黒龍荘の惨劇 月輪龍太郎 |
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作家 | 岡田秀文 |
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出版日 | 2014年08月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 12人 |
No.12 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2022/05/25 19:01登録) ネタバレをしております。 明治時代が舞台の推理小説です。伊藤博文など、実在の人物も多少出てきて、すこし壮大な話もありますが、基本的には横溝正史の金田一シリーズのような楽しみ方のできる作品でした。 黒龍荘という、かなり大きな館が舞台であり、クローズドサークルかは微妙ですが、ほぼ館で話が完結するので読みやすくテンポもよかったです。 また、キャラクターに癖がなく、最近の推理小説に登場しがちな漫画やライトノベルのようなキャラクターは出てきません。ただ、逆に言うとあまりキャラ立ちしていない人物が多く、特徴的な名前の探偵である月輪も凡人のように見えます。しいて言えば、偉そうな態度をとってもいざとなるとポンコツ気味な谷越警視、たおやかな女性かと思ったら緊急時には江戸っ子の啖呵をきって棒を使う蘭子がよいキャラクターでした。 推理小説部分について。 非常に大がかりな大トリックが楽しめます。ただ、2014年発売にしてはすこし既視感があり、個人的に大きな驚きは感じませんでした。 また、大トリックをするとやはり無理がでてきます。不可能犯罪も、ここまで多くの共犯者がいてしまっては、謎でも何でもありませんね(笑)。 総じて、佳作にはあと一歩足りない作品ですが、文は読みやすく雰囲気はよかったです。本格度も高く、読んで損はありませんでした。 |
No.11 | 6点 | nukkam | |
(2020/02/10 21:45登録) (ネタバレなしです) 2014年発表の月輪龍太郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。いわくありげな一族にわらべ唄をなぞったような見立て連続殺人と横溝正史を連想させるようなプロットですが良く言えば洗練、悪く言えば淡白な筋運びです。万人向けタイプではありますが、例えば綾辻行人の「時計館の殺人」(1991年)の強烈なサスペンスを堪能した読者には物足りなく映るかもしれません。またいくら作中時代が明治でもこの犯行計画は実行に無理があり過ぎのようにしか感じられません。とはいえ(無理矢理感はあるにしろ)大胆きわまる真相とすさまじいまでの悪意のインパクトの前に多少の不満を吹っ飛ばされるでしょう。発表当時結構な話題になったというのも納得です。 |
No.10 | 6点 | sm556s | |
(2018/10/02 20:38登録) 大がかりなトリック。最終章に至るまでは、物足りなさを感じていたが、最後に真相が明らかになると、”意外と面白かった”という印象が残った。真相は意外性が高いものの、伏線が不足。だから、真相が明らかになっても、読み返して、なるほど、この記述はそう言った意味だったのか、ここにヒントが示されているじゃないか、という部分が少ない。また、伊藤博文や山形有朋が出てくるが、正直、不要。 |
No.9 | 6点 | 純 | |
(2017/10/25 21:28登録) この作品、あくまでも、途中まではごく普通のスタンダードなミステリーだった。それがラストの探偵「月輪」の謎解きによって様相ががらりと変わってくる。 探偵もなかなか真相にたどり着けずに四苦八苦していたのがうまく描かれている。でも、なんで最後に伊藤博文?ちょっと疑問だった。あまり関係がないように思われたが、なんか重大な意図があったのだろうか? トリック自体も少し、仰々しいのではないかと思ったが、それこそ、アガサの「そして誰もいなくなった」同様、黒龍荘の8人が次々と消されていくのは面白い。しかも首なし死体として・・・。 最終的には、意外な発想に驚かされたけど、意外と面白かった。 |
No.8 | 6点 | パメル | |
