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ミステリの祭典

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mediocrityさんの登録情報
平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.46 4点 海のある奈良に死す
有栖川有栖
(2019/03/23 00:14登録)
なんか妙な引き延ばしが多くて退屈な場所が散在しているのは何故だろうと思っていたら、著者初の連載小説ということで納得。内容は意外にも内田康夫みたいな感じ。
短編集の中の1作でこの毒殺トリックと「海のある奈良」の秘密ならまだ許容した人も多いだろうが、400ページ近く長々と読まされてこれだけだと低評価もしょうがない。


No.45 2点 作家刑事毒島
中山七里
(2019/03/22 19:36登録)
①ワナビの心理試験
読んでいてこれほど不快感を覚える小説も珍しい。最後きれいにまとめたつもりかもしれないが、その程度では消えないレベルの不快度である。ストーリーもつまらなかった。
②編集者は偏執者 
ストーリー上、登場人物をけなすことは必要とはいえ、あそこまで下劣な言葉を並べる必要があるのかと疑問に感じた。読んでいて気が滅入った。毒島の忍び笑いはひたすら気味が悪い。この作品ではしつこいくらい何度も出てくるが誇張抜きで鳥肌物だ。
③賞を獲ってはみたものの 
仮にも新人賞を取った作家の発言が揃いも揃って軽薄なのはフィクションとしても無理があると感じた。それをさておいても、この話の面白さはよくわからない。あと、2作目を書くのに10年かかっても別に良いのではないかと思った。
④愛瀆者
辛口オトメの0点評ですら、上記3作の罵詈雑言に比べると読むに耐える。犯人当てミステリ風だが、犯人がわかりやすすぎるのは難点か。だって3人とも高森がいないと困るんだから。
⑤原作とドラマの間には深くて暗い川がある
意外な犯人のつもりなんだろうけど別に・・・

この作家の本は初めて読むが、どうも自分と笑いのツボが違うようでほとんど面白さを感じられなかった(解説の後の3行もウケ狙いなのだろうが全く笑えなかった)。
それ以上に「毒」がほとんど「罵詈雑言」にしか聞こえないのはいかんともしがたい。
①0点!(by辛口オトメ)②1点③2点④2点⑤3点 平均1.6点てことで


No.44 6点 長崎・ばてれん列車殺人号
辻真先
(2019/03/20 19:00登録)
この方、本業は脚本家なのだろうか、推理作家なのだろうか。wikiを見る限りどちらもすごい仕事量だ。
ジャンルは一応トラベルミステリにしたが実際は密室2つの謎解きがメイン。
トラベルミステリというジャンル自体なんとなく量産作家の適当な作品が多いイメージが強いが、この作品は短いながら非常に丁寧に書かれている。それ以上に作者の「時代について行くぞ!」という意気込みがすごい。73歳時の作品とは到底思えない。
トリックも古典作品の時代には存在しなかった物を多用する。他の流行作家のパロディーもあって楽しい。


No.43 10点 虚無への供物
中井英夫
(2019/03/20 18:14登録)
『黒死館殺人事件』と並んで色々な作品の中(特に学生アリスシリーズ)でしばしば言及されるので気になって購入。
三大奇書とかアンチミステリとか書かれてるので、ミステリとして破綻してるのかと思っていたが全く違った。

推理小説を読み込んでない時点でこの作品を読んだのは良かったのかもしれない。低評価の方々が感じているような疑問を感じることなく最初から最後までひたすら楽しかった。
一番すごいと思ったのは「この時点で終結しても作品として成立している」と思うポイントが複数箇所あったこと。
終わることをあえて否定して話を継ぎ足し別の結論を用意する。継ぎ足すたびにほぼ全ての事件の背景、犯人が変化する。
そして最終的にあの高尚すぎる?結末まで持って行き、まさに大伽藍というような作品に仕立て上げた筆力はすさまじいと思った。

追記
下手糞な文章とか気分の悪い作品を読まされた後は、この本の最後数十ページを読みたくなります。


No.42 8点 鬼面村の殺人
折原一
(2019/03/18 23:12登録)
タイトル、表紙、黒星警部シリーズという副題などから重々しいストーリーを予想していていたのだが、読み始めると意外にもコメディー色が強い。
この作品の一番の見どころは白川郷に近い町で、古民家が見事に消失する事である。この作品以前にも建物消失ミステリは数例あるようだが、やはり珍しいらしい。

<以下少しだけネタバレあり>
必要以上にバタバタしていて、このシーンは不要なんじゃないかと読みながら何度か思ったのだが、そのドタバタが必要不可欠であったとは思わなかった。
気になっていた細かい謎も解き明かしてくれた上に、ダブルのどんでん返しまであって満足です。


