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ミステリの祭典

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江神二郎の洞察
学生アリス&江神シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日2012年10月
平均点6.78点
書評数18人

No.18 5点 ボナンザ
(2021/07/11 19:10登録)
こちらのシリーズながら、短編集だけあって気軽に読める内容。
短編集2冊の予定ながら一冊が一年目に費やされるあたり、作者にこのシリーズを書くパワーが残っているか不安。

No.17 7点 じきる
(2021/03/07 00:31登録)
ミステリとしては小粒でも、学生アリスシリーズの世界観をしっかり味わえる。
個人的には、「バードロック・ラバーズオンリー」と「桜川のオフィーリア」が好き。

No.16 9点 mediocrity
(2019/03/15 21:06登録)
学生アリスシリーズの短編集。469ページと短編集にしては分厚く読みごたえがあった。『月光ゲーム』で感じた妙な違和感はない。ということは他の大学の連中が変だったのか?
火村シリーズの短編も2冊読んでるが、こちらの方が断然好みだった。
①『瑠璃荘事件』
デビュー作より時系列的に前で、このコンビ、いやグループ最初の事件。盗まれた講義ノートの犯人捜しという軽い話だが推理の骨格はしっかりしている。推理の問題点まで自分で指摘してるのがいい。
②『ハードロック・ラバーズ・オンリー』
短いが印象に残る話。オチが良い。
③『やけた線路の上の死体』
このトリックは無理があるのではないかと思う。
岩代~切目間であの事故が起こるのは変だ。正確に言うと、岩代駅を過ぎるまであの事態が起きないのは変だ。紀伊田辺駅を出て会津川を渡ってすぐの長い左カーブで起こるはず。
④『桜川のオフィーリア』
死体も情景も雰囲気も美しい話です。
⑤『4分間では短すぎる』
松本清張作品の矛盾点の話をしてたらいつの間にか『黒いトランク』の人間移動版みたいな複雑な話になってきて・・・
そのあとにばらされる真実がまたいい。
⑥『開かずの間の怪』
大学生が廃病院で探検&かくれんぼしてます。ほほえましいです。
⑦『二十世紀的誘拐』
何より設定が面白い。トリックも良いし、こんな妙な誘拐をした動機が良い。
⑧『除夜を歩く』
モチの小説が意外と普通だった。もっと馬鹿げたトリックなのかと思ってた。新元号ネタはタイムリーだ。Kから始まる可能性が高いのか。
⑨『蕩尽に関する一考察』
全く中身が予想できないタイトル。終わり近くまで読んでも全く謎解けず。古本屋主人の奇行の理由には感心。なるほどこういうパターンもあるのか。そしてきれいな終わり方です。

短編集とは思えないくらい読みごたえがあった。ちょっと甘いかも知れないけど満足!なので9点。
9編もあって、ほとんど人が死んでいないのは驚きだ。

No.15 6点 E-BANKER
(2017/11/07 22:23登録)
~英都大学に入学したばかりの1988年4月、すれ違いざまにぶつかって落ちた一冊・・・中井英夫『虚無への供物』。この本と江神部長との出会いが僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会入部のきっかけだった・・・~
というわけで、“学生アリス”シリーズのエピソード・ゼロ的位置づけの作品集をようやく読了。
2012年の発表。

①「瑠璃荘事件」=何てことないアリバイトリックなんだけど、学生アパートのむさ苦しい様子が行間から漂ってくるようだった・・・
②「ハードロック・ラバーズ・オンリー」=“ラストの一撃が炸裂”って感じの一編で本作1、2の良作。道尾秀介の某短編を思い出した。
③「やけた線路の上の死体」=実質的な作者のデビュー作ということで、実に瑞々しい作品(いい意味でも悪い意味でも)。「くろしお」かぁー・・・、それ聞いた段階でトリックは想像できてしまう自分。
④「桜川のオフィーリア」=「女王国の城」へとつながる作品なのだが、特段どうということはない。
⑤「四分間では短すぎる」=“推理クイズ”としては面白い試み。「点と線」のくだりは「確かにそうだけど、別にここまで書かなくても・・・」という感想。
⑥「開かずの間の怪」=“若書き”感の残る作品。現場の描写がよく呑み込めなかった。
⑦「二十世紀的誘拐」=京都タワーか・・・。そう言えば登ったことないなぁー
⑧「除夜を歩く」=江神部長とアリスの会話が何とも瑞々しい。これを齢五十を超えた作者が書いてるかと思うと、どこか微笑ましい・・・
⑨「蕩尽に関する一考察」=マリアとの出会いが描かれた最終作。「蕩尽」=財産を使い果たすこと・・・って始めて知った! ひとつ勉強になりました。

