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平均点:5.67点 書評数:546件

プロフィール| 書評

No.526 5点 奇想ミステリ集
山田風太郎
(2024/03/31 16:53登録)
ミステリというより、ダークなテイストで、ツイストを効かせた短編小説集という印象。
前半の作品群は、それなりの水準にあるものの、後半はやや平凡というか、いかにも小品に映る。
ただ、これが作品そのものの出来・不出来によるものか、似たような球筋の変化球を見続けたことによるものかは、判然としない。
解説によると、本作の出版時点で絶版となっていた作品を集めたという経緯のようで、著者の代表的な作品群には、一歩も二歩も及ばない。
ただ、それでもこの水準にあるというのは評価されるべきであろうし、とくに当時の風俗を鮮やかに描き出す筆力はさすがの冴え。
5点の最上位


No.525 4点 霧と雪
マイケル・イネス
(2024/03/03 17:28登録)
すでに、さまざまなサイトで多くの読者に評されているように、翻訳があまりにもひどすぎる。
典型的な英語直訳調で、平素慣れ親しんでいる日本語の構文と、あまりにもかけ離れているから、筋が頭に入ってこない。
読みにくい文章を追っているうちに、集中力を失い、ミステリを楽しむという心境ではなくなっていった。
本作に対する正当な評価ではないことは重々承知しているが、この評価とせざるを得ない


No.524 5点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2024/02/24 16:25登録)
これほどまでに特殊な前提が設定されると、その解決に対し、当方のハードルが自然と上がってしまうところ、プロットそのものがいま一つで、それを華麗に超えたとは到底言い難い。
犯行動機にせよ、犯行の態様にせよ、著者の筆力の低さも相まって、説得力を欠いており、それを成立させるために少なくないご都合主義的な設定が置かれている点でも減点。
細部にわたって考え抜かれている点は伝わってくるものの、高く評価することは難しい


No.523 5点 顔のない敵
石持浅海
(2024/02/08 15:33登録)
各短編とも、それなりに考えられているのだが、少しずつ違和感や無理を感じ、完成度としてはいま一つ。
4点も頭をよぎったものの、それほど批判的なスタンスに立つべき作品でもなく、5点の下位


No.522 7点 背徳のメス
黒岩重吾
(2024/01/26 12:59登録)
ミステリとしては、いかにも小品であるが、サスペンス?ハードボイルド?としてとにかく読ませる。
昭和30年代の時代背景・風俗に加え、そこに暮らす人々の息遣いさえも伝える、生活感にあふれた描写と、乾いた筆致が実に見事。
本サイトの趣旨に照らし、これ以上の評価は難しいが、直木賞受賞作という宣伝文句に恥じない佳作


No.521 5点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2024/01/08 17:52登録)
非常に評価が割れる作品であろう。
犯人が犯行の完全性を担保するため、犯行全体に「十戒」というコンセプトを導入することで、探偵の参画を敢えて促し、その意図せざるところで犯行に協力させるというプロットは抜群に面白く、また、この綱渡りのようなプロットを成立させるために、相当な工夫が見られる点は認める。
ただ、減点材料も決して少なくない。
まず、著者がいかに偽装工作を施そうとも、これだけ登場人物が少なければ、読者にとっては犯人は自明と言わざるを得ない。
偽の解決における犯人は、置かれた状況に受動的に、場当たり的に対応しており、これを自らの意志で十戒を計画的に破っていったとする推理にはかなりの無理を感じるところ。
そもそも本件プロットを成立させるためには、定期的な記憶喪失という、いかにもご都合主義的な前提条件が必須という点でも印象は悪い。
これだけ無理のあるプロットを読ませ切る力は見事であり、本作に対して、あたら批判的な立場をとるつもりもなく、中立的な立場から以上の点を総合的に評価


No.520 6点 捕虜収容所の死
マイケル・ギルバート
(2023/11/30 14:59登録)
プロットの独創性や、真相解明プロセスの緻密さは買うのだが、登場人物があまりにも多い点、舞台設定の説明がわかりにくい点、脱走場面におけるサスペンスの演出が今一つである点に難を感じた。
水準には達しているものの、世評ほどの大傑作であるとは感じられず、6点の最下層


No.519 5点 身代わり
西澤保彦
(2023/11/30 14:52登録)
全く無関係のように見える二つの事件を結びつける真相は、想定の範囲内。
その背景には、ある人物の途方もない意図が存在しているという構図には、多少ならず無理を感じるし、死亡推定時刻の四時間のズレについても、同様の印象である。
これらは重要な登場人物の大半について、十分に描写していないためであり、それが敢えて描かない作風を選択した結果であることは百も承知しているものの、やはりそれがゆえに、違和感が拭えないというか、十分に納得感が得られないのである。
作品全体に「そのような設定とすれば、説明は付きますけど、そんな人がいますかね?そんな行動をとりますかね?」という印象が強い。
それでも読了までもって行く筆力の高さは感じるが、1個の作品としては5点の下位


No.518 6点 騙し絵の檻
ジル・マゴーン
(2023/11/09 19:39登録)
本作を一貫してアリソンと親しかったホルトの視点から描いた点、オールソップはアリソンの身辺を探っていた私立探偵であり、かつ恐喝者でもあったという設定が、見事にレッドへリングとなっている。
ただ、犯行に至るプロセス・状況の描写があいまいであるという点も相まって、鮮やかな反転というほどの効果は挙げられていない。
水準を超える作品であることは間違いないが、本作もやはり世評ほどの傑作であるとは感じられなかった


