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ミステリの祭典

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刑事くずれ/蝋のりんご
ミッチ・トビン

作家 タッカー・コウ
出版日1980年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2021/12/10 19:15登録)
なぜか本作だけやりそびれていたから、評者にとってミッチ・トビンはこれでコンプ。ウェストレイク全部はさすがにツライのでやらないつもり。

「刑事くずれ」シリーズは、ハードボイルドのリアリティの中に、パズラー要素を再構成するコンセプトで一貫しているのだけど、本作は

この室内に真犯人がいます

と見得を切って名探偵が犯人を指摘する、というのを「お約束」ではないかたちで実現。しかもそれが、精神病院から退院して社会に馴らせるためのグループホームでの、集団療法の場面、というなかなか皮肉なもの。でもアリバイ再検討と心理的な動機と盲点があって、「ガチのパズラー」を期待するとあれ?かもしれないけども、「パズラー的要素をこれまでにないやり方でアレンジ」というオリジナリティがある。
早い話このシリーズ自体、「こういう作り方も、あるのか...」を味わうためのシリーズだから、ミステリの裏も表も分かっている!と自負するマニア向け。

でもね、地味だからね...意外に「眠りと死は兄弟」のアメリカ版みたいな気もする。(あ、あと秘密の部屋とかもあるよ)

No.1 6点 kanamori
(2013/06/11 13:20登録)
精神病院を退院し社会復帰に備える人々が暮らす療養施設内で不審な事故が連続して発生する。現職時代に同僚を殉職させてしまったトラウマを抱える元刑事ミッチ・トビンは、患者を装い潜入調査に取り掛かるが、という”刑事くずれ”シリーズの第3弾。

有栖川「江神二郎の洞察」の中のある人物のセリフで、”あれを読まずしてミステリを語れない”とあったので再読してみましたw
割と短めの長編にもかかわらず巻頭の登場人物リストに20名を超える患者名がズラリと載っていて、それぞれ病歴に個性を持たせてはいるもののちょっと混乱します。ただ、アリバイを整理し消去法で犯人を絞り込んでゆくミッチ・トビンの捜査はなかなか理知的で立派な本格ミステリにもなっています。
パトQの「迷走パズル」のパズルのピースを増やし、ネオ・ハードボイルド調の語りにしたような作品です。

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