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ミステリの祭典

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rintaroさんの登録情報
平均点:7.33点 書評数:24件

プロフィール| 書評

No.24 7点 オイディプス症候群
笠井潔
(2010/09/02 01:52登録)
 「孤島の連続殺人」における被害者(候補者)と犯人の「見る」「見られる」の権力関係をフーコーの一望監視装置と結び付ける発想は面白いと思いました。しかし、フーコーの思想それ自体については、以前の作品でとりあげられていた哲学者や思想家ほど深く考察されていない点で少し不満を感じました。
その一方でギリシア神話についての蘊蓄が少々多すぎるうえ、結局事件とそれほど深くかかわってくるわけではないので、ここはもっと刈り取ったほうがいいと思いました。
密室トリックや意外な犯人は一応水準以上のものはあった思います。ということで6点
さらにフーコーに擬したキャラクターが物語の後半になかなかの活躍を見せてくれ点が個人的にうれしかったので+1点です。
(前作のハイデッガーの扱いはひどかったです、、)


No.23 6点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2010/08/23 19:05登録)
 オーソドックスな本格探偵小説。というのが、まずうかんだ読後の印象です。自分はもっと本格的なホラーを期待していたのですが、そのホラー的な部分もほとんどトリックの下地としてしか機能しておらず、ホラーとミステリの融合とうたっている割には少々ホラー要素が薄いかと思いました。
しかし、謎解き部分はさすがによくできていて、たった一つの事実から芋づる式に戦中戦後二つの事件が解き明かされる構成は見事です。
メインの首切りについて、解説で柄刀氏が「新たな公式」を生み出したと言及していますが、自分には基本的には既存の複数のトリックを効果的に複合しただけのようにしか思えませんでした。首切りの扱いについては笠井潔の「バイバイ・エンジェル」のほうが斬新さを感じました。
あと刀城言耶シリーズは今作以外読んでいないのですが、このキャラクター、容姿を除けば、性格とか言葉遣いとかが金田一耕助によく似てますよね。(多少ネタばれになりますが、今作で刀城はほとんど一章ぐらいしか登場してませんけど・・)


No.22 3点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2010/08/17 18:38登録)
 この作品の叙述トリックですが、本作が発表される以前に谷崎潤一郎がほとんど同様のものを用いた作品を書いています。またわざわざ文学畑に目を向けるまでもなく、ルブランがリュパンのデビュー作でこのトリック使用していますね。
というわけで個人的には、この作品に歴史的意義をあまり感じません。この叙述トリックを良くも悪くも広めてしまったということには、なにかしら「意味」があったとはおもいますけどね。
そこで小説そのものを評価しててみると、この手の小説にとって宿命的な制限によって非常に味気なくつまらなかった。
後続の作家のほうがこのトリックをうまく劇的に使っていることは間違いないです。なので必然的にこの点数になりました。


No.21 8点 谷崎潤一郎 犯罪小説集
谷崎潤一郎
(2010/05/29 14:27登録)
文豪、谷崎潤一郎の犯罪小説を集めた作品集。彼が探偵小説においてどれだけの先駆性を持ってたかを再確認できます。
収録作品は「柳湯の事件」、「途上」、「私」、「白昼鬼語」となっています。
私は、プロバビリティの犯罪を扱った「途上」と、叙述トリックを扱った「私」が、この作品集の白眉のように感じました。
「途上」の、犯人と探偵との会話の中で、犯罪の全貌が明らかになる構成は、横溝の「百日紅の下で」を彷彿とさせます。
また「私」は、叙述トリックを「アクロイド殺し」の5年前に扱っているという歴史的意義だけではなく、そのトリックで人間の心の闇までも掘り下げている点で素晴らしいと思いました(論理の厳密さでいえばアクロイドに劣りますが)


No.20 10点 罪と罰
フョードル・ドストエフスキー
(2009/07/19 13:17登録)
自分が読んだ小説のなかでは最高の作品であることは間違いないと思います。キリスト教に関しては門外漢だった自分にはより宗教色の強い「カラマーゾフの兄弟」より理解しやすく、また非常にわかりやすいストーリー展開でした。ただこの作品を推理小説と呼ぶのは多少違うような気がします。はじめから犯行のプロセスは割れてるし、この作品の主題は神と人間、罪と罰、信仰とニヒリズムなどの二項対立を下敷きにしたラスコーリニコフの再生の物語であると自分は考えています。そもそも氏の作品はずばり「~小説だ」といえるほど単純な様相を呈していなく、非常に複合的で、さまざまな小説のエッセンスが入っているですね。その点で、一本の長編が書けるほどの思想、主題がふんだんに盛り込まれている「カラマーゾフ~」は世界最高の小説と言われているのでしょう。これを推理小説とよんだら「カラマーゾフの兄弟」だって、「悪霊」だってそういえるのではないでしょうか?ただ、やはり推理小説的な趣があるのは間違いないので、ミステリーファンが読めば、非常に楽しめるのは保証します。


