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ミステリの祭典

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未来図と蜘蛛の巣

作家 矢部嵩
出版日2025年03月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 虫暮部
(2025/06/20 11:51登録)
 特殊な楽器を演奏するには、その為の特殊な楽曲を作る必要がある。逆に、特殊な楽曲の為に特殊な楽器を開発することもある。その手の作品を聴いていると、しばしば自分がどの点を評価しているのか判らなくなる。模範解答を言うなら、そういったプロデュース面も含めた総体が “作品” になるわけだが、単に特殊な音色に耳を引かれているだけに思えることもある。その特殊性のみでも成り立ってしまいかねないからこそ引き際が肝心で、あまりダラダラとジャムを続けるのは感心しない。可不可の評価しにくさはフランツ・カフカに通じる。

No.1 7点 メルカトル
(2025/05/13 22:45登録)
二十五編の物語。
表題作「未来図と蜘蛛の巣」及びそのシリーズ(講談社「tree」で連載)に加え、既発表の掌編と書き下ろしを収録。

矢部嵩の小説に説明は不要。
矢部ワールドに足を踏み入れたが最後、あなたはそこから出られない。
Amazon内容紹介より。

折に触れ思い出すのは作者の『〔少女庭国〕』である。3点というあり得ない点を付けたのを、本当にそれで良かったのかと今更ながら疑問に思うのです。いつか再読してもう一度書評を追加で書こうと考えている次第です。

さてそんな矢部嵩の本作ですが、評価は是か非かで決める事にしました。まずはぶっ壊れているかどうかでしょう。ぶっ壊れていれば是そうで無ければ非となります。更に進んでそのぶっ壊れ方は良い意味での壊れ方か否か。他にも判断基準として、面白いか否か、不条理であるか否か、文学的であるか否か、グロいか否か、そのグロさは正しいか否かなどが挙げられます。この全ての項目に是と私は考えるので、この点数にしました。流石に8点以上は無理ですが。
個人的に最も心に響いたのは『山道の階段』でした。他にも『フォロー』など多くの問題作はありますが、いずれも常人の感覚とずれており、どう云った思考回路をしていたらこうした作品群を書けるのか、畏怖すら覚えます。正に鬼才の仕事と言って良いでしょう。

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