レッドキングさんの登録情報 | |
---|---|
平均点:5.28点 | 書評数:958件 |
No.838 | 3点 | 陸の海賊 アーサー・コナン・ドイル |
(2024/06/15 21:01登録) コナン・ドイルの非ミステリ短編集。拳闘ネタ( 正当試合もの、ファルス、幽霊ネタ、変則試合もの )4短編に、騎馬キツネ狩りとクリケットネタの2編、それに、海賊船長奇譚とタイトル作・・この二つは少々ミステリぽい・・と、ジェラールシリーズ拾遺コントのオマケ付き。現代でも少年漫画の原作並みに面白く読めて、「非」ミステリだが、3点オマケで付けちゃう。 |
No.837 | 4点 | 関税品はありませんか? F・W・クロフツ |
(2024/06/12 21:50登録) クロフツ第三十四作。密輸の為に船舶旅行業を始める犯罪グループの倒叙譚で、海中の遺体捜し「黄金虫」付き。これはクロフツの最終作にして「白鳥の歌」。 フリーマン・ウィルス・クロフツ・・・結局のところ、処女作「樽」が名作として知られるだけで、我が国のみならず(おそらくは)本国ミステリファンからも興味を持たれること稀な・・にも拘らずミステリ史に残るべき「大」作家。主役警官のみならず、犯人・被害者・共犯・脇役ことごとくが「普通の人」で、ありふれているが犯行に至らざるを得ない説得力ある動機、ミステリマニアの耽美刺激をそそる事ない「平凡」な殺人、愚直な捜査手順の描写、脇役を含め登場人物達の丁寧な経歴叙述、主に鉄道と船のトラフィックネタの頻出、あまり面白くない地味なアリバイトリック、公平な正しき人だらけの官憲達・・と、同じ様な作風を繰返し続けた。齢四十から執筆を始め、数十年間、ほぼ毎年、ほぼボルテージの下がらない(上がらない)ミステリを拵え続けたその人生に、惜しみない賛辞を! |
No.836 | 5点 | 探偵AIのリアル・ディープラーニング 早坂吝 |
(2024/06/10 21:18登録) AI探偵シリーズ第一弾は短編集。 「フレーム問題」 あ然(;O;)失笑の密室殺人トリックに 7点・・「後期クィーン問題」ネタはどうでもよく。 「シンボルグラウンディング問題」 クィーン名作オマージュだが、ロバの英訳知らなきゃワカらん。2点 「不気味の谷」 読み返せばきちんと揃えられたデータ、AI推理の挫折を超える人間推理ロジック。5点 「不気味の谷2」 山小屋密室殺人のチト無理矢理トリック・・面白いんだけどねぇ。4点 「中国語の部屋」 対話相手「存在」の真偽を決める限界時間ゲーム。解明どんでん返し見事で 7点。 で、五作平均 5点。 本格ミステリ短編集としては、平均5点だが、三人のAI少女や、右龍に左虎(!)両男女刑事など、キャラ立ち実に良く、これ、漫画やアニメにしたら映えるんじゃね? このシリーズ愉しみ(^^♪ ※肯定否定取り混ぜ、世界中あちこちで騒いでいるAIだけどねぇ、何だかシュワちゃん「I'll be back」超えて、SF「ハイペリオン」さえ現実味(さすがにタイムワープは在り得ないだろが)を帯びて来て。でーも、「生命科学の倫理」云々同様、余りにも過大評価し過ぎなんでないの? そりゃあ、人間能力超えた途轍もない学習能力持った存在に成り得るんだろうがさ、人口知能が「自然な」感情や意志を持つなんてことまでは在り得んだろう・・それもまた、「生の人間」によるプログラミングなんでないの?・・なんて、あまり固いこと言わんとこ、シラけるし(^_-) |
No.835 | 7点 | ラスト・コヨーテ マイクル・コナリー |
(2024/06/08 20:29登録) ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第四弾。街娼の私生児が長じて一匹狼刑事となり、数十年前に起きた母親の惨殺事件の真相を求めるハードボイルド浪漫。自身にも把握できない「憤怒」に焼かれつつ、絶望と諦念を辛うじて抑え込んで進む真相解明への情動。一旦は綺麗に嵌まる人間関係パズルを、更に嵌め直しして見事なるミステリ画が完成する。 「過去はこん棒の様な物、深刻なダメージにならないうちは、何度でも自分の頭を殴る事ができる・・・」主役刑事の「心の闇」に対峙する、カウンセラーの女がよい。※本来5~6点のところ1点ほどオマケ。 |
