罪と罰 |
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作家 | フョードル・ドストエフスキー |
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出版日 | 1928年05月 |
平均点 | 7.15点 |
書評数 | 13人 |
No.13 | 6点 | ボナンザ | |
(2023/08/24 17:19登録) 話題の亀山訳で再読。読みやすいが格調は・・・。わき道にそれて饒舌に語りつくすドストエフスキーの作風になれないときついかもしれない。オペラかミュージカルかってくらいべらべら喋る。内容については今さら語るまでもないが、ラスコーリニコフは最初から落ちているようなものなので、倒叙ミステリとしては共感できないと思う。 |
No.12 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2022/09/30 17:24登録) さて懸案。こんなのは余裕がある時しか読めないし、たとえば区切り回とかに取り上げるのも、妙に特別視しているみたいで恥ずかしい。世界ブンガクって奴は厄介だ。 いや前半、ノレなかった。だってラスコーリニコフってなんかあるとすぐ寝込んでしまい、これじゃポンコツな引きこもりでしかないんだよね。ラスコーリニコフの「超人思想」って過大評価されすぎなんだと思うんだ。ナポレオンなりたがりの部類だよ。実際、最後の方でこの作品の「もう一人の主人公」スヴィドリガイロフが それと、もうひとつ、お兄さん自身のちょっとした理論もあって--まあ、どうということもない理論ですが--それによれば、人間はただの材料と、特別な人間に分類される。で、この特別な人間というのは、高い地位を占めているがゆえに法の適用を受けないばかりか、反対に、自分達以外の残りの人間達、つまり、ただの材料ども、ただのごみ屑どものために法を作ってやる人間だ、というのです。なに、別にどうということもない理論ですがね。 と端的に馬鹿にしているようなヘリクツだ、というのを無視しちゃいけないんだよね。「悪霊」でもそうなんだけども、ドストエフスキーっていわゆる「進歩思想」に懐疑的で、そんな「海外流行の最新思想」にカブれる連中がゴロゴロと地獄に堕ちていくさまを描いてるわけだ。「罪と罰」だったらルージンやらレベジャートニコフあたりの軽薄さと、大した差がないような「思想」に過ぎないんだよ。前半の引きこもり状態でラスコーリニコフが、貧乏と前途の暗さと自身の無能さと性格の悪さの、自己嫌悪を拗らせて育んだ「思想(まがい)」に過ぎない、と読む方のが、この小説の「非ロマン化」としては正しいようにも感じるのだ。だから前半、ラスコーリニコフって、実にカッコ悪い。「僕は働きたくなかった。そう、まさしく意地になってた」というラスコーリニコフってまさに「働いたら負け!」の大先輩のわけだよ。 これが第五部あたりから、急にラスコーリニコフも活動的になって、話のダイナミズムが回復する。 あれこれ理屈っぽく考えたりせず、人生にじかに身をゆだねてごらんなさい。心配することなんかありません。 とポルフィーリーが忠告するのも効いたのかなあ。ポルフィーリーって「探偵役」というよりも、イイ奴じゃん(苦笑)。対立キャラとして持ち上げるほどの活躍はしていないよ。いや、ソフィアだって逆に「信仰」と自己犠牲に凝り固まりすぎていて、おかしいと言えばおかしいキャラだ、というのは実は作者もわかっていることなんだと思う。そうでなければ、流刑先での悔悟のシーンがただの信仰への屈服に堕してしまうわけでね。 だったら、逆に本作だと意識的に論者が無視しがちな、スヴィリィガドロフという妙に魅力があるキャラにフォーカスした方が、有益な読みになるようのも感じる。スヴィリィドガロフが正面に登場するあたりから、話がよく転がるようになっていくんだからね。 評者が読んだのは集英社版の小泉猛の訳。巻末解説に強く共感してこんな書評になった。 大雑把な話というものは、するのは簡単であり、また一応はもっともらしく聞こえる、というより、実際もっともなものにはちがいありませんが、そのかわりに、あまり面白くもなければ役にも立たないという困った特色を備えているものです。 (虫暮部さんナイスです) |
No.11 | 6点 | 虫暮部 | |
