時空旅行者の砂時計 〈竜泉家の一族〉シリーズ |
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作家 | 方丈貴恵 |
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出版日 | 2019年10月 |
平均点 | 7.40点 |
書評数 | 15人 |
No.15 | 7点 | suzuka | |
(2024/10/19 13:58登録) 既に起きた連続殺人事件を、過去にタイムスリップして阻止するというシチュエーションは面白いと思います。 タイムスリップがストーリー上の必要不可欠な設定であると同時に、謎解きにおいても特殊設定として上手く使われており、完成度が高い作品だと思いました。 主人公の相棒の女の子が可愛い。 |
No.14 | 5点 | hsiyehmeipo | |
(2024/05/05 02:37登録) 多重解決と特殊設定をまぜてどっちつかずになってしまっている感じがある。 ネタバレあり タイムパラドックスで殺したという推理が結局違う、という流れには「時空旅行」の特殊設定なのに、よさを消している気がした。 それで「時空旅行」要素は結局タイムトラベルで更に1日長くずらして誤認させた、というトリックなのだが、睡眠薬で太陽の日が入らない建物の中でも同様のどりっくは成立させられるし、特殊設定でなくても成立するのでは?と感じてしまった。 |
No.13 | 6点 | パメル | |
(2024/01/22 19:18登録) 主人公のライター・加茂は、間質性肺炎に冒され命が危うくなった愛妻を救うため、マイスター・ホラと名乗る正体不明の存在の声と砂時計に導かれ、2018年から1960年にタイムトラベルする。そこでは、妻の先祖である竜泉家で忌まわしい連続殺人が起こり、その後に土砂崩れで一族のほとんどが死亡することになっている。 橋の崩壊によって陸の孤島となった古い屋敷、いわくありげな一族の人々、次々に起きる不可能犯罪、見立て殺人、土砂崩れまでのタイムリミット。本格好きにはたまらない要素が満載。 マイスター・ホラによって説明されるタイムトラベルに付随したルール設定が、あまりにご都合主義と感じられたが、中盤に入ると謎の声の正体や、なぜタイムトラベルする必要があったのかも論理的に説明され、真相と緊密に結びついていることが分かり感嘆させられた。終盤には読者への挑戦状が挿入される。いろいろな要素を詰め込みすぎた感はあるが、異様な犯罪動機もSFミステリならではで満足させられた。 |
No.12 | 7点 | レッドキング | |
(2024/01/18 22:45登録) ミステリ風味のSFファンタジーかと思いきや、「夏への扉」「バックトゥザ~」設定の密室ミステリだった。三次元密室を四次元時間で突破したタイムワープアイデアより、二重バラバラ殺人の不可能トリックが良い・・「妖魔の森」「占星術」「翼ある闇」二階堂黎人にも匹敵し・・鍵と扉の人物消失トリックもなかなかに。8点つけよか迷ったが・・「純ミステリ」だったらなあ・・ ※この作家も、相沢沙呼・白井智之・今村昌弘・夕木春央等と同様、このサイトで教えてもらった・・普段、「この○○がすごい」「○○ベストテン」等読まず、あまり若手作家に興味もないので・・いろいろ紹介下さる皆様に感謝 m(__)m |
No.11 | 6点 | makomako | |
(2023/10/27 19:33登録) このサイトではなかなか評判が高いようですが、私はすごいというほどには思いませんでした。 出だしはとても良い。SFと本格ミステリーが上手にカクテルされたようで、ワクワクします。 本格物は随分前よりネタ下れ気味になっているので、こういった方向での試みは悪くはない。 ところが一定の縛りはあるとはいえ、お話が時間を超越した移動方法が大きく影響してくると、なんだかばかばかしい感じが否めませんでした。 皆さんの評価が高いので、私の感覚が古いのかも知れません。 それでも作者の次の作品は読んでみたい、そう思わせるところはたくさんありました。 魅力的な作品であるとは思っています。 |
No.10 | 7点 | 雪の日 | |
(2023/10/20 15:15登録) タイムスリップが絡む本格SFミステリ。 タイムスリップものは読後感が悪かったり、モヤモヤしたものが残りがち(最近なら某ヤンキー漫画など)ですが、この本は読後感が良かったので高評価。 |
No.9 | 10点 | 点と点 | |
(2023/08/31 17:57登録) コイツァ久しぶりにスゲー新人が来た これはまだ広くお勧めできる作品だがこれ以降どんどんニッチになっていくのも見どころ。鮎川哲也賞はなぜかほかの新人賞に比べてアテになるさすが鮎川。同じ特殊設定もので鮎川哲也賞の屍人荘は非ミステリ好きをも巻き込んだ人気作品であるのに対して、こちらはちとヒットしてないようだ。アミュレット・ホテルとかから少しでも著者人気が出ることを願う。 |
No.8 | 6点 | メルカトル | |
(2023/08/28 22:30登録) 瀕死の妻のために謎の声に従い、二〇一八年から一九六〇年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の先祖・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は二〇一八年に戻ることができるのか!?“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第二十九回鮎川哲也賞受賞作。 『BOOK』データベースより。 序盤は期待しかありませんでした。これは何かやってくれるんじゃないかと思いましたね。しかし、次第に本格ミステリをSFが上回ってしまい、余り望んでいた方向へ進んで行っていない気がしてきます。 これがデビュー作であった為とは思いませんが、どこか文章がこなれていない印象を受けました。そして、特に第一の殺人の詳細な説明が成されていない様に思いました。やたら不可能犯罪と連呼していますが、余りに囃し立てても逆効果で、こちらとしては冷めてしまう面もあります。それに加えて、見立て殺人に仕立てる必然性があるとは思えません。 好みの問題もあるでしょうが、私的にはどうもややこしくてSF要素が邪魔になって、読者への挑戦状が挿まれても、どうせタイムスリップが絡んでるんだろうとしか思われません。犯人に関しては最初の方で見当は付きました。まあ当てずっぽうでこいつしかいないだろう位でしたけどね。 余談ですが、鮎川哲也賞の論評で辻真先が、後に刊行される事になる紺野天龍の『神薙虚無最後の事件』のネタバレをしていますので注意してください。 |
