| 虫暮部さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.20点 | 書評数:2224件 |
| No.664 | 6点 | 牧師館の殺人 アガサ・クリスティー |
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(2020/01/30 12:32登録) 随分と俗っぽい牧師さんだ。GOOD! ところどころにさりげなく埋め込まれたユーモアも冴えている。 「夜中の十二時にスーツケースを持って、森の中で何をするつもりだったんでしょう?」 「ひょっとすると――古墳の中で眠るつもりだったのかもしれませんよ」 とか。これに何も突っ込まずにシレッと続くところが GOOD! “最初はまさかアクロイドではと疑った”←私も! |
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| No.663 | 8点 | 息吹 テッド・チャン |
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(2020/01/30 12:31登録) 極端に寡作な兼業作家が、しかし評価も人気も上々、と言うポジションに就けるのは、作品が高水準なだけでなく、取替えの利かない個性あってのことであろう。 「商人と錬金術師の門」は、まぁ面白いが、意図的に借り物のスタイルで書いているせいもあって“個性”と言う感じはしない。 それを除けば、どれもかなり高水準かつ個性的。「息吹」など、まさにセンス・オヴ・ワンダー、笑いも感動も許容する無二の世界だ。 ただ、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は――訳文の巧みさも相俟ってディジエント達の愛らしさがたまらない。考えさせられつつも胸が温かくなる傑作――なのだが、既視感がある。具体的に何に似ていると言うわけでも、この作品に限った話だと言うわけでもないけれど、AIやITを題材にしたSFは“その時期の最先端を見て、更にその先を想像する”と言う点で早い者勝ち競争みたいになっていないだろうか? 「偽りのない事実、偽りのない気持ち」にもそのケがある。タイム・ラグが生じ易い寡作の短編作家は不利。 |
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| No.662 | 5点 | 花の下にて春死なむ 北森鴻 |
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(2020/01/30 12:29登録) 表題作と「魚の交わり」で描かれた哀切な人生と謎の絡みはなかなか読み応えアリ。この2編だけなら高評価出来た。 しかしそれ以外は、ミステリとしても人情話としても中途半端。文章力がその不足を充分補えたとも言い難い。“わいわい語り合う推理クラブもの” と言う形式を、上手く使いこなせていない気がした。 |
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| No.661 | 6点 | 樹木葬 ―死者の代弁者― 江波光則 |
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(2020/01/27 11:09登録) 何年たっても世界は殺伐として、子供達は死ねとか死ぬとか喚き続けるのだろう。でも歳を重ねたって繕い方が多少身に付く程度だ。人間になるのはとても面倒臭い。作者はどこまでも一人称のまま、読者の背中を少しだけ蹴飛ばして放置する。 |
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| No.660 | 7点 | 声の網 星新一 |
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(2020/01/27 11:03登録) 広義の“レトロフューチャー”か。電話が携帯電話に進化しないまま別方向へ向かった時間線。同作者のショート・ショート群ともまた違った空気感(登場人物がエヌ氏ではなく具体的な日本人の名前である点も大きいかも)を持つ作品世界の予見性には驚いた。無色透明な文体で綴られる、微かな不穏さを孕む静謐な物語は、それ故に、怖い。 実は、インターネットが普及する以前に本書を一度読んでいるのだが、その時に抱いた感想は全く記憶にない。もう二度とそんな読み方は出来ないだろう。嗚呼口惜しい。 |
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| No.659 | 5点 | 最長不倒距離 都筑道夫 |
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(2020/01/23 10:46登録) 作者の意図は判るが、論理が徒にチマチマしているし、物語としてあまり面白くない。私の読み方が下手ってことで。 夜中の12時に置時計が鳴る場面があるけれど、客から文句が出ないのだろうか。 |
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| No.658 | 8点 | キリングクラブ 石川智健 |
