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ミステリの祭典

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猫女

作家 泡坂妻夫
出版日1985年12月
平均点4.75点
書評数4人

No.4 5点 人並由真
(2021/05/13 07:11登録)
(ネタバレなし)
 海外にまで市場を広げる西洋磁器会社「音澄陶磁」。だがその会社の栄華は、過日の陶工・自勝院如虎(じしょういんゆきとら)男爵が復活させた平安時代からの技術「作良焼」に基づく実績を、現在87歳の会長・音澄甲六がぶんどる形で築いたものだった。そんな音澄家に対して、如虎の孫である老女・奈江は猫を使役しての呪詛をかけるが、やがて音澄家の周辺には惨劇が続発して……?

 元版のフタバノベルズで読了。3時間かけずに読み終えられる長さで内容だが、途中で、とある海外の長編ミステリが頭をよぎり(たぶんkanamoriさんがモチーフの原典だといっているのと同じ作品だと思う?)、結局は……。
 かなり強引に、大ネタの着地点だけ最初から決めて書いた感じで、ミステリとしてはあまりホメられた完成度ではない(伏線をいくつも張ろうと、苦労のあとは感じるが)。
 陶芸についての専門的な描写は、読み応えがあった。脇役の登場人物の一部のおかしなキャラづけ(主人公の同僚で友人である真野の離婚の経緯など)は、なんか泡坂妻夫作品っぽい。
 まあ読んでる間はそこそこ楽しめた。

No.3 4点 蟷螂の斧
(2018/06/07 12:30登録)
「黒猫」「モルグ街の殺人」のオマージュ作品であると思います。残念なのは、ヒロインとなるべき女性2人があまり事件に絡んでこなかった点、オカルト風味(黒猫の怨念)が伝わってこなかった点など、何かチグハグで中途半端な出来栄えという感じです。

No.2 5点
(2012/05/26 19:31登録)
泡坂妻夫が今回テーマとして選んだのは「化け猫」。当然、昔は何度も映画化された鍋島の猫騒動も言及されています。しかし本当に化け猫だったとは…
いや、もちろん合理的な説明はつけてくれるんですがね。しかし、第1章での黒猫出現によるショック死(これは本当に事故というべき偶発事です)から猫の目撃状況にいたるまで、ちょっと偶然が過ぎるように思われます。被害者たちの共通点も偶然。語りの視点は主人公の男に限定され、警察の捜査状況は最終段階に至ってやっと明らかにされるぐらいなのですが、どうもすっきりできません。それでも最初から伏線を堂々と張り巡らしているのは、いかにもこの作者らしいところではあります。
焼物の世界を舞台とし、唯一性を身上とする芸術と大量生産の製品とを比較しているところにも、紋章上絵師でもある作者らしさは表れています。

No.1 5点 kanamori
(2010/08/20 19:14登録)
大手陶芸会社の一族が、化け猫の祟りに遇った如く次々と不審死を遂げていく、猟奇的殺人を扱った長編ミステリ。
ホラー風味の本格ミステリで、不可能犯罪や細かい伏線もありそこそこ楽しめました。
著者の長編ミステリには、「アクロイド殺し」や「Yの悲劇」など古典ミステリのプロットに影響を受けたものがいくつかあるように思いますが、本書もある作品をモチーフにしているのではと思います。

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