は欲しくなかったかもしれない。主人公があんまりかわいそう過ぎる。


No.83 7点 13人目の探偵士
山口雅也
(2003/01/25 22:45登録)
主人公の行動に複数の選択肢が露得できるごとにその双方の可能性を描いているのだが、これがなかなか面白かった。
ラストに行く前に3つの選択肢による中盤を全部読んだ。それぞれの方面でほのめかされる真相がどれも違っており、首をひねらされた。中盤全てを読み終えた辞典でラストへの期待が高まる。
 それぞれの探偵による推理もそれぞれ違った味わいがあって面白い。どんでん返しの連続にも驚かされ、非常に満足できた。


No.82 7点 奇偶
山口雅也
(2003/01/25 22:43登録)
 偶然についてこだわった小説。
 その手のことに興味があるので面白く読めた。
 偶然起こった意味のないことがらと、必然的に起こった意味のあることがら。その区別は何処でしたら良いのか、興味深い問題だと思う。
 本格ミステリかどうかは不明。だが、本格ミステリらしい論理のやり取りが面白い。論理の面白さを見せるのが本格ミステリだとすればこれほど本格ミステリらしい小説もないだろう。
 ただ、小説を読んだという気がしない。講談社現代新書の野矢茂樹氏や永井均氏の初心者向けの哲学の本
を読んだ気がする。


No.81 5点 ファントムの夜明け
浦賀和宏
(2003/01/25 22:41登録)
 文章は今までの浦賀氏に比べるとアクがなく、すらすらと読める。しかし、すらすらと読めすぎて、印象に残った部分が少なかったように思う。魅力的な題材だとは思うし、話の展開も素晴らしいとは思うのだが。
 登場人物(?)の感情が余り伝わってこなかった。私の感受性の問題かもしれない。


No.80 6点 地球平面委員会
浦賀和宏
(2003/01/25 22:40登録)
 前半はやや退屈。後半になるに連れて、異様な感覚に襲われる。本筋さえ見えない、異様な事件、そして明かされる真相には、インパクトこそないものの、微妙な気持ち悪さを感じた。そしてラスト……。少しだけれども愕然とした。こういう終わらせ方もあるのかと感心。
 しかし、初めの1ページ目はどういう意味があるのかよくわからない。
 この作品は初期作品よりも随分スマートで読みやすい。文章が上手くなっているのだろうと思う。また、最近の作品、例えば『こわれもの』では見られなくなったが、初期作品『時の鳥篭』では見られたような浦賀氏独特の毒もある。その毒は少し弱っているという気はするけども、中篇という長さでは十分かも知れないと思う。


No.79 7点 殺人喜劇の13人
芦辺拓
(2003/01/18 20:04登録)
 極めて典型的な推理小説というのが、第一印象。
 丁寧で親切な文章にも、時折でてくるくどすぎないユーモアにも両方共感できた。
 ただ、登場人物が多すぎて少し戸惑ってしまった。誰が誰だかすぐわからなくなってしまう。自分の理解力のなさを痛感。ただ、後半になって登場人物がぐっと減ったので、だいぶ話が理解しやすくなった。
 次々に事件が起こる展開は、結構面白い。典型的な事件であるが、犯人は誰か非常に興味をひきつけられる。
 探偵登場後の解決篇も長々としているにもかかわらず、退屈しない。論理が飛躍している部分が結構あるのだが、それでも良いかなという気持ちにさせてくれる。


No.78 6点 グラン・ギニョール城
芦辺拓
(2003/01/09 21:26登録)
作中作を上手く使っている。
 文章は上手いとは思わなかったが、非常に丁寧で親切な印象を受けた。物語では作中作と作中現実が交互に語られる。だが、たいして混乱しなかったのは、文章の丁寧さによるのだろう。作中作と作中現実、双方に起こる事件には興味をひきつけられた。読んでいて飽きがこない。
 だが、不満もある。丁寧な文章のためだろうか、森江春策が作中策に現実を忘れるほどのめりこむ感じが今ひとつぴんとこなかった。私が森江春策シリーズをほとんど読んでいないせいかもしれないだが。作中策、作中現実共に猟奇的で血みどろなグラン・ギニョールな感じを受けなかったことも残念だった。それから、ラストで明かされる真相も私には、ぴんとこない。
作中のグランギニョール城の作者がカーだからといって、カーを読んだことのない私にはだからどうしたという感じである。カーであることを示す伏線などひょっとしたらあったのだろうか? 


No.77 8点 最後の記憶
綾辻行人
(2003/01/02 14:02登録)
 後書きによるとこの作品は本格ホラーらしいが、ミステリ色が強い気がする。
 見えない恐怖に、徐々に追い詰められていく主人公の描き方は上手いように感じた。
 恐怖というよりも不気味で、どうしていいかわからない感覚。
 遺伝病に自分がいつ、発症するかわからない恐怖と超自然の存在への恐怖の結び方も上手いように感じる。此処にでてくる超自然の存在自体はそれほど怖いとは思わなかったが、遺伝病の存在と相まって、怖さを感じた。
 終盤の謎の解決は見事。伏線が一気に解決した感じ。膝をぽんっと打った。
 謎が解決することで、事態はよく考えればほとんど解決してないにもかかわらず、なんだか、ほっとした気分にさせられた。読後感は結構いい。

