黒の回廊 |
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作家 | 松本清張 |
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出版日 | 1976年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | 空 | |
(2023/04/07 23:35登録) 光文社文庫版の巻末解説によると、本作が雑誌に連載されたのは1970年台前半で、単行本として一般に発売されたのは1976年です。清張はこの連載開始少し前にやはりヨーロッパを舞台にした2編のパズラー系中編を書いています。その1編は、スコットランドのゴルフ発祥の地と言われる町が舞台の『セント・アンドリュースの事件』ですが、本作もやはり、セント・アンドリュースから遠くないレブン湖で殺人は起こります、殺人が起こるのは、全体の半分を過ぎるあたりで、その後、ヨーロッパ舞台のもう1編の中編『アムステルダム運河殺人事件』のモデルになったバラバラ殺人への言及もあります。 巻末解説ではビガーズの『チャーリー・チャンの活躍』が作者の脳裏にあったのかもしれないと書かれていますが、全体的な雰囲気や犯人の設定など、むしろ中近東を舞台にしたクリスティーに近いような感じを受けました。 |
No.2 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2022/01/12 18:27登録) 隠し球は、どこに隠す。。。? このエンディングには、突かれた! ある意味「○○ック・○○ー○」が最後の最後、傍若無人に急襲して来たようでもあり、全体構造をここで一気にひっくり返すとまでは言わないが、中央寄りに折り目付けて大きく折り返してやったくらいのインパクトはある。(ひょーっとしたら、後付けなのかも知らんが..) 旅行会社の企画した、女性ばかり大所帯の欧州歴訪ツアー。道中微妙なインシデントがチョコチョコ続く中、スコットランドはフォース湾北岸、ファイフの風光明媚な湖の畔にて、とうとう、警察の介入を拒むことの出来ない大事件が発生! 大所帯の旅ゆえに容疑者やたら多い(?)のも良し。大事な伏線が大っぴらに股を広げ過ぎな傾向はあるけれど、それで物語興味が落ちはしない(流石の清張匙加減)。 犯罪動機の、大枠で捉えればシンプルだが、バラして局地的に見ると実に細やかに嫌らしく錯綜した沙汰っぷりも良い。読んでて最初の方、いっけん旅情トゥーマッチなおとぼけイヤミスかとも映ったが、ま確かにそういう面も、良い意味で在るけど、イエイエ決してそればっかじゃありません。 トリックの説明で、ある事の「心理的抵抗が無かった」理由はそれとは違うんじゃ、、と違和感の箇所が一つあったな。。 まあでも、最後の『一同集めて真相暴露』シーンが奇蹟的にごく自然な成り行きで成立する中を匍匐前進する、ジリジリ這い上がって来るスリルの尊さったら、無え! 何気に後期なんとか問題めいたものを掠ってる(?)要素も有り、そこんトコ興味津々。 ただタイトルだけは、ちょっと何言ってんだか(笑)。 執筆背景にいわくありの本作。初出は清張全集(第一期)、三年強の長きに渡った月報連載(結末だけ単行本に書き下ろし)。 いつか再読するなら、それ行ってみたいね。(かなり直したそうだけど) |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2011/06/21 20:04登録) 女性ばかり20人以上のヨーロッパ観光ツアー団内の連続殺人を扱った、清張としては珍しい正攻法のフーダニット・ミステリ。 デンマーク、スコットランド、スイスと舞台を移動し、最後にアルプスの麓に関係者を集めての謎解きと、トラベルミステリのハシリのようなプロットで、重厚さはないもののそれなりに楽しめましたが、ツッコミどころもある。 いちばん納得がいかないのは、ヒューズ警部が言うように真犯人の動機。「ゼロの焦点」以降の作者お得意のパターンだけれど、今作については殺人の必然性に欠けます。探偵役の女性の説明はちょっと苦しい。それならなんでもアリになってしまう。 |