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ミステリの祭典

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ポアロのクリスマス
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1957年01月
平均点6.50点
書評数22人

No.22 3点 虫暮部
(2021/06/12 12:43登録)
 何か変だ。
 犯人は捜査の落としどころとしてどのようなものを期待していたのか(この犯人ならきっとそういう発想をした筈)。自殺・事故は端から無理。特定の誰かに濡れ衣を着せようとしたフシも無い。迷宮入り狙い? 窓に施錠して外部犯を否定したのは失敗では。

 もう一つ。トリックに使ったゴムは現場に残る。それは犯人には予め判ることだよね。上手く隠滅出来たのは単なる幸運だよね。発見されたらそれだけでトリックがバレかねない。ではそのリスクを押してでもゴムの使用が必須かと言うと、そんなことはない。家具がひっくり返る音だけで充分に人は集まる、多分(リハーサル出来ないのが難点か)。余計なことをして、しかもそれがきっかけで破綻していることになる。

 作者のミスだ、と言うか、避けられた筈のミスを犯人特定の為にわざと犯させている?

No.21 8点 レッドキング
(2019/09/15 18:36登録)
「最近のあたしが取り澄ましたお上品なミステリしか書かないと思ったら大間違いよ。えげつない血生臭いのも書けるのよ・・」ってな自慢気な前書きだが、本当は「あたしだってジョンのような『密室もの』くらい書こうと思えばいくらでもこしらえられるのよ・・」を示した傑作。十八番の「人間関係トリック」をダミーに使い捨てるところがGood。

No.20 7点 ボナンザ
(2019/07/27 20:37登録)
犯人の意外性とカーばりのバカミストリックが味わえる異色の一作。まあ、犯人の背景はクリスティ作品では使い古されているが・・・。

No.19 7点 通りすがりのもの
(2017/03/26 11:29登録)
随分前に読んだ作品だが、クリスティ再読さんの疑問について、一言。
>そもそものどを切り裂かれて悲鳴が上がるものだろうか??
悲鳴を上げたのは、のどを切り裂かれる前だと考えれば矛盾はないはず。

この作品で一番印象に残っているのは、ここで使われているトリックがそもそも成立するだろうか、アレとアレを間違えたりするだろうかと疑問に感じたこと。また、その間違いを期待した犯人の計画自体が、ありえないだろうということ。
トリックを見破ったと書いている人がいるが、アレとアレを間違えると本当に思っているのだろうか。
騙しのテクニック、伏線の散りばめ方など、クリスティーらしい技巧が施されていて、決して悪い作品ではないと思う。

No.18 6点 蟷螂の斧
(2017/02/04 18:06登録)
裏表紙より~『聖夜に惨劇は起きた!一族が再会した富豪の屋敷で、偏屈な老当主リーの血みどろの死体が発見される。部屋のドアは中から施錠され、窓も閉ざされているのに、犯人はどうやって侵入したのか?休暇返上で捜査にあたるポアロは被害者の性格に事件の鍵が隠されていると考えるが…』~

著者にとっては珍しい密室物!。メインはやはり例のごとく意外な犯人像ですかね。結構楽しめたのですが、今一歩高評価にできなかった点は、ポアロの心理的何とか。これは駄目とは言いませんが、まったく面白くない(笑)。あと、怪しそうで怪しくないとか、怪しそうではないがなんとなく気になるとか、著者の作品では必ず感じることができるのですが、本作にはそれがなかった。読者はあるイメージを植え付けられるのですが、それがミスディレクションとして機能しなかった。悪く言えば嘘をつかれた感じ。伏線はたくさんあるのですが、前記と反作用を起こしてしまい驚きに繋がらなかったということです。残念。

No.17 6点 nukkam
(2016/08/14 01:39登録)
(ネタバレなしです) 1938年発表のポアロシリーズ第17作となる本格派推理小説です。献呈序文で作者は作品が洗練されすぎているという批判に応えて血まみれの凶暴な事件を扱いたかったと述べています。なるほど血まみれの死体を用意しているし、クリスマスなのに少年少女は登場せず祝祭的な場面も全くありません。どちらかといえば暗い雰囲気です。でもこの作者ならではの優雅さや洗練さもちゃんと残っていて過度に重苦しくはなっておらずバランスの取れた物語だと思います。使われているトリックがちょっとひどいと思いますが(そんな小道具で騙せるのか?)、登場人物の心理描写に優れていて読み応えは十分以上のものがあります。

No.16 7点 makomako
(2016/07/31 07:36登録)
 この作品で犯人をあらかじめ指摘するのはすごく難しいでしょう。後から考えるとちゃんと伏線も張ってあるのですが、若干後出しじゃんけん風でもあります。
 もちろん私にも犯人は全然当てられませんでした。ポアロの推理にびっくり仰天。まあクリスティーの作品で犯人がわかったことなんかないけどね。
 本格推理小説としてはとてもよくできたものと思います。
 殺された人物はとても嫌なやつで、その子供たちも個性的であまり感じがよくないと思われる人が多い。こういったシチュエーションでのお話は、一般にいやな感じと展開となり嫌味な小説となりがちであろうかと思うのですが、そこはクリスティーで、全然嫌な感じはなくするりとお話に入っていけます。
 遅まきながらこのところクリスティを読み始めています。だんだん古き良きイギリスになじんできました。まだまだ彼女の作品で未読のものがあるのが楽しみです。

