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ミステリの祭典

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黒いアリバイ

作家 ウィリアム・アイリッシュ
出版日1972年01月
平均点5.20点
書評数5人

No.5 5点 クリスティ再読
(2024/08/14 17:03登録)
シリーズ3作目というのは、シリーズを継続するために方向性を定める、一番大事な局面だと思うんだ。「黒衣の花嫁」「黒いカーテン」に続くのがこれ....いや、何かハズしているにも程がある。トンデモ作と呼ばれても仕方ないかも。
確かに「黒シリーズ」で有名なんだけども、ウールリッチがどこまで「シリーズ」を意識していたかって微妙だと思うし、またアイリッシュ・ホープリー名義との差別化ってあってなきがごときにものとも思う。「死者との結婚」とか「暗闇へのワルツ」がウールリッチ名義でいけない理由って、評者はよくわからないや。

で本作、ミステリというよりも、事実上はホラーだと思う。南米の都市に解き放たれた黒豹が次々と巻き起こす惨劇...で、すべて若い女性の被害者視点で語られる「狩り出される者の恐怖」が、小説のメイン。ウールリッチだからそれぞれの女性たち(スラムに住む少女・貴族階級の箱入り娘・人気者の娼婦・アメリカからの観光客)の書き分けもしっかり、不気味な追跡者に怯えつつ逃げ惑う姿をしっかり描いていて、そういう側面だと成功していないわけでもないんだよね。腐っても全盛期のウールリッチの文章なんだもん。でもこの恐怖の感情が小説にテーマになっているわけだから....まあ、ミステリと呼ぶのはちょっとどうよ、というのが評者の評価。

まだからミステリ的な「真相」ってのは、話を収めるための「オチ」みたいなものだから、整合性とかアンフェアとかどうでもいいじゃん?というのが正直なところ。まあウールリッチ、明白にミステリ枠からはみ出す作品を「夜は千の目を持つ」「野生の花嫁」「死はわが踊り手」とか容易に数え上げることもできるわけで、そもそもジャンル感とかシリーズ要素とかあまり意識もしていないのではないのか、なんて思う。

まあ本作からウールリッチを読み出す方もいないと思うけど、そういう人がもしいたら絶対誤解するだろうなあ。いや、「アリバイ崩し」だと思って手に取る本格マニアが?

No.4 5点 斎藤警部
(2019/11/28 06:30登録)
“殺し屋の中の殺し屋、夜、を待ち受けた。 夜は、四六時中、くりかえしくりかえし、情け容赦なく昼を追いかけ、殺戮する。 処罰もうけず、妨害もされずに”

題名からアリバイ崩し本格モノっぽいのを想像すると、珍妙な角度で裏切られましょう。 連作短篇と見紛う不思議な味わいの小説構成。 犯人、まさかあいつ、、じゃないほう!? 最終章の表題、その名も「黒いアリバイ」。 一体何が「黒いアリバイ」なのか、せめて思いを巡らせてみる。。(つまり、真犯人の絶対的(?)アリバイ(?)が如何に真っ黒な先入観(?)のもとに成立していたか、とか??) 引いては押しのサスペンス醸造はなかなかキマってるね。 巡り巡って何とも独特な犯罪構造とその詩情。 南米の某都会にて。ローカル女優の思い切ったプロモーションに駆り出された黒豹が逃亡し、潜伏しながら巻き起こしていると目される若い女性の連続虐殺事件。 我が偏愛バンド、ザ・スミザリーンズのBLUES進行を使わないBLUESナンバーを思い出す名前の香水登場には萌えた。 

No.3 5点 ボナンザ
(2018/05/12 22:50登録)
残酷ものともいえるアイリッシュの一作。
とはいえ追いつめられる恐怖はともかく、最後のオチはいまいちか。

No.2 4点 蟷螂の斧
(2017/08/06 13:31登録)
邦題の「黒」シリーズは4作で、本作が未読でしたので手に取りました。しかし、あとがきによると原題でのBLACKものは6作あるとのこと。調べたら「喪服のランデヴー」と「恐怖の冥路」の原題がBLACKものでした。サスペンスものなので、真相は期待していませんでしたが、あまりにも予想通りで拍子抜け(苦笑)。本作は短編を寄せ集めたようで、味気なく物足りませんでした。何故かと考えたのですが、それは背景に恋愛が絡んでいなかったからかもしれません。

No.1 7点 Tetchy
(2008/08/04 20:47登録)
逃げた黒豹が次々と人間を襲う。
こう書くと単なるパニック小説のように思えるが、さすがはアイリッシュ、そんな風には書かない。
犠牲になった人々の背景をしっかり描き、あたかも連作短編のように物語を紡ぐ。
だから逆に意外な真相が非常に戯画的に映る。これが非常に残念だ。
しかし何故この題名なのかが解らない。原題もそのままだし。

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