恩讐の鎮魂曲 御子柴礼司シリーズ |
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作家 | 中山七里 |
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出版日 | 2016年03月 |
平均点 | 6.18点 |
書評数 | 11人 |
No.11 | 7点 | take5 | |
(2023/11/19 11:56登録) 御子柴シリーズ第三弾 よかった点 緊急避難をめぐる伏線回収(因果応報)が よく描かれています。 また、特養老人ホームをめぐる 今日的課題もよく描かれています。 難点 登場人物の背景をめぐる伏線回収が too match過ぎて カタルシスを通り越しています。 でもお休みの午前中に 二時間ちょっとで一気読みできた リーダビリティは高く、 よい時間を過ごせました。 |
No.10 | 6点 | みりん | |
(2023/06/15 00:34登録) 「お前の贖罪の仕方と俺の贖罪の仕方が違っていただけの話だ」 御子柴礼司シリーズ本当にハズレがないですね。 ミステリーとしてはこの点になってしまいますが、贖罪というシリーズ共通のテーマをここまでうまく物語に落とし込む作者の手腕が素晴らしいと思います。ラストに倫子が登場するサプライズも良い。 いや〜しかしモーツァルトのLacrimosaはピアノ演奏描写が今作にないのが悔やまれる程名曲だ。 |
No.9 | 4点 | レッドキング | |
(2023/03/07 09:20登録) 老人施設で起きた撲殺事件。加害者は車椅子の入居老人で、被害者は屈強な介護士。己への裁きを要求する被告老人の自白に反し、実際に起こったことは何だったのか、のWhyWhatミステリ。思わず一気読み誘う程に面白く、かつ感動的だが、シリーズ前二作にあったアクの強い捻りが足りない・・(ミステリマニアは人が悪いからねえ) ※それは別として、作者の「良心」に水差してワリいが、暴力クズ父(夫)、野獣レベル囚人、手負獣の如き患者・・24時間中こんな類と付き合わざるを得ない家族や職業に・・同情しちゃうなア。 |
No.8 | 1点 | タピ岡 | |
(2019/11/07 22:49登録) 弁護失敗で依頼人が有罪判決エンドとか,クソかよ. |
No.7 | 8点 | 雷令老 | |
(2019/08/13 22:20登録) これも面白いが・・・。 シリーズ3作目にして、初めて少しだけ違和感を覚えた。 前2作とは違って、被告=善玉 VS 被害者=悪玉 という勧善懲悪的な図式が前面に出てきてしまい、従来のニヒルな味わいに水をさしてしまっている。 それでもとても面白いのだが。 |
No.6 | 7点 | VOLKS | |
(2018/07/29 01:36登録) 作者のコラムに「睡眠も、入浴も、食事も惜しんで読んでもらえる作品を書きたい」そんなことが書いてあった気がするが、まさにそーなりつつある(笑) またもや、一気読み。 助けたい、なんとか無罪にしたい、それを本人が望まないにしても、それでも貴方は間違っていない、と思いながらページをめくっていた。 ドラマで御子柴の役を三上博史がやっていたらしい。 それを知ってから、もう、御子柴が三上博史にしか見えない、というか、三上博史の声で御子柴の台詞を語っている幻聴が聞こえてくるくらいにまで侵されている、私。 すごく楽しめています。 |
No.5 | 6点 | メルカトル | |
(2018/06/18 22:26登録) 弁護士御子柴礼司シリーズ第三弾。本格ミステリというより、本格法廷小説ですね。 前二作に比べるとやや小粒の感は否めませんが、その分御子柴の内面がよく描かれていて人間臭さを感じさせます。 隅から隅まで良く出来た作品ではありますが、逆に言うと綺麗にまとまり過ぎており、サプライズ的にはやや物足りません。今回は意外な人間関係に驚きを覚えますが、どんでん返しとまでは言えないですね。そこに期待すると裏切られるかもしれません。 私の期待が高かったためにこの点数ですが、リーダビリティ、優れたプロット、冒頭の海難事故が物語にどう絡んでくるのかへの興味、介護施設での虐待問題、刑法第三十七条<緊急避難>の解釈など見るべき点も多く、さすがに人気作家中山七里と思わせるに十分な魅力を持っていると思います。 文庫化されたことで多くの方が読まれることを願っております。ただし、前二作を未読の方はそちらを優先させることをお勧めします。 |
