火の虚像 別題『炎の虚像』 |
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作家 | 笹沢左保 |
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出版日 | 1964年01月 |
平均点 | 6.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 7点 | ねここねこ男爵 | |
(2024/10/03 18:22登録) ネタバレ気味です。 さほど期待せずに読んだら結構面白くてびっくりした。 トリックに関しては賛否ある…というか否定派のほうが多いだろうが、とてもこの作者らしい。 犯人はすぐ見当がつくものの、自分は途中まで犯人も黒幕も2通りあり得ると思っていた。黒幕は予想と違っていたが、確かにこっちのほうがいい。 |
No.3 | 5点 | パメル | |
(2018/04/25 01:14登録) コンパクトにまとめられた長編ながら、何気ない中に伏線を張り緻密に考えられた構成は好印象。 ただ、登場人物は少ない事もありフーダニットの楽しさは味わえないし、ハウダニットにしても・・・。自殺に見せかけた2つの殺人はどのように行われたのかという謎が、被害者の心理がもたらす影響と犯人の腹づもりが噛み合いトリックが成立するのだが、この真相はかなり実現性に乏しく好みではない。最後に明かされるもう一つの真実は、ひねりが効いていて良かったと思う分残念。 |
No.2 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2017/08/04 13:12登録) 有栖川有栖氏のアリバイ講義で紹介された作品。あまり読まれていない作品のようです。有栖川氏は当然読んでいるわけで、氏の読書量はどれだけのものなのか?と変な感心をしてしまいました。なお「炎の虚像」と改題されています。どちらかというと犯人はすぐ推測できるので、倒叙形式に近い作品ですね。よってアリバイ崩しが主体。テレビ業界の仕組みをうまく利用した殺人事件であると思います。トリックが解明され、成る程と思っていたところ、さらにもう一つのサプライズが用意されていました。何とこれが「善意」であるところが憎らしい。拾い物をしたという感じの佳作です。 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2016/09/29 03:36登録) (ネタバレなし) 邦画界の大女優・野末千登勢がTV初主演という鳴り物入りで製作される、大洋テレビの大型単発ドラマ『女二代』。だがその撮影当日、担当予定のプロデューサー兼ディレクター、加古川洋介が欠席した。ドラマは代打の若手女流演出家・瀬戸秋路によって何とか撮影されるが、この不祥事で斯界の寵児といわれていたクリエイター・加古川の名声はいっきに失墜してしまった。『女二代』のスポンサーである大企業、山川電機の宣伝課長で、加古川との旧友である北見慎一郎は相手から事情を聴く。加古川は当日、交通事故に遭い、何やかんやあって一日前後意識を失っていたと釈明した。北見は加古川の陳情の裏をとるため、事故の加害者という若手女優・魚津麗子と同じく若手俳優の和泉タカ男にも会いに行くが、彼らは殊勝な態度で加古川への謝罪を訴えた。一応は不可抗力と納得した北見だが、やがてその麗子、タカ男が相次いで自宅で変死を遂げる。北見はパーティで出会った瀬戸秋路の従姉妹で美人の阿久津綾子とともに、事件に首を突っ込むが…。 ある日たまたま、石川喬司の「極楽の鬼」(ミステリマガジンに連載された60年代の書評をまとめたもの。今回手にしたのは81年の講談社版)を読み返していたら、老舗ミステリファンサークル「SRの会」の1964年度ベスト、という当時のニュースの話題が目に付く。同年の国産1位は当然『虚無への供物』だが、2位の『盗作の風景』(やはり笹沢作品)と4位の『傷痕の街』(生島治郎)に挟まれて堂々の3位を獲得していたのがこの作品。なんかすごそうだ、どうなんだろ、と久々に笹沢作品の旧作を読んでみたというわけである。 本書は、当時の作者の2年ぶりの書下ろしだったそうだが、元版であるカッパノベルスは大きめの活字で一段組。長さも280頁以下で途中には数葉のイラストも挟まれ、とても目にやさしい作りである。それゆえ実質的には、ごく短い時間で読み終えてしまった。 正直な感想は、え~これが『虚無』の2つ下の年間ベスト作品!? という感じの軽本格だが、当時の精力的な作者の仕事ぶりを考えるなら、こういう形でまとめた書下ろし作品があっても確かにおかしくはない。人間関係の錯綜もTV局を舞台にした業界ドラマもそれぞれ当時としては面白そうな狙い所を見せてはいるが、おのおのにあんまり踏み込まないのも作品全体の軽量感を高めている。 (裏表紙の解説文を読むと、作者は当時はじめてテレビの脚本に挑戦したそうで、その時のもろもろの経験が本書の著作の原動となったらしい。) 登場人物が少ないためフーダニットとしてはまるで成立してないが、主人公の北見の視点である人物に疑惑を固め、それならどうやって犯罪を行えたかのハウダニットがミステリ的な興味になる。そこで使われる2つの大きなトリックはともにかなりトンデモ系ではあるが(特に後から解明される方)、作品全体の器のなかではそれなりのマッチング感もあり、ちょっと印象に残るものになっている。 最後のある方向でのサプライズもふくめて、良くも悪くも当時の時代の空気が漂う佳作。 |