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ミステリの祭典

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金環蝕

作家 石川達三
出版日1966年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 蟷螂の斧
(2019/10/03 18:39登録)
(再読)最近、原発マネー疑惑が新聞紙上を賑わしています。本作は同じ電力関連の汚職事件です。過去の疑獄事件では、必ずといって死者が出ています。ロッキード事件(1976年)では、事件を追っていた記者、フィクサーの通訳、首相の運転手。リクルート事件では、首相の秘書。最近では、立件はされませんでしたが森友学園問題での財務局職員2名、工事関係者2名の死が記憶に新しいところです。本作品は1965年に表面化した九頭竜ダム汚職事件(これも立件されず)をモデルに描かれたものです。首相秘書官と事件を追っていたジャーナリストが死亡しています。そして総理夫人(当時の池田隼人総理夫人がモデル)が大きく関与しています。どこかで聞いたような話ですが・・・。以下総理夫人と西尾秘書官のやり取り。~「あなたは8月の初めに、星野官房長官のお使いで、電力建設の財部総裁に会いに行って下すったでしょう。行って下すったわね」「はい参りました」「そのとき、総裁宛の私の名刺(*竹田建設のこと、私からもよろしくお願い申し上げます。と書いてある)を持って行ってくださいましたね」「はい」「その事が、もし世間に知れわたったりしたら、私が非難されるばかりではなくて、総理の政治的生命にもかかわる問題だということも、お分かりの筈ですね」「はい」「それだけ解かっていらっしゃるのに、なぜあなたはあの事を世間に言いふらしたりなさったの」「いいえ、僕は言いふらしたりなんかしていません」~略~「弁解したって駄目よ。あなたは私の顔に泥を塗って下すったのね。私だけなら我慢もします。総理の名誉は完全に傷つけられました。もしこの噂が広まって、新聞が書き立てたり、野党の方が国会で質問を提出したりしたら、あなたの責任はどういうことになるの。西尾さん、どうなさるおつもり。私は人事に口出しなんか致しませんからね。あなたにどうしろという事は申しませんよ。あなたご自分でお考えになって、一番適当な方法をお取りになることですわね。」(映画では京マチ子さん)~その後、西尾秘書官は自殺するのですが、小説といえども、よくここまで書いたものと感心します。金環蝕~まわりは金色の栄光に輝いて見えるが、中のほうは真黒に腐っている。

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