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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2463件

プロフィール| 書評

No.1943 6点 特捜部Q キジ殺し
ユッシ・エーズラ・オールスン
(2013/06/29 14:51登録)
コペンハーゲン警察の地下室に設置された未解決事件担当部署「特捜部Q」シリーズの第2弾。
特捜部といっても刑事はカール・マーク警部補ただ一人。アシスタントの変なシリア人・アサドと、新入りの問題児女性・ローセを加えた3人の、かみ合わないチームワークと、とぼけたユーモアで読ませる人気警察小説です。
一方で、扱われる事件は陰惨で、その対比も当シリーズの特徴と言えるかもしれません。

今回は捜査状況の描写に並行して、悪人たちの行為が描かれているため謎解きの要素は薄いです。
「時計じかけのオレンジ」を思わせる”暴力と快楽”にまみれたデンマークのセレブ達の過去の悪行と、壮絶な過去を持つホームレスの女性の復讐劇を中心とした犯罪小説の側面が強く、カールたちは後半狂言回し的な役割なのが少々不満ですが、ストーリー自体は読み応えがありました。


No.1942 5点 わたしたちが少女と呼ばれていた頃
石持浅海
(2013/06/29 14:09登録)
横浜の名門女子高を舞台に、あの碓氷優佳の女子高校生時代を描いた連作ミステリ。

「扉は閉ざされたまま」などの殺人を主題にした倒叙形式の長編3作とは趣が違って、級友たちのちょっとした秘密や”日常の謎”を優佳が鋭い洞察力で謎解いていく構成で、気付きの着眼点やロジック展開に”らしさ”はあるものの、全体的に薄味感は否めないかな-------と思っていたら、最終話で作者らしさ炸裂の暗転ぶり。
このラストは、逆にシリーズの前3作を読んでいない読者のほうがインパクトがあるかもしれません。


No.1941 6点 百年祭の殺人
マックス・アフォード
(2013/06/23 18:24登録)
密室状況で連続して発生した死体損壊の猟奇的殺人事件の謎に、若き数学者ブラックバーンが挑む本格パズラー。”豪州のディクスン・カー”とも称されるアフォードのデビュー作です。

探偵役ブラックバーンの人物像や、事件が進展するごとにリード首席警部と交す推理の手法などは、ディクスン・カーというよりエラリィ・クイーンを髣髴とさせるところがあります。
二つの事件現場の見取り図の掲載、第一部の終わりに事件のおさらいと手がかりの整理、”ココ重要ですよ”とばかりの文章に傍点など、本格ミステリ読みの琴線に触れる趣向が盛りだくさんで楽しめました。
トリックに独創性がみられない点と、ロジカルのようで実はそれほどロジカルとはいえない探偵の論理展開がやや減点材料。


No.1940 5点 昨日まで不思議の校舎
似鳥鶏
(2013/06/23 17:52登録)
学校の七不思議を特集した超自然現象研究会の会誌に触発されたように、市立高校で「口裂け女」や「トイレの花子さん」などに見立てた悪戯が連続する。葉山くんと柳瀬さんは事件の背後にある悪意を突き止めるが------。

中盤を過ぎて登場する伊神先輩によって、あれよあれよという間に次々と謎解かれる真相は、いかにも青春ミステリといった動機によるものでした。いずれもトリック的には肩透かしぎみでモヤモヤ感もあるが、一応解決した後の残り60ページになってからが本書のキモの部分でしょう。
ただ、これまでのシリーズの流れを収束させた結末部分は1作目を読んでないと分かりずらいのが難点。


No.1939 6点 コリーニ事件
フェルディナント・フォン・シーラッハ
(2013/06/22 11:58登録)
ドイツ実業界の大物をホテルの一室で惨殺したイタリア国籍の工員コリーニ。国選弁護を引き受けることになった新米弁護士ライネンだったが、なぜか容疑者コリーニは殺害動機について一言も話そうとしない------。

