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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2139件

プロフィール| 書評

No.2099 7点 戦争を演じた神々たち
大原まり子
(2025/11/07 12:10登録)
 基本的に整合性が求められるミステリは、それ故に時として大胆な破綻が一線を越える為の表現になり得る。それに対して、投げっ放しでも成立する(特にファンタジー寄りの)SFには、それ故にこそ何らかの糸を一本通して単なる断片集にならないよう繫ぎ止めて欲しいと私は思う。

 さて本作。どこまでも美しく奔放なイマジネーションを(結構シンプルに、無造作に)言語化しているのは間違いない。
 しかし私には、何故これらの短編群が共通の表題を戴くシリーズとして纏められているのか、ピンと来なかった。謎の軍団だけでは背景として弱い。寧ろ一つ一つ単独の短編として読んだ方が楽しめそう。作者の意図を受け止め切れなかったみたいで口惜しい。


No.2098 5点 私たちに残されたわずかな永遠
乾緑郎
(2025/11/07 12:10登録)
 二つのエピソードは、斬新と言う程ではないにせよ、しっかり組み立てられていてそれなりに読ませる。しかし本の真ん中辺りで両者の絡み方は見当が付き、そして捻りも無く予想通りに纏まってしまうのだ。これでは思わせ振りに二つ平行して語ったのが寧ろ逆効果。
 “ドゥマレ” の自然環境はもっと異界感たっぷりに設定しても良かったんじゃないか。タブレットを “石盤のような” と形容するのは皮肉っぽくてナイス。


No.2097 5点 作家の人たち
倉知淳
(2025/11/07 12:10登録)
 “作家はネタに困ったら出版業界ものを書く” と言う印象があるけど、どうなんだろう。
 多少の捻りはありつつ、劇毒ではなく許容範囲内の悪ふざけに留まっている点も、この人らしいと言えばらしい。が、さほど高評価出来ない理由でもある。

 有栖川有栖『作家小説』にはちょっと負けるか。あ、アレも同じ版元だ。節操無いな幻冬舎(笑)。


No.2096 5点 蝶たちは今…
日下圭介
(2025/11/07 12:09登録)
 結局、一番の焦点は(人死に自体よりも)芝居じみた “幽霊からの手紙” に関するホワイであって、そこが満足とは言いがたい。思いがけない真相ではあるが、他者を操るようなあの発想は好きではないなぁ。
 英語の遺書、車の中の蝶、ハンモック、と言った細かいネタは悪くないし、その人が被害者になる展開には呆然としたけどね。


No.2095 4点 ひげのある男たち
結城昌治
(2025/11/07 12:09登録)
 こういう設定の犯人について、例えばEQのあの作品には “アッ、やられた、成程” と納得した。ACや綾辻行人なら “うーむ、まぁ受け入れざるを得まい”。でも本作は “ズルい” と感じた。
 何が違うのか、自分でも線引きは出来ないが……その人の存在感が薄いせい? 事件に関わる蓋然性はそれなりにあってアンフェアだとは言えないが、論理が充分に緻密だとも思えない。第二の殺人のホワイが大胆な手掛かりになってはいるんだけどね。


No.2094 7点 彼女たちの牙と舌
矢樹純
(2025/10/31 13:11登録)
 随所に捻りがあって息をつく暇も無い。ただ、全体として、“言質を取る” とか、相手のフェアネスを信頼し過ぎな感がある。殺人も辞さない反社なのに。反撃したら駄目だろう。ロックオンされないように逃げることをもっと重視しないと。
 まぁ最後の落としどころは、それを踏まえて上手いところを突いていたと思う。

 ところで第一話。あの人が相手方に情報を売ったなら、前半の “どうして素性がばれたのか?” の推理は机上の空論? でもそれは釣りメールが来た現実と矛盾してない?


