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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2209件

プロフィール| 書評

No.2089 7点 飽くなき地景
荻堂顕
(2025/10/24 13:49登録)
 前作で積み上げたものを一から組み直したような変貌である。頭でっかちで中途半端に皮肉屋な主人公の人となりを、回りくどい一人称の文体で的確に表現していて感服。
 このキャラには冷笑半分共感半分。ジーンと来る場面を提示した後の仮借無く苦い落とし方に翻弄されるばかり。
 ミステリやアクションの要素は希薄だと私は感じた。しかしそれは、そういう形のフック無しでも引っ張ってやると言う心意気だろうと思う。


No.2088 6点 五十万年の死角
伴野朗
(2025/10/24 13:49登録)
 北京原人の化石……そんなものの為に人がポンポン死んで行く(名前も無いまま殺されたモブに合掌)。金銀財宝の為なら良いと言うわけではないが、上官がマニアックだと大変である。まぁマクガフィンとは概してそういうものか。この虚しさこそ或る意味でこの手の物語の醍醐味なのだろう。


No.2087 5点 誘拐劇場
潮谷験
(2025/10/24 13:48登録)
 導入部はとても面白かったが、肝心の誘拐事件にはあまり乗れなかった。位置情報ゲームと言われてもピンと来ないせいか、百人超が動いている割に表層は地味なせいか。また、心理的な駆け引きを説明的に描き過ぎだとも思う。総じて “良く出来た理屈を読まされた” と言う印象(良い意味悪い意味半々)。


No.2086 4点 モンテスキューノート アガタ2
首藤瓜於
(2025/10/24 13:48登録)
 プロットがそこまで悪いとは思わないが、書き方が雑。書き易い場面だけ並べた感じ。でも、“小説を書く” とは、頑張ってその隙間を埋めることではないのか。論文投稿者を矢鱈と詳しく紹介しているが、注力すべきはそこじゃないだろ。


No.2085 5点 死神の座
高木彬光
(2025/10/24 13:47登録)
 次の犯行を待っているかのような、のんびりした捜査。殺人事件よりも、“神津恭介が列車で同席した謎の女の言動” の真相の方が、苦笑させられつつも印象に残った。

 意味ありげな “死神の座” だの “さそり” だのは、“旧家に連綿と続く恨みの象徴” とかでなく単なるでっちあげのポエムであり、それを変に真に受けた恭介のせいで捜査陣&読者に対して必要以上にフィーチュアされている――この構造は、よくある “トレード・マーク付きの連続殺人” に対する批評となっているのである。高木彬光は雰囲気やパターン重視の作風かと思っていたが、こういう醒めた視座も持てたんだなぁと感心した。


No.2084 8点 接物語
西尾維新
(2025/10/18 12:28登録)
 単なるキャラクター小説ではなく “禁忌の儀式” と言う具体的な軸が一本通っているので、下町の工場ではぐれ者社員が新製品開発のプロジェクトに挑む! みたいな読み味で、いつの間にかおぞましさが中和されていた。サラリと記述されているが “途中参加の彼がぶっ倒れるほど身を尽くした” ってところ、いいなぁ。
 そしてあの呪文には痺れた。漢字マニアなので。いや本当に。


No.2083 5点 死体埋め部の回想と再興
斜線堂有紀
(2025/10/18 12:27登録)
 (x)(y)ってどういうこと? 読後に粗筋紹介を確認してやっと理解した。SFでもないのにこういうことするのはちょっと如何なものか。
 まぁそういう “企画” なのは判るが、無数の可能性を一つに収斂させて特定の文字として定着させることこそ “小説を書く” ことであって、一つに絞れないならそれを両立させる工夫をすべきなのでは?