(2021/10/20 11:10登録) 事前の印象と随分違うな。 貧しい大学生が信念に基づき人を殺したが、純真なソーニャに出会い悔い改めて自首する。 と言った感じの、一般に流布しているこの作品の要約は適切なのだろうか。こういう風にまとめるといかにも高尚な世界文学っぽくなる。しかしそれは、読者にベストとは限らない読み方を方向付けてしまう、と言う意味で作品にとって不幸なことかも。 ラスコーリニコフの心の軌跡を軸に読もうとするなら、本書は寄り道ばかりだ。金貸し殺しとは無関係に何人も死ぬし、関連の薄い複数の事柄が支離滅裂に並列される。 要約文による先入観につい引っ張られて、彼の気持の断片をつなぎ合わせるような読み方で進んでしまったが、それで取りこぼしたものも多そうだ。結構興味深い脇役は多く、つまりは、とある階層の社会のスケッチ集みたいなものに思えた。 ラスコーリニコフはもっと傲慢な選民意識の持ち主かと思っていたら、とんでもない、情緒不安定で殆どひきこもり予備軍。なんだその金の使い方は。自首だって自殺しない為の最後の方便のようなものだ。 ソーニャは影が薄く、“娼婦”との設定にもこれと言った効果は見られない(貧しさの象徴?)。御仕事の場面も無いし。エピローグでいきなり存在感を増すのは作者の計算不足か。 登場人物達の行動は面白いが、台詞は総じてくだくだしく冗長(博打のせいで素寒貧の作者が稿料稼ぎに引き伸ばしたのだろう)。焦点を定めず、もっと広い視座で読むほうが楽しめそうだけど、確認の為に再読するのはしんどいかな~。 |
No.10 | 7点 | バード | |
(2021/01/11 16:43登録) 読んでて楽しい本でないし、独創的なアイディアがあるわけでもない。しかし、読後は何故かすっきりした。 この理由は、本書が「人類のあるあるネタ集」だからなのだと思う。本書で語られる考え方や思想は、恐らく人間誰しもが一度は感じる、思う、考えるネタで、少なくとも私は共感する場面がいくつもあった。 拗らせた主人公に、突飛な思想ではなく共感可能な思想を語らせている点こそが、本書の最良点だろう。 ただし、内容は普遍的だが、読者を選ぶ構成になっていると思う。 とうのも、第三者視点で読んでしまうと、ラスコーリニコフは感情的に突飛な行動ばかりする主人公であり、結果、物語自体を支離滅裂に感じる恐れがあるからだ。 一方、当人の中の理論には忠実なので、主人公視点で読むと、共感できる点が見えてきて、読み応えのある小説に化ける。 まとめると、本書はラスコーリニコフに感情移入するよう読まないと、消化不良になると思われる。 |
No.9 | 3点 | まつまつ | |
(2020/10/19 00:46登録) 自分は、カラマーゾフの兄弟を最後まで読めず、放り投げた。宗教など、どうでもいい!と。でも、こちらはその影響はないかと思ったが、ミステリの祭典で、この作品をそこまでの評価ができる?やはり、作者がドストエフスキーだから? それは、この世界的文学を評価するにおいて、自分自身のスティタスのための高得点?と思ってしまう。ははは、自分は世の中の水準に合わず、反対勢力の俗物と、反省する。 |
No.8 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2017/02/14 17:28登録) アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100(1995)の第24位。初の長編ミステリーといわれる「ルルージュ事件」と同じ1866年の発表です。いやはや、かなりストレスがたまる読書となりました。第一点は登場人物表がないのでよくわからない。さらに主人公「ラスコーリニコフ」が「ロジオン・ロマーヌイチ」になったり「ロージャ」になったり(笑)。第二点は一人一人の会話が非常に長い。ロシア人はおしゃべりなのかな?。ミステリー要素の観点からは、予審判事ポルフィーリィとのやり取りが読みどころでしたね。まあ刑事コロンボよりも得体が知れず、ねちっこいかもしれません。 (ネタバレ)純文学的な意味合いは、さておき、動機について裁判では「病的な偏執狂の発作」と結論づけています。それが妥当なのかもしれません。あと、印象に残ったのは主人公のソーニャへの告白で「自分のために、自分一人だけのために殺そうと思ったんだ。」「婆さんでなく自分を殺したんだ」に対し、ソーニャの言葉「殺す権利があるの?」でした。 |
No.7 | 9点 | 斎藤警部 | |
(2015/10/20 18:03登録) 本格じゃないですよね。直接心理描写の塊でハードボイルドじゃ有り得ないし、叙述の仕掛けも無けりゃ(あ、ネタバレ言っちゃった)時刻表トリックも、針と糸の密室さえ出て来ない、あれ、出て来るっけ? ま社会派っちゃあ社会派かな。とてつもなく重い作品ですけどね、若き犯罪者の徹底的葛藤地獄とそこからの救済を描いた、最高に良い長篇小説ですよ。終盤近くから、頭の中で名も知らぬ雄大な交響詩が滔々と流れ続けますよ。 |
