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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1692件

プロフィール| 書評

No.1032 4点 黒いアリバイ
ウィリアム・アイリッシュ
(2017/08/06 13:31登録)
邦題の「黒」シリーズは4作で、本作が未読でしたので手に取りました。しかし、あとがきによると原題でのBLACKものは6作あるとのこと。調べたら「喪服のランデヴー」と「恐怖の冥路」の原題がBLACKものでした。サスペンスものなので、真相は期待していませんでしたが、あまりにも予想通りで拍子抜け(苦笑)。本作は短編を寄せ集めたようで、味気なく物足りませんでした。何故かと考えたのですが、それは背景に恋愛が絡んでいなかったからかもしれません。


No.1031 8点 火の虚像
笹沢左保
(2017/08/04 13:12登録)
有栖川有栖氏のアリバイ講義で紹介された作品。あまり読まれていない作品のようです。有栖川氏は当然読んでいるわけで、氏の読書量はどれだけのものなのか?と変な感心をしてしまいました。なお「炎の虚像」と改題されています。どちらかというと犯人はすぐ推測できるので、倒叙形式に近い作品ですね。よってアリバイ崩しが主体。テレビ業界の仕組みをうまく利用した殺人事件であると思います。トリックが解明され、成る程と思っていたところ、さらにもう一つのサプライズが用意されていました。何とこれが「善意」であるところが憎らしい。拾い物をしたという感じの佳作です。


No.1030 7点 暗い傾斜
笹沢左保
(2017/07/30 10:32登録)
有栖川有栖氏のアリバイ講義(「マジックミラー」)で紹介された作品。トリック自体は先例がありますが、それをアリバイトリックに応用したのは初めてかもしれません。高知の室戸岬で事件が起き、一方東京でも同じ日に事件が起きる。この場合、実は共犯者がいたでは面白くとも何ともないので、読者は犯人の移動方法を考えるのですが・・・といった作品です。笹沢左保氏の数作品が、前記のアリバイ講義で紹介されていますので続けて読んでみるつもりです。


No.1029 4点 闇のよぶ声
遠藤周作
(2017/07/23 13:38登録)
謳い文句に「心理的探偵法を用いた著者唯一の推理小説」とあります。探偵側からの心理的探偵法なるものは、神経科医による予知夢を利用したもの。これは非科学的であり、導入部分で読者に対し不信感を持たせてしまい、失敗であったかもしれません。まあ、実は裏はあるのですが・・・。犯人側からは完全犯罪を狙ったもので、そ自体は成功しています。こちらも心理的な操作でのトリックですが、先例はありましたね。本作での疑問点は被害者の立場です。クリスティ氏の「ABC殺人事件」での被害者ABはそれ自体がトリックなので理解できるのですが、本作における被害者4人のうち3人については、必然性の面でどうも理解することができませんでした。また、真相の判明が犯人の告白によるもので、推理小説としては残念な点です。以上、ミステリー要素だけに絞った書評でした。


No.1028 5点 セイレーンの懺悔
中山七里
(2017/07/19 18:38登録)
入社2年目の女性TVレポーターの成長物語でもあり、TV報道の在り方について批判的立場での物語でもありました。全体的にもっと毒々しさがあっても良かったのかなとの印象です。ラストの宮藤刑事の一言に変な感動をしてしまいました(苦笑)。


No.1027 5点 カササギの計略
才羽楽
(2017/07/14 12:44登録)
恋愛小説としては、とても楽しめました。ミステリーとして評価すると、まあ普通かな~といったところ。「ホワイト」より「ブラック」の方が大好物なもんで・・・。


No.1026 5点 アポロンの嘲笑
中山七里
(2017/07/08 19:11登録)
本作の後に発表された「月光スティグマ」も阪神淡路大震災と東日本大震災を扱っており、社会派的要素が強い作品でした。「アポロン(太陽神)」、「月」と続いたわけで、次は「星」?と思っていたら、今月発売される「ネメシスの使者」が「仮説上の恒星」という意味もあるみたい。ギリシャ神話の「女神」が正解みたいですが・・・。本作は逃亡劇を中心とした社会派人間ドラマといったところ。その面では筆力で読ませてくれ高評価です。しかしミステリーの面ではやや物足りません。著者の専売特許「どんでん返し」を期待し過ぎたか?(苦笑)。


No.1025 5点 テミスの剣
中山七里
(2017/07/04 13:46登録)
あらすじが物語全体の半分まで紹介されています。これは読むのに辛い。これからどうなるのか?の楽しみを奪われてしまう・・・。最近の著者の作品は社会派よりのミステリーが多いような気がします。本作も冤罪がらみ。後半、物語が急展開するのですが、既視感がありあり(苦笑)。他作品に比べインパクトは弱かったかも。


No.1024 6点 ヒポクラテスの誓い
中山七里
(2017/07/01 14:25登録)
内容紹介では短篇とは記載されておらず、途中まで読んで短編と知る(苦笑)。一篇毎はそれほどのオチもなく、凍死は○○であった、交通事故は○○であったと続く。それだけかい!?・・・。しかし、ラストは連作短編ということで、うまく纏まっていました。主人公の真琴と古手川刑事との絡みがあるのですが、さてどうなるのか?。続編の「ヒポクラテスの憂鬱」(未読)でもコンビを組んでいるようです。著者のインタヴューでは「古手川は女性に対して完全に不信感を抱いているタイプ」としているので、先が楽しみです。


No.1023 7点 神様の裏の顔
藤崎翔
(2017/06/24 17:49登録)
最後の一行的な終わり方であれば、もっとインパクトがあり評価はアップしたと思います。ラストは一件一件丁寧な説明ではあるのですが、一件のみで、あとは読者の想像にお任せでもよかったのかも?。神様と呼ばれた元教師もアッチ系は人間的でよかった(笑)。適度のユーモアがあり楽しめました。