 やはり、謎の解明でイイ気分になれるという点では、この作品はミステリーだろう。


No.76 7点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2002/12/31 12:57登録)
 本格ミステリ短編集。各短編とも加賀刑事が狂言廻し。
 どの話も2時間ドラマになりそうな良くあるといえば、良くある話。
 しかし、『冷たい灼熱』と『第二の希望』『狂った計算』では、どんでん返しがあって、驚かされた。驚かされただけではなくて、そのどんでん返しでもの悲しい気分にもなった。
 『友の助言』では、ラスト数ページでさびしい気分にさせられる。
 松竹新喜劇の「おもろうてやがて悲しき」ではないが、「本格ミステリでたのしんで、やがて悲しい」というのが、この作品集に共通している要素だろうと思う。
 作品の配置が非常に効果的に感じた。

しかし、「冷たい灼熱」ではっきり子供の死因を書いてないのは何か意味があるのだろうか。駐車場、世間でよくあること、お金を費やす、熱射病等であれだということはわかるのだけど…。本当に何か書かないことで意味があるのだろうか?


No.75 8点 夏の夜会
西澤保彦
(2002/12/27 17:14登録)
あやふやな記憶を扱ったミステリ。
 昔の記憶というものはあやふやで、他人と記憶を照らし合わせてみると、話が食い違ったりする。どんどん考えていくと、記憶に矛盾があったり、無意識に捏造されていることが分かったりする。その記憶の曖昧さを上手く描けているように思う。
 著者も述べている通り、普通の本格ミステリと違い、確かな記憶というものが存在しない。そのことによって何が起こるか全くわからないというはらはらどきどき感があった。
 ラストも綺麗にまとまっている、という印象を受けた。


No.74 6点 白夜行
東野圭吾
(2002/12/11 20:16登録)
 非常に楽しく読めたと同時に後味がものすごく悪いという、不思議な感覚を味わった。
 次々に出てくるほのめかしによって、各々の犯罪の大まかな筋がわかる。わかるのだが、犯罪の中心にいる人物の真の目的や心理状態は想像するしかないようだ。私の場合、想像すればするほど、不気味なもの、気持ち悪いものを心の中に浮かべてしまい、嫌な気分になった。
 下手なホラー小説よりもよほど恐ろしいものを感じた。ラストが、事件の解決ではなく、寂しいような余韻を残すラストだったから余計にそう感じるのかもしれない。

 謎解きの面白さは感じなかったが、それでもいいというように感じた。
 素晴らしい作品だが、私の好みには合わない。


No.73 6点 きみにしか聞こえない
乙一
(2002/11/27 21:25登録)
 それぞれの短編は独立している。共通しているのは、引きこもりがちな主人公に不可思議な事件が起こるという点。
 孤独と孤独を辛いと感じる気持ちが素直な文章で書いている。だからその苦しさが不思議な事件で癒されていく過程が素直に呑み込めるような気がした。そして、ラストは切ない。そして、CALLING YOUでは悲しみが、「傷」では希望と優しさが、その切ない気分をより強めてくれたように思う。
 ただ、「華歌」は余り私の好みには合わなかった。主人公に関して、ある仕掛けがしているようだが、私はその仕掛けで楽しむことは出来なかった。


No.72 6点 天帝妖狐
乙一
(2002/11/25 16:02登録)
 「A MASKED BALL」は余り面白く感じられなかった。
 どうにも主人公に感情移入できない。
 「天帝妖狐」は私の好みにあった。文章は素直で淡々としている。派手さはないが、登場人物の苦しみや悲しみや恐怖が想像できる気がした。後味はけしてよくないが、それもこの作品の魅力だとおもう。


No.71 4点 解体諸因
西澤保彦
(2002/11/25 13:37登録)
 バラバラ殺人事件ばかりを集めた連作短編集。西澤氏のデビュー作。
 それぞれの短編で起こる事件はどれも魅力的で不思議。真相歯なんだろうと好奇心を刺激される。推理の展開と明らかになる真相は面白い。意外で、そのくせふに落ちるものばかり。お気に入りは「解体守護」「解体肖像」の二つ。
 ただ、ラストは複雑すぎて、私には理解しづらかった。第一話で登場してそれきりラストまで登場してこない登場人物が、ラストに登場したりするが思い出すのが難しかった。私の記憶力が悪いのだけど。


No.70 5点 闇色のソプラノ
北森鴻
(2002/11/17 10:56登録)
前半から中盤までが話に入りにくかった。遠誉野市、しゃぼろん、樹来たか子の死にまつわる事柄、風景と題された文章、弓沢の殺人事件。謎が多すぎるために何処に重点を置いて読めばいいのか、どの謎がメインなのか少し困惑してしまう。遠誉野市という不思議な都市についても理解しにくかった。
 しかしながらたくさんの謎の関連が明らかにされる後半にはそれまでの不満を解消させられた。なんを言えば犯人についてもっと描写が欲しかった気がすること。あれでは完全には納得できない。
 しかし読み応えがあったのは前半で提出された謎が解明された後。思わずごくりとつばを飲み込んだ


No.69 8点 クロへの長い道
二階堂黎人
(2002/11/11 18:41登録)
 やはり、前作『私が捜した少年』と同じく、主人公の設定が実に面白い。
 小さな体で、大人からは当然のように子ども扱いされながら、それでも懸命に謎を解こうとする様子は、ドンキホーテにも似てて滑稽でもあり、悲しくもあり、しかし、格好いい、そんな風に感じた。
 どの短編も面白いが、最後の『八百屋の死に様』が私の好み。

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