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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.960 5点 蠢く触手
江戸川乱歩
(2016/08/21 14:06登録)
~新聞記者の進藤は、これからある事件が起こるとの予言を怪老人から聞き出す。そして次々と予言通り事件が起きるのであった。~
岡戸武平氏による代作であることを承知の上での拝読。乱歩氏らしさを出そうと、猟奇的な犯罪やそれらしき怪しい登場人物も出てきます。当然、明智小五郎も(笑)。しかし、主人公が新聞記者ということもあり、話のテンポは早く、乱歩氏らしい雰囲気は?マークでしたね。読みやすくプロットは面白いのですが、ミエミエな部分が結構ありました。一点、非常に惜しいところは、現在ならば「叙述」に該当する部分があったのですが、当時ではうまく処理しきれなかったことです。この部分をもう少し、掘り下げていれば結構いい小説になったような気がします。


No.959 6点 招かれざる客
笹沢左保
(2016/08/19 21:33登録)
目新しいものはないのですが、動機、アリバイ、トリックを複合的に組み合わせたもので好印象を受けました。警部補の消去法的推理はなかなかのものです。ただし、題名はイマイチ、ピンときませんでした。


No.958 4点 探偵小説談林
評論・エッセイ
(2016/08/18 13:13登録)
探偵小説愛好団体である”怪の会”の機関誌「地下室」のコラムに掲載したものや、他の雑誌に発表したものであり、かなりマニアックな内容でした。探偵小説に関わった人々についてのものが多いのですが、ほとんど知りませんでした(苦笑)。
そんな中で興味を持ったものを2点ほど。
「EQ」誌に連載(1984年)されたH・R・F・キーティング氏による代表作採点簿があり、それはC(人物)P(プロット)R(読みやすさ)T(サスペンス~TはTension)の4項目で採点したそうです。なお、エラリー・クイーン氏が発表した採点表は10項目あったようです。後者は主に本格を、前者はサスペンス、ハードボイルドなどを対象としているので項目数が少ないのは致し方ないのかも。個人的には、意外性や先駆性をかなり重要視して採点しています。
江戸川乱歩氏の作品で「蠢く触手」(1935)があり、それは岡戸武平氏による代作であるということです。遅筆の乱歩氏は短期間に長篇を書きあげることは出来ないので、やむなく代作者を使用したとのことです。よって、その後の全集などに載せることもなかったし、今後も刊行されることもないであろう。”幻の作品”として珍重されるかもしれない。・・・とありました(1986時点)。しかし、1997年、春陽文庫より復刻されていました。早速読んでみよう!(笑)。


No.957 5点 私刑
パトリシア・コーンウェル
(2016/08/17 13:25登録)
裏表紙より~『凍てつくような冬のニューヨーク。ひらひらと雪の舞うセントラルパークで名もなき女が無惨な死体で発見される。恐怖の殺人鬼ゴールトが遂にその姿を現わす。スカーペッタ、マリーノ警部、ベントン捜査官の必死の追跡が続く。やがて明らかにされるゴールトのおぞましい過去。検屍官シリーズ、戦慄のクライマックス!』~

シリーズ6作目。シリーズものの宿命か?、人物関係の説明が簡単にかたずけられてしまうので、最初から読んでいないと各人物(特にケイの姪・ルーシーやその友人であったキャリー~第5作を読まないと不明)に感情移入できないというのがやや欠点。特に犯人は、第4作「真犯人」から登場しているのですが、どういう人物像かが良く伝わってこない。これは主人公ケイの一人称で語られるため、犯人側の心情が全く不明(語られない)。子供の頃の行動(特に本作の重要部分に繋がる)や、ケイを守る?ような行動、最終的な目的など、どのような心境だったのか?モヤモヤ感が残る結果です。


No.956 4点 理想的な容疑者
カトリーヌ・アルレー
(2016/08/14 16:57登録)
内容紹介より~『深夜、口論の果てにドライブ中の車から妻を降ろし、置き去りにしたミシェル。翌朝、殺害され、車で轢かれ顔の判別もできない女性の変死体が路上で発見された。ミシェルの車には傷があり、状況は彼を理想的な容疑者にしたて上げていた。身に覚えのない彼なのに、実の兄さえ彼を殺人犯だと思いこんでいる! 信じてもらえなかった男のたどった道は? 仏冒険小説大賞受賞の傑作。』~

