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ミステリの祭典

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Dの複合

作家 松本清張
出版日1971年01月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 5点 クリスティ再読
(2024/11/15 23:27登録)
中学生の頃に入院したことがあって、その時に誰だかが入院お見舞に持ってきてた本。清張にしてはバリバリの駄作なのが、何か懐かしい。

民俗学ばかりで書いたのでは現代性がない。少なくとも殺人事件がはいれば、現代の古代とのつなぎになるというのだった。いくら旅好きな読者でも、古臭い話ばかり聞かせられていれば縁遠くなる。やはりこういう紀行にも、ナマな事件が挿入されないと読者の共感を呼ばないというのだった。

と主人公の作家先生、伊瀬は旅行編集者の浜中に引きずり回されて、浦島伝説・羽衣伝説、そして一年前に死体を埋めたという投書から始まる殺人事件も含む「殺人紀行」に付き合わされるという話。清張といえば邪馬台国論争の一方の旗頭を務めるくらいに古代の伝説・考証・神事など大好きだし、「点と線」だって交通公社の宣伝誌「旅」連載だし...と、「本格古代ロマン旅情ミステリ」とでもいうべき作品のわけである。いやちょっとメタ入ってる?

というわけで「ちょっとメタ入ってる」あたりが、一番シラケるあたりかもしれない。作為がありすぎて、引き回されるのが最後の方は鼻につき始めるし、実はかなり狭い人間関係の中で企みが張り巡らされることもあって、ロマンのスケールとミステリのスケールが釣り合っていない。

まあでもサヴァン症候群ともいわれる数字狂の女性は、「点と線」に登場する「影の犯人」を連想させる。本作だとずいぶん薄幸という印象になるけどもね。

No.4 5点 蟷螂の斧
(2019/11/06 18:12登録)
(再読)この道はあまりにも遠回りではありませんか?。まあ、「一気に殺すよりも、その秘密を知る第三者が、この世にいることを思わせて、徐々に恐怖に陥れたほうが効果が強い。」と犯人に言わしめてはいますが・・・。浦島伝説や羽衣伝説などを絡ませていますが、その効果は如何に。

No.3 6点 斎藤警部
(2018/07/07 18:10登録)
清張覚悟のバカミスはノっけから伝説と旅情と殺人興味の締まり良いタペストリー。 例によって激しすぎる思い込みがバシバシ的中したり偶然の力が半端無かったりそりゃもう酷いもんですが(笑)面白いから免罪です。「なに、煙草?」って台詞はもうギャグかと思いましたよ。 あと例の「『Dの複合』と名付けるだろう」とかなんとか頭の中の楽屋落ちみたいな苦笑必至のアレ。。

何がバカと言って、長きに渉って積りに積もった”伝説”と”数字”の二方向に展開する謎の群が、終わってみればアカラサマに小説の中の作り物の事件のために無理やり嵌め合わせられてるチャンチャラ感。本当に復讐したいんならそんなことウダウダやってるワケがあるかい!! ってなハイパー作り物感、いくら何でも破綻しています。でも面白いから仮釈です。文章良いからもう恩赦です。まあこれで凡庸なナニだったらバカにも見えないただのイマイチミステリなんでしょう。こんなスットコ本をわざわざ格調高いフミで書くんかい! っていうね。ああ面白かった!

No.2 6点 touko
(2011/04/01 23:05登録)
最近、ドラマ化・映画化が多い清張作品ですが、これも90年代にドラマ化されているのですね。
デビュー当時の作者をモデルにしたらしい売れない中年作家が、儲けている不動産屋が道楽で出している旅雑誌の紀行文を書くために取材旅行をするという内容なので、もっと名所ばかりを回るトラベルミステリー風の内容かと思ったら、そうでもなかった……こんなマニアックな内容の本が発表当時ベストセラーになったとはすごいな。

60年代初期の作品なのに、重要な脇役にサヴァン症候群の人物を配したりと、最近の島田荘司の作品を思い起こさせる先見性にはびっくり。
古代史の謎は本筋にはたいして絡んでこないし、強引というか適当な部分もありますが、作者が楽しんで書いているのが伝わってくるし、生意気な若手編集者と戯画化された作者のやり取りもテンポよく、今読んでも、そこそこ楽しめる作品なんじゃないでしょうか。
またドラマ化したらどんなキャストになるのか考えても楽しいです。

No.1 6点
(2009/03/25 23:35登録)
最初のうちは紀行文取材旅の途中、死体が埋められているという匿名の投書による捜索の場面に出会うというだけの、ありふれた話なのですが、さすがはトラベル・ミステリーの元祖でもある芥川賞受賞作家、文章の運びがうまく、それなりに読ませてくれます。
その後浮上してくる数字の謎。このミッシング・リンク・テーマは40年代末から50年代頃のクイーンをも思わせますが、そこに浦島・羽衣伝説をからませたところが、古代史等にも造詣が深い作者ならではです。ただクイーンにも多少言えることですが、さらに伝説による暗喩まで加えると、やはりかなり不自然になってしまいます。人物関係も複雑にしすぎたきらいがあり、最後の謎解きがどうもすっきりしませんでした。
途中で説明される言葉遊びと比喩を基にしたタイトルも、ちょっとくるしいですね。

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