| kanamoriさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.89点 | 書評数:2463件 |
| No.1563 | 6点 | ロマンス 柳広司 |
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(2011/07/28 21:50登録) 昭和初期の華族社会を背景に、男女三人が織りなす人間模様に殺人が絡むミステリ。 ロシア人の血が混ざる子爵という主人公・清彬の、この時代に対する閉塞感や、史実を織り交ぜた赤化華族、新華族の生態などが興味ぶかく読ませます。そして、200ページ過ぎの衝撃的な一行。海外ミステリではありえても日本ではタブーといえるテーマに踏み込むのかとドキリとさせましたが・・・・。最後は結局はそういう類いのミステリを避けてしまった。 結末はやや平凡で、傑作になりそこなった佳作という感じがする。 |
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| No.1562 | 6点 | 思考機械の事件簿Ⅲ ジャック・フットレル |
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(2011/07/26 18:25登録) 本書の目玉作品は、思考機械シリーズの実質的な第1作で唯一の長編(といっても文庫で160ページほどで、長めの中編といったほうが正しい)「金の皿盗難事件」でしょう。ただ、内容のほうは、前時代的なロマンス小説の様相で、発端の不可思議な謎で読者を引き込む後の短編群と比べると本格ミステリとしては見劣りする出来でした。 残る6編の短編のなかでは、「緑の目の怪物」がタイトルからイメージする内容と違って、思考機械が”日常の謎”を解く異色作で印象に残った。動機が驚くほど現代的。 解説によると、シリーズ未訳作品はまだ15作もあるらしい。北大西洋に原稿が沈んだ6編はどうしようもないけれど、残りの作品をどこかで出版しないものだろうか。タイタニック号の海難事故が1912年だから、来年はちょうどフットレル没後100周年にあたるし。 |
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| No.1561 | 6点 | 貸しボート十三号 横溝正史 |
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(2011/07/24 16:32登録) 金田一耕助シリーズの中編3作収録。 「湖泥」は、岡山県の僻村が舞台で二つの旧家の対立を背景にするなど、氏の中短編ではむしろ珍しい”横溝ワールド”ど真ん中の作品。解説で犯人当てとして書かれたというだけあって、終盤の義眼を巡る論理展開がなかなか秀逸。 東京が舞台となる表題作と「堕ちたる天女」は通俗的な印象が否めないが、前者の、異様な死体工作と爽やかで意外性のある真相とのギャップが面白かった。後者では、磯川警部と等々力警部の初対面というファンサービスもある。 |
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| No.1560 | 5点 | 敗者ばかりの日 アンソロジー(海外編集者) |
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(2011/07/22 22:30登録) 競馬ミステリのアンソロジー。 装丁といいディック・フランシスを目玉とした作品集で、その表題作「敗者ばかりの日」は、競馬場での銀行強盗捕物劇のすえのオチは面白いけれど、ちょっと期待した作風とは違った。 ラストの捻り具合でいえば、デイモン・ラニアン「賭け屋ボブの誘拐」のほうがいい。何度も同じフレーズを使う独特の文章はテンポがよく、しかもそれがオチの伏線になっているのが巧妙だ。 あと、エラリー・クイーン、アプルビイ、フォーチュン氏、サイモン・テンプラーなど、お馴染みのシリーズキャラクターが登場するが、出来はいずれもイマイチだった。 |
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| No.1559 | 5点 | さよならドビュッシー 中山七里 |
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(2011/07/20 20:34登録) 火傷でハンデを負った女子高生が、天才音大講師の特訓を経てピアノコンクールの最終選考に臨むというスポ根的「シンデレラ」ストーリー、をミスディレクションにしたミステリ。 正直なところ、クラシック音楽の素養が全くないので、この部分は退屈に感じてしまった。お話も類型的。 肝心のミステリ部分は、第1章最後の叙述の技巧など面白いのだけど、火傷と莫大な遺産の相続人になる女性という設定が某フランス・ミステリそのまんまなので、序盤で仕掛けが分かってしまった。 |