「犯罪」「罪悪」の二冊の短編集で一躍脚光を浴びたシーラッハの初の長編ミステリ。
トリッキィでどこかシュールな味わいがあった短編集とは違って、本書は割とオーソドックスな語り口の法廷ミステリでした。
ただ、アメリカ産の優れたリーガル・サスペンスものと比べると、オビで謳うほどの”迫真の法廷劇”という感じは受けず、人間ドラマを描きつつも、いまだドイツに残る”深い疵”と法律の抜け穴というテーマに焦点をあてた社会派ミステリという感じを受けました。
コリーニはもちろんのこと、被害者側にとっても陰惨な結末ですが、ライネンのある女性に対する最後の一言が救いです。


No.1938 6点 五つの首
井沢元彦
(2013/06/22 11:06登録)
流浪の将軍・足利義昭を織田家に迎える準備に勤しむ信長のもとに、殺人を予告する五つの首なし人形が届く。城下で次々と発見される人形に見立てた首なし死体の謎に、戦国の合理主義者・信長が挑むという織田信長推理帳シリーズの第2弾。

首なし死体の謎には逆転の発想っぽい仕掛けがあって(明確な伏線が張られていますし、真相はまあ察しやすいとは思いますが)電話や写真がない時代ならではのトリックというところがミソです。
プロローグで仄めかされる3つのグループの謀略のうちの2つは、結果的に「えっ、これだけ?」という感じで、単なるミスディレクションのための挿話になってしまい、時代小説的な膨らみに寄与していないのが惜しい。


No.1937 6点 かまきり
ユベール・モンテイエ
(2013/06/15 11:57登録)
保険金目的で大学教授である夫の殺害を謀る後妻と、その愛人、愛人の結婚相手で大学教授の秘書でもある女性という、4人の男女の関係が卍模様にからまった、いかにもフランス・ミステリらしい作品。

タイトルから、てっきり男を標的にした”悪女モノ”のクライム小説だと思っていましたが、一般に言う悪女ものとはちょっと違って、物語が後半に入ってから予想外の展開を見せるプロットがなかなかユニークだと思います。これを肩透かしと言う人もいるかもしれませんが。
終盤に二人の女性の間で交わされる、それぞれの思惑が見え隠れする手紙の文面が秀逸です。
やはり”女性は怖い”という、わかりきった結論になりますねw


No.1936 6点 憑き物
鳥飼否宇
(2013/06/15 11:16登録)
”観察者”鳶山と女性写真家「わたし」のコンビが日本各地で遭遇した怪異現象の謎を解く連作ミステリ、「物の怪」につづく第2短編集です。

生き物オタク・鳶山の博識に依存するネタが多く、読者が謎解きに参加するのが難しいところもあるのは、小島正樹の一連の作品を思わせるところがありました。
それでも、各作品ともさりげなく伏線が張られた端正な本格ミステリに仕上がっており、なかでは奄美大島を舞台にした「冥き森」を個人的に推します。


No.1935 6点 死体をどうぞ
シャルル・エクスブライヤ
(2013/06/14 12:57登録)
第二次大戦下、ファシスト派と反ファシスト派が対立するイタリアの小村を舞台にしたユーモラスな軽本格ミステリ。

村の周りで戦争が行われていて、村では派閥争いに加えて殺人事件が発生しているにもかかわらず、村人たちのなんとも長閑な雰囲気がいいですw
被害者の死体が消えては現れる繰り返しギャグや、戦況の変化によってファシスト派と反ファシスト派の立場・態度がコロコロ逆転する可笑しさなど、派手なドタバタ劇ではなく、エスプリの利いたユーモアで楽しめました。
フーダニットのほうはどうでもいい感じですがw、ある人物の意外な働きには意表をつかれました。


No.1934 6点 グランドマンション
折原一
(2013/06/14 12:02登録)
年金不正受給、幼児虐待、オレオレ詐欺など、現代の日本社会が抱えるさまざまな病巣が集合したようなマンションを舞台にした、怪しげな住人たちによる群像劇風の連作ミステリ。

叙述の技巧を駆使して、人物、時、場所を誤認させサプライズを演出する、いつもながらの折原ワールドが展開されているので、それほど新味はないものの、ファンであれば安心して楽しめる好短編集。
書き下ろしの最終話「リセット」で、これまでのエピソードの伏線を回収し長編に仕上げているところが巧みです。


