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ミステリの祭典

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能面の秘密 安吾傑作推理小説選
巨勢博士もの ほか

作家 坂口安吾
出版日1976年01月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 5点 nukkam
(2019/04/11 20:33登録)
(ネタバレなしです) 犯人当て懸賞小説として出版された「不連続殺人事件」(1948年)で自信を得たのか、晩年の坂口安吾(1906-1955)はミステリーを積極的に書いています。ミステリー短編集は死の年に出版された「投手殺人事件」(東方社版)(全9作)(1955年)がおそらく最初で、その後もタイトルを変えながら「能面の秘密」(角川文庫版)(全8作)(1976年)、「心霊殺人事件」(河出文庫版)(全10作)(2019年)と再版されています。ガチの本格派推理小説にこだわったとされる作者ですが、確かに半分はそういう作品ですが残り半分は犯罪小説だったりミステリーとは言いにくい作品だったりと意外と多彩です。「心霊殺人事件」のみに収められた「アンゴウ」は暗号が解読され、誰がこの暗号を作ったのかという謎はありますが謎解き経緯はほとんど説明されません。真相を知って感慨にふける主人公描写は大変印象的ですが個人的にはミステリーではないように思います。推理は確かにありますが意図的に腰砕けに終わらせたような「影のない犯人」も読者の好き嫌いが分かれそうな怪作です。突出する長所がないとはいえ「読者への挑戦状」付きの中編「投手殺人事件」のような安心して読める作品がやはり個人的には好みです。

No.4 7点 mediocrity
(2019/03/11 03:06登録)
変幻自在の文章だが不思議と読みやすい。
推理小説なのか疑問に思えるのものもあるが、小説として楽しいので別に気にならない。
「投手殺人事件」
謎解きはそれほどでもないが、話自体は面白い。
「南京虫殺人事件」
南京虫って時計なのね。特筆するようなトリックはない。
「選挙殺人事件」
小説としてはそこそこ面白い。変な登場人物が多い。
「山の神殺人」
謎解き要素はほとんどない、普通の短編小説。これも変人が多い。
「正午の殺人」
今の人間には馬鹿らしいほど簡単すぎるトリック。
「影のない犯人」
なんだこれは!登場人物がみんな変人。発言も滅茶苦茶。
ハチャメチャな状態をどう収束させるするかと思ってたら収束しなかった・・・
「心霊殺人事件」
犯人当てやトリックよりも、ある人物が小説に入る前の段階で準備していた企みが良い。
「能面の秘密」
これは秀作だと思う。

ちょっと甘いかもしれないがバラエティ豊かで読みがいがあったのでこの点数。

No.3 6点 測量ボ-イ
(2012/06/09 09:55登録)
名作「不連続殺人事件」で有名な氏の短編集。
この中では「投手殺人事件」が僕好みで良かったです。
「読者への挑戦」がついたフェアな作品。
昭和20年代の常識(?)も伺えて楽しかったです。
(一万円札がないので、300万のお金もトランク詰。銀行振り
込みがないので人力で輸送、新幹線がないので東京→京都の
移動が9時間・・・)

外に特筆する作品はないですが、本来推理作家ではない氏の
鬼才ぶりは伺えます。

No.2 6点 CRYSTAL
(2010/01/29 23:20登録)
いかにも難解な作品が多い中、こういった作品は気楽に読めて、たまには良いですな。

No.1 5点 江守森江
(2009/11/05 03:26登録)
戦後文学の無頼派・安吾の推理短編が8編収録されている。
作者の主張する推理小説が犯人当てパズル小説で、それに沿って書かれた「投手殺人事件」「南京虫殺人事件」「正午の殺人」「心霊殺人事件」辺りは今では平凡に思える。
表題作は犯人当てとしては平凡だが結末のオチでの脱力は、なかなか味がある。
そして、犯人を特定しない儘に投げっ放した「影のない犯人」は、犯人当てに真っ向勝負した作品群に組み込まれ強烈な味わいがある。
もっと推理小説を書いていたら「不連続殺人事件」以上の作品を残してくれたかもしれないと思うと残念でならない。

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