(2017/09/27 01:19登録) 探偵の月輪龍太郎と友人の杉山潤之助が難事件に挑む時代ミステリの第二弾。 元首相の山縣有朋の金庫番ともいわれる漆原安之丞に脅迫状が届き、その数日後、漆原が首を切られた死体となって発見される。 やがて事件は連続殺人事件に発展し、被害者は漆原の故郷に伝わるわらべ唄に見立てられ、首や手足を切断されるなど、物語は本格ミステリの王道ともいえる道具立てを使いながら進む。 本当に解決するのかと思わせる終盤まで殺人が続き、月輪は16もの疑問点に頭を悩ませる。 事件が複雑怪奇なだけに、たった一つのカギで謎が一気に解ける最終章には圧倒的カタルシスがあり満足。 驚くべきどんでん返しから浮かび上がるのは法律やモラルなど歯牙にもかけない怪物の存在。この怪物は、現代とも共通する虚無を象徴しているので背筋がゾッとする。 ただプロットに関しては他作品での既読感があるのが残念。 |
No.7 | 6点 | E-BANKER | |
(2017/09/22 21:50登録) 「伊藤博文邸の怪事件」に続く、“月輪龍太郎シリーズ”の二作目。 今回は前作から約十年後の明治時代後期。日清戦争直前のきな臭い時代が舞台。 2014年の発表。この年の各種ミステリーランキングでも上位を賑わした作品。 ~明治二十六年。杉山潤之介は、旧知の月輪龍太郎が始めた探偵事務所を訪れる。現れた魚住という依頼人は、山縣有朋の影の側近と噂される大物・漆原安之丞が、首のない死体で発見されたことを語った。事件現場の大邸宅・黒龍荘に赴いたふたりを待ち受けていたのは、不気味なわらべ唄になぞらえた陰惨な連続殺人だった・・・。ミステリー界の話題を攫った傑作推理小説~ 冒頭の目次を見れば、400頁程度の文庫版に「第六」にも及ぶ惨劇の章題が・・・ これを見るだけでも、作者が古き良き時代のミステリーに傾倒していることが分かる。 しかも「わらべ唄」による見立て殺人、首なし死体にバラバラ死体、密室からの首の消失などなど、 とにかく大時代的なギミックの数々が並べられている・・・そんな印象だ。 こういうふうに書くと、小島正樹的“詰め込み(すぎ)ミステリー”なのか?と思ってしまうけど、そういう感じではない。 これほどの重量級連続殺人の割に、筆致はあっさりしているし、登場人物たちにも緊張感はない。 それもこれも、終章に判明する真犯人の悪魔的奸計のためであり、だからゆえの“あっさり感”なのだ。 でも、こりゃ、明治時代じゃなければ無理だな・・・ 他の方も書かれているが、どうしても他作品とのプロットの相似が気になるところはある。 あの部分は某三津田氏の「○魔の如き・・・」と被るし、雰囲気は某貫井氏の「朱芳=九条シリーズ」を想起させるし・・・ あと、このメイントリックってどっかで接したような・・・って考えてたら、これって某二階堂氏の「人○○の恐○」に影響されてんじゃないだろうか?(誤解?) まぁそれはいいとしよう。 今時、こんな大時代的なミステリーにチャレンジすることだけでも貴重な人材ということで、次作にも期待したい。 評価はこんなものかな。 (結局、伊藤博文の長々とした口上はどういう意味があったのか?) |
No.6 | 6点 | メルカトル | |
(2017/08/11 22:07登録) この手の作品は昔で言えば横溝正史、今なら三津田信三が代表格でしょうが、彼らに挑戦するようにわらべ歌に見立てた首なし死体が次々に現れます。ただ、おどろおどろしい雰囲気はあまりなく、淡々と描かれます。そのため、強烈なインパクトに欠けると言いますか、とんでもない大事件なのになんだか登場人物も命が狙われている切迫感が感じられません。これには理由がありますが、敢えて書きません。 事件はページ数が残り僅かになってもまるで解決しそうになく、伊藤博文が長広舌を披露したりして大丈夫か?と思わせますが、柱となる大きなトリックが謎の大部分を支えているため、いくつ謎が積み上げられていても芋づる式に解決します。 しかし、私的にはあっと驚くようなトリックとは思えず、何と言いますか、裏技的な印象ですかね。あまり現実的なものとも言えないと思います。少なくとも大きなカタルシスを得られるようなものではありませんでした。 わざわざ時代設定を明治時代にしたのも、現代では通用しないトリックであり、その点において残念ながら高評価とならないのではないかと。そう思います。 探偵の月輪はあまり名探偵らしくない言動で、目立ちませんね。もう少し個性的に描いてあげたほうが、それだけでも評価が高まった気がします。 |