No.6 | 10点 | take5 | |
(2013/09/29 23:34登録) 心理描写がぐいぐい読ませるので、分量やイメージよりとっつき易いはずです。ラストは夢中で読ませる事うけあいます。しかしミステリーと言いきれないので10点にはしないでみました。 加筆修正 ミステリーを意味のある人生の手段として、嗜好する者として、人生に影響大の本作品を、良書をシェアするこの場ではやはり10点満点と思い直しました。 |
No.5 | 10点 | itokin | |
(2013/09/11 10:33登録) トルストイと並ぶロシア最高の文豪。流石ですね、狂気に満ちた主人公とそれを取り巻く人々の心の深層が切々と迫ってきて先へ、先へと急がされます。最高の文学がミステリーとして読めるなんて何か得した気持ちになりました。 |
No.4 | 7点 | ムラ | |
(2012/05/26 20:27登録) ミステリの範疇で話すのなら倒錯形式でラスコーリニコフが自身の犯罪にあれこれを考えている流れがとてもよかった。 特に彼の思想を知る大部分である論文の項目の部分が非常に面白い あの思想がどんどん高じてくると戦争に発展するのだろうか。 ところで、罪の意識を感じていないラスコーリニコフは一体何を更正するのだろうか。もう一回読むとしたらそこを重点的に読もうと思う。 本当は罪の意識を感じてたのかとかも含めて。(少なくとも、リザヴェータに関しては抱いていたようには読めたが) しかしスヴィドリガイロフはどうしても最後まで悪人には思えなかったな。 |
No.3 | 2点 | 江守森江 | |
(2010/02/08 21:13登録) 北方領土返還を願う日本人としてロシア人を知る上の原点である(元対ロシア外交官・佐藤優氏がコラムで述べていた)この作品を未読なまま放置出来なかった(建て前) 倒叙ミステリの原型かも知れないがミステリーの範疇に含める事は作品に対して失礼になるのではないだろうか! よってポリシーに従い、このサイトでは2点。 但し、文学世界では最高峰に位置する作品である。 それでも「読書は趣味で娯楽」を標榜する私には、テーマを熟慮しながらの読書は、学生時代の哲学書の勉強を思い出し苦行であった。 人生について考える事を読書に求めない私と同類な方は読まずにスルーが無難かもしれない。 ※余談 子供に自分の読まない本を読みなさいとは言えない親の切実な事情で読んだだけでスルーしたかった(本音) 息子の教育を私に押し付け逃げた嫁が恨めしい。 |
No.2 | 10点 | rintaro | |
(2009/07/19 13:17登録) 自分が読んだ小説のなかでは最高の作品であることは間違いないと思います。キリスト教に関しては門外漢だった自分にはより宗教色の強い「カラマーゾフの兄弟」より理解しやすく、また非常にわかりやすいストーリー展開でした。ただこの作品を推理小説と呼ぶのは多少違うような気がします。はじめから犯行のプロセスは割れてるし、この作品の主題は神と人間、罪と罰、信仰とニヒリズムなどの二項対立を下敷きにしたラスコーリニコフの再生の物語であると自分は考えています。そもそも氏の作品はずばり「~小説だ」といえるほど単純な様相を呈していなく、非常に複合的で、さまざまな小説のエッセンスが入っているですね。その点で、一本の長編が書けるほどの思想、主題がふんだんに盛り込まれている「カラマーゾフ~」は世界最高の小説と言われているのでしょう。これを推理小説とよんだら「カラマーゾフの兄弟」だって、「悪霊」だってそういえるのではないでしょうか?ただ、やはり推理小説的な趣があるのは間違いないので、ミステリーファンが読めば、非常に楽しめるのは保証します。 |
No.1 | 8点 | 臣 | |
(2009/06/12 11:51登録) これぞミステリの原点。ポーと2つの系譜をたどって現代の推理小説の形に到達したのでは、と思っています。 老婆を殺害した主人公ラスコーリニコフの心理を描いた倒叙ミステリです。 心理描写は実に巧みで、ストーリーも良く、時代、文化の全く異なる国の話でも違和感なく引き込まれてしまいます。 特に、判事ポルフィーニがラスコーリニコフを心理的に追い詰める場面は読み応えがあります。この場面は「刑事コロンボ」スタイルの原型といえますし、また、予定のない殺人をしてしまったり、善意の人間に嫌疑がかかったりして、犯人が思い悩むところ(勧善懲悪を重視し、犯行自体が読者に共感されないようにしているところ)は、我が国の2時間ドラマ風ミステリの原型であるともいえます。 このサイトで評価するのに少しためらいましたが、思い切って登録してみました。ぜひ感想をお聞かせください。 |