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ミステリの祭典

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安達ヶ原の鬼密室

作家 歌野晶午
出版日2000年01月
平均点6.75点
書評数24人

No.24 7点 パメル
(2023/10/05 06:47登録)
「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」いきなり可愛らしいイラスト付きの子供向けと思われる物語が始まる。(全てひらがなとカタカナで)二人の子供は井戸に大事なオモチャを落としてしまう。
「The Ripper with Edouard -メキシコ湾岸の切り裂き魔」メキシコに留学中のナオミが、歓迎パーティで酒を飲み記憶を飛ばした最中、死体の発見者になる。この事件に深入りしていくが。
「安達ケ原の鬼密室」8月15日の敗戦を先に控えた8月のある日、疎開先から少年が脱走し、何日か歩いた末に疲れ果て倒れたところを屋敷で保護され看護を受ける。そして次々と起こる惨劇に巻き込まれる。途中で現代に移り、そこでも事件が起きる。
表題作の後に他の二つの解決編が収録されているという変わった構成。
以上の四つの事件が絡んでくるが、トリックは共通していて、ある力を利用しているところにある。その力のトリックに既視感はあるが、あるものを使い時限装置に仕立て上げ、工夫している点は評価していいのではないか。また、屋敷の構造を鮮やかに説明するトリックや、叙述トリックも見事にはまったりもしている。メイントリックの●●の痕跡は絶対に残るはずなので、多少腑に落ちなく気になったところだが、屋敷を作った理由自体は納得できるものだった。

No.23 7点 メルカトル
(2022/04/10 22:35登録)
太平洋戦争中、疎開先で家出した梶原兵吾少年は疲れ果て倒れたところをある屋敷に運び込まれる。その夜、少年は窓から忍び入る“鬼”に遭遇してしまう。翌日から、虎の像の口にくわえられた死体をはじめ、屋敷内には七人もの死体が残された。五十年の時を経て、「直観」探偵・八神一彦が真相を解明する。
『BOOK』データベースより。

これはなかなかの力作ではないでしょうか。どうせならナノレンジャーやメキシコ湾の話を思い切って取っ払って、本編だけをもう少し膨らませて一冊にしたほうが良かった気もします。全体の構成がやや歪になっている感じがして仕方ありません。それらが伏線となっているのは間違いないですけどね。予備知識なしで読んだ私は、最初何だこりゃ?と思いましたよ。随分タイトルからかけ離れているじゃないかって。

さて、肝心の密室トリックですが、前例がありそれをアレンジしているだけなので、真相が明らかになってもそれほどの驚きはありませんでした。ただ、不可解な怪奇現象の連続を少年の目から見た事実として語られる事件の内容は、一見あり得ない事の様に上手く描かれていると思います。しかし、この件の第一幕から何となくバタバタしている印象なので、もっとじっくり腰を据えて、更に奇怪な雰囲気で盛り上げてもらえたら評価はもっと高くなったと思いますね。

No.22 7点 ミステリ初心者
(2021/12/27 19:21登録)
ネタバレをしています。

 歌野さんの作品は、一貫して文章が読みやすいです。この本も、読了までにさほど時間がかかりませんでした。
 1つの長編の扱いかと思いますが、4つの事件(物語)に共通のトリック?が用いられており、1つ解けると大体が芋づる式に解けてゆきます(笑)。連作短編(中編)の趣がありました。

 推理小説的要素について。

 絵本風のナノレンジャーの話から始まります。この話は、最後の最後で種明かしされますが、それまでに3つの事件が解決さえれたあとなので、ナノレンジャー自体は伏線として使われている気がします。
 ところで、髭のおにいさんは、どうやって井戸から水を出すのでしょうかね? サイフォンの原理?は、たしかより低い位置にしか水を運べませんよね? ポンプなどを使うのでしょうかね。

 次に、メキシコ海岸の切り裂き魔の事件が始まります。タイトルとあまりにかけ離れた場面設定に面食らいました(笑)。
 これも最後らへんに解決編があります。実は、まったくわかりませんでした(笑)。アメリカのハリケーンは、それほどまでに強力なのですね。
 アメリカでは台風に人名をつけることを利用した叙述トリックが使われております。面白い試みですが、この話全体的には、ちょっと長すぎた印象があります。

