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ミステリの祭典

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私家版

作家 ジャン・ジャック・フィシュテル
出版日1995年09月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 5点 E-BANKER
(2017/03/12 13:49登録)
フランスミステリー。
原題は“Tire A Part”で、直訳すると「別刷り」という意。書籍を印刷する場合に所定の刷り部数とは別に、例えば特装本などのために別刷りをすることをいう・・・とのこと。
1993年の発表。

~友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一線作家に押し上げることを、私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる犯罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ・・・~

『本が凶器となる犯罪』なんて書かれると、非常に独創的で新しいトリック&プロット、などとついつい考えてしまう。
ただ、正直なところ、別にトリッキーな解法が用意されているわけではない。
フランスミステリーらしい、緻密な心理描写と重苦しいくらいの展開。
本筋は、主人公エドワードの復讐譚であり、敢えて本作を分類するなら「倒叙/クライム」ということになるのだろう。

物語は冒頭より、エドワードとニコラ、友人どうしの出会いから、深まっていく関係、そしてエドワードの心に復讐心が芽生えていく過程が、まるで地中海のように静かに語られていく。
そして、後半以降、エドワードの仕掛けた「罠」が徐々にふたりの運命を変えていくさまが描かれ、終盤の山場へ・・・
実に美しい作品だ!

作者のジャン・ジャック・フィシュテルは、スイス・ローザンヌ大学の歴史学教授という肩書きを持つ。
何と、本作が始めて書いた小説というのだから驚きだ。
ミステリーらしい狙いを最初から意識していたのかは分からないが、人間心理の「アヤ」をここまで美しく、痛く表現することができるなんて、やっぱり才能のなせる技。
ミステリーの側面だけなら高評価は難しいが、小説としての出来はかなり高いと言えるだろう。
ラストは因果応報的なオチが用意されているのかと思いきや、意外とハッピーエンドで終わるのが意外といえば意外。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2017/01/05 10:56登録)
裏表紙より~『友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一級作家に押し上げることを私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる犯罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ…。』~

前半はミステリー的な要素はほとんどありません。「あらすじ」を読んでいなければ普通の小説のようです。後半になって、倒叙ものとしてミステリーらしくなります。本作については、アイデアが秀逸であると思い高評価としました。実際にあった事件にヒントを得たようですが、その事件から逆転の発想へとつなげるところが優れていると思います。

No.1 7点 tider-tiger
(2014/06/20 18:43登録)
帯には「本が人を殺す……」とあります。これはどういうことなのか。ここが読者の興味をもっとも引く部分でしょう。いかにもフランスの作家らしく、事件が起こるまで時間がかかります。被害者と犯人についてきっちりと書いてから事件を起こすのです。
ハウダニットに関してはユニークではありますが、確実性に欠ける点や科学調査ですぐにばれるのではないかという懸念ありますが、犯人の執念というか、涙ぐましい努力含めてなかなか面白いと思いました。
犯行の動機が二つあるように思えて、どちらが主な動機なのかが判然としない点が気になりました。二つの動機が互いを食い合ってしまっているような気がします。

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