No.1933 6点 探偵ダゴベルトの功績と冒険
バルドゥイン・グロラー
(2013/06/13 13:15登録)
20世紀初頭のウイーン。上流階級社会で横行する詐欺、盗難、醜聞事件などの難問を、高等遊民ダゴベルトが優雅に解決する連作ミステリ。本書も「クイーンの定員」がらみの有意義な作品集です。

第1話の「上等の葉巻」のなかで、ダゴベルトが遺留品から犯人の人物像を推理する手法はホームズのそれを思わせ、”オーストリアのコナン・ドイル”と言われる所以が理解できます。ただ、他の作品のなかには、名探偵と言うよりトラブルシューター的な役割もしており、そういった作品も独特の面白さがありました。
また、冒険譚の聞き手であるグルムバッハ夫人が好奇心旺盛な愛すべきキャラの持ち主で、ダゴベルトの話の合間に入る「情景描写はいいから」などと言うツッコミが現代娘風で萌えます。


No.1932 6点 若きウェルテルの怪死
梶龍雄
(2013/06/13 12:43登録)
昭和9年の仙台、考古学者邸の離れに下宿する学生の毒死事件に端を発する怪事件を描いた”旧制高校シリーズ”の2作目。

特高刑事や非合法の反戦組織の存在が時代の雰囲気を感じさせると共に、巧妙なミスディレクションになっています。
化石骨の身代金奪取のトリックはちょっとアレですけど、毒殺事件時のアリバイ工作に絡んで、図らずも二人の人物が両方とも〇〇だったというアイデアがユニークです。効果のほどは疑問ですが、本書で作者が一番やりたかった仕掛けではと思います。
友人の怪死事件の捜査に関わりを持つことになる旧制二高生の主人公の日記形式という全体構成があまり意味がないように思えましたが、ラストで意外な方向に効いてくるのが流石です。


No.1931 6点 ソープ・ヘイズルの事件簿
V・L・ホワイトチャーチ
(2013/06/12 12:37登録)
鉄道マニアの素人探偵ソープ・ヘイズルが活躍する9編にノンシリーズ6編を収録した鉄道ミステリ短編集。論創社のホームズのライヴァルたちシリーズの一冊で、本書は「クイーンの定員」にも選定されている。

走行中の列車から中央部の車両だけを消失させるという魅力的な謎の設定で有名な代表作「サー・ギルバート・マレルの絵」をはじめ、密室状況のコンパートメントからの人間消失、密室内の銃撃などの不可能トリックものから、スパイ冒険スリラーものまで意外とバラエテイ豊かで、20世紀初頭の英国鉄道事情も垣間見れて楽しい。
種明かしが犯人や関係者による告白というパターンが多いのも時代性でしょうか。


No.1930 5点 本能寺遊戯(ゲーム)
高井忍
(2013/06/12 12:03登録)
女子高生3人組が歴史雑誌の新説応募企画に対して議論を繰り広げるという歴史ミステリの連作短編集。

デビュー作の「漂流巌流島」と同様に、外枠に登場するキャラクターは軽妙なのに、内枠の歴史の謎解き(というか新解釈)の部分が資料・文献を引用したかなり硬派な内容なので、日本史の素養がない身にはついて行くのがきつかった。
最終話だけは、そういった読者の思いを逆手に取ったようなメタなオチで楽しめましたが、鯨統一郎ほどとは言わないまでも、もう少しエンタメ性が欲しい。


No.1929 6点 刑事くずれ/蝋のりんご
タッカー・コウ
(2013/06/11 13:20登録)
精神病院を退院し社会復帰に備える人々が暮らす療養施設内で不審な事故が連続して発生する。現職時代に同僚を殉職させてしまったトラウマを抱える元刑事ミッチ・トビンは、患者を装い潜入調査に取り掛かるが、という”刑事くずれ”シリーズの第3弾。

有栖川「江神二郎の洞察」の中のある人物のセリフで、”あれを読まずしてミステリを語れない”とあったので再読してみましたw
割と短めの長編にもかかわらず巻頭の登場人物リストに20名を超える患者名がズラリと載っていて、それぞれ病歴に個性を持たせてはいるもののちょっと混乱します。ただ、アリバイを整理し消去法で犯人を絞り込んでゆくミッチ・トビンの捜査はなかなか理知的で立派な本格ミステリにもなっています。
パトQの「迷走パズル」のパズルのピースを増やし、ネオ・ハードボイルド調の語りにしたような作品です。


