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ミステリの祭典

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キネマ探偵カレイドミステリー 会縁奇縁のリエナクトメント

作家 斜線堂有紀
出版日2025年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 虫暮部
(2025/06/28 21:16登録)
 キャラクター小説としてはまぁ良く出来ている。但し “映画” と言う題材は私の守備範囲ではない。それを知りつつ手に取ったのは、ミステリ的にもこの作者にはそれなりの期待があったから。

 なんだけど、ネタバレしつつ、気になるエピソードがあったので書いてしまおう。
 その話はAとBそれぞれの視点で交互に語られる。同じ建物に別々に来ているらしい。同じ部屋に入ったのに、Aは死体を見付け、Bの眼前には何も無い。それがメインの “謎” のように読者には見える。
 しかし、読者に対しては “叙述による時間の錯誤” があったことが明らかになる。だから “謎” が生じたのか!
 と思ったら、実は “Bの時にも死体はあった、雨のせいで見落とした” だと示される。だったら “叙述による時間の錯誤” は無意味な、紛らわしいだけの遊びになっていないか?
 叙述で読者を驚かしたいなら、それが “謎” の原因であってこそ。叙述が “謎” とは無関係な遊びなら、真相が “単なる見落とし” なのは如何なものか。このコンセプトは失敗だと思う。

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