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ミステリの祭典

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有栖川有栖に捧げる七つの謎
一穂ミチ・今村昌弘 ・白井智之・青崎有吾・ 阿津川辰海・織守きょうや・夕木春央

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日2024年11月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 メルカトル
(2025/01/28 22:46登録)
真正面から挑戦する超絶技巧の本格ミステリから、
女子高に潜入する火村とアリスや
不可解なダイイング・メッセージに挑む
江神たちEMCの面々まで。
Amazon内容紹介より。

青崎有吾は火村シリーズ、無難に纏めた感じ。シリーズ物の空気感は出色。
一穂ミチも火村シリーズ、日常の謎。文芸作家の香り、直木賞受賞者。
織守きょうやも火村、最も異色の怪談話。質より量で勝負も真相は拍子抜け。
白井智之も火村シリーズ、有栖不在のアリバイトリック。出来としては最高。
夕木春央は作家有栖川有栖が嫌いなのに全作読んでいるのは何故?の謎に挑む。動機が弱くイマイチの出来。
阿津川辰海は山伏地蔵坊が登場。なかなか面白い。蝶の標本が死体の周りに埋め尽くされて・・・
今村昌弘は江神先輩が久々に登場。大学のメンバーが揃って、懐かしさ溢れた好編。

最も優れていたのは白井智之の『ブラックミラー』でしょう。短編とは思えないぎっしり中身の詰まった傑作だと思います。
次点は今村昌弘の『型取られた死体は語る』ですね。学生向けの事件で、ダイイング・トリックかと思わせておいて、という趣向が粋です。
あとは5~6点で、まずまず。夕木春央にはがっかりでした。

No.2 5点 蟷螂の斧
(2025/01/25 08:00登録)
①縄、綱、ロープ(青崎有吾) 4点 被害者には「何か」で縛られた痕があった。「何か」をゴミ出しした3人の容疑者(設定に魅力がない。落語ネタかい?)
②クローズド・クローズ(一穂ミチ) 7点 制服盗難事件。演劇部のライバルが怪しいが(日常の謎、ほのぼの系。お初の直木賞作家)
③火村英生に捧げる怪談(織守きょうや) 3点 山小屋、遊園地、夢枕の怪談(納得感がない。お初の作家)
④ブラックミラー(白井智之) 7点 「マジックミラー」の本歌取り(本人認証は著者らしいトリックで、そこまでするか?(笑))
⑤有栖川有栖嫌いの謎(夕木春央) 4点 有栖川作品を全て読んでいるのに酷評する男。その理由は?(動機が弱すぎる)
⑥山伏地蔵坊の狼狽(阿津川辰海) 6点 旧知の山伏にそっくりな若い山伏が、蝶にまつわる殺人事件を語り始めるが(ロジックはスッキリ頭に入ってこない(苦笑)。ラストが好きなタイプなので)
⑦型取られた死体は語る(今村昌弘) 5点 ダイイング・メッセージが書かれた経緯(背景)がメインと思うが(ダイイングメッセージは解けない?。青二才絡みと思ったが全く違っていた)

No.1 8点 文生
(2025/01/12 13:42登録)
有栖川有栖のデビュー35周年を記念して、現在脂ののりきった一線級のミステリー作家7人に有栖川作品の二次創作をしてもらおうという企画ものです。いわばお遊び企画なのですが、全員予想以上にガチでひびります。

〇青崎有吾「縄、綱、ロープ」
わずかな手がかりからロジカルな推理によって真相を見抜く正統派パズラーですが、作風から火村とアリスの掛け合いまで火村シリーズそのもの。本家の短編集に黙って収録してもおそらく誰も気が付かないのではないでしょうか。

〇一穂ミチ「クローズド・クローズ」
火村とアリスが女子高を訪れ、JK相手に進路相談を行うのがユニーク。日常の謎ものですがミステリーとしての出来はそこそこ。

〇織守きょうや「火村英生に捧げる怪談」
一つ一つのネタは小粒ですが、青年が語る恐怖体験を火村が次々と合理的に説明していくのが小気味良い。

〇白井智之「ブラックミラー」
火村のキャラに違和感はあるものの、アリバイを巡る物語はミステリーとして読み応えあり。エグいトリックは白井作品ならでは。

〇夕木春央「有栖川有栖嫌いの謎」
青年は有栖川作品をすべて読破しているほどの熱心な読者にもかかわらず、なぜ全作品ボロクソに酷評したのかというホワイダニットもの。謎の奇抜さと意表を突く真相が面白い。

〇阿津川辰海「山伏地蔵坊の狼狽」
元ネタは『山伏地蔵坊の放浪』という渋いセレクト。二代目地蔵坊の微妙なポンコツさ加減が面白く、パロディとして秀逸です。

〇今村昌弘「型取られた死体は語る」
ダイイング・メッセージの真相は今ひとつ明確さに欠ける気がしますが、1つの謎を巡って推理研のメンバーが喧々諤々の議論をするさまは、いかにも学生アリスシリーズといった感じで、読んでいて楽しい作品でした。

個人的ベストは「有栖川有栖嫌いの謎」。次点で「縄、綱、ロープ」と「ブラックミラー」といったところでしょうか。

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