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ミステリの祭典

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暗闇の薔薇
チャールズワース警視正

作家 クリスチアナ・ブランド
出版日1994年07月
平均点6.71点
書評数7人

No.7 8点 ◇・・
(2024/02/22 20:50登録)
嵐の夜、車を走らせるヒロインの前で巨木が倒れ、行く手をふさがれてしまう。何者かに追われていると思しき彼女は、倒木の向こう側で同じように立ち往生している見知らぬ男性と、お互いの車を交換することで急場をしのぎ先を急ぐ。しかし、その交換した車の後部座席に死体が乗せられていたという、なんとも魅力的な謎で幕を開ける物語。
サスペンスフルな展開、畳みかけるようなツイスト、そして驚愕のラスト。縦横無尽に繰り出されるテクニックは、まさに本格の芸術と呼ぶに相応しい、比類なき美しさ。ヒロインの素晴らしい造形も名人ならでは。

No.6 5点 ボナンザ
(2020/05/06 19:44登録)
ブランドらしく、展開の意外性で長編を持たせた一作。・・・ジェゼベルやはなれわざを読んだ後だとどうしても見劣りするのは否めない。

No.5 8点 斎藤警部
(2020/03/19 12:14登録)
夜中、尾行車から逃れようと風雨の中を飛ばすヒロイン。最悪のタイミングで目の前に大木が倒伏。万事休すと思われたが、倒れた大木の逆側にも一台の車が立ち往生。ヒロインはその車を運転する男に「車を交換してそれぞれの目的地まで行き、後でも一度交換しましょう」と、連絡先ともども持ちかける。よく見ると偶然にも男の車は自分の車と全く同じ型!。。無事家にたどり着いたヒロインは翌日、自宅に止めておいた「男の車」バックシートに女の屍体を発見。女は、昨夜ヒロインが映画館の発券所で会話を交わしたばかりの昔馴染みだった。ヒロインがその映画を観に行ったのには切実な理由が。。。。そして「男」の正体が。。。。

時系列が前後する、心理状態はコロコロ変わる、後半より謎めいたフラッシュバックが頻発。この不親切さには大いに幻惑されましょう、相手はかのクリスチアナ師匠です。微妙に後から色んなことが明かされる。物語が混乱しているのか、読者側だけ混乱してんのか、まるで謎の叙述トリックが、見えないどちらかの方向に突き刺さっているかの様な不信感、このへんは大いに味わいましょう。

スケールの巨大な(国家レベルの、、)尾行。 優しい(?)ボヘミアンたち、、それはヒロインの「親友」として生き残った者たち、、うち一人はゲイの同居人、、何人かは嘗てヒロインも属した映画界で関わった者たち、、の織り成す違和感、違和感、こりゃたまらん。でも好きな関係性だ。何となくスーパーオーガニズムを思い出す。フレンド族殺人事件もちょっとだけ思い出す。 “その組合せと計算は無限だった“って、ほんまかいな。。 “おしっこ”。。。。 創元推理文庫の惹句にある通り型破りの一作、師匠最後のミステリ長篇。 エンディングが色々じんわり過ぎます。。。。 久々登場のチャールズワース警視正がいながら(地位に見合ってない!)、生意気な若い部下もいながら、まさかの。。。。 それとやっぱり、クリスチアナ師匠ならではの明るいブラックユーモアが横溢。これがたまらんのです。

本作は、鍵を握る屍体移動トリック故「黒いトランク」に擬えられる事があるようですが、それはちょっと、どうですかねえ。。

No.4 7点 青い車
(2016/11/09 14:50登録)
 他の方々も書かれていますが、後半のサスペンスフルさが素晴らしいです。つまり裏を返せば中盤まではやや退屈なのも否めません。しかし、ヒロインのサリーを始めとした登場人物の描き方はさすがブランド、文句なしです。
 トリック自体はシンプルですが、不可解な状況が最後一気にほぐれていく様は読み応え抜群でした。ミステリーの女王アガサ・クリスティーも犯人以外の人物たちの思惑が交錯し事件の謎を深める手法をしばしば使いましたが、本作もその手法をうまく採っていると思います。そして中でも、「なぜ被害者は後部座席にいたのか」がわかった瞬間が快感でした。

No.3 7点 nukkam
(2014/09/10 10:17登録)
(ネタバレなしです) 作者晩年の1979年に発表された作品ですがなかなかよくできています。中盤がやや中だるみ気味で、久しぶり登場のチャールズワース(何と警視正に昇進している)も案外出番がありません。イタリア旅行シーンに至っては脇道にそれるのも程々にしてほしいなあと思いました。ところがこのイタリア旅行あたりから物語のテンションがどんどん上がっていき、後半は息を呑むような展開が続きます。相次ぐどんでん返しの謎解き、そして劇的で重苦しい幕切れには打ちのめされました。本格派推理小説ファンはもちろん楽しめますがサスペンス小説ファンにも結構アピールできる傑作だと思います。

No.2 6点 kanamori
(2010/12/12 18:02登録)
ブランド最後の長編ミステリ。
嵐の夜、正体不明の男との車の交換場面やトランクの中からの死体出現など、なかなか魅力的な発端で期待を抱かせましたが、中盤以降は曖昧な状況が継続し少々退屈でした。
お得意の多重解決も、今作はあまりキレと説得力がないように感じましたが、女性主人公の周りから次々と友人がいなくなっていく終盤は一種異様な哀切感を醸し出していてよかった。

No.1 6点 ロビン
(2009/02/19 15:08登録)
解説では山口雅也氏が激賞していますが、自分はそれほどの作品だとは思えませんでした。核となる死体移動のトリックは、もっと『黒いトランク』的にこちらの理解が及ばないほどの複雑な構図を期待していたのですが、本当に拍子抜けするほどなんてことはない、というか別にトリックすらない真相です。
読後に、ああ確かに英国本格らしいプロットだなぁとは思わされますが、重要な事実の隠し方もそれらしいです。

(ネタばれ)よくよく考えればあの人物にはアリバイはないし、まあ非常に嫌な奴だったのでこいつが犯人だったらいいなぁと思っていたら……スッキリ。

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