No.41 7点 学ばない探偵たちの学園
東川篤哉
(2019/03/17 06:06登録)
高校生の探偵部3人が主に校内で起こった殺人事件を解決する。金田一少年みたいな感じだが、1人の能力が飛びぬけているわけではない。おちゃらけた雰囲気とは反対に、密室殺人2つを大真面目に解決していく。
マンションで起こった密室殺人の方の謎解きはほほえましい。この3人、高校生男子にしてはやることなすこと可愛すぎる。保健室の殺人は大掛かりかつ偶然性が高いので、漫画的な雰囲気の中だから何とか成立している。
それにしても野球ネタが多すぎ。しかも書かれた時代よりかなり古い。古田やイチローはともかく、大杉とか今井雄太郎とか言われても困る。

ところで第一の被害者は田所健二24歳、学生服を着て学校に忍び込んだ老け顔の盗撮カメラマンである。この作品はギャグ要素が強いので、最初はパロディーだと思っていたのだが、野獣先輩が有名になる前に出た本なので偶然なのだろう。驚きである。


No.40 2点 リアル鬼ごっこ
山田悠介
(2019/03/16 22:55登録)
死の恐怖を前にして、反目していた父と心を通わせられたこと、幼いころに離れ離れになった妹と再会し最後の1日を一緒に過ごせたことは良かったと思います。(+1点)それ以外はあえて触れません。

追記(2019.6.7)
個人的にもっとひどい作品に遭遇したので点数調整のため+1点。


No.39 3点 メビウスの殺人
我孫子武丸
(2019/03/16 05:47登録)
軽く読めるミステリは嫌いじゃないが、この作品は軽薄にしか感じなかった。ミッシングリンク、数字の意味、オチ、全て脱力だった。
終盤に至るまでのストーリー展開は面白い。


No.38 9点 江神二郎の洞察
有栖川有栖
(2019/03/15 21:06登録)
学生アリスシリーズの短編集。469ページと短編集にしては分厚く読みごたえがあった。『月光ゲーム』で感じた妙な違和感はない。ということは他の大学の連中が変だったのか?
火村シリーズの短編も2冊読んでるが、こちらの方が断然好みだった。
①『瑠璃荘事件』
デビュー作より時系列的に前で、このコンビ、いやグループ最初の事件。盗まれた講義ノートの犯人捜しという軽い話だが推理の骨格はしっかりしている。推理の問題点まで自分で指摘してるのがいい。
②『ハードロック・ラバーズ・オンリー』
短いが印象に残る話。オチが良い。
③『やけた線路の上の死体』
このトリックは無理があるのではないかと思う。
岩代~切目間であの事故が起こるのは変だ。正確に言うと、岩代駅を過ぎるまであの事態が起きないのは変だ。紀伊田辺駅を出て会津川を渡ってすぐの長い左カーブで起こるはず。
④『桜川のオフィーリア』
死体も情景も雰囲気も美しい話です。
⑤『4分間では短すぎる』
松本清張作品の矛盾点の話をしてたらいつの間にか『黒いトランク』の人間移動版みたいな複雑な話になってきて・・・
そのあとにばらされる真実がまたいい。
⑥『開かずの間の怪』
大学生が廃病院で探検&かくれんぼしてます。ほほえましいです。
⑦『二十世紀的誘拐』
何より設定が面白い。トリックも良いし、こんな妙な誘拐をした動機が良い。
⑧『除夜を歩く』
モチの小説が意外と普通だった。もっと馬鹿げたトリックなのかと思ってた。新元号ネタはタイムリーだ。Kから始まる可能性が高いのか。
⑨『蕩尽に関する一考察』
全く中身が予想できないタイトル。終わり近くまで読んでも全く謎解けず。古本屋主人の奇行の理由には感心。なるほどこういうパターンもあるのか。そしてきれいな終わり方です。

短編集とは思えないくらい読みごたえがあった。ちょっと甘いかも知れないけど満足!なので9点。
9編もあって、ほとんど人が死んでいないのは驚きだ。


No.37 4点 雷鳥九号(サスペンス・トレイン)殺人事件
西村京太郎
(2019/03/15 02:10登録)
鉄道ミステリばかりの短編5編
『「雷鳥九号」殺人事件』
話も終盤に差し掛かろうとする辺り、場所は法廷。弁護士と医者が以下のようなやりとりをする。
「解剖して、死亡時刻はわかりましたか?」
「死後一ヶ月も経っているので、正確にはいえませんが、ほぼ三月十二日の午前九時から十時の間です」
いやいや、特定しすぎだろ・・・
こんな無茶な設定にしたのは、死亡推定時刻をこの1時間にしないと話が成り立たないからである。
トリック自体はかなり派手。ただし危なっかしい。ネタバレになるので細かく言えないが、時速90kmだとして、タイミングが1秒ずれたら25mずれるんだから。あ、ずれないでド真ん中に落ちるのもダメだ。