以上9編。
『大学生に戻りてぇ・・・』っていうのがこれを読んでて最初に浮かんだ感想。
モラトリアムでも無為でもいいから・・・。でもあの自由で気ままだった時代にはもう二度と戻れないんだねぇ・・・

ある意味、EMCの四人ってかなりストイックだよな。
これって、つまり有栖川氏自身がストイックだったってことか・・・
京都の街も何かいいよなぁー。隣の芝が青く見えるだけなのかもしれんけど、アリスたちが羨ましく思えた。
で、本筋の評価は?って、もうどうでもいい感じ。
ファンなら必読の作品だし、ファンでなければ別にスルーしてもいい作品でしょう。
私は・・・とにかく微笑ましい作品という評価です。(意味不明)

No.14 7点 ねここねこ男爵
(2017/10/13 21:12登録)
ファンブック的な性格がどうしても出てしまっていますが、それでも楽しめます。
有栖川有栖氏の文体の美しさを一番堪能できるでしょう。

ある有名作品の、誰しも引っかかってる欠点をフルボッコにしてるのと、登場人物の口から語られる作者の推理小説観は必読かと。

『桜川のオフィーリア』はある意味で最も有栖川氏らしいと思いますがいかがでしょうか?
個人的に裏ベスト短編です。

No.13 5点 パメル
(2016/05/27 21:14登録)
昭和から平成への転換期を背景にアリスの入学から
マリアの入部までの一年を瑞々しく描かれた短編集
ミステリの出来としては今一つ
特徴的なのは一部を除いて死体が登場せず「日常の謎」を
中心に描かれている
学生アリスシリーズが好きでない限りおすすめ出来ない

No.12 9点 青い車
(2016/03/15 19:20登録)
 以下、各話の感想です。
①『瑠璃荘事件』 講義ノートの盗難とはかなり小規模な事件ですが、骨格は案外しっかりしたミステリーと言えます。トイレの電球が鍵になるアリバイ崩しで、江神部長の推理が冴えています。
②『ハードロック・ラバーズ・オンリー』 分量は短いですが、伏線と真相の驚きがちゃんと両立した佳作です。
③『やけた線路の上の死体』 本短篇集で唯一殺人事件を扱っています。トリックは似たようなものがいくつかあるそうですが、サークルの四人がああでもない、こうでもないと推理をひねり出す様子が楽しいです。
④『桜川のオフィーリア』 『女王国の城』でも少し出てきた石黒操の登場作品です。人間の機微が繊細に描かれており、本来は僕の嗜好ではないはずなのに面白く読めました。
⑤『四分間では短すぎる』 まさに『九マイル~』の発展形。論理の奔放な飛躍の連続が魅力的です。オチも別に不満ではありません。そもそも、少ないヒントから完全に精密な答を出すのは無理な話で、ディスカッションの過程を見るべきだと思います。
⑥『開かずの間の怪』 タネが割れてしまえば何でもない感じです。他の作品同様、主要メンバーの掛け合いは実に愉快なので、読んで損はなし。
⑦『二十世紀的誘拐』 人質は一枚の絵、身代金は千円という奇妙な誘拐事件。盗難のトリックはシンプルながら効果的です。実は動機の方がポイントになる作品と思います。
⑧『除夜を歩く』 モチの書いた小説はかなり拙くて、正直退屈なのは否めません。しかし、それを俎上に載せたミステリー論的なパートは一読の価値ありです。
⑨『蕩尽に関する一考察』 アリスが二年生になり、マリアが入部してから最初の事件。古書店主人の奇妙な行動が思わぬ意味を持っていたことが判明したときは驚くと同時に感心しました。事件を食い止めることができた、という救いのある結末もいい読後感を残します。