No.7 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2023/08/02 15:23登録) 前半は、説明的でスピード感にやや欠ける展開です。SF(何でもあり~アンフェア)X本格(フェア)=アンフェアの公式を打ち破ることはできないと常々思っています。本作はロジック面では本格と言えますが、やはり大枠ではSFです。終盤までに、2件ものSF的トリックが登場し拍子抜けしてしまいました。しかし、SFトリックでは面白い試みであった1件を残し、もう1件はオーソドックスな本格ものの解決に導いています。ここで評価は5点から+2となりました(笑)。SFで高評価の「星を継ぐもの」の良さが、未だによくわからないので、タイム・パラドックスと言われても余計に理解出きません。やはり、SFはエンタメ系に限るとの思いを強くしたところです。 |
No.6 | 9点 | mozart | |
(2023/07/24 18:18登録) ちょっと前に読んだのですが大変面白い作品だったことはよく覚えています。SFは(小説は余り読みませんが)嫌いではないので「時間旅行」という「特殊設定」もすんなり受け入れることができました。設定の「制約条件」も十分フィージブルで明確に示してあるし、何よりいわく因縁のある一族の住まう館であるとか美しい(かわいらしい)協力者とかタイムリミットとかワクワクするコンテンツが盛りだくさんなところも本格好きにはたまりませんでした。ストーリーの締め方もすばらしく、読後感も非常に良かったです。 |
No.5 | 10点 | 密室とアリバイ | |
(2023/05/10 19:07登録) よくある設定だが、ミステリに組み込むことで素晴らしい効果をもたらしている。 このご時世に丁寧に挑戦状がついていると嬉しくなる |
No.4 | 9点 | みりん | |
(2023/04/15 15:35登録) 特殊設定ミステリとして最高峰だと思います。 |
No.3 | 9点 | sophia | |
(2021/02/10 18:23登録) 中盤にマリスやらカシオペイアやらが出てきたときには、ここまで細かく積み重ねてきた伏線が無視されてほぼSFになってしまうのではないかと危惧しましたが、最後まできちんと本格ミステリーをしていました。世界観はスケールが大きく難解で、事件に関する情報量も多くて整理していくのが大変にも関わらず、一気に読ませる力があります。この作品の全てを理解できたわけでもありませんし、こじつけのような見立てが必要なのかなどと考えると点数を付けるのは非常に難しいのですが、SFマニアであろう著者の意欲を買ってこの点数とします。 |
No.2 | 6点 | 虫暮部 | |
(2020/06/02 12:09登録) SF設定を組み込んだミステリと言うのはもはや珍しくもないので、その点だけ取り上げて変に騒ぐことはないし、普通のミステリと同列に並べて正当に評価することが出来る。本作は本格ミステリとしては結構王道で、手を抜かずに色々組み立てていると思うが、優等生的であるがゆえの物足りなさ、パターンをこなしている感じ、も否めなかった。内容ではなく書き方の問題が大きいかと。 あのSF系トリックには、そんな手があったかと感心した。一方、Tさんの死因が日記と異なるのにはどういう意味があるのか。タイム・パラドックスは苦手だ。 第四章の筆談はもっと筆談っぽい文体にしたほうが演出上良いと思う。 |
No.1 | 7点 | 名探偵ジャパン | |
(2020/01/29 13:51登録) 鮎川哲也賞受賞作品だというのに、発売から三ヶ月一件も書評がないというのはどういうことでしょう? やっぱり皆さん、このタイトルを見て「あ、これヤベーやつだわ」と嗅覚を発揮したのでしょうか? 本作の概要は、「主人公が過去にタイムトラベルして、妻の命を救うため、その遠縁となっている過去の連続殺人事件の謎を解く」というものです。これを読んで「俺の嗅覚は正しかった」と安心した方もいると思います。さらにこの「タイムトラベル」という要素は舞台設定だけで終わりません。トリックにもがっつり絡んできます。正真正銘「特殊設定ミステリ」なわけですね。ですので「この手のミステリが苦手」という方は回避してもいいのではないかと思います。私は、それでもよく出来ていた(「特殊設定」のトリックへの使い方も含めて)と感じたので、この点数を付けていますが。 ここからは余談です。 本作(及び今回の第29回鮎川哲也賞への全ての応募作品)は、時期的に、近年まれに見る大怪物作品へと成長した第27回の受賞作品を踏まえたうえで応募されたものであるためか、巻末に掲載されている講評にあった最終選考作品にオーソドックスなミステリは一本もなく、全てが何かしらの「色物系」属性を持った作品だったようでした。 そもそも「新人賞」には「これまで誰も読んだことのないような斬新な作品」が求められがちですが、それを考慮するとしても、もはや現代ミステリにおいては「オーソドックスなミステリ」は必要とされていないのかな?と少し寂しい思いをしました。「江戸川乱歩賞」や「横溝正史ミステリ大賞」などの受賞作を見ても、「色物系」「社会派」「医療系」のどれかが受賞している印象がありますし。 |