No.15 6点 sophia
(2016/05/13 01:31登録)
この作品の犯人は絶対に忘れられないが、犯人以外何も思い出せない。

No.14 7点 青い車
(2016/02/15 23:04登録)
トリックが前面に押し出されたクリスティーにしては珍しいタイプの作品。あまり話題には上らないものの、実は他のどれよりも犯人が意外な異色作でもあります。「もっと凶暴な殺人を」というリクエストから生まれたそうですが、私はこんなのも書けるんですよ、という作者の表明を見せられた気がします。

No.13 7点 ミステリーオタク
(2015/12/23 11:42登録)
クリスティらしくてなかなかよかった  
「血」の濃厚なドロドロ性、ポアロの人間観察の慧眼、意外な犯人


皆さんに素敵なクリスマスが訪れますように

No.12 8点 ロマン
(2015/10/20 15:47登録)
クリスマスの華やかさと殺人の血の滴りのアンバランスが効いた良質の本格ミステリー。偏屈な当主を始め一族の人物描写が鮮やかで、不穏な空気をかもし惨劇を予想させる。このハレの雰囲気こそが読者の目をミスリードする著者最大のトリック。盲点を突くフーダニットと、何気ないダブルミーニングの言葉の巧さに舌を巻く。血みどろの密室殺人や謎の盗難事件というお約束をあえて踏襲しつつ、そこに“Why”の引っ掛かりをつけ状況を逆に見る推理に繋げる捻りといい、よく考えられている。

No.11 4点 クリスティ再読
(2015/08/02 00:28登録)
いろいろと至らないところの多い失敗作だと思う。
1. さすがにメイントリックは発表当時でも法医学的にギリギリくらいじゃないだろうか(時間がたっても...)。ましてや今の読者だと「何でそんなのわかんないの?」になると思う。
2. 犯人指名(というか他の容疑者の排除)が「心理学的探偵法」。けどこれ思い込みとか偏見の部類じゃないの?と言われたらそれまでだと思う。「心理的」とか付いてるとありがたがるのはもう止めにしたいね。
3. あとこれは評者が気がついたことだが、そもそものどを切り裂かれて悲鳴が上がるものだろうか??
4. クリスマスストーリーとしては、悔い改める息子たちが揃いも揃って小市民的なセコい奴らで、悔い改めてもカタルシスがない....だから「古きよきイングランドのクリスマス」のお国自慢小説みたいなものにしかなってない。

というわけで、実はこれクリスティ本人も心残りが多かったのではなかろうか。ほぼこの作品の人間関係をそのままに採用して、「ねじれた家」が書かれているように思う。そう思うと結構共通点も多い...
で「ねじれた家」は上記の反省が結構入っていて、ほぼ狂人に近いシメオン老人に代えて強い個性で子供たちを抑圧するけども、それでも邪悪ではなく魅力もあるアリスタイド老だし、ひねくれる子供たちも類型的な本作よりずっと陰翳が深い。「ねじれた家」は「その後」の家族の再構築に向けてを強く意識しているあたり、クリスティの作家的(というよりも人間的な)進歩が見えるように思う。

一部でバカミス的な扱いを受けていたりとか、意外な犯人の話だけが話題になりがちな作品だけど、そういう読み方って評者はかなり?である。単なる失敗作で、より改善された作品があるんだから、そっちをちゃんと取り上げるべきだと思う。

No.10 9点 Toraneko
(2015/04/19 20:36登録)
騙されるのが好きな身としては、犯人の意外性が素晴らしいの一言。全てがわかった瞬間に、今まで張り巡らされていた伏線に気づき「やられたー!」となる非常に綺麗な作品だと思います。

クリスマス感がないとかは読んだのが夏だったせいか全く気にならなかった()

No.9 7点 あびびび
(2011/07/08 18:32登録)
ポアロの口ひげが得意げにぴくぴくしていそうなラスト。いかにもミステリの王道であり、犯人のトリックもそれにふさわしい。

大傑作ではないにしても、こんな流れを嫌う人はあまりいないのではないか。

No.8 5点 ミステリー三昧
(2011/03/29 13:59登録)
<ハヤカワ文庫>ポアロシリーズの17作目(長編)です。
ハヤカワクリスティ文庫って、行間が適度にあって堅苦しくなくて実際に読みやすいんですけど、物語を軽く感じさせる何かがあるような気がします。読んだ達成感が涌かないのはなんでだろう。私的には、行間がきつきつに詰まっている創元推理文庫の方が好みですね。ある程度の集中力も要するので気を引き締めて読んでるせいか、物語に厚みを感じさせる。
クリスティのミステリってそもそも入門書みたいで軽さを感じるのですが、本の構成も軽さを助長させている気がしてきました。また、解説もそこまで充実していないと思う。本作は題名に「クリスマス」と付いていますが、物語にそれほどクリスマス感は出ていません。なのに解説ではクリスマス的趣向が素晴らしいと絶賛しているが、とても納得できない。
犯人の意外性と言う点では、成功している本作ですが、推理に全く説得力がないです。心理学的見地から家族を研究し、誰が犯人に相応しいかという推理の部分なんですけど、根拠が無さ過ぎて呆れてしまった。ミステリの解決編で「人間の性格」を重要視するのは、やめてほしい。