サスペンスものとしては微妙。夫婦のあり方や特に女性の生き方(心情)を描いた作品かも。フランス・ミステリーと言えば、それらしい雰囲気やラストではありますが・・・。


No.955 8点 異常者
笹沢左保
(2016/08/11 09:43登録)
新進弁護士・波多野の妹が『残虐魔』の第五の犠牲者になってしまう。それは妻が何者かに暴行され、自殺した日と同じ日であった。偶然なのか?波多野は大学同期の山城警部補の協力のもと調査に乗り出す。

「悪魔の寵児」(横溝正史氏)のオマージュ作品のような気がします。「悪魔・・・」で物足りなかった点(傑作になり得た部分?)が十分描かれ大満足です。プロットはよく練られており、シリーズもの2作品を読んだ気にさせられました(笑)。木枯し紋次郎のイメージが強く、著者の作品はまだ3冊です。かなり推理小説の特殊性にこだわりを持っていたとのことで、これから読み込んでいこうと思っています。


No.954 6点 悪魔の寵児
横溝正史
(2016/08/10 08:17登録)
金田一登場するも活躍(推理)はなく、通俗的なエログロ色の濃いサスペンス小説といったところでしょうか。本トリックは先駆的(今のところ)であり、その後、結構有名作品でも取り上げられていますね。そのオリジナリティについては、高く評価したいと思います。本格ものではないので、もっと登場人物を絞った方がスッキリした作品になったような気がしますし、探偵役の記者の感情の描き方によっては、傑作になり得たような・・・。


No.953 4点 悪魔の降誕祭
横溝正史
(2016/08/10 08:15登録)
表題作のみの評価。金田一への相談者が誰もいない事務所で毒殺される。うーん、これはどうでしょう?偶然であり、ご都合主義では?。なお、残された新聞の切り抜きの謎はいいと思います。続くクリスマスパーティでの殺人事件の方法は、絶対?わからないでしょう(苦笑)。ラストは有名作品を連想してしまうし、トリックもオリジナリティがあるとは言えず残念です。


No.952 3点 貸しボート十三号
横溝正史
(2016/08/10 08:12登録)
表題作(原形である短篇)のみの評価。不自然な2遺体の謎が提示され、調査の結果、ある証言を得たところで「賢明な読者なら、おおよその真相はおわかりだろう」と解決篇へ。短かすぎやしないか?と思いましたが、その後大幅改稿されたようです。超短編のため期待した金田一の活躍はありません。なお、本作品のモチーフ先例(1931年)があり評価はあえて低目としました。


No.951 6点 学寮祭の夜
ドロシー・L・セイヤーズ
(2016/08/02 13:32登録)
(英ベスト4位・米ベスト18位)裏表紙より~『探偵作家ハリエットは醜聞の年月を経て、母校オクスフォードの学寮祭に出席した。するとその夜、けがらわしい落書きを中庭で拾い、翌日には嫌がらせの紙片を学衣の袖に見つける。幻滅の一幕。だが数ヶ月後恩師から、匿名の手紙と悪戯が学内に横行していると訴える便りが…。学問の街を騒がせる悪意の主は誰か。ピーター卿の推理は?』~

ミステリーよりも文学的要素の強い作品でした。自立する女性論的なもの、結婚観に関するもの(「毒を食らわば」以来のピーター卿とハリエットの関係)、私小説的な内容のもの(探偵小説論や学術研究など)が、事件と絡まって描かれています。よってミステリー(事件らしい事件)を期待すると、正直どうでしょうか?といったところです。
たまたま、「ゴルフ場殺人事件」(アガサ・クリスティー氏)でのヘイスティングスの恋を読んだ後なので、両著者の恋愛観の相違がよくわかりました。クリスティー氏は激情型(一目ぼれ型)、セイヤーズ氏は慎重型か?。
解説によれば、「(要約)ハリエットという自尊心を備えた一人の女性と結婚させるためには、ピーター卿もそれなりの性格を持たねばならず、その性格造形に時間を要したということのようだ。たかが探偵小説の登場人物を描くのに、何を大袈裟な、と考える人には本作は無縁な作品であろう。」そうかもね(苦笑)。


