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ミステリの祭典

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真夏の方程式
探偵ガリレオシリーズ

作家 東野圭吾
出版日2011年06月
平均点6.15点
書評数27人

No.27 3点 ボナンザ
(2022/12/25 01:21登録)
意外性やトリックではなく一夏の物語として読むべきなのだろうが、湯川の判断が妥当とはとても思えない。まあ、仕事なのに全く無能な地元警察が一番悪いんですが・・・。

No.26 5点 ぷちレコード
(2021/10/23 23:13登録)
資源開発か環境保護かで揺れる海辺の町が舞台。
書かれたのは震災前だが、震災後に読むと現実の問題とリンクした読み方ができると思う。
「無知ゆえの幸福」と自他に許さないのが湯川の矜持で、そこはぶれていない。ただ得失を冷静に計算すれば未来を最適に制御できるという信念が通用しないのが、震災で露になったリスク社会の実相。その意味で、今回の湯川の判断は適切だったのか。いささか中途半端な気がしてならない。

No.25 6点 パメル
(2021/08/03 08:52登録)
物理学者・湯川学が活躍する「ガリレオ」シリーズの第6作にして長編第3作。
柄崎恭平は、夏休みを海辺の町・玻璃ケ浦にある伯母一家が経営する旅館「緑岩荘」で過ごすことになる。その玻璃ケ浦の海底から熱水鉱床が発見され、商業化を目指す候補地に挙げられる。
過疎化に悩む地域にとっての振興のきっかけになると期待する人々と環境保護の観点から反対する人々。そんな時、緑岩荘の宿泊客が死体で発見される。本書では「環境保護と海底資源開発」が大きなテーマとなっている。はじめから賛成・反対ありきではなく、事実と論理的思考によって妥協点を探る話し合いをするべきだとミステリを絡めて伝えたかったのだろう。
物理トリックも高度ではないし、フーダニットとしても途中で気が付く人も多いのではないか。本書ではホワイダニットがメインとなる。事件の真相は、オーソドックスで無関係と思えるエピソードなど、さらりと張った伏線が効いている。湯川が草薙に言った「今回の事件の決着を誤れば、ある人物の人生が大きくねじ曲げられてしまうおそれがある。そんなことは、何としても避けなければならない」が読後に心に刺さる。

No.24 7点 E-BANKER
(2019/09/23 22:27登録)
ガリレオシリーズの長編としては「容疑者Xの献身」「聖女の救済」に続く三作目。
(しまった! 「聖女の救済」の前に本作を読んでしまった・・・まぁいいか)
2011年の発表。

~夏休みを玻璃ケ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・柄崎恭平。一方、仕事でこの地を訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もうひとりの宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ケ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か? 湯川が気付いてしまった真相とは?~

うーん。やはり満足感は高い。
ミステリーというか、小説としての完成度は他のミステリー作家とは一枚も二枚も違うという感じだ。
ガリレオシリーズは、当初、湯川を推理マシーンのように描き、物理トリックによるハウダニットをメインとして始まったはず。
なのだが、「容疑者X」での悲しく、そして苦しい謎解きを経て、“人間”湯川として真の探偵役に昇華させてきた。
本作でも、その“人間”としての湯川が「気付いてしまった」真相に対し、どのように結末を付けるのかが焦点となる。

東野作品というと、加賀恭一郎シリーズにしろ、他の作品群にしろ、真相は読者に対しわざと察しやすくしている傾向が強い。
(そういう意味では本シリーズと加賀シリーズのテイストが被ってきた感はある)
そして、その「察しやすい」真相とは、できればそうであって欲しくない、悲しい真相なのだ。
読者はその「悲しい真相」を薄々察しながらも、徐々に白日のもとに晒されていく真相を思い知ることになる・・・
考えてみれば酷な作家である。
ただし、作者は最後に救いの手を差し伸べることを忘れない。それは読者にとっても「救い」になっているのだ。
これは当然計算なんだろうけど、日本人のメンタリティを十二分に把握したうえでのストーリーテリングに違いない。

本作の場合、プロットそのものはさんざん使い古されたものである。
それでも、湯川や草薙、内海といった魅力的なシリーズキャラクターを存分に使うことで、最後まで飽きることなく読み進められた(読み進まされた?)。 やっぱり、只者ではないね、作者は。
(Co中毒のトリックは、鑑識ならさすがに気付くだろ!とは思うけど・・・)

