観覧車は謎を乗せて |
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作家 | 朝永理人 |
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出版日 | 2022年05月 |
平均点 | 6.60点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | まさむね | |
(2025/04/25 22:13登録) 観覧車のゴンドラ内で繰り広げられる6つの密室劇。個々のゴンドラ内の謎も悪くはないのだけれど、ポイントは全体を通した仕掛けでしょう。 とはいえ正直、読了後はちょっと戸惑いました。大きな狙いは理解したけれども、何とも消化しきれない部分が、微妙な表記も含めてあったのです。一晩を経て、おそらくはこうなのだろう、こう解釈せざるを得ないという自分なりの解はあるのだけれど、正しいかどうかは分からない。よく練られたプロットだと感心しつつも、正答はもう少しスッキリ示してほしかったかな、という気もします。 |
No.4 | 6点 | zuso | |
(2025/04/25 21:37登録) 安全装置の誤作動で停止した観覧車が舞台で、六つのゴンドラでそれぞれの物語が展開されれる。 ゴンドラ内での刺殺事件を巡る謎解き、恋の告白、殺し屋による狙撃など、六つのドラマが意外な結末を迎え、同時にそれらを結ぶかすかな糸が明らかになる。設定と伏線の技巧派冴えており、語り口も軽やか。 |
No.3 | 7点 | ミステリーオタク | |
(2025/03/17 23:10登録) デビュー作「幽霊たちの不在証明」で「このミス大賞」の優秀賞を受賞した作者の第二作。連作短編集かと思っていたが違ってましたね。 観覧車のA~Fと記号付けされた6つのゴンドラの中の6つの物語がそれぞれ細分化され(必ずしも整然とはしていないが)6交代で進行する。短編集をかき混ぜたような作品とも言えるが全体としてのトリックもあるから、やはり長編ですね。 A : いきなり本書の次の刊行書「毒入りコーヒー事件」の登場人物の名前が出てくるのには驚いたが両作品に関連性はない。 提示される謎はかなり魅力的だがその解答はあまりスッキリしない。でも「意外な現実」の出し方は悪くない。 B : 父と娘。意外性もあるが、これもイマイチピンとこない。 C : スナイパーと少女。なぜ同乗するのか? 動機の謎。 D : カップルのような二人。ちょっと叙情性が大きすぎて分かるような分からんような。既出と似たような「意外な現実」もある。 E : 高所恐怖症なのになぜ観覧車に乗るのか? これも動機の謎だが必然性と隠す理由が弱い。 F : 兄(と弟)と時限爆弾。最後の一文が本書の「締め」。 う~ん、正直唸らされる話はあまりなかったし、全体としてのトリックも、これほど重合性のある前例はないとは思うが、そのエッセンスはさほど斬新なものでもない。 ただ各ストーリーが細断されて振り撒かれた「各章」が非常に短い、せいぜい十数ページなので細切れ読みが多い自分には非常に助かり読みやすく、男女、家族、親友などの濃厚な人間関係の中の妄想も含めたミステリを肩肘張らずに楽しむことができた。 |
No.2 | 7点 | まだ中学生(仮) | |
(2025/01/31 22:05登録) タイトル通り、観覧車に乗る人々による群像劇。男と幽霊、父親と娘、殺し屋と少女といった七組の登場人物が乗ったゴンドラ内部が順番にフォーカスされ、それぞれに謎が提示される。 両者の関係から見えてくる事情が徐々に明らかになっていく先に、さらに舞台が観覧車である必然性が待ち受ける。これでもかと詰まった構造は作者の持ち味を感じさせる。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2022/07/12 13:15登録) (ネタバレなし) 観覧車のそれぞれのゴンドラの中で進行する6つの物語。急に回転を停止した観覧車の各ゴンドラ内では、幽霊に出逢った青年、観覧車の中から標的を狙撃しようとするスナイパー……それぞれのドラマが進行しようとしていた。 2年前の処女長編『幽霊たちの不在証明』(評者は本は購入してあるがまだ未読・汗)に続く、作者の第二長編。 文庫書き下ろしで300ページに満たない短めの作品。文章も平明でスラスラ読めるが、仕掛けの数はかなり多いハズで、実のところ評者も一読しただけでは、全容をすべて理解しきってはいない(汗・涙)。 アレガアレだったのはすぐにわかるのは当然で、コレとコレもわかるし、ソレとソレもそうなんだろうだが、あと……(中略)とか、終盤のクライマックスを迎えてなおそんな感じ。 すくなくとも読者にわかりやすく、実はここはこうだった、ここは……と送り手や登場人物が言を費やしてくれるような甘い作品ではない。 しかもどうやら(お話やミステリとしての仕掛けにはまったく関係ないものの)、実は6つのエピソードの中に(中略)までが、どうやらいるみたいだし、とことん食わせ物の作者で作品である。 来年のSRのベスト投票までに、時間を置いてもう一度読み返してみたい。評価はまたそこで改めて。 |