No.517 5点 invert II 覗き窓の死角
相沢沙呼
(2023/11/09 19:38登録)
捻って着地も決まっているので、水準には達しているが、物足りなさが残る。
倒叙ミステリというジャンルそのものが、やや特殊な変化球であり、連投されると、どうしても目が慣れてくるというハンデはあるのだが。
いずれにしても世評ほどの傑作とは感じられなかった


No.516 7点 帝王
フレデリック・フォーサイス
(2023/10/23 15:29登録)
とにかく収録されている8つの短編に外れがない。
いずれの作品も、ミステリ風のプロットの完成度が高く、かつ軽妙さ・洒脱さが感じられ、ラストの捻りも決まっている。
また、登場人物が抱える心の傷・弱さが読者の共感を強く訴えるような筆致となっている。
とくに、世評の高い「免責特権」「帝王」を高く評価したい


No.515 4点 激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎
鳥飼否宇
(2023/10/23 15:28登録)
最終盤に明かされた真相は、一定のサプライズを演出しているし、細部に至るまでよく練られている。
ただ、いかにも小品という印象は否めないし、完成度の点で問題があり、物語に文字どおり挿入されたというべきアクシデントには強い違和感・異物感が残る。
各所で好意的に評価されている作品であり、批判的な立場に立つつもりもないのだが、4点の下位


No.514 5点 誰か Somebody
宮部みゆき
(2023/10/03 16:08登録)
筆力の高さは相変わらずで、よく描けている。
作品の主題も悪くはない。
ただ、いかんせん、ミステリとしてはプロットや真相があまりにも平凡であり、回収されていない設定の存在等も含め、抜群の完成度とはいえない。
ストレスを感じることなく、読書を楽しめるものの、読者の心に何かを強く残す作品ではない。
5点の中位


No.513 4点 むかしむかしあるところに、死体がありました。
青柳碧人
(2023/09/24 09:00登録)
本作のコンセプトを着想した発想力・構成力、論理性・整合性等は、それなりに評価できるのだが、緻密である反面、冗長という印象が拭えないうえ、ここまで改編してしまうなら、著名な昔話を題材にとった意味がほとんど感じられない。
また、重要な設定の後出しが散見される点で、読者の納得感が得られにくい。
発想の奇抜さは買うものの、それが読み物としての面白さにつながっておらず、4点の下位


No.512 5点 メソポタミヤの殺人
アガサ・クリスティー
(2023/08/24 14:02登録)
犯行プロセスの合理性・フィージビリティの低さ、意外性を追求するあまり、フィージビリティを無視した真犯人の設定、実証性に欠ける捜査プロセス等、ミステリとして評価できる要素に乏しい。
また、タイトルとは裏腹に、舞台を中近東とし、主要登場人物が遺跡調査に携わっているとする必然性が感じられない。
世評ほどの傑作と評価することはできない


No.511 5点 ウランバーナの森
奥田英朗
(2023/08/14 20:54登録)
本作の主人公は「ジョン」とされているが、これは明らかにジョン・レノンであろうし、妻の「ケイコ」はオノ・ヨーコ、「ジュニア」はショーンだろう。
著者は、ジョン・レノンが4年間の空白を置いて発表したアルバムの作風が大きく変わった点をふまえ、その「空白の4年間」を埋めてみたかったと語っている。
悪い作品ではないと感じたが、本作が普遍的な意味をもっているのかどうかは、判断が難しいというか、読者によって分かれるところであろう。
本サイトで評価すべき作品ではないことは百も承知で、この評価とする。
著者のもっている引き出しの多さは評価されて然るべきだとは思う


No.510 4点 ダークゾーン
貴志祐介
(2023/08/09 16:51登録)
紙幅の大半が費やされる、将棋を模したバトルゲームは、それなりに描けている。
ただ、目次から勝敗の推移が概ね予想できるという点が決定的な欠陥だろう。
勝敗の帰趨を決定的に左右する重要な設定が、言わば後出しジャンケン的に、徐々に明らかになっていく点、獲られたはずの駒が絶命する前に相討ちにもっていく場合と、そうでない場合がある点など、小説である以上、当然とは言え、著者の匙加減一つという印象をあまりにも強く受ける点でも少なからず減点。
そうなると読者の興味は「このゲームの舞台は何なのか」という一点に集中するのだが、予想どおりの最悪の真相。
著者の筆力は感じるものの、好意的に評価することはできない


No.509 4点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2023/07/12 17:00登録)
当該真犯人は、本作の刊行当時においては大きなサプライズであったろう。
しかし、現代ミステリを渉猟してきた人間であれば、「奇想天外な犯人にするなら、この人物だろう」と考える人物であり、そのような意味で意外性がない。
また、明かされた真相は拍子抜けであり、犯行プロセスにフィージビリティが感じられない。
このように見ると、現代においては、本作のミステリの歴史における位置づけ以外には、読む意味が見いだせない。
4点の下位


No.508 5点 イコン
フレデリック・フォーサイス
(2023/07/09 15:04登録)
現代ロシアの政情を理解するうえで非常に興味深く、また筆力の高さも健在ではあるのだが、主人公のあまりにも超人的な能力・資質が、予定調和的なストーリー展開という印象を生んでいる


No.507 6点 儚い羊たちの祝宴
米澤穂信
(2023/05/26 10:38登録)
各短編のいずれもリアリティやフィージビリティがほとんど顧みられておらず、ミステリというより、むしろサスペンス・ホラーに類する作品であろう。
著者の筆力の高さが確かに感じられ、水準には達しているが、敢えて説明しない作風も相まって、読後にジワジワと染み透るイメージであり、強烈なインパクトには欠ける。
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