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ミステリの祭典

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殺人犯 対 殺人鬼

作家 早坂吝
出版日2019年05月
平均点7.29点
書評数7人

No.7 8点 ミステリーオタク
(2024/02/06 22:37登録)
 孤島の養護施設の子供達だけからなるクローズドサークル物。

 禍々しいタイトル自体も仕掛けの一片になっている大いなる騙しを秘めたミステリと言えよう。

 殺人鬼Xに関する事情はあまりにも荒唐無稽だが、あそこまで整合性を持って組み立てられてしまうと文句の出しようもない。その他の部分のロジックの緻密性も高く、またカーを彷彿させるトリックもあったりして正にミステリ要素満載。

 解決編では「ん、超アンフェアではないか?」と思った所もあってパラパラと捲り直してみたが、ギリギリうまくフェアに騙していて改めて感心した。

 好き嫌いは分かれるだろうが、ミステリファンなら一読してみる価値はあると言っていい作品ではないかと思う。
 

No.6 8点 メルカトル
(2023/10/02 22:18登録)
孤立した島の中で次々に起こる惨劇。ここには僕以外にもう一人、殺人者がいる。
殺人計画を続けながらの、犯人捜しが始まるーー。
鬼才が放つ、戦慄の本格ミステリ! !
Amazon内容紹介より。

これは・・・!久しぶりに衝撃を受けました。そしてまんまと騙されました。
最初は、あれ?子供が主人公で、登場人物も全て子供じゃないですか、そういうやつかあ、とちょっとだけ落胆しました。しかも何だか弛緩した雰囲気が漂っていて、あまり好みじゃないなと思いました。しかし、ですよ、事件が始まる前からあらゆるところに伏線が張られているし、斬新なトリックこそないものの、様々なギミックを施して、おまけに猟奇殺人と来ている。これは少し本作を見直す必要があるなと感じる部分でした。全てに於いて整合性も取れていますしね。意外と入り組んだ真相には驚きを隠せません。

そして最終盤、解決編とも言える対決に於いて、アッと驚くような、まさに後頭部を殴られた様なショックを受けました。こんな事よく考えたなと素直に感心しました。ここに作者の底力をはっきりと実感したのであります。
よって、最初の印象を見事にひっくり返し、大逆転でこの高得点を獲得した作者に対して惜しみない拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。又、余分な描写がなく、短く纏め上げた点も評価に値すると思います。

No.5 8点 sophia
(2020/05/23 16:38登録)
久しぶりにスカッと騙されました。読み返すと成程、上手く書かれています。二重人格(?)少女や透明な防火扉などの変な設定もちゃんと意味がありました。この作品において「殺人鬼」が誰を指すのかという問題は付きまとうと思います。自分も初めはアンフェアじゃないか?と思いましたが、それも最終章に効かせるために必要なのだと判断いたしました。余りにも荒唐無稽な話でありますし、文章の軽さや作者が児童養護施設についてあまり分かってなさそうなところなど気になる点もあるのですが、ミステリーとして純粋に面白かったのでこの点数を差し上げます。

No.4 5点 蟷螂の斧
(2019/11/03 14:49登録)
様々な要素を取り込む姿勢、努力はおおいに買いますが、まるで緊迫感がないのが玉に瑕でした。信頼のおけない一人称ですから、素直に読めない(笑)。よって騙され感もそれほどでもなかった。同じ○○トリックでは「○x8殺人事件」(6点)に軍配なので、この評価です。

No.3 7点 まさむね
(2019/10/25 22:00登録)
 既存トリックの組み合わせではあるものの、種類が豊富だし、組み合わせ方も巧みです。この分量の中によくも詰め込んだものだと感心。(読みやすい反面、表現的にはあっさりし過ぎていないかとの印象も無くはないけれど。)どんどん読まされつつ、楽しめました。
 ちなみに、とある面に関しては、「『屍人荘の殺人』での読者への親切心のパクリかな?まぁ、読みやすくなるから個人的には助かるけどね」といった緩い感想だったのですが、最終的にはニヤリとさせられましたね。らいちシリーズから感じていたのですが、なかなかに芸達者な作家さんです。

No.2 8点 虫暮部
(2019/07/16 16:07登録)
 ネタを重ね合わせてレッド・ヘリングにする今回のトリックはかなり好み。みごとに騙され歓喜の白旗を掲げた。ただ、軽い文章なりにもう少しプラス・アルファが欲しいかも。もっと多くの子供達が現地にいる筈だが、その雰囲気が感じられない。いちいちモブに名前を付けて必要以上に読者を混乱させない親心、ってことでいいのかね。

No.1 7点 名探偵ジャパン
(2019/07/16 15:04登録)
クローズドサークル、館トリック、見立て殺人、密室、ミッシングリンク、アリバイ、○○トリック、それに伴う○○誤認トリック、(ちょっぴり特殊設定(らしきもの)も出てきます)と、現時点における本格ミステリの主要ガジェット全てを注ぎ込みました。とでも言いたくなる、トリック、仕掛けの大盤振る舞いです。オールトリック総進撃です。しかも、それらがぶつ切りになることなく、みんなが支え合って(?)一本の長編ミステリを構築しています。
『双蛇密室』のような新トリックの創作から、本作のような既存のトリックを組み合わせたものまで、コンスタントに良作を上梓し続けているこの作者は、本当に器用だなと感心します。

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