No.19 9点 魍魎の匣
京極夏彦
(2009/03/05 18:42登録)
所謂読者に推理に必要な全ての情報を提供し、作者との知恵比べを楽しむ「本格」ミステリーでは無い。そもそも一般的なミステリーが物的証拠、アリバイなど細かなピースで「事件」解明するのに対し、この作品はそんな細かなことは無視して「事件」というピースで一連の現象の因果関係を解明するというスタンスを取っている。言うなれば一般的なミステリーを鳥瞰図的にした物がこの作品なのかもしれない。そういう点で見れば、確かに細部においては矛盾や非合理的部分があるにしても、個々の事件を一つのピースとしてみた場合、そのピースの嵌め込みは非常に緻密で、最終的に壮大な画が見えてきた所は「本格」ミステリーの醍醐味を感じた。ただ前作を未読の場合京極堂らのメンバーの関係性が解り辛いかも知れない。


No.18 7点 ガリレオの苦悩
東野圭吾
(2008/10/27 20:12登録)
ガリレオの短編は基本的には科学トリックがメインなんだけど、それに頼らない、ちゃんとロジックでも押してくる作品もいくつかありました、個人的には「操縦る」が良かったです。「撹乱す」も湯川の犯人まで至る過程は面白かったんですけど、いつもの短編ならではのキレが無いんですよね、犯人に魅力が無いのもちょっと残念です。


No.17 6点 聖女の救済
東野圭吾
(2008/10/25 20:10登録)
帯に書いてあるとおり完全犯罪、といえばいえないことも無いかなってていう感じで、犯行方法も私の知る限り斬新でしたが、前回の長編の「容疑者~」と比べると正直見劣りします、私が過剰に期待していたのかもしれませんが。あと私は内海薫が登場するガリレオ作品は初めて読んだんですが、彼女なかなか切れ者なんですね、ドラマの印象が強かったので驚きました。


No.16 6点 眩暈
島田荘司
(2008/09/25 14:49登録)
メイントリックは渦巻きの話を知っていたので早々解ってしまった、氏も大方の手記の解明は前半~中盤ですましてるからそんなことはお見通しなのだろうが。ただ氏の作品の犯人全般に言えることなのですが、大掛かりな割りにメリットが少ないトリックを行うことが多いと思う(占星術殺人事件など)、だからどうしても犯人の行動について首を傾げてしまう、まるでトリックを実行するために犯行を行うようです。ちなみにエレベータと秘密の部屋のネタは良かった、斜め屋敷とか摩天楼の怪人とかそうだけど氏の本髄は建物トリックにあるような気がする。


No.15 7点 陰摩羅鬼の瑕
京極夏彦
(2008/09/10 22:14登録)
第一作「姑獲鳥の夏」で人間の知覚や世界認識の危うさを描いたのに対して今作は死というものの定義の危うさを描いた作品。犯人が最初に分かってしまうのもそんなに欠点にならなかった、ミステリーの分類をすればホワイダニットなんだろうけど、多分この作品をただミステリーとして採点するのは少々お門違いなのだろう。魍魎の匣だとか絡新婦の理のような「動」の魅力は無いが幻想的な「静」の魅力のある作品。


No.14 9点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2008/09/07 16:14登録)
横溝シリーズの中でもかなり悲劇的な事件、だけど最後の大円団に救いがありますし、最終的には雨降って地固まるがごとく村の因習に縛られていた若者が開放されていく終わり方もいいです。ミステリー的な部分は正直「獄門島」の方が優れてると思いますが、そろぞれの登場人物の書き込みも秀逸ですし、ミステリー部分だけでなく物語としてもちゃんと収拾してる点はこちらのほうが上だと感じました
「失礼しました。警部さん。あなたはリカを愛していられたのですね。」という金田一の別れ際の台詞も個人的にはかなり好きです


