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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1220 8点 オリジン
ダン・ブラウン
(2019/07/13 09:29登録)
「BOOK」データベースの内容紹介は、かなりのネタバレで興ざめです。シリーズ第1作「天使と悪魔」は宗教と科学の対立・共存がテーマでした。本作も同様ですが、日本においてはあまり興味のないテーマで痛いところ(苦笑)。しかし、宗教と科学の対立構造が単純明快に解説されていて大変勉強になりました。物語は「われわれはどこから来たのか、われわれはどこへ行くのか」(ゴーギャンの有名な絵画の題名であるのですが知りませんでした)という壮大な謎と暗殺者の黒幕は誰かという謎で引っ張っていきます。舞台はスペインのガウディの作品群で、AIも登場します。エンタメ系としてはまずまずのどんでん返しもあり楽しめました。「謝辞」で科学者、宗教学者、歴史家などの名前が100人近く挙がっており、かなり綿密な取材を行ったことが窺え+1点。


No.1219 5点 ルパンの娘
横関大
(2019/07/03 16:35登録)
裏表紙より~『泥棒一家の娘・三雲華は、警察一家の長男・桜庭和馬と素性を隠して交際していた。ある日、華の祖父・巌が顔を潰された遺体で見つかり、華は独自に犯人を捜す。和馬は華と結婚を考えていたが、殺人事件を捜査する中で華が伝説のスリ師・巌の孫だと知り悩む。事件の真相と二人の恋の行方は?著者会心の長編ミステリ!』~
7月11日から深田恭子さん主演でTV放送されます。先日、そのロケが自宅の3軒先の空き家で行われました。ミーハー(死語?)興味で本書購入。
ラブ・コメディーですね。ミステリー部分は、若干のひねりはあるものの王道パターンでした。TV予告編や、ポスターによると出演者が泥棒スーツ?に身を包んでいます。原作にはそのようなシーンはありませんので、原作と違ったパターンが見られるのかもと期待(笑)。


No.1218 7点 江戸川乱歩全短篇<3>怪奇幻想
江戸川乱歩
(2019/06/30 10:00登録)
夢野久作氏の「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の中で紹介された『白昼夢』~その純な、日本風な、ヤルセのない魅力に、私はスッカリ強直させられてしまいました。『蟲』~あられもない気分の変幻を、あんなに平気で扱い去った筆力の凄まじさには「鬼か人か」と叫びたいくらい、参いらせられてしまいました。~を拝読。
サブタイトルが怪奇幻想とあり、猟奇ものなどが多く収録された短編集(22篇)。
著者の一面でもあるグロさの極めは「虫」「白昼夢」(既読分では「芋虫」)。その他印象に残った作品は「百面相役者」「踊る一寸法師」「お勢登場」「人でなしの恋」など。読者を選ぶ作品集ではあると思います。


No.1217 5点 アンドロギュノスの裔(ちすじ)
渡辺温
(2019/06/27 18:30登録)
夢野久作氏の「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の中で紹介された『可哀相な姉』~素敵を叫ぶ~を拝読。昭和初期、モダンでハイカラがもてはやされた時代であったろうが、その裏で一部の女性たちは困難な生活を余儀なくされていた…そんなことが本作から浮かび上がってきます。ミステリー的には弱く、「嘘」を主題としたものが意外と多かった。
印象に残った作品
「少女」私は恋焦がれている乙女そっくりの少女を助け、キスをしたが・・・
「象牙の牌」昔の武勇伝のおかげで命を狙われいるというのだが・・・
「可哀相な姉」私は聾唖の姉に育てられ、やがて大人になった・・・
「勝敗」兄嫁が崖から転落死、兄弟それぞれが自分が犯人というのだが・・・
「遺書に就て」同居人が殺された。妻の遺書には私が犯人とあるのだが・・・
「アンドロギュノスの裔」Y君は女優に恋をし、毎晩彼女の家の様子を見張っていた。やがて女中が出て来て私に恋しているでしょうというのだった・・・
「兵隊の死」(ショートショート)死因について、シャアロック・ホルムスは頭をかいて当惑するのだった・・・


No.1216 5点 恐ろしき凝視
甲賀三郎
(2019/06/23 22:24登録)
12篇の短編集。夢野久作氏の「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の中で紹介された『従弟の死』~純日本式の「良心の遊戯のモノスゴサ」がズンズン開発されつつあることを知った~を拝読。複雑なプロットを駆使した本格短篇の佳作です(9点)。それより驚いたのは、1926年海外某有名作品が発表されたのと同時期に、同トリックがこの作品で用いられていることでした。海外作品はメイントリックとしていますが、本作はサブトリックでした。ああ、なんと勿体ないこと!(笑)。「魔の池事件」と「黒衣を纏う人」がまあまあ面白かった。その他はやや落ちる印象。ご都合主義というより、探偵小説として成り立たないのではないかという作品もあったのが残念な点です。