No.2093 6点 嘘つきたちへ
小倉千明
(2025/10/31 13:11登録)
 定型から幾らかズラした設定だが、高いミステリ的偏差値、しっかりしたロジックで、設計図を基に書いたような緻密なフォルム、美文と言う程ではないが端正な文体、短編集や連作長編でデビュー――と言う新人さん、近年数多く出会っている気がする。
 どれも悪いことじゃないんだけど、それ故に個性の確立が難しいのが問題。本作もそう。

 “芝居を打って相手に何かをさせる” 話は好きではない。相手の反応を都合良く予測出来過ぎだし、変な状況が割と何でもアリになってしまうし。


No.2092 4点 女たちは泥棒
半村良
(2025/10/31 13:10登録)
 伝奇SFの半村良。本作はソフト・ピカレスクと銘打たれているが、驚く程に捻りが無い。泥棒チームの冒険譚と言うより裏社会の人情話みたいな感じ。面白い部分が皆無とは言わないが、どのあたりが狙いなのか良く判らなかった。最終話は辻褄が合っていないと言うか説明不足。


No.2091 4点 旅人たちの迷路
夏樹静子
(2025/10/31 13:10登録)
 第一話。“偽の手掛かり” を、“偽の手掛かりである” と推理されるよう期待して差し出す、と言うのは面白い。
 しかしその内容が “真か偽か” みたいな単純なものなので物足りない。もっと深みのある心理戦になるべきなのに……。
 そもそも、件のバッグが後から出て来たことによって “(どういう関わりかはともかくとして)その持ち主が事件に関わっている” と確定しちゃってる。犯人に都合が良いのは “あの報道は間違い、警察の勇み足だった” と言う展開だから、バッグは慌てて打ってしまった悪手なのである。

 第二話はもう最初から裏が全て見え過ぎ。


No.2090 4点 幽霊たち
西澤保彦
(2025/10/31 13:09登録)
 うわー判りづらい。まるで “錯綜した事実関係・人間関係を把握出来るかどうか” が主題になっているみたい。
 そこで疲れ果てて、謎がどうとかに立ち向かう余力が残らなかった。核にある幾つかのアイデアは悪くないが、それを成立させる為にゴテゴテ飾り過ぎて本末転倒、と言う作者の悪癖がもろに出ている。


No.2089 7点 飽くなき地景
荻堂顕
(2025/10/24 13:49登録)
 前作で積み上げたものを一から組み直したような変貌である。頭でっかちで中途半端に皮肉屋な主人公の人となりを、回りくどい一人称の文体で的確に表現していて感服。
 このキャラには冷笑半分共感半分。ジーンと来る場面を提示した後の仮借無く苦い落とし方に翻弄されるばかり。
 ミステリやアクションの要素は希薄だと私は感じた。しかしそれは、そういう形のフック無しでも引っ張ってやると言う心意気だろうと思う。


No.2088 6点 五十万年の死角
伴野朗
(2025/10/24 13:49登録)
 北京原人の化石……そんなものの為に人がポンポン死んで行く(名前も無いまま殺されたモブに合掌)。金銀財宝の為なら良いと言うわけではないが、上官がマニアックだと大変である。まぁマクガフィンとは概してそういうものか。この虚しさこそ或る意味でこの手の物語の醍醐味なのだろう。


No.2087 5点 誘拐劇場
潮谷験
(2025/10/24 13:48登録)
 導入部はとても面白かったが、肝心の誘拐事件にはあまり乗れなかった。位置情報ゲームと言われてもピンと来ないせいか、百人超が動いている割に表層は地味なせいか。また、心理的な駆け引きを説明的に描き過ぎだとも思う。総じて “良く出来た理屈を読まされた” と言う印象(良い意味悪い意味半々)。


No.2086 4点 モンテスキューノート アガタ2
首藤瓜於
(2025/10/24 13:48登録)
 プロットがそこまで悪いとは思わないが、書き方が雑。書き易い場面だけ並べた感じ。でも、“小説を書く” とは、頑張ってその隙間を埋めることではないのか。論文投稿者を矢鱈と詳しく紹介しているが、注力すべきはそこじゃないだろ。


No.2085 5点 死神の座
高木彬光
(2025/10/24 13:47登録)
 次の犯行を待っているかのような、のんびりした捜査。殺人事件よりも、“神津恭介が列車で同席した謎の女の言動” の真相の方が、苦笑させられつつも印象に残った。