No.834 | 7点 | 宇宙戦争 ハーバート・ジョージ・ウェルズ |
(2024/06/05 08:00登録) このサイト読んでて、またもまたもまたも、おおおお!となり・・。SF入れるなら何をおいてもこれ入れんとなぁ。子供の頃、親父が買ってくれた河出書房「少年少女世界の文学」てな全集の何巻だかに、たしか「シャーロックホームズの冒険(なんちゅう組み合わせだ)」とカップリングで入ってた。今では神話にすらなっている " 何故に、かくも優れた火星人が地球人に敗北したのか "のWhy、かつ、" 誰が火星人を滅ぼしたのか "のWhoダニットミステリとして評価しちゃう。 (同日追記) え?「 滅びた原因は明確に示されてない」?・・てことは、あれだ、H・G・ウェルズには、未発表の続編があるんだ!・・・地球上で死体となったかに見えた火星人たちは、前段階のタコ型生物から昇華して、百数十年の時を経て、高次元の存在地平を切り開き・・・てな、「火星幼年期の終わり」と言った題で。 2024/6/25追記 わかった! 火星人を滅ぼしたのは「細菌」ではなく「ウィルス」だ! そして、この「宇宙戦争」の十九世紀末の段階では、「ウィルス」を発見する科学技術はなかったんだ! だから、火星人の死骸を解剖したところで、「死因となった細菌」などは見つからなかったんだ! |
No.833 | 7点 | 暗闇の薔薇 クリスチアナ・ブランド |
(2024/06/02 22:13登録) 嵐の夜の道路に横倒しになった木、道を塞ぐ倒木の両側には通行を遮断された二台の同型車、車を交換し各々の目的地にUターン発車する男女。翌日、女が運転して来た車の後部座席から出て来た死体は知人の女だった・・・能天気にしてメンヘラな美人女優と、遊び仲間のシネマ界隈の男女容疑者達。ブラックでポップでコミカルで、熱に浮かされた様な、ややサイコかつサスペンスな、死体移動トリックWhoミステリ。「共犯者なし」条件が効いてる。 |
No.832 | 3点 | 増加博士の事件簿 二階堂黎人 |
(2024/05/28 06:09登録) 並の文庫本に27話(!)ぶち込んだショートショート集で、大半がシラけ落ちダイイングメッセージ物。密室トリック作家としては、ホント素晴らしいが、こんなのやる程の、「唖然」「脱力」ナンセンスの高み、には登れない二階堂黎人。 |
No.831 | 8点 | 増加博士と目減卿 二階堂黎人 |
(2024/05/28 06:06登録) 作者言うところの「メタミステリ」(正しい定義なのか?)設定の、密室トリック特化の中短編集、よいなぁ。 「Yがふえる」 核シェルター密室(そりゃそうだ)殺人。空前(間違いなく)絶後(?)の凶器ネタに 8点(10点満点) 「最高にして最良の密室」 足跡無き砂浜に、内と外から目張りされた車内での殺人・・模範的三重密室に 8点 「雷鳴の轟く塔の秘密」 10年隔てた二つの塔密室殺人に、ピラミッド謎解明オマケ付で 8点。で、平均 8点。 ※点数は、「メタ」でなく「ちゃんと虚構された世界」での密室であった場合の点数、すなわちオマケ付き、と言う事ね。 |
No.830 | 4点 | 絞首人 シャーリイ・ジャクスン |
(2024/05/24 23:19登録) 自分には、"(本格)ミステリとは言えないが点数オマケ" てなパターン結構多いんだが、これは、そのオマケさえ不可能な程の「大学生文学」・・「三四郎」「二十歳の原点」etcと同様・・であった。狷介で衒学的な小説家の父・・17歳の娘に「おまえから自殺寸前の精神状態という輝きを奪いたくないのだ」なんて言葉を悦悦と垂れる様な父・・から、詩的哲学的な個人教育を受けて育った、のっぽで痩せた娘の寄宿大学入学。まっとうな対人関係を持つこと遥かに遠い女学生の、幻想的と言うより、ほとんど狂気に近い、意識の流れの文学であった(でも、やっぱりオマケ(^^)・・) |