No.1928 6点 妖精の墓標
松本寛大
(2013/06/11 12:48登録)
島田荘司絶賛の新人賞デビュー作「瑠璃の家」に続く、ボストンの心理学教室研究員トーマ・セラを探偵役にしたシリーズの2作目です。
信州の旧家を中心とした複雑な血縁関係が描かれているため”横溝ミステリへの挑戦”というようなコピーもありますが、作者の狙いとはちょっと違うのでは思います。
事件の性質があやふやなまま、事件と直接の関係がないような”妖精の幻視”の謎を核としているため読むのに多少もどかしさを感じる側面もありますが、巻末に載せられた多くの資料を活かした読み応えのある力作になっています。
ただ、前作と同様にあまり知られていない”特殊疾患”をネタにしていますが、それが妖精の謎に直結しており読者に推理の余地がないように思えるのが難点です。


No.1927 6点 秘められた傷
ニコラス・ブレイク
(2013/06/10 13:21登録)
桂冠詩人セシル・デイ=ルイスというよりも、最近は映画「リンカーン」のアカデミー賞男優ダニエル・デイ=ルイスの父親といったほうが通りがいいニコラス・ブレイクの最後の長編ミステリ。

作者自身がモデルと思われる主人公が、新進作家時代に生まれ故郷アイルランド旅行で立ち寄った町で巻き込まれた殺人事件を回想する構成になっていて、トマス・H・クックの一連の作品に似た雰囲気のある単発作品です。
被害者の女性以上にその夫の心の動きがちょっと理解しがたいところが文芸作品風w で、遺作になることを予期していたかのようなエピローグが非常に印象に残ります。


No.1926 5点 私の嫌いな探偵
東川篤哉
(2013/06/10 12:56登録)
烏賊川市シリーズの2作目の短編集。今作では助手の流平くんはチョイ役の登場で、鵜飼と探偵事務所ビルのオーナー朱美とのコンビによる5つの事件簿です。

ぬるいギャグと奇抜なトリックのコラボは健在で、”ターザンごっこ”とかパラパラ漫画といった脱力的なガシェットが作者らしい。ただ、前作と比べるとロジック展開にキレがないものが多いように思えた。
収録作のなかでは、アナログすぎる決め手が笑える「探偵が撮ってしまった画」が個人的ベストかな。


No.1925 6点 黒い壁の秘密
グリン・カー
(2013/05/19 12:20登録)
アマチュア登山家にしてシェークスピア俳優のアバーグロンビー・リューカーを探偵役にしたシリーズ第6作。

雄大な山岳風景を舞台背景にクリスティ風の端正な本格ミステリになっていて非常に好感がもてる作風です。リューカーと妻のジョージーのコージー風のユーモラスなやり取りも良です。真犯人の動機つながる伏線の張られ方が丁寧すぎるので途中で真相を察することができましたが。
また、シリーズ全作を解題するために原書すべて再読したという森英俊さんの文庫解説がすごいです。これだけされたら創元社もシリーズの続刊を出さざるをえないでしょう。


No.1924 6点 ライダーは闇に消えた
皆川博子
(2013/05/19 11:59登録)
バイク仲間内で連続して発生する不審死を瑞々しい文章で描いた青春ミステリ。
序盤から多数の若者たちが登場し、特定の主人公を配置しない群像劇ですが、それぞれの造形が巧みに書き分けられています。ただ、明かされる真犯人の犯行動機はすんなりと理解できるものではありませんでした。メカニックなトリックもやや専門的すぎるきらいがあります。

本書は、もともと江戸川乱歩賞に応募するために書かれた作品で、他のルートで作家デビューとなったため応募は見送られた最初期の青春ミステリとのこと。
もし応募されていたら、「ミステリとしては弱い部分があるが、若者たちの生態を描いた文章は見るべきものがある」ぐらいの評価で最終候補作どまりかな(笑)。

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