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ミステリの祭典

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小説帝銀事件

作家 松本清張
出版日1959年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 蟷螂の斧
(2019/10/05 19:37登録)
(再読)「BOOK」データベースより~『昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。捜査本部は旧陸軍関係者を疑うが、やがて画家・平沢の名が浮上、自白だけで死刑判決が下る。膨大な資料をもとに、占領期に起こった事件の背後に潜む謀略を考察し、清張史観の出発点となった記念碑的名作。』~
著者は、平沢氏には毒物の知識がなく犯行は不可能と冤罪を主張しています。そして真犯人は旧陸軍関係者である可能性を指摘しています。
読後の感想~平沢氏は実行犯ではないと考えますが、金品処理についての疑いは晴れないというのが正直な気持ちです。それは強奪された小切手の裏書の筆跡が本人とものと鑑定されていることや出所不明の預金があったことなどです。旧刑訴法により、自白と状況証拠のみで死刑確定しており、その後の再審請求はすべて棄却されていることは残念な点です。当時のGHQの圧力は相当なものであったと感じられます。
なお本作品(1959年)後の1985年にGHQの秘密文書が公開されました(読売新聞)。①毒殺犯の手口が軍科学研究所の作成した毒薬に関する指導書に一致。②犯行時に使用した器具が同研究所で使用されたものと一致。③1948年3月、GHQが731部隊の捜査・報道を差し止めた。
以上のこと、および生き残った目撃者の1人が一貫して氏は犯人ではないと証言していることより、実行犯ではないのは確実でしょう。しかし、この2年後の1987年5月、氏は刑務所で天寿を全うしました(享年95歳)。

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