No.4 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2016/12/09 10:50登録) 前作で御子柴弁護士の過去が判明した結果、「死体配達人」と揶揄され仕事も激減している。そんな中での少年院時代の恩師の殺人事件。この被告人である恩師が一筋縄ではいかない人物であった。リーガル的なテーマは「緊急避難」と耳慣れないものです。緊急避難の寓話「カルネアデスの板」は、船が転覆し海に投げ出された男が板にしがみついた。そこに別の男がしがみつこうとしたが、板は二人の重みには耐えられそうもなく、男はあとから来た男を突き飛ばし水死させた。殺人罪で裁判にかけられたが無罪となったというもの。まだ国内では殺人での判例はない?。まあ、本作の主題はやはりシリーズを通しての「贖罪」でしたね。今回は結構御子柴弁護士の内面に迫ったものが描かれていました。事務員洋子がチョイ役でかなり登場したので、次作は洋子との絡みがあるのかどうか期待するところ大(笑)。 |
No.3 | 8点 | HORNET | |
(2016/12/04 23:09登録) 少年院時代の御子柴の恩師、稲見教官を弁護するという話で、期待を裏切らない面白さだった。 少年時代に殺人を犯した御子柴の人格を矯正し、今の道に導いた一番の恩人、稲見元教官が、入所していた介護施設で介護員を殺害したという。「衝動的な感情で人を殺めるような人ではない」…今こそ恩に報いようと、稲見の弁護に駆け付ける御子柴だが、当の稲見は「刑を免れようなどと思わない。きちんと私を罰してほしい」と望む。弁護の最大の障壁は依頼人自身という異質な状況の中、介護施設で何が起こったのか、御子柴は真実を暴きにかかる― 要介護老人と介護士の、感情的な諍いと思われていた事件には、誰もが驚く背景があった。その実情が法廷で明らかにされる場面での、裁判長、検事を含めた周囲の驚愕を想像しながら読むのは単純に楽しかった。被害者、入所者、稲見の隠された「つながり」は、あまりにも出来過ぎているという感はあるものの、それが本作品の核なのでまぁ自分はとやかくは言わない。 ただ、シリーズ当初の酷薄で薄情なイメージが次第に薄れ、むしろ情に厚くすら見えてくる御子柴の変容は、好ましくも感じるが、一方で寂しい感じもするのは私だけか。 |
No.2 | 7点 | 白い風 | |
(2016/09/14 22:32登録) 前作「贖罪」「追憶」に比べれば驚きは少なかったかな? 今回は弁護士御子柴が今後どうなるんだろう?と不安も無かったしね(笑) ただ、ラストにおまけのように付いていた倫子の手紙は次作以降の出番も期待できるので嬉しかったよ。 また事務員日下部も残ったので今後の彼女の扱いも気になりますね。 |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2016/04/06 20:10登録) 客船の沈没事故の際に、女性から救命具を暴力で奪った男が裁判にかけられるが、刑法の”緊急避難”が適用され男は無罪となった。一方、特別養護老人ホーム内で、医療少年院時代の恩師・稲見が介護士を撲殺した容疑で逮捕されたことを知った弁護士の御子柴は、父とも慕う元教官を救うべく強引に弁護に名乗りでるが、稲見は罪の償いをしたいと言い出す--------。 少年期に猟奇殺人を犯し、医療少年院に収監されていた過去を持つ弁護士・御子柴礼司を主人公とするシリーズの3作目。前作のアノ結末からは、続編が出ることが想像できなかったのですが、今作もリーダビリティ抜群で文字どおりの一気読みでした。 どんでん返しを期待するミステリという側面だけをみると、シリーズ前2作と比べ、今回は仕掛けがやや小粒かなと思います。隠された人間関係をつなげる”手掛かり”が都合よく次々と手に入る展開も気になるところです。 しかし、”贖罪”というシリーズを通した重いテーマを内包する人間ドラマ部分が非常に読み応えがありました。自分の信念を曲げない頑固者の被告・稲見を相手に、苦悩し、必死に奔走しながら、持てるカードを全て使って弁護に立つ、人間臭さをみせた今回の御子柴が魅力的で、”悪辣弁護士”といわれたころの面影はありません。ラストの手紙には(ちょっと反則技のようなあざとさがありますが)素直に感動させられました。 |