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(2020/01/23 10:45登録) この導入部で『DINER』(平山夢明)を連想するのは致し方なかろう。正直、前半のうちは“或る種のパターンに則って上手に書いており見事、だがそれだけ”と悔し紛れのイチャモンのような感想だった。しかし後半の、設定自体をレッド・ヘリングに据えたが如き展開にはびっくり、脱帽。 第四章、脳外科医の意外な行く末はとても面白かった。第五章の出版社のエピソードはその後に全くつながっておらず不要なのでは。 |
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| No.657 | 5点 | 大江戸ミッション・インポッシブル 顔役を消せ 山田正紀 |
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(2020/01/23 10:44登録) 天保の江戸を舞台に闇の勢力が激突(密室殺人も発生)。人間離れした遣い手がアレコレ登場するが、ギリギリ現世に留まっている(か?)。 近年はSF回帰の傾向が目立つ作者だが、こんなシリーズに対する意欲もあるのかと意外に思った。終盤は強引な展開で無理に見せ場を作った感あり、以下次巻。 |
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| No.656 | 6点 | イヴの末裔たちの明日 松崎有理 |
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(2020/01/20 11:04登録) 結構バラバラな作風の短編集だが、器用貧乏には見えないところが立派。御題は脱獄・宝探し・新薬実験……最も異色な「まごうかたなき」が特に良かった。 ただ、思わせぶりなリンクが有ったり無かったりで、“アレは何だったの”と言う疑問が幾つか無くも無い。例えば、主人公がキスチョコを路上に散らしたことと宇宙生命体がキスチョコ型であることは関係があるのか? とか……。 |
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| No.655 | 6点 | 密葬 ―わたしを離さないで― 江波光則 |
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(2020/01/20 10:59登録) 物語的にも心情的にも内向きに完結した『鳥葬』にどんな続きがあるのかと訝ったが、それでも人生は続くわけだ。捻りは無いけれど、嫌な人物を魅力的に描く腕も、投げ遣りな文芸論も、なかなか悪くない。 |
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| No.654 | 7点 | 赤い部屋異聞 法月綸太郎 |
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(2020/01/20 10:56登録) オマージュ作品を集めた短編集。とりあえず、オマージュ云々とは無関係に概ね楽しめた。ベストは「まよい猫」。 私が知っていた元ネタは一つだけ。元ネタ既読ならもっと違う景色が見えたかもしれないが、それは判断出来ない。オマージュを先に読んでしまうことで、いざ元ネタを読む時に興が殺がれている可能性はある。 元ネタがどの作品か事前に判れば読者が主体的に読む読まないを選べるが、タイトルから元ネタを予想出来るのは2編だけ? 元ネタの一覧表は無く、各短編のあとに解説が付されているので、途中のページをパラパラめくって確かめることになるが、それだと余計なネタバレが目に入りかねないのが問題。 事前に判ればいいとも限らず、読みながら嗚呼この話はアレかぁと気付くのが楽しいかもしれない。しかし(多分)なかなか幅広いセレクションで、元ネタを全部知っている読者は限られるのではないか。 つまり、作品集の体裁に、読者の“何をどういう状態で読みたいか”と言う選択肢を奪ってしまう側面があるようだ。好きな作家なので読んだが、こういうのはこれきりにして欲しい。好き度のもっと低い作家だったら“オマージュ短編集”と言う時点で敬遠したと思う。 |
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| No.653 | 5点 | 七つの棺 折原一 |
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(2020/01/20 10:53登録) トリックの傾向を考えるとパロディ形式の選択は妥当だけれど、ユーモアのセンスが自分にはあまり合わなかった。“要は見せ方なのだ” との作者の言に同意(見せ方が合わないのでアウト、と言う意味で)。 |
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| No.652 | 6点 | 鳥葬 ―まだ人間じゃない― 江波光則 |
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(2020/01/16 13:23登録) 鳥葬とは、モノの本によれば、単に遺体を処分する便宜として食わせるわけではなく、鳥を媒介にして空に死者を葬る、との思想だそうな。なんてロマンティックな。ついでに資源のリサイクルにもなる。私の望む葬送法第1位だ。2位は医学の為に献体してそのまま標本になること。 いや全然そんな話じゃないんだけどね。“鳥葬”も比喩表現だしね。 |
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| No.651 | 5点 | 青列車の秘密 アガサ・クリスティー |
