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ミステリの祭典

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宝石泥棒

作家 山田正紀
出版日1980年01月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2024/10/28 22:27登録)
エスニックで豪奢な神話世界。

今本作を読むと誰もが「RPGっぽい」と思うんじゃないかな。よく構築されたファンタジー世界であるし、そのファンタジー世界の裏にあるSFのロジックが露になったときに、予感したものがベールを脱ぐ姿に惜しいような感情も持つ。言い換えるとRPGの「嘘くささ」がやはり嘘くさいものであり、そういう事情への幻滅感が「SF」の特性でもあるのかもしれない。

それでもこのファンタジーとSFの融合っぷりで連想するのは諸星大二郎の「孔子暗黒伝」なのだ。実際、東南アジア的な第一章、中国的な第二章、急転してSFとなる第三章という世界構成にも、評者は「孔子暗黒伝」の影を感じる。しかし、双六的な諸星に対して、RPGである山田正紀に「異常なほどの先駆性」を感じる、感覚の上で「断絶」と呼びたくなるものもまた別途興味深いところでもあろう。

いやマジでアニメ化希望(苦笑)主題歌は...「空なる螺旋(フェーン・フェーン)」といえばさ、

絹の道をゆく 東の風に乗り さあ五色の旗 なびかせて行こうよ
珊瑚や瑠璃ダイヤモンド あふれる楽園(ZELDA「Dancing Days」)

No.1 10点 虫暮部
(2020/05/28 11:07登録)
 山田正紀作品は概ね目を通しているが、最高傑作と推したいのは本書。イマジネーション豊かな異界、運命に抗う旅、奇妙な仲間達、友情努力勝利敗北。贅沢に全部載せてしかも隅々までこぼすことなく味わえる。
 『神々の埋葬』のように、まだ広げられる余地を残したままの完結でなく、『ミステリ・オペラ』など大長編の胃もたれ必至の物量戦でもなく。
 やや長めの『宝石泥棒』は、物語が内包するスケール感と具体的なページ数がピッタリ一致して、食い足りなさも読み疲れも感じない。諸々のエピソードがバランスよく盛られ、いや違う、バランスの悪さも滑らかな模様に見える高い視点に読者を導き、不器用な作家であちこちぶつけながら領域を広げてきた山田正紀としては驚くほど綺麗な球体を描いているのである。瑕瑾……はあるのかもしれないが、あまりに鮮やかな作品世界の中に居ては気付く余地が無かった。
 チャクラが小丑から料理で一本取る場面が大好き。

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