赤い橋の殺人 |
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作家 | シャルル・バルバラ |
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出版日 | 2014年05月 |
平均点 | 5.67点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2022/10/27 14:13登録) タイトルに「殺人」とついていて、光文社古典新訳文庫から出ている....え、こんな作品、聞いたことない! ってのが、やはりミステリマニアの普通の反応だと思う。 本屋で見かけてずっと気になっていた作品をやっと、読んだ。 「フランス版罪と罰」ってオビは煽り過ぎ。方向性は「罪と罰」とは真逆の作品だと思うよ。それよりもボードレールの「悪魔主義」との親近性が印象に残る。 というか、ドストエフスキーの場合には、進歩思想をいったん受け入れたうえでの幻滅から、ロシアの大地とやらにひれ伏すことになる(今生きてたらプーチン支持してると思う....)ポピュリズムめいたものを結論にしたがるところがあるのだが、本書のラスコーリニコフ、クレマンは生きながら地獄に落ちつつも、地獄の中で「善行をなしながら生きた」という、極めて矛盾した生を生きる。 いや実際、ラスコーリニコフは言うほど犠牲者を悼んでなくて「自分がナポレオンではありえない」凡人性に打ちのめされるわけだけど、クレマンは「悪の象徴を背負いながら、それでも善をなす」という、矛盾の生を生きる甚だロマン的な生き方なんだよ。評者、ちょっとヤラれる。「さまよえるオランダ人」みたいなものなんだ。 リアリスティックに悪と犯罪を描きながらも、それが最後でつっと「聖」の方向にズレていくあたりが、極めて印象的。キリスト教道徳を誰も信じなくなっても、それでも「奇蹟」が起きていたりするゲーテの「親和力」に近い、矛盾の只中での「罪と罰」を描いた作品だと思うんだ。 読みようによっては、「罪と罰」にも勝る「モデルネ」な部分が出てくる作品だと思うよ。 |
No.2 | 5点 | 臣 | |
(2017/02/28 09:55登録) ぐいぐいと読ませるところはある。でも、全体構成とかプロットとかについては、テーマが同じである後発の『罪と罰』のほうがはるかに上。 なんといっても、あっちはエンターテイメントというジャンルに恥じない上等クラスの出来だけど、本書はそこまでには到達していない。 構成とか、いろんな面でかなりエンタメ小説として損をしている感じがする。ちょっと惜しいなぁ。 楽しめる面ももちろんある。あることをきっかけとした主人公の変化と、それに続く告白の章や、彼の後半の人生が語られる章は、まちがいなく読者を惹きつけるだろう。 とにかく、100年以上もの間、埋もれていたフランス作家、バルバラ(1817-66)の作品を、今こうして読めることは本当にすばらしい。 フランス版の『罪と罰』という帯の惹句が、ずっと気になっていた。 光文社古典新訳文庫って高いから買うのを躊躇していて、そのうちに忘れてしまっていた。先日、図書館でたまたま見つけ、即借りた。 そして1週間ほど積読していたら、なんと、蟷螂の斧さんが書評をアップされた。タイミングがピタリ。これにはびっくりした。 |
No.1 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2017/02/19 17:27登録) 裏表紙より~『19世紀中葉のパリ。急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物となったクレマン。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた。だが、ある過去の殺人事件の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始める。』~ 1855年の作品で、「罪と罰」(1866)への影響があった作品かも?ということで拝読。共通点は主人公の思想が似ていること、貧しさからの殺人があること、そして苦悩といったところです。まあ比べてもあまり意味はない?。200Pの中編ですが主人公の幻想や苦悩は結構濃いめに描かれていました。本作や、初のミステリー長篇といわれる「ルルージュ事件」(1866)がフランス生まれであることが興味深かった。 |