 158ページまでいくと、安達ケ原の鬼密室がはじまります。
 戦中の日本の時代の物語であり、主人公が少年で、奇妙な館の奇妙な老婆がいて、少年が鬼を何度か目撃し、現地の子供は鬼の唄を歌い、老婆が客を殺す伝説?があり、アメリカ兵が迷い込んできたり…。非常にいろいろな妄想を掻き立てられる要素が多く存在し、わくわくしながら読みました。雰囲気が三津田信三さんの刀城言耶シリーズのようで最高でした。
 密室殺人事件が起こった際に、私は中庭がプール化することに気づいたのですが、伏線は多かったため、フェアだからだと思います。河瀬が気づかないのはちょっと疑問ですが、河瀬は鬼や霊魂の存在を強く信じているからですかね。
 ただ、細かい部分では不満があります。事故死が多いんですよね…。個人的には、殺意を持った犯人がトリックを使って殺人するほうが好きです。
 途中、現代の話になり、そこでまた一つ事件が起こります。その解決で全体の"水によって運ばれる"という要素がばらされているので、細かい部分以外では実質の解決編といえるかもしれません。それ以外にはあまり印象に残りませんでした(笑)。

 総じて、なかなか凝っている、良い作品だと思いました。安達ケ原の鬼密室パートが特によかったです。館もの・密室もの・パニックホラーとしても悪くなかったと思いました。
 蛇足ですが、この作品で年間50冊読破達成しました(多分)!! 私は読むのが遅いうえ、筋トレ熱が上がってきているので、過去2年よりきつかったです(笑)。

No.21 8点 虫暮部
(2021/11/18 10:25登録)
 再読なり。ストーリー、何となく覚えていた。トリック、それなりに覚えていた。欠点、はっきり覚えていた!
 と言うわけで「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」「 The Ripper with Edouard 」は飛ばして読んだ。エクセレント! これでいいのだ。個人的にこの密室トリックは五指に入る。

No.20 7点 まさむね
(2020/11/28 11:05登録)
 時期も舞台も異なる4つの事件?を一つの紐で結びつけた作品。見せ方を変えたり、他の要素も組み合わせることで、なるほど、面白く仕上るものですね。ある意味で、贅沢な作品と言えるのかも。(逆の評価もあり得るか。)マトリョーシカ的な構成も良かった。
 ちなみに、本編とも言うべき戦時中の事件については、最も大がかりではあるのだけれども、大人の登場人物にとっては、痕跡から分かる、少なくとも不信感は抱くような気がしますね。何かは残っていたはず。見過ごすかな?

No.19 6点 蟷螂の斧
(2016/11/20 11:11登録)
著者の特徴といえば、バラエティーに富む作品を提供してくれるということでしょうか。本作では、それを一冊の中に閉じ込めたといった印象を受けました。そして、読み終えるとある共通点が”浮かび上がる”といった洒落た作品になっていると思います。表題作は長編で読んでみたい気もしましたが、やはりトリックを隠す点では難しいのかもしれません。如何せん「痕跡」を隠しとおすことには、かなり策を労することになるでしょう。作中作の「密室の行水者」の題名について。著者は小学生の頃読んだロナルド・ノックス氏の「密室の行者」(未読)に衝撃を受けたそうです。そこからのヒントでしょうか?。

No.18 5点 nukkam
(2016/07/05 18:40登録)
(ネタバレなしです) 2000年に発表された本書はタイトルから古風で和風な作品を予想するとこれが見事に裏切られます。まずひらがなのみで書かれた児童小説「ナノレンジャー」が冒頭に置かれ、次にアメリカを舞台にして切り裂き魔事件を描いたサスペンス小説タッチの「The Ripper」が続きます。「鬼密室」編は講談社文庫版で150ページを過ぎてからようやく始まります。シーマスターさんやE-BANKERさんがご講評されている通り、時代も舞台も違う3つの物語(鬼密室に関しては過去と現代の事件があるので2つの物語と考えてもよいかも)から構成された連作形式の本格派推理小説です。島田荘司が好みそうな大トリックが使われているのが印象的です。