 その部分は抜きにして物語自体について言えば、前巻と概ね同じ。設定上、物凄く斬新な推理とかは出にくい。
 あと、先輩がそこまで魅力的なキャラクターではない(駄目人間だけど愛せる、みたいな感じでもない)せいか、たまに深みのありそうな人生訓(?)がチラリと見えてもすぐ有耶無耶になっちゃうな~。


No.2082 5点 オルゴーリェンヌ
北山猛邦
(2025/10/18 12:27登録)
 “私をオルゴールにしてください” って、こんな幻想的なイメージじゃなくて、江戸川乱歩のグロテスクな耽美的人体改造芸術だよ。一方で “オルゴーリェンヌ” は要するに “歌の才がある人” ってだけでは? 前作では割とそのまま受け入れ可能だった世界観だけど、今回は冒頭からうっすらと違和感あり。
 物理トリックは面白いし、クリスとユユのボーイ・ミーツ・ガールとしても良かった。
 しかし、ただでさえ幻想風味のフワッとした筆致で、紙幅が物語の実体以上に膨れ上がっているのである。動機があんな曖昧なままでは支え切れず、単なる愉快犯みたいな印象が残ってしまった。


No.2081 6点 少年検閲官
北山猛邦
(2025/10/18 12:27登録)
 水面下にまだまだ色々潜ませていそうな空気感は良いし、この世界でならあれらのトリックもOKだ。しかし物語そのもののその場その場での吸引力がちと弱い。
 そして何より犯行動機。書き込む “内容” が無いと書物は成立しないのであって、そこがなおざりにされていないか。邪魔が入らなければ犯人は願いを叶えられたのか、疑問符が付く。


No.2080 6点 殺意
フランシス・アイルズ
(2025/10/18 12:26登録)
 “細菌培養器がなくなっていた” と言うエピソードは何? もしかして読者に丸投げされている謎がある? ならばそれは、当然エピローグ(←私は高評価する)に関する部分だよね。
 伏線の乏しさを逆手に取って自由に想像するなら、当然あの女の犯行である。彼の失言から逸早く真相を推理して(が言い過ぎなら、非論理的な勘で真実を見抜いて)自分でもやってみた。気持が不安定なひとだから早くも厭になっていたのだろう。
 その流れで、自分が殺されかけたことまで悟ったなら、証言も辛辣になろうと言うものだ。あわよくば自分の犯行も押し付けてしまおう。釈放されたら自分が危ない。相手が拘束されているうちなら偽装工作もやり易い。一度は愛し合った蛇と蠍の殺し合いだったのである。


No.2079 7点 18マイルの境界線
川瀬七緒
(2025/10/10 12:49登録)
 このシリーズにしては比較的グロくはない。知の力のよって闇が切り拓かれる様には爽快感を覚えた。
 但し、被害者も犯人もあまりに唐突に特定されていて、本格ミステリ的な謎解き要素はほぼ無くなってしまった。そこが少々物足りなくもある。
 ところでこのタイトル。“某所から某所までの距離が直線で30キロ弱(≒18マイル)” に由来するのだろうか。でも “境界線” はその円周なんだから数値が違うのでは?


No.2078 6点 夏休みの殺し屋
石持浅海
(2025/10/10 12:49登録)
 謎の答がどうあれ、結局は殺すんだけどね。シニカルなスタンスが特徴的なシリーズ。その上でパターン化しないよう色々工夫しているのは良い点。
 ただどうも中域で安定飛行と言うか、これは傑作! と言う突出したエピソードが無く坦々とした印象なのが惜しい。

 「花を手向けて」。あんな遠回しなメッセージは如何なものか。伝わらなかったら意味が無い。匿名で通報すれば済むことである。


No.2077 8点 ハンニバル
トマス・ハリス
(2025/10/10 12:48登録)
 “レクター四部作” とか称されるが、今思えば前二作のレクター博士はチョイ役に過ぎない。ようやく彼が舞台中央に躍り出た。しかも実はラヴ・ロマンスだった……。
 かと言って独擅場と言うわけではなく、異様な登場人物ばかりで誰に肩入れすべきか迷う。誰がどうなっても自業自得ばかり。作中髄一の純粋さを保った男が生き延びたのは、ドブのような世界へ作者が託した希望なのだろうか。
 しかしアレって美味しいのかしらん。興味が無いこともない。


No.2076 5点 合理的にあり得ない
柚月裕子
(2025/10/10 12:48登録)
 一話目が滅法面白い。予知のトリックも大胆だが、それを見抜いたその先の落とし方、小切手を放棄させる駆け引きに驚いた。
 でも良く考えると、アレはダブルバインドみたいに見えるけど、第三の選択肢があったね。交換に応じた上で、メモをすぐ燃やしてしまうのだ。“やはり私は能力を使って利益を得るのは潔しとしません” とか言えば、さすが先生! となるのでは。小切手は自分の懐から出たわけじゃないんだから “得られた筈のものが得られない” だけで、信頼は維持出来るでしょ。