 意味ありげな “死神の座” だの “さそり” だのは、“旧家に連綿と続く恨みの象徴” とかでなく単なるでっちあげのポエムであり、それを変に真に受けた恭介のせいで捜査陣&読者に対して必要以上にフィーチュアされている――この構造は、よくある “トレード・マーク付きの連続殺人” に対する批評となっているのである。高木彬光は雰囲気やパターン重視の作風かと思っていたが、こういう醒めた視座も持てたんだなぁと感心した。


No.2084 8点 接物語
西尾維新
(2025/10/18 12:28登録)
 単なるキャラクター小説ではなく “禁忌の儀式” と言う具体的な軸が一本通っているので、下町の工場ではぐれ者社員が新製品開発のプロジェクトに挑む! みたいな読み味で、いつの間にかおぞましさが中和されていた。サラリと記述されているが “途中参加の彼がぶっ倒れるほど身を尽くした” ってところ、いいなぁ。
 そしてあの呪文には痺れた。漢字マニアなので。いや本当に。


No.2083 5点 死体埋め部の回想と再興
斜線堂有紀
(2025/10/18 12:27登録)
 (x)(y)ってどういうこと? 読後に粗筋紹介を確認してやっと理解した。SFでもないのにこういうことするのはちょっと如何なものか。
 まぁそういう “企画” なのは判るが、無数の可能性を一つに収斂させて特定の文字として定着させることこそ “小説を書く” ことであって、一つに絞れないならそれを両立させる工夫をすべきなのでは?

 その部分は抜きにして物語自体について言えば、前巻と概ね同じ。設定上、物凄く斬新な推理とかは出にくい。
 あと、先輩がそこまで魅力的なキャラクターではない(駄目人間だけど愛せる、みたいな感じでもない)せいか、たまに深みのありそうな人生訓(?)がチラリと見えてもすぐ有耶無耶になっちゃうな~。


No.2082 5点 オルゴーリェンヌ
北山猛邦
(2025/10/18 12:27登録)
 “私をオルゴールにしてください” って、こんな幻想的なイメージじゃなくて、江戸川乱歩のグロテスクな耽美的人体改造芸術だよ。一方で “オルゴーリェンヌ” は要するに “歌の才がある人” ってだけでは? 前作では割とそのまま受け入れ可能だった世界観だけど、今回は冒頭からうっすらと違和感あり。
 物理トリックは面白いし、クリスとユユのボーイ・ミーツ・ガールとしても良かった。
 しかし、ただでさえ幻想風味のフワッとした筆致で、紙幅が物語の実体以上に膨れ上がっているのである。動機があんな曖昧なままでは支え切れず、単なる愉快犯みたいな印象が残ってしまった。


No.2081 6点 少年検閲官
北山猛邦
(2025/10/18 12:27登録)
 水面下にまだまだ色々潜ませていそうな空気感は良いし、この世界でならあれらのトリックもOKだ。しかし物語そのもののその場その場での吸引力がちと弱い。
 そして何より犯行動機。書き込む “内容” が無いと書物は成立しないのであって、そこがなおざりにされていないか。邪魔が入らなければ犯人は願いを叶えられたのか、疑問符が付く。


No.2080 6点 殺意
フランシス・アイルズ
(2025/10/18 12:26登録)
 “細菌培養器がなくなっていた” と言うエピソードは何? もしかして読者に丸投げされている謎がある? ならばそれは、当然エピローグ(←私は高評価する)に関する部分だよね。
 伏線の乏しさを逆手に取って自由に想像するなら、当然あの女の犯行である。彼の失言から逸早く真相を推理して(が言い過ぎなら、非論理的な勘で真実を見抜いて)自分でもやってみた。気持が不安定なひとだから早くも厭になっていたのだろう。
 その流れで、自分が殺されかけたことまで悟ったなら、証言も辛辣になろうと言うものだ。あわよくば自分の犯行も押し付けてしまおう。釈放されたら自分が危ない。相手が拘束されているうちなら偽装工作もやり易い。一度は愛し合った蛇と蠍の殺し合いだったのである。

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