(2020/04/06 23:00登録)
(ネタバレなしです) 2019年に「君が幽霊になった時間」というタイトルで発表された朝永理人(ともながりと)のデビュー作です。私の読んだ宝島社文庫版はライトノベル風なイラストで確かにそういう要素もありますが、謎解きは実に堅固で「読者への挑戦状」まで付いた堂々たる正統派の本格派推理小説です。学園祭のお化け屋敷で起きた殺人事件の謎解きで、探偵役も被害者も容疑者も全員学生です。ひたすらアリバイ調査に捜査は費やされており、やや一本調子のプロットですが程よいユーモアとテンポのいい会話で退屈にはなりません。人物描写があっさり過ぎて動機の説得力が弱く、トリックにも安易かつリスクの高い手段が使われているのも問題と思いますが、その不満を吹き飛ばすのが推理の素晴らしさです。この論理性は一級品と言ってもよく、純然たる謎解きを大いに楽しめました。⇒(後記)本書の発表経緯説明が不正確とのご指摘をいただきました(そのご指摘をあいにく直接読めてはいないのですが)。原型は2017年にミステリー賞に応募した「幽霊は時計仕掛け」です。受賞を逃して発表には至っていなかったので紹介を端折っておりました。説明不十分な点、申し訳ありません。
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