 とか余計なことを考えるのは歯応えがあった裏返しであって、期待もグンと高まったのだが、それ以降は何か大したことないなぁ。
 全体的に、依頼人サイドは被害者面してるけど、自業自得の度合が結構高くないか?――あ、そうか。まっとうな被害者はもっと正攻法で訴えるから、涼子に御鉢が回って来ないんだ。


No.2075 4点 どうせ世界は終わるけど
結城真一郎
(2025/10/10 12:47登録)
 謎解き中心と言うよりは、それを通じて作者の言いたいことが色々ありそうなメッセージ系ミステリ? でもそれをこんな風にはっきり出しちゃっていいの?
 ハイ、これを読んでこう思って! ここで共感して! みたいな作者の思惑があまりに露骨。そういうのはもっと物語の背後に上手く潜ませて欲しい。作中のサッカー少年のように、“押し付けんなよ” “言われたからやってるみたいになるのは納得がいかない” って気分。
 そんな中で「友よ逃げるぞどこまでも」だけはとても面白い。そしてそれは、登場人物の心情云々よりも、犯罪絡みの設定に負うところが、やはり大きいのではないか、と思った。


No.2074 10点 抹殺ゴスゴッズ
飛鳥部勝則
(2025/10/04 13:05登録)
 “あの頃僕は神を愛していた。”

 何て素晴らしいイントロ。或る種の小説は、文体によって成立している。或る種の小説は、物語性よりも世界観の構築によって成立している。
 その中でもこれは驚嘆すべき存在だ。だから、その “世界” の濃度に圧倒されて、相対的にミステリ的な謎解きが卑小に感じられても構わないのである。そもそも作中の仕掛けの多くは普通に読めばバカミスだろう。ところが、その全てをアリにする世界が、言葉の力によって私の眼前に立ち現れたのだから、抵抗しようが無いじゃないか。
 いい加減長かったけど、まだ終わるなと願いながら読んだ。ズブズブ分け入った彼岸から、最後に一歩こちら側へ戻って来る終章も完璧。あ、でも正直に懺悔すると、桜とカナヨの区別がイマイチ付かなかったな。


No.2073 6点 腸の器
樹島千草
(2025/10/04 13:04登録)
 ぶっちゃけ前作と概ね同じ。“シリアル・キラーもの” と言うジャンルがあって、何らかのトレード・マークやキー・ワードを用意して、精神症やトラウマの知識をまぶせば一丁上がり。
 ってなもんだけど、パティシエの技術がしっかりしているから、甘く危険な香りに誘われてついまた味見したくなってしまう。
 前作から、事件としては別物だけど根っこは繫がっているので、このやり方で行くなら巻数を示した方が良いのでは。これは順番通り読むべきでしょ。


No.2072 6点 天の川の舟乗り
北山猛邦
(2025/10/04 13:03登録)
 「人形の村」はちょっとズルい。詐欺師が騙りによって何らかの状況をでっちあげることは可能だろう。肝心なのは、そこからどういう名目でカネを引き出すかであって、それをキッチリ作中で確定させないのは手抜きである。
 表題作。殺人と言う行為と動機との間にギャップを感じる。でも初期作品にも似たような思想(?)を絡めていたっけ。
 「怪人対音野要」のトリックは好きだな~。犯人があんなのを予め仕込んでおく不自然さも含めて、これぞ北山猛邦。


No.2071 7点 密室から黒猫を取り出す方法
北山猛邦
(2025/10/04 13:03登録)
 この二人、やっぱり良いなぁ。何と言っても「停電から夜明けまで」がグレイト。引きこもり探偵の本領発揮。
 「クローズド・キャンドル」のトリックも馬鹿みたいだけど面白い。鴨崎暖炉は “物理の北山” の悪影響で生まれたのだろうか。


No.2070 7点 踊るジョーカー
北山猛邦
(2025/10/04 13:02登録)
 びびり猫を手懐けようとしているみたい。探偵のキャラクターに惹かれてシリーズを手に取るのは結構久々かも。
 語り手も変な奴で、単なる読者の代理人やカメラではなく、その内面を適度に開示しつつもこちらの予想を裏切る塩梅が巧み。シリーズもののワトソン役でこれをやって自然な作例って、あまり思い付かないんだよね。

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