 ミステリー的に小粒な作品も見られますが、推理研メンバーの一年を読むことができる感慨も手伝ってかなり高評価。特に⑤と⑨がお気に入りです。

No.11 7点 測量ボ-イ
(2015/11/22 10:22登録)
江神シリ-ズは短編でもいいですね。各作品の短評を以下に。

<瑠璃荘事件>
江神とアリスの出会いのきっかけは、名作「虚無への供物」
だったんですね。いやはや、それはまた。
<ハ-ドロック>
日常の謎を扱う作品。オチは確かに北村薫氏っぽい。
<やけた線路の上の死体>
これだけは既読作品。鮎川氏のアンソロジ-に収録され、何度
も読みました。今回加筆訂正したとの事ですが、読んでいて
違和感感じた箇所がそうなのでしょう。
<桜川のオフィ-リア>
これはあまり印象に残らなかったです。
<四分間では短すぎる>
なるほど。でも謎の一部は未解決なのは敢えてそうしたのかな?
<開かずの間の怪>
バカバカしいオチだけど、こういうの嫌いじゃないです。
<二十世紀的誘拐>
これもあまり印象に残らなかったです。
<除夜を歩く>
モチさんの作品、作中ではしょぼいトリックと言いながら、なか
なかいいじゃないですか?
<蕩尽に関する一考察>
ほ-、この事件がマリアが推理研に入部するきっかけだったんで
すね。

凡作もありますが、総合的には好印象です。

No.10 6点 いいちこ
(2015/07/02 18:40登録)
“日常の謎”を取りあげたコンパクトな作品でありながら、強固な先入観を打破し鮮やかな真相に導いた「ハードロック・ラバーズ・オンリー」のカタルシスが断然。
「除夜を歩く」は作品部分よりも評論部分の方がはるかに秀逸で、トリックに関する悪魔の証明問題が非常に含蓄に富んでいる。
ただ、この2作を除けばミステリとしてはやや小粒と言わざるを得ず、この評価

No.9 7点 まさむね
(2014/04/06 23:13登録)
 アリスの大学入学からマリアの推理小説研究会入部までの1年間を舞台にした,このシリーズ初の短編集。
 一言でいえば,とても気持ちよく読めました。何とも心地よい。
 舞台が昭和から平成に移るとき…というのも,自分が四半世紀前に還ったようで,不思議な気分でしたねぇ。
 ベストは「四分間では短すぎる」。「二十世紀的誘拐」も好きなタイプ。「除夜を歩く」と「蕩尽に関する一考察」もファンとしては楽しい。

No.8 7点 あい
(2013/02/24 01:06登録)
面白かった。学生アリスシリーズが好きなので、最後と言わている5作目の長編にも期待しています

No.7 7点 虫暮部
(2013/01/31 19:40登録)
有栖川有栖作品の登場人物たちが交すどーでもいいような与太話って、なんでこんなに楽しいのだろう!
 
 ところで、作中の“新年号イニシャル予想”で、江神はRを除いてNを残していた。しかし、“音読み”ということを前提にすると、な行は少なく(例えば、音読みがヌで始まる漢字は奴・怒などいずれも“ヌ”と発音するものが数個あるのみ)、ら行は意外と多い。ということでここは逆にすべきであった。

No.6 7点 白い風
(2013/01/24 22:19登録)
江神シリーズ(学生アリス)の短編集ですね。
これだけでも、十二分に楽しめるけど、やっぱり過去の4作品を読んでいた方がより楽しめるかもね。
内容的には大好きなので8点なんだけど、ここはミステリの祭典だから、7点にしちゃいました(笑)
「やけた線路」のように実際の殺人事件も扱ってあったが、他の8編は日常ミステリーの類です。
先輩のノートが無くなった「瑠璃荘事件」と望月先輩の処女作の入っていた「除夜を歩く」もよかったけど、やっぱりマリアが登場した「蕩尽に・・・」が一番好きかな。

