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ミステリの祭典

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名もなき星の哀歌

作家 結城真一郎
出版日2019年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 びーじぇー
(2024/09/22 21:27登録)
記憶の取引というファンタジー設定を軸に意外性に富んだ物語が楽しめる。銀行員の良平と漫画家を目指す健太は、あるきっかけから記憶の売買を商売とする「店」の従業員として働くことになる。お客から記憶を買い取り、別の客に転売することで「店」は利益を得る仕組みとなっている。
三年以内に一千万円の報酬を手にすることをノルマとして課せられ裏稼業に奔走する日々の中で、健太が良平に店に内緒で探偵業をすることを持ち掛けることから物語が動き出す。彼らは手始めに神出鬼没の女性ストリートシンガー星名の代表曲に登場する探し人「ナイト」を実在の人物であると察し、それを見つけることを目指す。良平と健太は店にある記憶のデータから彼女の過去を探り、続いて星名と接触をすることに成功し、少しずつ「ナイト」に迫っていくのだが、良平のもとに警告文が届く。
まさに謎が謎を呼ぶ物語。オーソドックスな人捜しが記憶の操作という不安定な条件の投下によって複雑化し、サスペンスと謎の度合いが増していく。記憶の断片の数々が繋がり、さらに作者が用意した一捻りによって、あらゆる真実が明らかになる最終局面の美しさが強い余韻となって心に残る。

No.1 6点 いいちこ
(2023/05/15 13:58登録)
人間のアイデンティティは記憶にこそ存在するという着眼点は鋭い。
ただ、記憶を保管・分離・削除・共有・移植することが可能という設定では、どれほど荒唐無稽な話でも成立してしまうから、却ってサプライズを演出しようがない。
いや、それ以前に、そもそも本作の各描写が現実に発生している出来事なのか、誰かの記憶なのかさえ、区別が付かないという強烈な副作用を生じてしまっている。
ファンタジー・ライトノベルとしては水準を超える作品であり、6点の最下層と評価する。
ただ、本作はミステリとしては評価できないし、そもそもミステリとはいえないのではないか

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