home

ミステリの祭典

login
貸しボート十三号
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1976年01月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2018/11/11 00:45登録)
本格興味を唆る破格の対称性を孕んだ事件構築の凄みに、ユーモアや青春描写の無骨な優しさまで含み実に無駄の無い、中身の締まった快心の一打。容疑者配置の充実ぶりも光る(一部学生達の書き分けがより鮮明であれば尚良し)。真犯人披歴場面の捻りある趣向も瞠目にアタイ。ただ、入り組んだ真相に若干(これだけ爽やかな青春ストーリーでありながら)無理筋のバカミス性が入り込むアンバランスは異物の感触。。それと、これ言うとネタバレの一種かも知れませんが「十三号」という番号に特に意味が無かったのは、ま仕方無かろう。なんとなく「製材所の●密」を無意識に連想してたんだけど。。。ラストシーンは、イイね!(7点)

ところで私が読んだのは春陽文庫の横溝正史長編(うそつき!)全集からですので、角川文庫とは異なる併載二篇にもいちおうコメントさせて戴きます。

人面瘡     
のっけからストーリーさかのぼることさかのぼること時系列幻惑ウヒェー。眼の病って、絶対何かあると思ったら、まさかそういうアレかァ、んン~ん。。 人面瘡(と妹への罪悪感)の正体は何気に想像を超えましたよ、もっとおとなしい真相と思い込んでたもんで。(7点)

首   
前半は退屈進行なんだが後半はきびきびと。情景も浮かぶ(その割にメジャー映画撮影隊の存在は肉体感がいまひとつ)。 人情話のくせに(ちょっと複雑な)トリックの根幹がむしろ人情のベクトルに向かってないのが、、、斬新というよりは残念。心理的に噛み合ってないやね。でも、特に金田一によって露わにされる人情のところは沁みる。ラストもなんだかいい。(6点)

No.3 3点 蟷螂の斧
(2016/08/10 08:12登録)
表題作(原形である短篇)のみの評価。不自然な2遺体の謎が提示され、調査の結果、ある証言を得たところで「賢明な読者なら、おおよその真相はおわかりだろう」と解決篇へ。短かすぎやしないか?と思いましたが、その後大幅改稿されたようです。超短編のため期待した金田一の活躍はありません。なお、本作品のモチーフ先例(1931年)があり評価はあえて低目としました。

No.2 5点 メルカトル
(2014/04/20 22:24登録)
再読です。
『湖泥』『貸しボート十三号』『堕ちたる天女』の中編からなる作品集。
『湖泥』は岡山が舞台で、二つの旧家が対立する中、それぞれの家の息子が一人の女性を巡っての諍いを繰り広げ、遂にはその女性の殺害という悲劇を迎える。横溝ワールド全開とまではいかないが、それに近いものが味わえる。また、女性の左目がくり抜かれているという猟奇的な一面も見られ、読者サービスにも余念がない。
個人的に最も気に入っている表題作は、貸しボートの中で男女の死体が発見されるのだが、それぞれ中途半端に首がのこぎり様のもので切られているという、一見意味不明な事件がメインとなっている。しかも男性のほうは下着一枚といういでたちなのだが、それぞれにちゃんとした意味があり、半端な首切りとほぼ全裸状態の理由が犯人を特定する手がかりとなっている。奇妙な事件の割には後味がよく、意外な展開を見せる佳作となっているのではないだろうか。
『堕ちたる天女』はトラックから落下した、石膏の中に塗り込められた女性の死体から端を発して、複雑なストーリーを展開する。ちょっとややこし過ぎて、全体像が掴みにくいのが難点で、多分すぐに忘れてしまうのではないかと思われる。

No.1 6点 kanamori
(2011/07/24 16:32登録)
金田一耕助シリーズの中編3作収録。
「湖泥」は、岡山県の僻村が舞台で二つの旧家の対立を背景にするなど、氏の中短編ではむしろ珍しい”横溝ワールド”ど真ん中の作品。解説で犯人当てとして書かれたというだけあって、終盤の義眼を巡る論理展開がなかなか秀逸。
東京が舞台となる表題作と「堕ちたる天女」は通俗的な印象が否めないが、前者の、異様な死体工作と爽やかで意外性のある真相とのギャップが面白かった。後者では、磯川警部と等々力警部の初対面というファンサービスもある。

4レコード表示中です 書評