No.5 6点 HORNET
(2013/01/04 19:35登録)
 学生アリスシリーズが好きだから、それだけで自分の中で評価はよい。他の方が書いているように、「4分間では・・・」は面白かった。「蕩尽に関する一考察」もよくできた作品だと感じた。あとは、学生アリスシリーズを呼んでいるだけに、「月光ゲーム」からマリアが入部するまでの過程が見られるのはうれしい。やっぱり部長・江神二郎はかっこいい。

No.4 6点 kanamori
(2012/12/02 12:28登録)
学生アリス&江神部長シリーズ初の短編集。
デビュー短編の「やけた線路の上の死体」だけは殺人事件を扱った長編と同じテイストの本格派ミステリ。鮎川哲也のアンソロジー初出なので、これは”白鳥”の瑕疵といわれるトリックを”黒潮”で返した作品、だと思ったのですが考え過ぎだろうか。

そのほかの収録作は、日常の謎とか、推理のお遊び的なものとなっていて、全体を通すと(読む人の年齢にもよるが)ノスタルジーが漂う読み心地のいい青春ミステリという感じです。
なかでは「九マイルは遠すぎる」の趣向に倣った「四分間では短すぎる」がオチを含めて面白かった。

また、大学のミス研らしく各話でミステリ本の話題がエピソードに絡めて出て来るのだけど、「虚無への供物」「点と線」「ナインテイラーズ」などの名作群に交じって、タッカー・コウ(ウェストレイクの別名義)の「蝋のりんご」が出てきたのには思わずニヤリ。ミッチ・トビンシリーズは、派手さはないけど味わいのあるハードボイルド風味の本格ミステリで、5作ともお薦めです。ただ、作中の「あれを読まずしてミステリは語れない」というのはシャレでしょうけど。

No.3 7点 makomako
(2012/11/28 21:50登録)
 学生アリスが好きなわたしにとってはとても楽い作品でした。長編で語られなかった推理小説研究会の日常が分かってくる。推理小説研究会ってこんなことをして遊んでいたんだ。
 短編連作のようになったいるのだが、すべてが本格推理ものではなく(本格ものもあるが)推理のお遊びや大学生活を垣間見ているうちに彼らの1年が過ぎマリアが入部してくる。
 はっきり言って途中はちょっと退屈なところもあるのだが、最後の「蕩尽に関する一考察」などは実に後味がよく気持ちよく読み終えることができる。
 学生アリスが好きな人は必読でしょう。

No.2 6点 mozart
(2012/11/14 06:45登録)
学生アリスのEMC入部から始まり、マリアが入部に至るまでの9話を時間順にまとめた短編集。江神部長によるシャープな謎解きと言うより、懐かしいEMCメンバー達のやりとりを楽しむ1冊、と言えるかも。個人的には望月先輩の作品(?)『仰天荘殺人事件』をネタにして江神部長とアリスが「濃い」議論をする「除夜を歩く」が気に入りました。

No.1 8点 こう
(2012/11/11 22:57登録)
 作品の出来云々ではなく学生アリスシリーズを読めただけでも大満足でした。シリーズの世界観が崩れない作品だったのが良かったです。
 この短編集は新入生のアリスが江神と出会った作品からマリアが部員になるまでの9作品が時系列に沿って収録されています。「虚無への供物」や「ナインテイラーズ」のシーンなど既刊長編に合ったエピソードが入っているのが嬉しいですね。
 アリスと江神のみ登場の作品が2つありますが望月、信長を含めた4人全員登場した作品の方が好みです。
 あと孤島パズルのころはそこまで感じませんでしたがアリスが初めからマリアの事をかなり意識しているように書かれているのは過剰な読者サービスの様にも感じます。
 個人的には世界観さえ崩れなければ作品の出来はこのシリーズの場合不問ですが「4分間では短すぎる」が一番楽しめた構成でした。次点は5人全員揃ったということで「蕩尽に関する一考察」でした。
 江神シリーズあと長編1冊、短編集1冊を気長に待ちたいと思います。 

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