No.1022 4点 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人
倉阪鬼一郎
(2017/06/19 21:10登録)
「四神金赤館銀青館不可能殺人」を読んでいたため、かなり身構えての読書となりました。大胆な伏線が多く、早い段階でトリックは判明(笑)。トリック以外の仕掛けの努力は買いますが、小説自体の評価とは別なので、この評価です。


No.1021 6点 ビロードの悪魔
ジョン・ディクスン・カー
(2017/06/17 10:53登録)
伏線があるので、ある程度予想できたのですが、一点だけ盲点がありました。思い込みをうまく利用したもので、やられた感がありますね。


No.1020 4点 猿来たりなば
エリザベス・フェラーズ
(2017/06/02 11:14登録)
謎としては短編向きか?。よって長編としてのプロットに問題があるのかも?。つまり、それほど魅力的ではない謎で終盤まで引っ張っていくので、どうしても退屈な展開となってしまう。謎もだいたいの予想がついてしまう。よって、中盤辺りで謎を明らかにし、そこからもう一つの物語(真相)を構築した方が二度楽しめる小説になったような気がします。


No.1019 5点 ロイストン事件
D・M・ディヴァイン
(2017/05/27 08:20登録)
題名に異議あり!(笑)。もしミスディレクションの意図があったとしても、あまり感心するものではなかった。内容としてのミスリードはうまいと思いますが、あくまでも題名としてはどうかという意味です。ロイストンという人物像が巧く描かれているだけに残念。まあ、著者らしい細かい伏線と回収は読みごたえはありますし、ラストの勿体ぶった大芝居は楽しめました。


No.1018 7点 真夜中の死線
アンドリュー・クラヴァン
(2017/05/21 20:38登録)
裏表紙より~『セントルイス・ニューズ』のエヴェレットは、事故にあった同僚の代わりに、その夜死刑になる男へのインタヴューを担当するよう命じられた。ところが下調べを始めると、事実関係に不審な点が浮上してくる。これは無実では? 雰時一分の死刑を止めるべく不埒な記者が夜の街に必死の活動を繰り広げる、絶妙の時限サスペンス!~

600頁の長編。デッド・リミテッド型サスペンスです。冤罪を晴らすための正義感を前面に出すというようなこともなく、エンタメに徹していると思います。まず主人公が女たらしの浮気性であり、妻から離婚を申し出られたり、新聞社からは首を宣告されるといった具合。といっても死刑囚側の描写には、ホロリとさせられる場面も用意されています。プロットもよく考えられており、終結に向けて一直線ということもなく、読者に期待させておいて、それを裏切るというような紆余曲折があります。


No.1017 5点 並木通りの男
フレデリック・ダール
(2017/05/10 15:00登録)
大晦日の夜、ウィリアムは男を車で撥ね死亡させてしまった。その妻に連絡しに行くが、死んだはずの男から「怪我で入院、心配するな」と電報が届く。200頁ほどの中編。フランス・ミステリーらしい毒のある結末か?と思いきや、その期待は見事裏切られました(褒め言葉)。


No.1016 7点 山口線"貴婦人号(エレガンス・トレイン)"
草野唯雄
(2017/05/04 11:52登録)
津和野へ向かう山口線下りSLが県境のトンネルにさしかかったとき、崖の上からカメラを構えていた男が突然、宙にとんだ。容疑者となった男はSLに乗車しており、その現場を目撃していたのだ・・・。このトリックは島田荘司氏張りのトリックを思い起こしますが、氏のデビューより以前の発表であり、かなりの高評価としたいと思います。物語は、ほぼ倒叙刑式のような感じで進行します。全体のプロットは、ミステリーファンならすぐ察しがついてしまうと思います。それが明らかになる場面があります。本文~「うーん・・・」誰かが唸った。目の前にモヤモヤと立ち塞がっていた霧。それが一気に吹き払われた感じ。~正にその通りでした(笑)。


No.1015 7点 黒龍荘の惨劇
岡田秀文
(2017/04/30 17:34登録)
トリックにはビックリです。私的には「禁断のトリック」と呼んでいるものでした(笑)。うまく応用されており、まったく気がつきませんでした。残念な点が二つほど。派手な事件の割には淡々と語られており、おどろおどろしさをあまり感じることができなかったこと。探偵の役回りの設定(前作を未読のため不明です)が、探偵らしくないこと。つまり警察に先を越されたことや、ロジックを端折っていたことなどでした。


No.1014 7点 仮面病棟
知念実希人
(2017/04/23 20:13登録)
ミステリー通には、判り易い犯人像みたいですね。一般的には、「面白かった。一気読みできた。」との評が多いようです。私的は後者に一票(笑)。在りそうで、無さそうな、そんなプロットでした。サスペンスものとしてはよくできていると思います。ミスリードの点では、直近に読んだフランスミステリー(2012作品)に同様なアイデアで、もっと強烈なものがあり、ちょっと残念な気がしました。


No.1013 5点 かがやき荘アラサー探偵局
東川篤哉
(2017/04/22 20:07登録)
ある事情で会社を首になり、シェアハウスに住む三人組。家賃が払えず、事件を解決することで家賃を免除してもらおうとする。その主人公のアラサー3人組にあまり魅力を感じることができないのが惜しいところ。著者のユーモアのうちでは、ドタバタ調の色恋ものがお気に入りなのですが、本作では、お相手役の啓介との色恋沙汰はないのです。残念。内容的には、「洗濯機は深夜に回る」の謎がなるほどと思いました。

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