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ミステリの祭典

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コリーニ事件

作家 フェルディナント・フォン・シーラッハ
出版日2013年04月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 HORNET
(2017/03/05 10:50登録)
 初の長編小説ということだが、淡々と事実の描写を重ねていく筆致は「犯罪」「罪悪」と変わらず、「小説としての味が弱い」と感じる人がいるかもしれないが、私は読み進めやすくてよかった。
 最初は、殺人の動機を探っていくホワイダニットかと思っていたが、物語のテーマはもっと深く、ドイツに戦後も色濃く残る戦争の傷といった社会的なもの。変な言い方だが勉強になった。
 ごてごてと余分な回り道や冗長な描写がなく、適度な厚みではないかと思う。
 

No.3 7点 風桜青紫
(2016/04/17 18:29登録)
新米弁護士を主人公にすえたことで、これまでのシーラッハ作品よりテーマががわかりやすくなった分、奇妙な味はやや薄めになった。しかし、物語自体はいつも通り、「物事は込み入っていることが多い」というようなテイストである。

マイヤーのキャラを気に入っていたので、彼に対して否定的な流れのままで、話が結末を迎えてしまったことがやや悲しい。とはいえ、この作品を「ライアン弁護士の成長物語」と考えれば、それも仕方のないことなのか。

ラストが少々残念だったので6点にしようか迷ったが、読んでいて面白かったのは事実なので7点にしておこう。しかしまあ、この作品に「感情の起伏や葛藤が描かれていない」というような感想が飛び出すあたり、日本でシムノンがうけない理由がなんとなくわかる気がする。

No.2 4点 蟷螂の斧
(2014/07/01 19:20登録)
本来、重い題材なので、もっと他に料理の仕様(サスペンスフル等)があったような気がします。感情の起伏や葛藤が描かれなていないため、単に歴史的事実を知らされたという感じです。教科書を読んでいるようで、小説としての味わいを感じることが出来ませんでした。残念。

No.1 6点 kanamori
(2013/06/22 11:58登録)
ドイツ実業界の大物をホテルの一室で惨殺したイタリア国籍の工員コリーニ。国選弁護を引き受けることになった新米弁護士ライネンだったが、なぜか容疑者コリーニは殺害動機について一言も話そうとしない------。

「犯罪」「罪悪」の二冊の短編集で一躍脚光を浴びたシーラッハの初の長編ミステリ。
トリッキィでどこかシュールな味わいがあった短編集とは違って、本書は割とオーソドックスな語り口の法廷ミステリでした。
ただ、アメリカ産の優れたリーガル・サスペンスものと比べると、オビで謳うほどの”迫真の法廷劇”という感じは受けず、人間ドラマを描きつつも、いまだドイツに残る”深い疵”と法律の抜け穴というテーマに焦点をあてた社会派ミステリという感じを受けました。
コリーニはもちろんのこと、被害者側にとっても陰惨な結末ですが、ライネンのある女性に対する最後の一言が救いです。

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