No.17 8点 ミステリーオタク
(2015/12/02 22:26登録)
俺的には歌野の最高傑作
表題作はゾクゾク感もよかったし、これだけで長編にしたらシマソウのトップクラスの作品に匹敵したかもだぜ(苦笑)

No.16 4点 いけお
(2012/08/28 01:14登録)
試みはおもしろいが、メイン以外の短編は不要だと思った。
もっとキレのあるトリックであれば、それのみで勝負できたのに、短編の質やトリックの弱さのため変則構成にしたような印象を受ける。

No.15 7点 E-BANKER
(2011/10/10 16:13登録)
1つの長編作品と呼ぶべきか中短編集と呼ぶべきか迷う作品。
タイトル作を2つの小作品が挟み込むようにしていて、なかなか凝った作り。
①「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」=まぁ前菜+デザートという位置付けでしょうか。最初読んだら、「こりゃなんの意味だ?」としか思えないでしょうけど・・・(よかったね、ナノレンジャー拾えて)
②「The Ripper with Edouard」=米国の小都市を舞台とした無差別殺人事件が一応のテーマですが・・・これも「何の関係があるの?」って最初思ってしまう。テーマは、高い木の上に吊り上げられた死体。
ラストにオチが用意されてますが、これ単独では「ふーん」という感想にしかならない。
③「安達ケ原の鬼密室」=表題作であり、あくまでも本作のメインはこれ。
~太平洋戦争中、疎開先で家出した梶原少年は疲れ果て倒れたところをある屋敷に運び込まれる。その夜、少年は窓から忍び入る「鬼」に遭遇してしまう。翌日から、虎の像の口にくわえられた死体をはじめ、屋敷内に7人もの死体が残された。50年の時を経て、"直観”探偵・八神が真相を解明する!~

これは普通の長編に十分できるプロットだと思うけどなぁ・・・
スタイル的には、どこか「占星術殺人事件」を思い起こさせるけど・・・(戦中の荒唐無稽な未解決事件だし)
途中挿入されている「密室の行水者」がモロにヒントになっているので、これを読めば、メインの謎もおのずと分かってしまう仕掛けなんでしょう。
動機やら、アレが「鬼」に見えるか?など、細かい部分はちょっと流しているなぁという印象。
一読者から見たら、「こんな変化球にしなくても・・・」と思ってしまいますが、作者からすると、「二番煎じ」感が気になったのかもしれないですね。
(だから、こんな凝ったスタイルにしたのか?)
トータルでは、なかなか楽しめたし、決して悪くない作品だとは思います。

No.14 10点 yoshi
(2010/07/15 00:27登録)
ネタの使いまわしという批判は当たっていない。一つのネタで幾通りのミステリーが書けるかという実験なのだ。そういう意味ではこの頃から歌野は先鋭的だった!

No.13 6点 kanamori
(2010/07/13 23:44登録)
うーん、同じネタの使い回しでも、このように使えば面白いアイデアと言われるんだろうか。
凝った構成自体は面白いですが、なんか損した気分になりました。

No.12 5点 makomako
(2010/05/03 17:43登録)
本屋で手にとったら最初のナノレンジャーの漫画ですぐに書棚へ返したけど、インターネットで買ったのでまあ仕方ないかと思って読んだ。やっぱりナノレンジャーな不要なのでは?その後のナオミの話も妙にいじけているのに変にずうずうじい女の子の話が実に長々と(ことにアメフトのところは何度かもう読むのを止めようかと思った)書かれていて私にはとてもひとつで何度も美味しいといった感じではなかった。真ん中の話だけで十分。鬼屋敷と堂園別荘の話だけだったらよかったのに。