No.7 7点 seiryuu
(2010/12/30 17:57登録)
トリックやストーリーがよくできていて
遊び心も感じる作品でした。
ラストはあっと驚きました。
その後、伏線探しに再読しました。
”たくさんの血”ね ふふふ。

No.6 7点 りゅう
(2010/12/25 08:44登録)
 いかにもクリスティーらしい作品だと思いました。
 真相は、全く私の思考の枠外でした。クリスティーの作品なんだから、この可能性は考慮すべきだったなあと後で思いました。真相がわかってみると、ヒントとなる伏線があちこちにちりばめられていることがわかります。しかし、あの物的証拠からあのトリックはなかなか思いつかないですね。殺人事件は1件のみであり(殺人未遂が1件ありますが)、関係者のアリバイ捜査に終始するプロットは地味で、このあたりがクリスティー作品の中ではさほど人気のない原因なのでしょう。

No.5 6点 清涼水
(2010/12/24 23:35登録)
単にクリスマスシーズンに起きた殺人というだけでクリスマスにふさわしいミステリーではないが血(血筋のことね)のドロドロ感などは読みごたえがある。ポアロがある人との面談の後「幽霊でも見たかのような顔つきだった」などはクリスティーらしい書き方だ。
余談:1年か2年くらいまえにケーブルテレビのAXNミステリで「ナントカ家のナントカ」という題でやってたので事前から楽しみにして見たが、一回2時間くらいで週一で4回連続のドラマになっていてさすがに引き伸ばしすぎにうんざりした。一緒に見ていた嫁も意外な真犯人がわかる場面でも眠そうだった。

No.4 5点 mini
(2010/12/23 10:07登録)
* 季節だからね(^_^;) *

クリスティーと言うとクリスマスにちなんだ作品は多そうだが、単独の短編は除くと案外と題名にも付くのがこれと短編集『クリスマス・プディングの冒険』位なんだよな
それにしてもだ、クリスティーは読者の視点を逸らすのが上手い作家だが、謎解き部分以外の面でも読者を煙に巻くんだな
長編では珍しく題名にクリスマスの文字を入れながら、内容的に全然クリスマスらしくなくて、クリスマス・ストーリーの定番である子供も殆ど出てこないし、超自然的な雰囲気を醸し出さず血生臭い事件にしている
さてはわざと狙ったなクリスティー
狙ったと言えば、これどう見てもある仕掛けを前提に書かれていて、ミステリー作家ならば1度は使ってみたい設定だが、例えばクイーンにも作例がある
しかしクイーンはこれをそのまま使うのが気が引けたと見えて少々アレンジして使っているのに対して、クリスティーの方が発表年的には後発なのに真っ向勝負で使っている
それでも読者を騙せるのがクリスティーなんだろうけど、ただここまで直球勝負だと慣れた読者を騙すのは難しいかも
私もこれ読んだ時点ではある程度クリスティーは読んでいたので、いつもらしからぬポアロの登場のさせ方が不自然に思えて、あぁこれ狙っているなと早い段階で察しがついてしまった
あと作者には珍しく密室トリックも使っているが、密室の基本的解法は状況からこれしかないだろ、と割と簡単に見破ってしまった
ただ空さんが御指摘の後始末処理の上手さには同感
それだけクリスティーがフェアに書いているという事だろうけど、クイーンの方がすれからしな読者を想定しているということなんだろうか
ポアロの推理は心理的だけど、私は”人間の性格”による推断だから駄目という風には思わない、心理は駄目で物的証拠に基づく推理だからミステリーとして価値があると決め付けるのは止めにしたいね
そもそも心理的解法にならざるを得なかったのは、この作品が仕掛け優先で書かれているからだと思う、書評で意外性ばかりが採り上げられがちなのも当然でしょう

No.3 7点 E-BANKER
(2010/11/03 23:07登録)
ポワロ物の佳作。
時期的にはちょっと早いですが、中味もあまりクリスマスを意識した内容ではありません。
本作、「館」に集まった大家族や怪しげな使用人、ゲストも登場という具合にいわゆる「コード型ミステリー」の要素満載ですが、そこは”いかにもクリスティー!”というストーリー&プロットを十分に感じさせてくれます。
正直、前半~中盤まではやや平板で盛り上がりに欠けるような気がしたところへ、ラストで意外な真犯人が指摘されます。
既視感のある「意外さ」なのは確かですが、見せ方がうまいですね。簡単に騙されてしまいました。
「外から施錠された密室(?)」というのも理由付けを含めてなかなか面白いと思います。

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