『幻の特急を見た』
電車の種類さえ変えれば今でも映像化できそう。でも2時間ドラマじゃ持たないか。

『急行「だいせん」殺人事件』
これはトリックというレベルに達していない。時刻表を見れば5秒で解ける。

『殺人は食堂車で』
犯人の下調べが杜撰すぎるし、結果的に事件になったのも偶然すぎる。

『夜行列車「日本海」の謎』
読者にはまず解けないタイプのトリックというかむしろトリビア。

ストーリー展開は結構おもしろい(特に『幻の特急を見た』)のだが、ミステリとしては全体的にイマイチ。


No.36 4点 インディゴの夜
加藤実秋
(2019/03/14 05:27登録)
短編集だがシリーズ物で4編とも主要登場人物は同じである。
舞台はクラブ(DJがいて騒がしい音楽流してるアレ)風のホストクラブ。
イケメン俳優取り揃えてドラマ化、舞台化もされてるとのこと。確かに映像化したくなる設定だ。
ミステリとしてはどうってことないがキャラクターは個性的で魅力的だから。
設定からして軽くて読みやすいかと思いきや、ドタバタ劇が多く読んでいて疲れる。

創元推理文庫ってこんなコミカルなのも出すんですね。なんとなくガチガチの本格しか出さないのかと思ってた。


No.35 5点 三姉妹探偵団
赤川次郎
(2019/03/13 22:38登録)
当時の若い女性向けのライトノベル風ミステリ(と思われる)。
37年前の小説だが今映像化しても全く問題なさそう。ほとんど古さを感じない。
緩~い感じでストーリーが展開するが、登場人物の下半身事情がそれ以上に緩すぎるのには閉口した。ただ、プロット自体は意外にしっかりしているのに驚いた。


No.34 5点 崩れた偽装
鮎川哲也
(2019/03/13 19:07登録)
メインプログラムなしでひたすらアンコールピースばかり聞かされている演奏会という感じの短編集。倒叙推理という分野らしいが、何でわざわざ似た物を集めたのだろう。ほぼ人物を入れ替えただけみたいな物もあって、さすがに飽きる。
「呼び止める女」
どこから犯罪がばれるかと思ったら意外な所から。
「囁く唇」
被害者の友人女性が犯罪を暴くが、この女、その辺の探偵より理路整然としすぎていて恐ろしい。
「あてにげ」
男性が過去にホストをしていたということで脅迫される。隔世の感がありますね。殺人の証拠も今となっては普通の物だけど当時は珍しかったのか。
「逆さの眼」
犯人が間抜けすぎです。
「扉を叩く」
1編目と似た感じのトリック。
「赤い靴下」
これはある意味社会派ミステリー、しかも上質。悲しい話だ。これが一番良かった。
「パットはシャム猫の名」
これは偶然が過ぎてあんまり。
「哀れな三塁手」
これも偶然性が高い。


No.33 7点 超・殺人事件―推理作家の苦悩
東野圭吾
(2019/03/12 20:48登録)
アイロニーの効いた短編8編。薄い本だが面白かった。
特に良かったのは以下の3つ
「超理系殺人事件」
予想していたオチの上を行った。
「超犯人当て小説殺人事件」
これは一応推理小説としても楽しめる、はず。
「超高齢化社会殺人事件」
これは爆笑ものだった。でも8作の中では一番現実にありうるのかも。


No.32 6点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2019/03/12 17:49登録)
綾辻さんの十角館もそうだったけど、恐ろしく違和感のある大学生集団だなというのが冒頭80ページくらいまでの感想。この時代特有の雰囲気なのか?
火山が爆発するまでは正直あまり面白くない。いや、火山が爆発してもなお、なんだかまだ遊んでるような感じで、死の危機に直面しているとは到底思えない。立ち読みして、買うのをやめた人が相当数いるだろうと勝手な推測。
あと、この作品に限ったことじゃないけど、プロローグを付けたがる推理小説が多いのはなぜなんだろう。確かに中盤、終盤まで読んで「あのプロローグはこの部分の伏線だったのか」とゾクっとさせられることもあったが、ほとんどの作品は大して効果を上げていないように思う。だって忘れてるし。
むしろ作品にすんなり入って行きにくくさせている分、損をしているような気がする。第1章冒頭の入り方がユニークなこの作品では特にプロローグは不要だと感じた。