No.950 6点 ゴルフ場殺人事件
アガサ・クリスティー
(2016/07/31 07:09登録)
この時代(1923年)で、このような複雑なプロットを考えたついたことに敬服。しかし、前半に提示される謎が小さく細かいもので、かつ数が多いので、やや読みにくい?。これは、ポアロの着眼点を引き立たせるものではあるのですが、カットしても良かったかも。また、基本構想(メイントリックとなりうる)がうまく機能しなかった感じがしました。つまり、その部分がなくても物語は成立してしまっている。この部分が機能していれば、かなりの傑作になっていたかも?。なお、「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)の中で、作中のトリックが、発表より約10年後にアメリカの超有名古典作品へ・・・とあり、X、Yに応用されているのか?と期待したのですが、該当するトリックはありませんでした。本作におけるチョットしたトリックであり、「三つの棺」に応用されているのですが、騒ぐほどのものではありませんでした(苦笑)。


No.949 5点 猟人日記
戸川昌子
(2016/07/28 21:45登録)
時代(1963年)を考慮しても、ミステリー(サスペンス)としては弱い感じがします。まず、目次を見て結末がおおよそ判ってしまうのは、いかがなものか?。トリックも、大御所の作品(1958年・未読)にあるらしいので、先駆的とも言えず・・・。ドンファンが追いつめられていく心理をもう少し描いてくれたらなあと思いました。


No.948 5点 死仮面
折原一
(2016/07/27 10:29登録)
裏表紙より~『「君と一緒にいて幸せだったよ」と言い遺して急死した十津根麻里夫。彼が勤めてた高校に「妻」の雅代が連絡すると、「そのような名前の教師はおりません」と言われる。「夫」は名前も身元も偽っていたのだ。正体は何者なのか?それを解く手がかりは、大学ノートに残された小説のみ。失踪した中学生の少年を救うために、同級生四人組が、マリオネットの仮面の男に立ち向かう物語だった――。』~


構成面では「匣の中の失楽」(竹本健治氏)、夢か現実か?的な部分では「ドグラ・マグラ」(夢野久作氏)を意識したのかも?。内容は全く違いますが、「ぶーん、ぶーん、ちゃかぽこ、ちゃかぽこ」などの表現も出てきましたし・・・(苦笑)。読書Mでは、結末がスッキリしない、モヤモヤ感が残るとの評が多いですね。しかし、ある登場人物の後日談が語られない点を考えれば、この物語の全体像が浮かび上がってくると思います。


No.947 5点 猫と鼠の殺人
ジョン・ディクスン・カー
(2016/07/25 15:37登録)
裏表紙より~『猫が鼠をなぶるように、冷酷に人を裁くことで知られた高等法院の判事の別荘で判事の娘の婚約者が殺された。現場にいたのは判事ただ一人。法の鬼ともいうべき判事自身にふりかかった殺人容疑。判事は黒なのか白なのか? そこへ登場したのが犯罪捜査の天才といわれる友人のフェル博士。意外な真犯人と、驚くべき真相を描くカーの会心作』~

脱力系でした。ラストでのフェル博士の行動の意味が全く理解できませんでした。銃撃については、相当の出血があると思われますが、血痕につき一部記載あるのみで、現場状況から見てかなり不自然です。登場人物がこの点に触れないのは???。また娘の不可解な証言(庇うなら黙っていた方がよい)も納得いかなかったです。まあ、展開は楽しめましたし、ロマンスもあったので甘目の採点となりました。