No.23 7点 斎藤警部
(2018/09/05 12:31登録)
方程式だけでは実際の自然環境に対応できない、加えて根気強い実験を経ての実証が必要だ、人生に於いてまた然り、わかったか、坊主。 そんな意味がこの表題に込められているのでしょうか。 過去を席捲するダークな真相を、爽やかな夏風を浴びて叙述し切った、綺麗な作品です。 “誰かの人生が○○○しまうかも知れない”なる変則フーズダン(誰が被害者)の趣向が、表立っての殺人事件とはまた別の謎と感動を紡ぎ合わせる素敵な物語でした。 地味ながら着実な、本気の泣ける物理トリックを暴くために、読者側に放たれた抉りの深い心理トリックの戦慄と、そして。。。。

本作、東野らしく仕掛けて来る気概は感じるものの、振り返ればそれなりにありがちなミステリ真相の組み合わせではある。。(どちらかと言うと、前述の変則フーズダンの訴求力を加算しても、結末より展開の方により強い仕掛け感があった)のですが、真夏に真夏の話でキメたせいか頭がぼんやり痺れて読中そのへんよく分からなかった。。 が、公平を期すにあたり0.8点減。

ケータイが壊れた件はツッコミどころ真正面の大笑いだったが、ここが事件”直結”の伏線を兼ねていれば、もっと泣ける話だったろうなあ。。。

No.22 7点
(2016/08/04 09:35登録)
さすがの安定感。安心して読める。この作家さんの作品は、ほんとうにはずれがない。

湯川は玻璃ヶ浦滞在中に事件に遭遇する。被害者は元警視庁の刑事。
まず玻璃ヶ浦で知り合った少年・恭平との深交に魅かれた。子ども嫌いらしさゆえの恭平への接し方が自然でよかった。夏らしさもよかった。
一方の恭平は視点人物の一人。その心情、心境はやや子どもらしさに欠けるのでは、と思っていたが、案外こんなものだろう。むしろ小説のテーマに合っているようにも思う。

湯川、草薙の個別の捜査活動によって、徐々にあきらかになっていく事件の真相と背景。過去の人間関係がキーになるのはありがちだが、その流れと物語の組み立て方がうまい。犯人当てはどうでもよいと思っていたら・・・
そして、最後に魅せる適度なヒューマニズム。
湯川が大学の先生じゃなく、小学校の教師に見えた。

トリックは湯川物らしさがある。小学生レベルの理系トリックだが、かなり気に入っている。

個人の評価基準に照らせば6点だが、『容疑者X』よりも好きなので、この点数。

No.21 6点 風桜青紫
(2016/01/18 02:35登録)
映画版『砂の器』を意識したであろう、なんともお涙頂戴な物語。しかし『砂の器』の「オラそんな人知らねええええっ!」が作中人物の魂の叫びであったことに対して、作中の「このような方は知りません……」は単なる模倣の域を出ていないのが興ざめで残念なところ。そもそも不義の子どもを作った話に感動もクソもあるかというところだが……。しかしまあ、ガリレオと少年のなんだか心温まる交流によってこの作品は十分楽しめるものになっている。海洋開発に妙な理解を見せたり、大人の余裕というか、なんか今回の彼はかっこいい。これまで謎解き装置の一部な感じがしていた湯川だけども、今回はそのキャラクター性を存分に発揮してくれたといえるだろう。

No.20 8点 りゅうぐうのつかい
(2015/10/20 18:03登録)
「真夏の方程式」というタイトルから、「容疑者Ⅹの献身」や「聖女の救済」のように、湯川が難解なトリックを解く話かと思っていたが、そうではなかった。
300ページを過ぎ、捜査の進展とともに判明した事実から、真相が透けて見えるようになり、ありきたりで平凡な真相、わざわざガリレオ先生を登場させる必要がないのではと感じたが、最後にその印象は逆転した。
湯川の事件解決方法、成美や恭平に最後に語った事柄は、ヒューマニズムにあふれている。湯川という人物は、理系の天才であるだけではなく、人間性を見通す能力があり、深い人間愛を持っていることが伺える。事件の真相には理系人間でないと気づかないような事項があり、また、この解決方法を取るために、湯川を登場させたのだろう(警察官がこの解決方法を取るわけにはいかない)。
子供嫌いの湯川が、恭平に対して積極的に働きかけているのは意外であった。
また、湯川の発言には、事業に対する反対意見のあり方など、考えさせられる内容が随所にあった。