No.11 7点 touko
(2010/03/14 01:30登録)
一粒で4度(もっぱら作者が)おいしい作品(集)。
とはいえ、読者としても楽しめました。

子供の落し物のエピソードや湯煙殺人事件は、前菜やデザートや箸休め的に楽しめましたが、留学生の話が長すぎるので、表題作であるメインの話にもっと分量をさいて欲しかったなあ。

No.10 7点 simo10
(2010/02/01 21:15登録)
まず本の構成にびっくり。
情報シャットアウトのために背表紙を見ないようにしていることと、目次が存在していないことが合わさった状態で「ナノレンジャー」と「Ripper」を読まされ(結構長い)、ひょっとしてこの内容を400ページ以上読まなければいけないのかとひやひや(イライラ?)させられた。
150ページ過ぎてようやく本題に入ってほっとため息。
「黒塚七人殺し」のみに関して言えば、かなり大胆なトリックを、(自分的には)ギリギリのヒントで切り抜けており、うまいと思わされた。
しかし、その後の「直観探偵~」以降はヒント与え過ぎでなんだか緩くなってしまった。
もったいない作品という印象。
「Ripper」に関しては、主人公の不可解な行動にイラついてしまったが、「鬼密室」とは独立した話なのでこれはあえて採点に含まないようにします。
「ナノレンジャー」に出てくるヒゲの切れ者で生意気な清掃員のお兄さんてひょっとして…。
あとラストの井戸から水を取り去るマジックってのが解らない…作中にヒントがあるんだろうか?

No.9 7点 測量ボ-イ
(2009/08/28 21:12登録)
表題作「安達ケ原の鬼密室」をメインとした中短編集。構成は
下のシ-マスタ-さんが巧く表現されていますが、凝ったもの
です。
表題作のネタを踏まえれば、残りの話しのオチはさすがに鈍い
僕でも推理することはできましたが、十分楽しめた作品です。

No.8 7点 シーマスター
(2007/10/01 23:47登録)
一見何の関係もないように見えて、実はある共通点を有する3つ(or4つ)の話が山本山のように並んでいる(実質上)中短編集。

この構成には賛否あると思うが、あるネタで(全く別設定の)3つくらいのストーリーを思いついてしまった際に「一本に絞って他を捨てるのはもったいないが、別々の作品にしたら明らかに二番、三番煎じ」というジレンマを止揚する作者の巧さがなせる業・・・というのは穿ち過ぎか。

表題作の事件編は何とも読みづらかったが、カラクリの大胆さは島荘作品を彷彿させるものがある。(構成によりインパクトは薄められてしまっているが)
またripperのキーワードにも立派に騙された。

ナノレンジャーはいかがなものかとも思うが、これはともすればミステリ作品がメイントリックだけでサマライズされたり、一言のネタバレで読む価値が消滅する(確かにそういう本も多いが)かのように扱われることに対する作者一流のアイロニーではないだろうか。

No.7 9点 えりもみさき
(2004/12/16 16:08登録)
良くできた佳作と言うところか。しかし、雄に密室に張られた伏線は一つ一つがうつくしいし、なによりも物語の進行が良い。構成の妙もあり、さすがといったところ。

No.6 7点 Platonic Pimp
(2004/10/15 14:32登録)
本編は最初京極夏彦的とっつきの悪さがあったが、後半で一気に盛り返した。ただトリックはかまいたちの夜2をやってしまったあとだとすぐにわかる…。
2話目は留学する主人公の心理をうまく捕らえてると思う。1話目は平仮名ばっかで読みづらい。なんすか、あのスーパーヒーロー!?

No.5 8点 桜ノ宮
(2004/07/15 00:10登録)
ナノレンジャーは、特にいらないと思いました。
『The Ripper with Edouard』の、最初の一行目でもしかして・・・と思い当たるところがありまして、
そしたらころっと話が変わるじゃないですか。
だから全部なんか関連しているのかしら?なーんて考えたら辻褄あっちゃった!みたいな。
ただし、『安達ヶ原の鬼密室』は、怖くてハラハラしちゃいました。
八神探偵事務所のお話をもっと読みたいなぁと思うのですが。

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