No.5 | 8点 | 名探偵ジャパン | |
(2017/08/02 22:15登録) わらべ歌見立て殺人。首切り死体。本格要素が増し、さらに死体の数も大増量。前作から一気にパワーアップ(?)しました。 事件が起きるのも早く、無駄な描写もなく、いい意味で淡々とストーリーが進むため、事件に集中して読み進められました。 まさに「惨劇」と名付けるに相応しい、これだけの規模の事件。もっと「こなれた」ミステリ作家なら、ここぞとばかりに描写を入れまくって、倍くらいのページ数で仕上げてくるのではないでしょうか(原稿料も倍増)。それを、事件全体が入るギリギリくらいの分量で収めてきた作者は、かなり良心的な作家だと言えるでしょう(伊藤公の話などは、歴史物だから無理に入れた感はありましたが)。もっと欲張ってもいいのでは、と変な心配をしてしまいました。 最後に明かされる犯人の犯行目的は、事件の様相を一気に塗り替える大胆なもので、読み応えがありました。 |
No.4 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2017/04/30 17:34登録) トリックにはビックリです。私的には「禁断のトリック」と呼んでいるものでした(笑)。うまく応用されており、まったく気がつきませんでした。残念な点が二つほど。派手な事件の割には淡々と語られており、おどろおどろしさをあまり感じることができなかったこと。探偵の役回りの設定(前作を未読のため不明です)が、探偵らしくないこと。つまり警察に先を越されたことや、ロジックを端折っていたことなどでした。 |
No.3 | 7点 | makomako | |
(2017/03/26 08:59登録) バリバリの本格推理です。本格物が好きな方はぜひ。 舞台は明治時代で、大きなお屋敷といわくありげな登場人物。そして歌になぞらえた連続殺人事件。 なんともおどろおどろしい。なんかどこかの名作で読んだようだなあとも思いつつ読み進めていくと、最後は見事にやられた。 久しぶりの大トリックで大どんでん返しでした。 探偵の月輪は、なかなかの名前ですが、インパクトはいまいちかな。もう少しスマートにかけていたらもっと良い点数となったのですが。 |
No.2 | 6点 | まさむね | |
(2016/11/27 18:37登録) 名探偵月輪シリーズ第2弾。 邸内での連続殺人、わらべ唄見立ての首なし死体、全員が何かを隠していそうな登場人物等々、盛り沢山の内容です。明治という舞台設定とはいえ、さすがに警察も見落とさないのでは…といった点が無いわけではないのですが、ド直球の投げっぷりには拍手を送りたい。 ちなみに、前作「伊藤博文邸の怪事件」を未読の状態で読み進めましたけれども、特段の支障はございませんでした。なお、伊藤博文、山縣有朋と、歴史上の人物が登場しますが、本書だけでいえば、正直このお二人が登場する意義はあまりございません。前作からの繋がり上、また、明治という舞台設定上でご登場いただいているといったところでしょうか。歴史小説的な要素が薄い分、本格度は相当濃い目に仕上がっています。 そのうち、このシリーズの前作や最新作(短編集)も読んでみようかな。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2014/09/11 21:50登録) 地方官吏の杉山は、十年前に共に書生として伊藤博文邸に住み込み某事件に関わった月輪龍太郎に再会する。月輪は探偵業を始めており、現在は山縣有朋公の影の側近といわれた漆原の邸・通称”黒龍荘”で発生した殺人事件に関わっていた--------。 明治時代を背景にした本格ミステリ、「伊藤博文邸の怪事件」に続くシリーズの第2弾。 わらべ唄に見立てた連続殺人、しかも畳掛けるように首なし死体が次々現れるという、王道というか、ベタ過ぎる館ミステリの様相で複数の殺人事件が展開される。 終盤は、まるで「そして誰もいなくなった」状態で、残りページが少なくなって、いったいどうやって収拾を図るのだろうと思っていたら、なんとも悪魔的な構図の反転が待っていました。 前作と比べると歴史ミステリの要素が減退しており、梶龍雄や三津田信三の先行作とのアイデアの類似性も気になるものの、本格編としての仕掛けの強烈さでは本作の方が一枚上かもしれない。 |