No.1215 6点 ペン先の殺意
アンソロジー(ミステリー文学資料館編)
(2019/06/22 11:11登録)
文豪によるミステリー風味の作品集。谷崎潤一郎「柳湯の事件」、芥川龍之介「疑惑」、大岡昇平「お艶殺し」、佐藤春夫「女人焚死」、松本清張「記憶」、坂口安吾「選挙殺人事件」、小沼丹「バルセロナの書盗」、山川方夫「ロンリー・マン」、曾野綾子「競売」、倉橋由美子「警官バラバラ事件」、遠藤周作「憑かれた人」、五木寛之「ヒットラーの遺産」、井上ひさし「鍵」、村上春樹「ゾンビ」

ベストは佐藤春夫「女人焚死」。足を縛られた女性の焼死体。一見他殺、しかし自殺の可能性も?。その他は、犯罪心理、幻想怪奇、ショートショートなどバラエティーに富んでいます。ミステリー度が弱いのは致し方ないところですが、谷崎、芥川などは独特な雰囲気を味わうことが出来ました。


No.1214 6点 乗客ナンバー23の消失
セバスチャン・フィツェック
(2019/06/09 17:50登録)
タイトルは、豪華客船で毎年平均23名の人が行方不明となっているところからつけられている旨。エンタメ系サスペンスです。ただ、動機が思っていたものとかけ離れ、結構重いものでした。ドイツ作品ですが、ラストはフレンチミステリー風。


No.1213 6点
谷崎潤一郎
(2019/06/07 23:59登録)
著者の「途上」や「私」は江戸川乱歩氏や横溝正史氏に多大な影響を与えたとのことです。その点についてはあまりピンとくるものがありません。つまり、二作品はそれほどミステリー要素があるとは思えないからです。しかし、ある書評に本作「鍵」はまさにミステリーであるとあり、棚から引っ張り出し再読してみました。本作は「猥褻か芸術か」と世間を騒がせたことで有名で、また何度も映画化されていますね(先月、逝去された京マチ子さん主演作もあります)。表紙と挿絵が棟方志功氏によるもので、全編日記形式であるのが珍しいです。性愛小説の端緒的作品?。ミステリー的には娘の関与が最大の謎でした。
(追記~横溝正史氏は昭和32年刊行開始の新書版谷崎潤一郎全集の月報で「鍵」に言及。本作を探偵小説であると言っています。)


No.1212 3点 ロード・キル
ジャック・ケッチャム
(2019/06/03 17:14登録)
病めるアメリカをオフ・ビート感覚で描き切る超異常心理スリラー、スティーヴン・キング絶賛とあるが・・・。


No.1211 3点 悪魔の関係
笹沢左保
(2019/05/31 18:12登録)
裏表紙より~『夫が16歳年下の女・マチ子と服毒心中! 遺体確認のため現地を訪れた妻・香代は、マチ子の婚約者・乙也に魅せられる。そして通夜の晩、ついに乙也に抱かれる香代……しかしそこに刑事が!? 執拗な愛撫に身を灼く香代の脳裏に黒い疑惑が。――魔性を秘めた男女の愛憎を、鮮烈な官能描写で描く大好評「悪魔」シリーズ』~

まずの驚きは、著者がこのような官能小説を書いていたことです(笑)。スポーツ紙に連載されたということで、まあ内容は推して知るべしですね。ミステリー部分はそれなりのオチはあるのですが、そこに至る過程がご都合主義と言われても致し方ない。


No.1210 6点 黒い睡蓮
ミシェル・ビュッシ
(2019/05/29 21:24登録)
フェアかアンフェアか?。完璧にアンフェアです(笑)。2004年の浜名湖花博で見学した「モネの庭」をイメージしながらの読書。ラストがよかったという書評が多いが、さて・・・。


No.1209 6点 夜市
恒川光太郎
(2019/05/23 14:08登録)
~何でも売っている不思議な市場「夜市」。幼いころ「夜市」に迷い込んだ祐司は、あるものと引き換えに野球選手の才能を手に入れた。エースとして成長した裕司ではあるが、罪悪感にさいなまれていた~

「夜市」「風の古道」の2中編。「夜市」は第12回・日本ホラー小説大賞受賞作。しかし、完全にファンタジーの世界です。たまにはいいかも。


No.1208 6点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2019/05/21 22:34登録)
緊張感がなかったことが残念。それは葉村譲視点に起因するものと思います。彼は前作で殺人不感症におちいっています。よって彼が殺人に関し、ハラハラドキドキしなければ、読者も同様にハラハラドキドキしません。動機は新機軸で新鮮なのですが、いま一つ納得性に欠けていました。一人の動機であれば、まったく問題ないのですが・・・。本作の場合、ご都合主義と言われても致し方ない。光っている点は、時計に関するロジックですね。まあ、前作が強烈過ぎたので、それと比較して本作はこの点数で。