前置きが長くなったけど、第1の殺人が起こってからは一気に話が進みます。論理的であり、投げっ放しの謎などもなく、レベルの高いデビュー作だと思います。

以下気になった点
・登場人物が多すぎる。インパクトの強い5人くらいを除くと読み終わってもあまりイメージがわかない。
・殊に犯人がそうである。
・謎を解くには相当細かいところまで読む必要があるが、今までに読んだ著者の後年の短編集と比べると文章がまだこなれてなく、隅から隅まできっちり読むのは正直きつかった。
・ダイイングメッセージがあまり面白くなかった。
・動機が殺人を犯すレベルのものだとは思えなかった。

なんか文句ばっかりですが、2作目もいずれ読みたいと思いました。それだけですごいと思います。2作目読む気にならない作家も何人かいますから。


No.31 7点 能面の秘密 安吾傑作推理小説選
坂口安吾
(2019/03/11 03:06登録)
変幻自在の文章だが不思議と読みやすい。
推理小説なのか疑問に思えるのものもあるが、小説として楽しいので別に気にならない。
「投手殺人事件」
謎解きはそれほどでもないが、話自体は面白い。
「南京虫殺人事件」
南京虫って時計なのね。特筆するようなトリックはない。
「選挙殺人事件」
小説としてはそこそこ面白い。変な登場人物が多い。
「山の神殺人」
謎解き要素はほとんどない、普通の短編小説。これも変人が多い。
「正午の殺人」
今の人間には馬鹿らしいほど簡単すぎるトリック。
「影のない犯人」
なんだこれは!登場人物がみんな変人。発言も滅茶苦茶。
ハチャメチャな状態をどう収束させるするかと思ってたら収束しなかった・・・
「心霊殺人事件」
犯人当てやトリックよりも、ある人物が小説に入る前の段階で準備していた企みが良い。
「能面の秘密」
これは秀作だと思う。

ちょっと甘いかもしれないがバラエティ豊かで読みがいがあったのでこの点数。


No.30 5点 天城峠殺人事件
内田康夫
(2019/03/08 02:49登録)
長編とはなっているが250ページですぐ読める。文庫書下ろし。
『崇徳伝説殺人事件』は酷評してしまったが、この作品はトリックは簡単だがしっかりしているし、映像化前提のトラベルミステリとしては上質な部類だと思う。
気になったことは、1章最後で「まだ身分のばれていない」浅見に事件の目撃者の住所を教えてしまう警察。推測に過ぎない状況で兄貴の刑事局長に頼み込んで警察を大々的に動かしてしまう強引さ。その割に盛り上がりに欠けるクライマックス。
作者の政治的な信条を登場人物に語らせる悪癖はこの作品でも顔をのぞかせるが、まあ許容範囲か。
光文社版解説は鮎川先生。6ページに満たない文章だが楽しい。


No.29 5点 探偵ガリレオ
東野圭吾
(2019/03/07 21:52登録)
短編5編。
科学的な知識はなくとも理解はできる。
個人的なことを言えば、5編中4つまでは、なんとなくこういう感じのトリックなのだろうということは予想できた。正確な物質名とか反応名は知らなかったが。いや1つだけわかったか。
読みやすいが、面白かったかと言われれば微妙。


No.28 6点 英国庭園の謎
有栖川有栖
(2019/03/06 18:20登録)
なんというか、まかない料理のような感じの短編ですね。
長編のトリックに使うには専門的だったりトリビアすぎたりするけど、捨てるにはもったいないアイデアを料理しましたといったテイスト。
「ロシア紅茶の謎」は表題作が一番良かったけど今回のはあんまり。
「雨天決行」は謎解き可能か。専門用語だが、ヒントらしきものはあるし分からなくはない。


No.27 5点 点と線
松本清張
(2019/03/03 04:14登録)
突っ込みどころは多い。
まず三原が無能すぎる。少なくとも3回、当然すべきor簡単に気付くべきことをスルー。
41分間ホームに止まっているあさかぜに、あの4分に偶然乗車する可能性の低さ。
そもそもあの行為が薮蛇な感じ。芸者2人が電車に乗り込んで行ったらどうなったんだろう。
とはいえ、作品に何だか重みがあるのと、心中に見立てたトリックは面白かったので点数はこんなものか。

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