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| No.1558 | 6点 | 思考機械の事件簿Ⅱ ジャック・フットレル |
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(2011/07/15 18:09登録) ”思考機械”ことヴァン・ドゥーゼン教授シリーズの第2短編集。 印象に残った作品を挙げると、まず怪奇趣向と不可能興味の「呪われた鉦」。珍しく?伏線が丁寧に張られているうえに、一応の真相が語られた後のラスト2行での暗転に凄味がある。 夫婦合作というか、夫人が問題編を担当し相談せずにフットレルが解決編を書いたという二部構成の「幻の家」。消える家のトリックは単純だけど盲点をついている。クイーンの名作中編に比肩しうるのでは?幻の家に住む老人の秘密も意表をつかれた。 「百万長者ベイビー・ブレイク誘拐」は雪上の消える足跡トリックによる幼児誘拐もの。もし、ポーがこの作品を読んだらどんな感想をもつだろうか(笑)。 あとは総じて、謎の設定自体は魅力的だけど、真相が拍子抜けなものが多かった。 |
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| No.1557 | 7点 | 日本探偵小説全集(7)木々高太郎集 木々高太郎 |
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(2011/07/12 22:53登録) 「推理小説」という呼称の生みの親といわれ、松本清張を見出したことで知られる木々高太郎の傑作作品集。 昭和9年の処女短編「網膜脈視症」と「就眠儀式」は、大心地先生が精神分析によって隠された犯罪を暴くという作者十八番のプロット。フロイト心理学を援用して謎解く手法は当時として目新しかったのではないか。 同じ大心地先生もので戦後の長編「わが女学生時代の罪」は毒殺トリックが非常にユニークだけど、核心の部分で医学的にありえない(と思われる)事象がどうもひっかかる。 代表作の一つといわれるノンシリーズ長編「折蘆」は、いわゆる”名探偵の●●●”ものの先駆とも読めるが、最後に重要な役割をするある人物の行動には唐突感があった。 結局、ミステリかどうかは微妙ながら、ある女性の特異な半生を描いた「文学少女」が一番印象に残った。 長編2作、短編10作収録で800ページ近い分量のうえ、登場人物の行動原理、犯行動機が観念的で文芸寄りの作品が大半なので、読み終えるのに予想以上の時間がかかってしまった。 |
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| No.1556 | 3点 | 月明かりの闇 ジョン・ディクスン・カー |
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(2011/07/09 20:21登録) 百年前の事件と同様の”足跡のない殺人”の再現という、因縁話に絡めた展開はカーらしくていいのだけれど、いかんせん肝心のトリックがパッとしません。事件が起こるまでも冗長で、筆力の衰えが如実に現れていて残念な出来でした。 原書房版の副題には”フェル博士最後の事件”となっていますが、「フェル博士が登場する最後の作品」というぐらいの意味なので、これはちょっとどうなんだろうか。アレコレと変な期待をしてしまう。 |
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| No.1555 | 4点 | 極点飛行 笹本稜平 |
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(2011/07/07 18:21登録) 南極にある観光基地とチリ最南端の町との間を飛び回る航空輸送機の日本人パイロットを主人公にした謀略冒険小説。 山岳、海洋ときて今回は航空冒険小説なわけですが、極寒の地という魅力的な舞台設定を充分活かしきっていない感じがする。道具立ても、ナチスの残党、隠された黄金伝説、CIAの陰謀など盛りだくさんなのが裏目に出て、焦点がぼけてしまった。 前2作と比べると緊迫感の欠けた凡作と言わざるを得ない。 |
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| No.1554 | 5点 | 踊り子探偵 コーネル・ウールリッチ |
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(2011/07/06 18:03登録) 白亜書房版ウールリッチ=アイリッシュ短編傑作集の2巻目。1937年から39年に発表された7編+初期普通小説1編を収録。 なかでは、中編並みの「妻がいなくなるとき」が巻き込まれ型サスペンスの完成形といえる内容で読み応えのある佳作だと思う。 ただ、もともと都会の中の弱者を探偵役にしたサスペンスを得意とする作者とはいえ、「目覚める前に死なば」「踊り子探偵」「黒い旋律」と同じようなプロットの作品を並べたのはどうか。しかも犯人像も共通するので続けて読むとちょっと飽きる。 さらに、「晩餐後の物語」をはじめ創元推理文庫版と4編もダブっているのはいただけない。 ウールリッチは230作もの短編を書いているが、各出版社とも同様の決まった作品を収録するのは、未訳短編や雑誌掲載のままの作品の出来がよろしくないということだろうか。 |