No.19 8点 Tetchy
(2015/10/10 00:50登録)
帝都大学の研究室を離れて、警視庁の管轄外での事件ということで定型通りに草薙と内海から事件の捜査を依頼されるわけではない。草薙が登場するのは100ページを過ぎた辺りとシリーズの中で最も遅い。つまり本書では湯川が出張先で草薙達に先んじて事件に出くわす、変則的な構成を取っている。しかも草薙と内海は東京で湯川の援護射撃をするのみ。最終的に2人が合流するのが全460ページ中396ページと最後の辺りとシリーズの定型を崩しているのが興味深い。

さらに本書はある意味、シリーズの約束事を裏切ることで成り立っていると云える。
まず今回のパートナーが柄崎恭平という少年であることが驚きだ。シリーズ当初の短編で湯川は自身が子供嫌いであることを公言しているが、本書では電車で伯母夫婦の許に向かう恭平が湯川に助けられることが発端となっている。子供嫌いの人物ならば恐らく子供が困っていても無視するだろうと思われるのでこの展開は実に意外だった。
そして最も私が驚いたのは湯川が今回事件の捜査に自発的に関わっていることだ。特に旅先で知り合った柄崎恭平と云う少年から事件のことを知らされると自ら遺体発見現場に案内してくれと申し出る場面では面喰ってしまった。事件に携わることで親友とかつての恩師に手錠をかけるようになってしまった湯川が再び草薙そして内海に協力していく経緯は『ガリレオの苦悩』や『聖女の救済』で語られているが、しかしそれでも湯川は事件が起きた直後は捜査協力に後ろ向きであった。しかし今回は上に書いたように自ら申し出るようになる。
子供嫌いの男性で警察の捜査に興味を示さない男が本書では全く逆の姿勢を見せている。シリーズの基盤が揺さぶられるような展開だ。

最先端科学を売りにした探偵ガリレオシリーズだが、長編になると科学よりも、事件に関わった人たちが表面に見せない、人と人の間に起きた齟齬から生じる奇妙な縺れを探ることに主眼が置かれている。純粋な左脳ミステリであるこのシリーズが長編では右脳ミステリになるのだ。

これは誰にしもあり得る過去のひと時の過ちがきっかけとなった事件。
それぞれがごく普通の日常を護ろうとした。しかし過去の過ちはそれを崩そうと彼らを苛むように忘れた頃に訪れる。彼らにとって忘れたい忌まわしい過去が、いやもしくはそっと胸に潜めておきたい儚い恋の想い出が歪な形で追いかけてくるような思いがしたことだろう。そしてそんな過去から日常を護るにはもはや殺人と云う最悪の非日常に身を落とすしかなかった。しかしそれが負の連鎖の始まりだった。普通の生活を続けようとするのが斯くも難しいのか。これが人生の綾なのだろうか。

まさに期待通りの作品だった。湯川が解いた真夏の方程式は実に哀しい解を導いた。しかしその解ゆえに湯川はまたより魅力的に変わる事だろう。シリーズはますます深みを増していくに違いない。

No.18 6点 あびびび
(2015/06/06 00:39登録)
湯川准教授がひと夏に経験する物語。少年との出会いがローカル電車の中という定番さが郷愁を誘う。相変わらずマイペースで、講釈たれだが?純粋な男だけに、子供とは合う…。

事件は回想シーンが主で、魅力的な海辺の街とはほとんど関係ないが、それでもしっかり読ませてくれる。作風はまったくちがうが、自分にとってはクリスティーのように外れのない作家である。

No.17 6点 初老人
(2015/04/09 22:05登録)
湯川と少年のひと夏の交流が読んでいて心地良い。
ちょっと後味の悪い所もあったが、全体としては好みの作風だった。

No.16 7点 AomKI
(2013/08/15 15:37登録)
容疑者Xの献身と対になることを目指したのだろうかという印象。
大きな意外性はないが、安心して読めた。