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(2020/01/09 12:01登録) 次々に新しい人物が登場して、ええっ多過ぎるよと思ったが心配無用、読み進めるとそれぞれ適切なところに落ち着きスッキリ整理された物語だ。この作者には紋切り型のキャラクターを生き生き描く才があり、風俗小説として面白い。ミステリとしてはつまらない。 あの人の頭文字が●だとは、推測は可能だが気付かなかった。“彼女(メイド)の名前はエレンなんですか、それともヘレンなんですか”と言う台詞が日本人向けの伏線なのである。 |
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| No.650 | 6点 | 贋作ゲーム 山田正紀 |
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(2020/01/09 11:59登録) 作者曰く“実行不可能な作戦を数人のチームが達成する”シリーズの短編4本。個々の作戦は面白いし、短編サイズで過不足ないネタを上手く配している。しかし基本コンセプトが共通なのでどうしても似通った印象。主人公がみな世を拗ねてうらぶれた中年男なので尚更。そして、同趣向の長編に比べて切迫感が無いと言うか、やや淡白。 |
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| No.649 | 7点 | 屈折する星屑 江波光則 |
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(2020/01/05 12:50登録) 厳しく言えば、殺伐とした不良の青春小説の舞台を宇宙時代に移しただけ。とは言えアレンジの仕方としては悪くないし、小手先の技ではなく作者がきちんと作品世界を“引き受けている”感じで好感が持てる。タイトルを始めとして散見されるデヴィッド・ボウイ用語は鼻に付くが、作者にとっては重要だったのだろうからまぁ大目に見よう。 |
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| No.648 | 8点 | 神々の埋葬 山田正紀 |
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(2020/01/05 12:48登録) 『神狩り』『弥勒戦争』『神々の埋葬』で“神シリーズ”とも呼ばれるらしい。しかし山田正紀は以降も繰り返し神をテーマに取り上げているわけで、その呼称はあくまで初期の視点による過去のものと捉えるべきだと思う。 さて本作。スケールの大きさは言うまでもなく、若書きなりに『神狩り』等と比べると登場人物は存在感を増したが、まだストーリーを勢いで駆け抜けてしまった感がある。美味しいキャラクター設定だけしてガンガン使い捨てている。例えば後藤貢あたりのエピソードを一つでいいから(伝聞ではなく)挿入してあれば、ハードボイルドな結末の無常感もいや増したのではないか。 |
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| No.647 | 8点 | 弥勒戦争 山田正紀 |
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(2020/01/05 12:45登録) 乾いた筆致の仏教SF。水面下の全体像がきちんと在って、その上で氷山の一角だけ断片的に描いている感じ。逆に言えば“ここをもっと深く掘ってよ!”と言う箇所があちこちに見られ、決して小説巧者ではない。しかし妙な生々しさが時折グイッと鎌首をもたげる。なんだこれ。 |
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| No.646 | 7点 | 落涙戦争 森田季節 |
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(2020/01/05 12:39登録) 泣かせ屋にロックオンされた泣けない少年。涙の意味を問う(笑)理不尽な一週間が始まった――軽快な文章に絶妙な重さを乗せる才が映え、表層の雰囲気だけでなく堅いコアも持った作家のように思える。西尾維新の戯言シリーズの後半のパスティーシュ、のような騙しの物語。 |
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| No.645 | 3点 | 災厄の町 エラリイ・クイーン |
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(2020/01/05 12:36登録) 何か変だ。“3通の手紙”が、どうにも納得出来ないのである。 殺人計画を立てる。そして、実行したわけでもないのに、その状況を知らせる(つまり架空の内容の)手紙を書く――何の為に? そんな準備が必要? リハーサル(笑)? “妻を殺す”ごっこ遊びで、敢えて実際に書くことで心の奥の鬱屈を昇華させようと試みた、なんて解釈の方がまだ判るけどなぁ。“手紙=殺人計画の証拠”と言うことを誰も疑っていない。この奇妙な世界設定、目をつぶるには大き過ぎる。 出番少ないけど長女ローラのキャラクターは好き。 |
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