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| No.1553 | 5点 | まもなく電車が出現します 似鳥鶏 |
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(2011/07/04 18:45登録) 学園ミステリ、葉山君と伊神先輩シリーズの短編集。 なぜ開かずの間の部室に鉄道模型を出現させたのか?、なぜシチューのなかのジャガイモを食べたように見せかけたのか?など、提示される日常の謎はハウダニットの興味より動機を中核の謎としているようですが、謎そのものに魅力を感じないのでロジカルな解法ながら読後感は微妙。 最終話の「今日から彼氏」だけは、謎そのものが謎のまま終盤にサプライズを仕掛けた編中のベスト作品。しかし、ぼくと柳瀬さんの関係など、シリーズを通して読んでないと作者の意図した趣向が活きないのではと思う。 |
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| No.1552 | 6点 | 密輸人ケックの華麗な手口 ロバート・L・フィッシュ |
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(2011/07/01 17:59登録) 訳ありの美術品や宝石類の密輸を請け負うギャンブル好きの自由人・ケック・ハウゲンスを主人公にした連作短編集。 意表を突く数々の税関破りのトリックは、怪盗ニック・シリーズなどと同類のハウダニット・ミステリの面白さがある上に、「ふりだしに戻る」や「一万対一の賭け」などの初期作はラストのどんでん返しがしゃれていて楽しめた。 ただ、設定の特殊性ゆえプロットがマンネリぎみで、後半の作品はネタ切れ、息切れの感がある。 |
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| No.1551 | 6点 | 真夏の方程式 東野圭吾 |
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(2011/06/29 20:18登録) 被害者がその場所に赴いた理由とか、過去の人間関係や事件が現在の事件の謎をとく鍵になる構成など、細かいプロットが違っていても「麒麟の翼」とよく似たありがちのストーリーかな。 ただ、探偵と少年の交情、少年の成長物語のような味わいの小説が好みなので甘めの採点になった。もっとも、その部分も海外のハードボイルド小説を想起させはしますが。(そちらは「真夏」ではなく「初秋」) 夏休みに中高校生が図書館で借りて読むのに最適な小説だと思うけれど、都内の図書館の予約件数を調べてみて驚いた。刊行後1か月も経ってないのに、世田谷区の720件をはじめ目黒区、大田区も600件を超えていた。 |
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| No.1550 | 6点 | フレンチ警部と漂う死体 F・W・クロフツ |
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(2011/06/27 18:47登録) 長らく絶版だった創元推理文庫の「警視最初の事件」が近々復刊されるようですが、そちらは書評済みにつき、数年前に突如翻訳出版された本書のほうを。 鬼貫警部シリーズ同様、フレンチの登場が後段になる作品ほど捜査小説として物足りない感じを受ける。キャリントン一族を巡る毒殺未遂事件の経緯が語られる物語前半部はちょっと冗長でした。 しかし、地中海の豪華観光客船に舞台を移しフレンチが乗り込んでから面白くなる。数章に渡ってフレンチの仮説の構築が語られる段は読み応えがあるうえ、伏線が少々不足ぎみながら最後に明らかになる犯人像は意外といえば意外。 |
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| No.1549 | 7点 | デッドライン 建倉圭介 |
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(2011/06/25 22:53登録) タイトルが平凡であまり期待してなかったのですが、これは冒険小説の傑作でした。 米国の地で原爆投下情報を知った日系二世の主人公が、米軍の追撃を受けながら、降伏を促すべく日本へ決死の逃避行を決断する、というのがあらすじ。 同じタイムリミットものの冒険小説で、真珠湾攻撃情報をネタにした「エトロフ発緊急電」の日米裏返しのような設定ですが、本書の逃走ルートがすごい。アラスカからアリューシャン列島、千島樺太とつづく雄大な舞台設定で、サスペンス満点の逃避・追跡劇が圧巻の面白さだった。 本書のもうひとつのテーマは少数民族の差別や弾圧。日系二世の主人公を助けるのが、アメリカインディアン、イヌイット、アイヌなどのマイノリティというのがまたいい。 |