No.13 6点 指し手の顔
首藤瓜於
(2008/08/30 19:19登録)
精神病者の猟奇殺人、美貌の殺人鬼、背後にいる黒幕、暗躍する脳男と見所はたくさん。ですが全体的にそれらの素材を生かせないままに終わってる気がします、特に警察内での確執の描写は結局最後まで生かしきれた無かったですし、必要なかったかと思います。他にもいろいろエッセンスは挿入されているのですがそれがこの作品に不可欠であるかって言うと?です。
つまり無駄が多いんですね、それで肝心の部分が少し説明不足、鈴木一郎の出番が極端に少なく、これといった見せ場も無い。ただこれだけいろいろ詰め込めばつまらないってことはないです


No.12 4点 ネジ式ザゼツキー
島田荘司
(2008/08/27 17:35登録)
途中までは良かった。普通に小説として面白かったが、後半どんどんしりつぼみしていくのが残念だった。特にフランコのネジ事件にたどりついてからは単につまらない推理小説、肝心のネジ式の首の真相は正直氏の短編レベルのネタだった。ただ評価できる点としては作中作のエゴンの小説が幻想的で好きだったのと、不可解な銃痕の解明の論理は良かったと思う。


No.11 9点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2008/08/24 12:04登録)
恐らく日本ミステリーの中でも最高峰の出来です。ロジックもトリックも一級品ですし、冒頭からの読者への挑戦も作者の自信を窺わせます、人形はなぜ殺されるのか?この問いが解かれたときは身震いしました。また私としてはこの程度の怪奇趣味は結構好みでした。ただ途中中だるみしてしまっていた部分があったので1点減点です


No.10 9点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2008/08/17 00:01登録)
私は「黒死館殺人事件」が一番好きなミステリーなので、この作品の中でちょくちょくそのエッセンスがあったのは微笑ましかったですね(墓暴きのシーンとか甲冑の描写,,etc)作品自体は最後の謎解き?の場面において犯人が最後まで顔を出さなかったのが実はまだ裏に真相があるのを匂わせます、私はあの事件にはまだ本当の真相があると踏んでますが、どうでしょう?


No.9 4点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2008/08/05 21:36登録)
よく分からなかったです、僕には。何回か読まないと分からない作品なのかも(何回読んでも分からないのかもしれませんけど)ただチャカポコ節はすごくリズムが良くて読んでて楽しかったです。ちなみに僕はこれ読んでもとくに精神に異常はきたしませんでした。


No.8 7点 脳男
首藤瓜於
(2008/08/01 12:32登録)
正直、読了後の最初の感想は「これミステリーなの?」だった。連続爆破事件の犯人も作品の最初から割れてるし、犯人の動機もとても推理できるものでない。半分以上のページは「鈴木一郎」の正体探りに割かれているし、連続爆破事件も作中では彼の超人的能力のお膳立てとしてしか機能してない。
だから単純に読み物として評価してみる。そうすれば相当に面白い。出てて来る登場人物もみな魅力的だし、なにより「感情を持たない男」の鈴木一郎のキャラクターがかなり新鮮だった
話の展開も彼の正体をさぐって日本中を行き来し、そのたびに彼の異常な過去と能力の秘密が少しずつ明らかになっていくのは息も付かせない。なんてかっこつけて紹介してみましたが、この作品を一言で表すなら「マーブルコミック等のヒーロー物+ピアノマン+ほんのちょっとミステリー」で足りると思います


No.7 9点 影なき女
高木彬光
(2008/07/30 10:41登録)
あんまり知られてない短編集だけど実はかなりの名品ぞろい、それぞれの作品に完成度の高いトリックも盛り込まれてるし、感動させてくれるような作品もある、はずれが無いのでかなりお得感があります。


No.6 7点 邪魅の雫
京極夏彦
(2008/07/25 18:29登録)
全体的に淡々としているし、ストーリーの起伏もあまりないので少々退屈に感じる方も多いかもしれません。京極堂シリーズ特有の、謎解きと同時に今までの読者の世界認識を揺さぶるような感じもないです。ですが京極堂シリーズの中では「妖怪」が影を潜めたぶん、最も「殺人」というものに向き合った作品だと思います。京極堂シリーズのなかでは比較的ノーマルなミステリーだと思います


No.5 9点 獄門島
横溝正史
(2008/07/13 19:04登録)
やっぱり、この作品読まずして日本のミステリーは語れない気がします、トリックや俳句の見立て殺人などのミステリー的要素ももちろん一級品だと思いますが、それ以上にそれぞれの人物の性格描写や獄門島が生きているかように思わせる情景描写などがこの作品が支持されている大きな要素の一つではないでしょうか。ちなみに満点でないのは犯人の動機が現代っ子の私にはいまいち理解できなかったからで他の部分で判断すれば満点の作品だと思います

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