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ミステリの祭典

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予感(ある日、どこかのだれかから電話が)

作家 清水杜氏彦
出版日2022年06月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2023/01/14 16:02登録)
(ネタバレなし)
 帯に書いてあるように、読者は
①ホテル勤めのハイティーンの読書少年ノアと、後輩の美人従業員ララ
②ある連絡を受け取った作家シイナ
③ある犯罪に関わった女性ジュン
 ……をそれぞれメインにした、3つの流れのストーリーに付き合うことになる。

 大き目の級数の書体で、一段組で本文230ページ前後と、作品全体のボリュームは少ない。たぶん一冊の長編ミステリとして刊行できる最低クラスの短さだろう。
 
 とはいえ、相応にテクニカルな作品ではある。
(一方でHORNETさんが先におっしゃるように、それなりのもの、さほど新奇なものではない、という面もあるが。)

 なんというか、ジジイの古参ミステリファンの正直な、少しややこしい気分で感想を言うなら、60年代後半のミステリマガジンに、編集部オススメでいきなり一挙掲載された原稿用紙換算200枚くらいの中編(今回の本作はもうちょっと長いが)で、未知の作家の未知の作品で、けっこう技巧的なものを読まされた感じ。その上で、それなりに面白かった、楽しかった、とは思う。

 作品トータルの仕掛けもまあ悪くはないが、登場人物の名前をどのラインもカタカナ表記にしたことで、全体にある種の無国籍感が発生。
 こういう作中作の場合、都筑の『三重露出』のように、ストーリーの片方あるいはどれかはコントラストで、きわめて地味で堅実な書き方、もう一方を派手にマンガチックに、という仕上げにしそうな感じだが、本作の場合は三つのストーリーの叙述が適度に差別化、適度にトータライズされているようで、その辺の演出がちょっと面白い効果を感じさせたりした。
 
 小品の上、という歯応えの作品で、そんなに高得点はあげられないが、ちょっとミステリらしい楽しさは感じさせてくれた佳作~佳作の上。

No.1 5点 HORNET
(2022/11/30 23:32登録)
 「配られたカードで人生が決まる」。人生をあきらめ、ホテルで住み込みの雑用係を務める少年、ノア。親しくしていた女性従業員が去ったあとに入ってきた女性ララは、秘密裏に公衆電話で誰かに電話をしている怪しげな様子があった。ある日ノアはその電話をたまたま聞いてしまう。その内容は、まるで相手を脅迫しているかのような電話だった―

 「入れ子構造ミステリ」を謳い文句に、新しい試みがなされているかのような宣伝文句の本作だが、ミステリに読み慣れている人たちからすればきっとそうでもない。ただ、ララがかけている電話の内実が明かされていく後段はそれなりに面白みがあり、読ませる内容だった。

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