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ミステリの祭典

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創造士・俎凄一郎 第一部 ゴースト

作家 山田正紀
出版日2007年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 虫暮部
(2025/01/10 17:12登録)
 あっちでもこっちでも殺意が芽生える不穏な街。俎凄一郎と言うのは『篠婆 骨の街の殺人』にチョロッと名前だけ挙がった “とき” みたいな存在か。多分その頓挫した “街シリーズ(?)” の雪辱戦として、同じ講談社ノベルスで立ち上げた新シリーズだが、結局また1冊きりで立ち消え。まったくもー。

 微妙に螺子の緩んだようなエピソードが続く。摑みどころのない描写は話が進むにつれますます曖昧になり、雨に打たれて迷い込む街は更に荒涼とし、足下はどんどん覚束なくなる。“何度も死ぬ犯人” は、トラウマで精神が歪んだと理屈を付ければ何でもアリじゃないかと揶揄したくもなるが、薄暗い街の空気と相俟って背筋が薄ら寒くなった。
 複数の事件が意味ありげに並ぶだけで未整理のまま終わってしまったので連作長編としての納まりは悪いが、決してつまらない作品ではない。雰囲気は『篠婆 骨の街の殺人』よりも『氷雨』に通じる?

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