No.946 6点 ハンマーを持つ人狼
ホイット・マスタスン
(2016/07/24 14:06登録)
裏表紙より~『ハンマーを手に女性を襲う兇悪な通り魔を追及する警察は、ついにおとりとして婦人警官を起用することになった。しかし、その警官は警戒の裏をかいた犯人に襲われ、夫とともに殺害されてしまう。同僚の死にふるい立つ婦人警官たちの必死の捜査もむなしく、事件は暗礁にのりあげたかに見えたが・・・。警察小説の名手が婦人警官を主人公に新風を吹きこんだ、緊迫感あふれるサスペンス!』~

逢坂剛氏推薦の一冊。題名からするとサイコ系を想像しますが、丁寧な語り口の警察小説です。犯人の策略に翻弄される警察官コンビのロマンスも邪魔にならず心地よい。


No.945 6点 鬼畜の家
深木章子
(2016/07/22 19:03登録)
読み易いし、内容も面白い。しかし、若干白けてしまう部分もあった。年齢的なもの(早熟)と探偵が出来過ぎか?。


No.944 9点 そして誰もいなくなった(戯曲版)
アガサ・クリスティー
(2016/07/19 17:05登録)
「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)で、結末が原作と違う「戯曲版」があることを知り、手に取りました。180ページと短いのですが十分楽しめました。ラストも納得です。原作を読んで、劇場に足を運んでくれる人のためにラストを変更したみたいですね。解説によると、原作の方の童謡のラストをクリスティー氏が変更したとのことです。


No.943 6点 メビウスの守護者
川瀬七緒
(2016/07/17 17:11登録)
虫暮部さんへ~大変失礼しました。掲示板(雑談・足跡)に記載しました。
内容紹介より~『東京都西多摩で、男性のバラバラ死体が発見される。岩楯警部補は、山岳救助隊員の牛久とペアを組み捜査に加わった。捜査会議で、司法解剖医が出した死亡推定月日に、法医昆虫学者の赤堀が異を唱えるが否定される。他方、岩楯と牛久は仙谷村での聞き込みを始め、村で孤立する二つの世帯があることがわかる。息子に犯罪歴があるという中丸家と、父子家庭の一之瀬家だ。──死後経過の謎と、村の怪しい住人たち。残りの遺体はどこに!』~
主人公の法医昆虫学者と司法解剖医が出した死亡推定月日の差異については、前半での山場とは認めつつも、ページを割き過ぎた感があります。全体的に本格っぽい展開ですが、理詰めでの解決ではありません。といってサスペンスフルな展開か?と問われるとそうでもない・・・。評価が難しいですね。気に入った点は、かなりブラックな「動機」に関してでした。
☆★☆★☆お願い事です☆★☆★☆
本サイトの『はじめに』に記載されている*ルール*(管理人さんの意向~皆さんが楽しく過ごせるよう~)を守って書評されますようお願いします。(掲示板に記載すべき事項ですが、あえてこの欄を利用させていただきました。よろしくお願いします。) 


No.942 7点 さらばその歩むところに心せよ
エド・レイシイ
(2016/07/16 14:04登録)
逢坂剛氏推薦の一冊。倒叙ものなので、犯人はうまく逃げ切るのか?それとも逮捕?または悲劇的な最期を迎えるのか?などというイメージで読み進めたのですが、いい意味でその期待は裏切られました。途中での違和感は、やはり伏線だったのですね(笑)。


No.941 5点 アクロイドを殺したのはだれか
評論・エッセイ
(2016/07/11 13:26登録)
「BOOK」データベースより~『アカザ・クリスティーの代表作として、またミステリー史上最大の問題作として知られる『アクロイド殺害事件』の犯人はその人物ではない―文学理論と精神分析の専門家バイヤール教授が事件の真相に挑戦、名探偵ポワロの「妄想」を暴き出し、驚くべき(しかし十分に合理的な)真犯人を明らかにする。「読む」ことの核心に迫る文学エセーとしても貴重なメタ・ミステリー。』~

真犯人はなるほどと思える人物ですね。内容的には、その他の作品のネタバレが随所にあり、読者を選ぶ評論です。特に「カーテン」の章があり、私は未読なのでこの部分は飛ばさざるを得なかった(苦笑)。フロイトなどのやや小難しい理論を展開する部分もあり、十分理解したとは言えなかった。

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