No.829 | 5点 | かいぶつのまち 水生大海 |
(2024/05/23 11:52登録) サイト見てたら、珍しくこの作家の評があり(「ランチ探偵」て短編集だが)、何か懐かしかった。以前、沼田まほかるや「殺人鬼フジコ」作家と同括りに「女流イヤミス」と言われてた(・・たしか)。でも、べつに「イヤな感じ」はなく、むしろ「ライト爽やか」でさえあり、なんか好感覚える作家で、ほとんどの作品読んだはず。が、短編集は内容ほとんど忘れてしまい、評に次韻できず、で、処女作の続編にあたるこの長編をと。こっちは犯人も動機も覚えている。前作より明らかに劣り、3~4点だけれども、この作家好きなので、点数オマケ。 |
No.828 | 7点 | ずっとお城で暮らしてる シャーリイ・ジャクスン |
(2024/05/19 20:42登録) 第二人称の狂気ホラーが、Who(見え透いてるが)ダニットミステリ踏み台に、第一人称の狂気へ反照し、グリム童話風ファンタジーとして、限りなくメルヘンに近づく・・素晴らしい。 ※当サイト見るまで、この作家の名前すら知らなかった(^^;) 興味そそられ、さっそく・・・ |
No.827 | 6点 | 逃げる幻 ヘレン・マクロイ |
(2024/05/18 12:53登録) こないだ、クリスチアナ・ブランド「薔薇の輪」を、なぜか途中から、ヘレン・マクロイ作品と勘違いして読み、「え、こんなポップだったっけ? マクロイ・・」と訝しく思い、「あっ、そうだブランドだった」と気付き(^^♪・・・。 で、この作品、そうだよ、この薄ドンヨリした重さこそマクロイだよ。40年代後半作の例に漏れず、これまた対独(ナチス)もの。美しくも淋しいスコットランド荒地を舞台にした、人物消失と密室殺人(両ネタ共ズッこけレベルだけどね)に、洗脳操りネタ付きWho(ダニット+正体)ミステリ。 ※しかし、なんちゅうか、ナチスを反西洋側に弾き、古代西洋から耶蘇教、ルネッサンス・産業革命・近現代開花文明に至る人類王道を、西洋文明の道に擬える傲慢さ能天気さ。ナチズムだって西洋文明のリッパな落し子だろが・・。 |
No.826 | 7点 | 薔薇の輪 クリスチアナ・ブランド |
(2024/05/13 21:44登録) われながら何をボケたか、読み始めて、ヘレン・マクロイの作品読んでるって思い違い(表紙見返しゃわかんだろ ^^;)を起こしてしまい、ん?ヘレン・マクロイって、こんなにブラックユーモア弾かせる人だったっけ?て位、ファンキーに飛ばした語り口で・・そりゃ、クリスチアナ・ブランドだからね・・「唇の捩れた男」「闇からの声」スパイスも漂い、べりーぐっどよ。 |
No.825 | 6点 | 太陽がいっぱい パトリシア・ハイスミス |
(2024/05/08 21:38登録) 映画「太陽がいっぱい」、サスペンスと言うよりアランドロン映画で、鬱屈した超美形青年の残酷で切ないピカレスク浪漫だった。で、この原作の方の主人公、恵まれない環境を、器用すぎる・・経理・営業から執事・ジゴロ・食客・詐欺に至る・・溢れる才覚で、乗り切って行く青年だが、ただ飽きっぽい。一方、相手方の大富豪ボンボン、映画では、如何にもな高慢俗物青年だったが、ここでは、主人公にシンメトリカルなくらい複雑な感性持った疑似アート青年。あまりにも名作すぎたあの映画が無ければ、如何にも作者らしい、屈折した同性愛悲劇として読めたろう。 ※はるか昔の対談で、映画評論家の淀川長治が「この映画、史上初のホモ映画なんですねェ」とドヤ顔で自慢して、対談相手の吉行淳之介が「え?まさか・・」て感じで驚いていたが、あの頃、日本ではまだ、この作者の事は知られていなかったんだろな。 |