No.15 5点 simo10
(2013/08/14 11:24登録)
--ネタばれ含みます--

ガリレオシリーズ長編第3弾。
あの湯川准教授がついに殺人事件に巻き込まれるという、シリーズ探偵ものの王道路線を踏むことに。
とはいえその殺人事件も事故として処理されるような事件性の薄いものだし、クローズドサークルものでもないから特に緊張感はないです。
話は色々な登場人物の視点を通じて進んでいくのだが、湯川が登場するシーン以外はどうにも退屈な展開が続きます。
真相解明時も各伏線が巧く紐解かれてゆくのだけれどもインパクトはいまいちでした。
なにも殺すことはないだろうとか、湯川は子供嫌いだったんちゃうんかとか納得いかない部分も多々あります。
特に、子供嫌いが治っていたり、ラストをきれいに締めくくっていたり等はテレビ製作者たちの意向が無理やり組み込まれていたんじゃないかと勘繰ってしまいます。
(湯川のキャラが完全に福山化しているのはアリだけど。)

No.14 6点 星屑の仔
(2013/06/10 23:05登録)
東野圭吾さんの作品という事で楽しみにして読みました。「容疑者Xの献身」を意識して書かれた作品なのはよくわかります。しかし今回はそれを意識してしまいすぎたのか、二番煎じの印象をどうしても受けました。でも作品を通して「科学の功罪」「罪を犯した人間の罪の償い方」などが書かれており、それはかなり面白かったかなと思いました。期待したハードルが高かったので6点といまいち伸び悩みましたが、他の作家さんが書いていたならもう1~2点高くなっていたかもしれません

No.13 6点 ボンボン
(2013/06/09 16:25登録)
子どもと湯川先生のやり取りが面白く、いつまでも見ていたいようないいシーンが数々あった。
親と、親に限らず広く大人が持つ、子どもを守り育てる責任について、繰り返し表現されていたように思う。
事件のカラクリに、様々な人の過去だけでなく、観光地の衰退、環境のこと、子どものこと、そして定番の科学的理屈などが複雑に絡み合っていて、解決も大人の対応で収められるところがいい。

No.12 6点 haruka
(2013/05/26 20:35登録)
教育者としての湯川の一面が垣間見える作品。ミステリーとしては平凡。

No.11 6点 ある
(2012/08/13 23:17登録)
期待が大きいが故に採点が辛くなってしまいがちですが,同時期に読んだ麒麟の翼よりも面白かったです。
特に子供との会話は良かったなぁ…。

ただ,献身は理解出来るとしても,みなさんがおっしゃっているように犯罪者に対する湯川先生の姿勢に疑問を感じます。

No.10 6点
(2012/07/28 10:41登録)
相変わらず読みやすいストーリーです。
「容疑者X」と重なる部分が多いですが、それほどトリックはありません。
塚原は殺されなけれならなかったのか?読了後の根本的な疑問です。

No.9 5点 こう
(2012/01/24 00:19登録)
 根本的な不満として殺人者に対する対応が一貫してないのは湯川のキャラクターを考えるとまずいと思います。
ほとんどの読者は「容疑者Xの献身」などを通過してから読むと思いますが今回の犯人だけが例外に値するようには思えなかったです。
プロット自体は既読感がありますが相変わらず読みやすいですし少年との交流も湯川の新しい一面が見られたのはよかったのですが。 

No.8 7点 HORNET
(2012/01/22 07:48登録)
 それなりによくできた話だと思うのだが、採点を見てもさほど高評価でないのは、作者に対する期待が大きいからだろう。ミステリの出来としては並か、よくて中の上程度だと思うが、湯川と恭平少年のやりとり、心温まるつながりが色づけされている点で物語の味わいが増した。少年との別れの場面で、湯川が少年に伝えた一言に素直に感動した。学者然とした難解な物言いが小学生によく理解できるな、という無粋な感想はこの際置いておこう。
 個人的には、成実に思いを寄せる男たちの結末も多少気になった。ミステリとしては、関係者の過去を探っていく段階がちょっとうまくいきすぎな感じもしたが、かといってそこで右往左往するさまを描いても無駄に長くなるだけなので納得する。

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