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| No.1548 | 5点 | 芝居がかった死 ロバート・バーナード |
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(2011/06/24 19:14登録) 「不肖の息子」でも登場したメレディス主任警部が、田舎のホテルで有名な舞台女優が射殺された事件の捜査に乗り出すのは物語の半ば過ぎで、本書も前半は癖のある登場人物たちの造形に筆を費やしています。 アリバイ・トリックを用いた本筋は、クリスティのいくつかの作品を髣髴とさせるもののさほど意外性はない。 エピローグで飛び出す叙述の騙しには驚いたが、よく考えたら、これは物語とあまり関連しない蛇足的なエピソードだからなあ。ミステリの本筋の部分で仕掛けてほしかった。 |
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| No.1547 | 4点 | ポリス猫DCの事件簿 若竹七海 |
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(2011/06/23 18:55登録) 湘南・葉崎市にある猫島を舞台にしたコージー・ミステリの連作短編集。前作「猫島ハウスの騒動」でお馴染みの島民が顔を揃えますが、今回の探偵役は島の臨時駐在所巡査と探偵猫。 「ヴィラ・マグノリアの殺人」から始まったこのシリーズ、コージーながら伏線を丁寧に敷いた本格ミステリだったけれど、本書は謎解き・ドタバタともに中途半端で残念な出来でした。 |
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| No.1546 | 6点 | 幻を追う男 ジョン・ディクスン・カー |
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(2011/06/22 18:06登録) ラジオ・ドラマのシナリオ作品集。 表題作の中編「幻を追う男」は、19世紀初頭の英国を舞台にした歴史ミステリ。”幻の女性”に関するトリックは無理があるけれど、展開がスリリングで物語性豊かなところは良です。 ベストはフェル博士ものの「誰がマシュー・コービンを殺したか?」で、オーソドックスな屋敷もののフーダニットかと思っていたら、意外なところから犯人が出てきて驚いた。ラジオ・ドラマならではのミステリ趣向が効いている。 |
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| No.1545 | 5点 | 黒の回廊 松本清張 |
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(2011/06/21 20:04登録) 女性ばかり20人以上のヨーロッパ観光ツアー団内の連続殺人を扱った、清張としては珍しい正攻法のフーダニット・ミステリ。 デンマーク、スコットランド、スイスと舞台を移動し、最後にアルプスの麓に関係者を集めての謎解きと、トラベルミステリのハシリのようなプロットで、重厚さはないもののそれなりに楽しめましたが、ツッコミどころもある。 いちばん納得がいかないのは、ヒューズ警部が言うように真犯人の動機。「ゼロの焦点」以降の作者お得意のパターンだけれど、今作については殺人の必然性に欠けます。探偵役の女性の説明はちょっと苦しい。それならなんでもアリになってしまう。 |
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| No.1544 | 5点 | あの手この手の犯罪 アンソロジー(海外編集者) |
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(2011/06/19 17:47登録) アメリカ探偵作家クラブ(MWA)会員作家によるテーマ別年刊アンソロジー第1弾。編者は、シュロック・ホームズや殺人同盟シリーズなどのユーモアミステリでお馴染みのロバート・L・フィッシュ。 収録25編のなかでは、スタンリイ・エリン、ウィリアム・ブリテン、エドワード・ホック、ヘンリイ・スレッサーなど、短編の名手といわれる有名作家の作品がやはり一歩抜きんでているように思える一方で、初読の作家で「これは!」と言えるものがなかったのは残念。 個人的ベストは、再読ながら”奇妙な味”テイストの傑作・エリン「最後の一壜」。この世に一本しかないワインを巡る復讐劇の手段はある程度見当がつくが、その後のラストのツイストが鮮やか。準ベストはマーガレット・ミラー「マガウニーの奇蹟」か、スレッサー「速習記憶術」。 |
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