No.1207 7点 放課後
東野圭吾
(2019/05/17 20:15登録)
意外と評価が低いのが驚きです。評価者の半数の方が動機に触れ、その動機についての否定派が肯定派の倍数となっていますね。そんなところが要因かと・・・。現代なら、それほど話題にならないのかも?。時代を感じます(1985年発表)。高評価は、数点の二段構えの構成が光っている点です。まあ、伏線など○が怪しい等、あざといものもありましたが・・・(笑)。


No.1206 5点 白銀の逃亡者
知念実希人
(2019/05/14 20:04登録)
若者向けのSF・ファンタジー系のサスペンスといえるのかも。もう少し、捻り(どんでん返し)を期待したのですが、ストレートに終了してしまいました(苦笑)。ストーリー自体に特出したものがないのが残念な点。まあしかし、ほろりとさせるのは巧い!。


No.1205 6点 アニマル・アワー
アンドリュー・クラヴァン
(2019/05/12 19:34登録)
裏表紙より~『ハロウィーンの朝、ナンシー・キンケイドは弁護士事務所に出勤するが、誰も彼女をナンシーとは認めない。バッグには見覚えのない拳銃、そしてしきりに頭に去来する“獣の刻だ。その時彼は死ぬ”という言葉。パニックに襲われ、街を彷徨う彼女(以降カット)』~以降は200頁くらいまでのあらすじが書かれており、かなりのネタバレになっています。

魅力的な謎で読者を翻弄する手腕はさすがと思いました。主人公ナンシーと詩人オリヴァーとその弟ザカリーの物語が、それぞれの視点で進みます。全く関連のない話が最後に収束するという形式ですが、いやはや530頁と長すぎますね(苦笑)。コンパクトであれば、もっと読まれてもいいかな?といった印象です。サイコ系のラストを予想していたのですが、イメージと違ったものでした。その点は良。


No.1204 4点 切り裂き魔の森
マーガレット・トレイシー
(2019/05/05 15:09登録)
裏表紙より~『緑の森に囲まれた家、やさしい夫と2人の子供。ホワイト夫人の生活は平穏だった。ある日までは…。町を恐怖に陥れている連続殺人、その発生日に限って夫の帰宅が遅いことに気づくまでは…。被害者はすべて女性、遺体は見るも無惨に切り裂かれているという。彼女が思いだしたのは、高校時代の夫が森の鹿狩りで示した或る異常な行動だった―異色の手法が醸成する比類なきサスペンスの冴え。』~

アンドリュー・クラヴァン氏のデビュー作(弟との合作で別名義)。連続猟奇殺人事件が起き、もしかして自分の夫が犯人?というもの。しかし、読者は最初から夫が犯人とと知らされているので、興味は半減。それでも最後まで読ませるのは、さすがMWA賞受賞作。


No.1203 4点 寝台車の殺人者
セバスチアン・ジャプリゾ
(2019/05/02 22:24登録)
フランス、リヨン駅に着いた寝台急行列車のコンパートメント内で、女性乗客の死体が発見された。金は盗まれていない。怨恨か?。相客は女性三人、男性二人。捜査を尻目に次々と殺されていく同室の客たち。「シンデレラの罠」の鬼才S・ジャプリゾのデビュー作。

当時、謎めいた文体が新鮮であったらしい。しかし、訳文のせいか非常に読みにくい。一人称と三人称がごったくたになっている文章がある。ストーリー展開は有名な前例があり、今一つの感。本格ものとも言えないし、サスペンスフルとも言えなかった。


No.1202 4点 妻という名の見知らぬ女
アンドリュー・クラヴァン
(2019/04/29 21:22登録)
裏表紙より~『私はキャル・ブラッドリー、小さな田舎町でクリニックの所長を務める精神科医だ。妻マリーとは結婚して十四年、今なお変わらぬ美しさの妻に、私はぞっこんだった。かわいい三人の子供にも恵まれ、私のような風采の上がらない中年男には、これ以上望むべくもないほど幸せで穏やかな人生を手に入れていたはずだった…あの青年が目の前に現れるまでは。過去、そして現在まで築き上げたものすべてが一瞬にして崩れ落ちてゆく―男と女、夫と妻のあいだに横たわっているものとは!?嘘と幸福がもつれあう、ひそやかな恐怖と衝撃の物語。』~


大方のストーリーは題名からも予想がついてしまいます。よって、サスペンスフルな展開のみを期待したのですが、なかなか事件は起こらず中だるみの感。主人公の一人称で語られるので、主人公自身の内面との闘いがメインで、ミステリーというよりも一般小説に近いのかもしれません。そういう意味で辛目の採点。


No.1201 9点 あなたのための誘拐
知念実希人
(2019/04/18 09:05登録)
主人公は元刑事。妻とは離婚、不倫相手だった同僚とも別れた。彼は癌を患い、身体も心もボロボロ。唯一の楽しみは一か月に一回、娘と会うことだけであった。こんな設定に違和感を覚えつつ一気読み。ノンストップで、クライマックスへ。ところがまだ200頁も残っている。この時点で8点確定(笑)。あらためて、自分はサイコ系が好きなんだなと思った次第です。

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