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ミステリの祭典

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フレンチシリーズ

作家 F・W・クロフツ
出版日1958年01月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 4点 レッドキング
(2024/06/12 21:50登録)
クロフツ第三十四作。密輸の為に船舶旅行業を始める犯罪グループの倒叙譚で、海中の遺体捜し「黄金虫」付き。これはクロフツの最終作にして「白鳥の歌」。

フリーマン・ウィルス・クロフツ・・・結局のところ、処女作「樽」が名作として知られるだけで、我が国のみならず(おそらくは)本国ミステリファンからも興味を持たれること稀な・・にも拘らずミステリ史に残るべき「大」作家。主役警官のみならず、犯人・被害者・共犯・脇役ことごとくが「普通の人」で、ありふれているが犯行に至らざるを得ない説得力ある動機、ミステリマニアの耽美刺激をそそる事ない「平凡」な殺人、愚直な捜査手順の描写、脇役を含め登場人物達の丁寧な経歴叙述、主に鉄道と船のトラフィックネタの頻出、あまり面白くない地味なアリバイトリック、公平な正しき人だらけの官憲達・・と、同じ様な作風を繰返し続けた。齢四十から執筆を始め、数十年間、ほぼ毎年、ほぼボルテージの下がらない(上がらない)ミステリを拵え続けたその人生に、惜しみない賛辞を!

No.3 6点 人並由真
(2018/04/17 17:25登録)
(ネタバレ無し)
 クロフツの遺作。村崎敏郎の旧訳(ポケミス版)が大昔から買ってあったので、今回はたまたま目に付いたそっちで読了した。
(実はHM文庫版も古書で入手してあったような気もするが、そちらは今回見つからなかったな~。)
  
 前半、地味な? 密輸犯罪が口封じの殺人劇に発展していき、密輸犯視点で一度は事態に決着がついたと思いきや、さらに(中略)という筋運びはなかなか鮮烈であった。倒叙ものと一種のフーダニットの合わせ技かと思ったのちに、そこで変化球のサプライズを繰り出してくるクロフツの手際は見事。
 後半の展開は謎解き作品というより、良くも悪くもみっしり細部と手順を書き込んだ警察捜査小説という感じだが、それはそれでよい。この作者らしい魅力は普通に味わえた。

 ちなみにフレンチの部下の若手警部ロロは、先に『チョールフォント荘』『見えない敵』にも出ていたらしいんだけれど、そっちは私的にまだ未読。前もってその両編を読んでいたらさらに楽しめたろうね。シリーズを順々に追わずにつまみ食い読書しているこっちが悪いのだが。

 しかし、クロフツのノンシリーズ編っぽいものが意外にフレンチものの世界観とリンクしていることは前もって心得ていたが、このサイトに来て空さんの『海の秘密』のレビューで『樽』とフレンチシリーズが実は同じ作品世界だということも初めて知って仰天した。この作者は以前の自作や登場人物を本当に大事にしていたんだね。
 クリスティーも似たようなことやってるけど、こういう趣向って書き手も読み手も楽しいよな。どなたか有志の方、ファンジンでクロフツ作品登場人物事典とか作って下さいませんかね。WEBのデータベースでもいいから。

No.2 6点 nukkam
(2014/08/13 18:19登録)
(ネテバレなしです) 「フレンチ油田を掘りあてる」(1951年)から6年ぶりの1957年に発表されたフレンチシリーズ第29作でクロフツ(1879-1957)の遺作となりました。第一部が犯罪物語、第二部は本格派推理小説(犯人の正体は第一部で読者にオープンになっています)という古典的な倒叙推理小説です。第一部は細部まで緻密に仕上げられていますが、第二部は推理が短絡的で都合よく解決されてしまうところが少々弱いかと。でも1番印象に残ったのはフレンチを激怒させたある真相。いやあ堅実なクロフツ作品でまさかアントニイ・バークリー級の「羽目はずし」を味わうことになろうとは。本当は5点評価ぐらいなのですがこの意外性にもう1点おまけしましょう。しかし主任警視になって地方の事件にはあまりタッチしないって言っておきながら、いざ現場に行くと部下(本書ではロロ警部)に任せずほとんど自分でやってしまうフレンチって、管理職としては失格かも...(笑)。

No.1 5点 kanamori
(2010/07/16 22:00登録)
フレンチ警部(警視)ものの29作目で最後の作品。
倒叙形式で、ヨットを使った密輸犯罪を扱っていてクライム小説の趣が強い。途中から、物語が思わぬ方向に向かう展開はまずまずですが、円熟期の作品と比べて捜査に緊迫感がない印象は否めない。

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