No.824 | 6点 | 暗黒童話 乙一 |
(2024/05/06 06:06登録) 初長編とな。書いたの二十歳過ぎ頃とか。「早熟の天才」タイプなんだろが、その手の・・ランボー・ラディゲ(チト例がオーバーか)・・タイプの鼻持ちならない高慢さの微塵もない、なんと謙虚な文庫本自作解説。で、この長編、「記憶ある眼球」移植ネタ・・「ブラックジャック」に元ネタあったなぁ・・のWhoミステリと、シュールな残酷ファンタジー・・白井智之みたいなグロヘド描写にはならない冷たい抽象・・と、切ない胸きゅんメルヘンの切り貼り合成。 |
No.823 | 5点 | 夏と花火と私の死体 乙一 |
(2024/05/03 00:06登録) 十六歳(!⚙⚙)の処女作とな。坂口安吾「風と光と二十の私と」への次韻なんだろな、このタイトル。「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」風味も狙った、ホラーファンタジーまたは残酷童話の趣が良く、サスペンス巧みで、少しミステリ。この後のブラック展開が見え見えだが・・露骨に提示しているし・・手前で終わらせている所がよい。 ※もう一作、短編のオマケつき。 |
No.822 | 4点 | フレンチ油田を掘りあてる F・W・クロフツ |
(2024/05/01 20:43登録) クロフツ第三十三作。ん?油田を掘りあて?、フレンチ、警視辞めてゴールドラッシュ山師にでも転身?・ではなく、油田をめぐる一族の殺人事件の「真相当て=油田掘り当て」だった。ナイスネーミングタイトルね。ラスボス操り真相なかなか面白く、毒殺~放火あたりの倒叙サスペンス具合もよく・・列車ネタは相変わらず、しょぼいトリックも相変わらずだけどね。 クロフツもあと一作で終わりかぁ。何か一抹の寂しさが・・もう読み返すこともないだろしなぁ(クロフツだし(^^)) |
No.821 | 5点 | ドアの向こう側 二階堂黎人 |
(2024/04/29 23:38登録) 幼稚園児「ハードボイルド」探偵:シンちゃんシリーズ第三短編集。 「B型の女」 お、時刻表ミステリのパロディ?・・からの意表つくWhy。4点 「長く冷たい冬」 ゲレンデ犬ぞりレースと二つの犯罪。片方のWhoWhy分かり安過ぎ、キャラ安直すぎ。3点 「かたい頬」 密室状態別荘地からの少女消失。おお、「妖魔の森」?期待させて・・2割方スケールダウン。7点 「ドアの向こう側」 失踪事件と殺人疑惑のワンツウショット解決。5点 ※この作者、トリック作家としては実に素晴らしいが、ギャグセンスに欠けて、ユーモア小説家としてはかなり音痴。生真面目な秀才が無理しておちゃらけても、痛々しく不快なだけで・・。 |
No.820 | 6点 | クロへの長い道 二階堂黎人 |
(2024/04/28 23:05登録) 幼稚園児「ハードボイルド」探偵:シンちゃんシリーズ第二短編集。 「縞模様の宅急便」 ロー(ハイでなく)リスク・ローリターンの身代金誘拐 3点 「クロへの長い道」 そっか、ハードボイルドの道って、あのホームズ名作短編に至るんだ! 7点 「カラスの鍵」 部屋と密閉ケース、二重密室からの宝石消失トリック 3点 「八百屋の死に様」 見えない少年(チェスタトン+「姑獲鳥」)と見えてる入代りの二重ネタ 8点(この作者なら、この短編を元に長編拵えられるんじゃないか。)全体で・・平均でなく・・6点。 |
No.819 | 7点 | 切られた首 クリスチアナ・ブランド |
(2024/04/26 22:45登録) 首切り連続殺人の雪密室付きミステリ。雪「密室」は在るけれど、本格物のHow妙味よりも、サイコホラー風味が美味しく・・「そろそろと押入れの扉が開き始めた・・」(ギャー)。 怒涛の波状ダミー解決・・デビュー時からやってたのね・・に、「最後の数行」の余韻エンド。あれって、ひょっとしてドンデン(・・)? いいねぇ。 |