home

ミステリの祭典

login
E-BANKERさんの登録情報
平均点:6.00点 書評数:1848件

プロフィール| 書評

No.348 5点 交換殺人には向かない夜
東川篤哉
(2010/10/30 22:49登録)
烏賊川市シリーズの第4長編。
鵜飼&戸村の迷コンビ(今回は別々ですが)を軸に、相変わらずドタバタ&ギャグのオンパレードでありながら、最後にはしっかり締めるといった展開。
今回は「交換殺人」をキーワードに3つの場面が交互に語られますが、ここにミスリードが用意されています。
途中まではなかなか事件も起こらずもどかしい展開ですし、事件発生のあとも、読者にはあまり材料が与えられず進行・・・しますが、ある人物に関する「仕掛け」が判明してさらに??
というわけで、割合トリッキーな作品だと思いますが、ちょっと平板な感じが拭えない気が・・・
「ミスリード」についても結構唐突だと思いますし、なんか全体的にうまく嵌っていないというか、背中がムズムズするような読後感(うまく表現できてないですが)・・・
個人的にはあまり感心しないですね。


No.347 6点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2010/10/30 22:36登録)
加賀刑事物の短編集。
個人的には、久々に東野作品を読了しました。
①「嘘をもうひとつだけ」=まずはタイトルが秀逸。たった1つの違和感から真犯人を追い詰める加賀刑事・・・素敵です。
②「冷たい灼熱」=個人的には本作中ベスト。社会問題にもなった事件をうまく処理してますね。
③「第二の希望」=ラストでの加賀の台詞『それが・・・あなたの第二希望ですか』が見事!
④「狂った計算」=真相はやや意外。想定内だけど。
⑤「友の助言」=この中では一番落ちるかな?
以上5編。
すべての作品で真犯人はほぼ特定されており、「ハウダニット」に特化した展開。
どれも高いクオリティで「さすが!」と唸らされますが、突き抜けるほどの読後感ではないという感じ。


No.346 5点 ローマ帽子の秘密
エラリイ・クイーン
(2010/10/30 22:24登録)
国名シリーズ第1弾にして、名探偵E.クイーンが誕生した記念すべき作品。
戦時中とはいえ、行間に古き良きアメリカの香りを感じさせ、「劇場」での殺人という設定が作品の舞台効果を高めているような気がします。
ただ、後年の作品と比べると、クオリティの面で格段に落ちるなという印象。
本作は「帽子(=シルクハット)がなぜ消えたか?」という謎にほぼすべてが費やされており、それはそれで明快なロジックと言えなくもないのですが、それだけで自動的に真犯人が決まるという解法にはやはり違和感を感じてしまう・・・
ラストの解決場面でも触れていますが、エラリー自身、中盤部分ですでに真犯人を特定していたとのこと・・・であれば、その他の捜査場面は何だったのか?
その辺り、あまりにも一発勝負すぎて、どうしても「それだけ!」という読後感になってしまいました。
それにしても、警視は息子(エラリー)を褒めすぎ!


No.345 8点 高層の死角
森村誠一
(2010/10/27 23:46登録)
作者の「本格物」代表作。
今読んでも「古さ」を感じさせないところが見事!
超高層ホテルでの堅牢な密室と、東京-福岡間の鉄壁のアリバイという2つの大きな謎に熱血刑事が怯むことなく立ち向かいます。
密室トリックについては、途中で割りとあっさり解決してしまいますが、問題はアリバイトリックの方。真犯人が仕掛けた二重三重の「欺瞞」の壁を刑事たちが1つ1つ壊していく展開は、読者を飽きさせることなく解決まで導きます。
航空機のアリバイトリック自体は後年同種のものが多数出ていますから、正直それほどのサプライズはないのですが、ホテルのチェックインの仕組みを巧みに利用したアリバイトリックは賞賛に値します。(作者の経験の成せる技でしょう)
とにかく、時代を超越し、一読に値する名作という評価で間違いないと思います。
ラストが割りとあっさりしているところと、「動機」にちょっと違和感を感じる(そこまでするか?)のがやや残念!


No.344 5点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2010/10/27 23:28登録)
作者のデビュー作にして、学生アリスシリーズの第1弾。
今さらですが、久々に再読しました。
クローズドサークルでの連続殺人やダイイングメッセージ、さらには本シリーズには付き物の「読者への挑戦」など、ミステリーマニアの心をくすぐる材料が揃ってはいますが・・・
いかんせん”若い”ですし、詰め込みすぎて消化不良気味。
容疑者が総勢10名超(江神や推理研メンバー除く)というのもどうかと思いますし(しかも名前が覚えにくい)、ダイイングメッセージは写真付けてまで必要かなぁ?というレベル。
あとは、皆さんご指摘のとおり「動機」ですよねぇ・・・まぁ納得はいかないですね。
とまぁ、かなり辛口の評価になってしまいましたが、次作「孤島パズル」では見事にロジックの効いた名作を出しているわけですから、まぁこれはこれでよしとしましょう。


No.343 4点 高山殺人行1/2の女
島田荘司
(2010/10/27 23:17登録)
光文社の分数シリーズとしては、唯一吉敷刑事(当時)が登場しない作品。
ジャンル的には本格物ではなく、サスペンスですね。
作者のあとがきにもありますが、トラベルミステリー=鉄道という暗黙の了解を打ち破るべく、「ドライブミステリー」なるものに挑戦したのが本書とのことです。
ただ、サスペンスとしてもやや陳腐な内容で、主人公の女性が勝手に怯えているという印象が強く残るだけになってます。
ドライブ途中で起こる数々の不可解な現象が、一応ラストですべて説明付けられていますが、あまり感心はしませんね。
というわけで、ちょっと”やっつけ感”の残る小品という評価に落ち着いてしまいます。
車マニアの作者らしく、そっち方面の薀蓄が出てくるところだけが良かった。


No.342 7点 退職刑事1
都筑道夫
(2010/10/24 00:31登録)
作者の代表的シリーズ第1集。
退職した元刑事の父親が息子(警視庁刑事)の話を聞くだけで事件を解決するという完全アームチェア・ディテクティブ物。
①「写真うつりのよい女」=”なぜ被害者が男物のパンツをはいて死んでいたか”という1つの謎。ここから見事なロジックが展開されます。
②「妻妾同居」=個人的には本作でベスト。これも逆転の発想ですよね。まさに「アッ!」と言わされました。
③「狂い小町」=見事なロジック。ちょっと強引かなぁ・・・とも思いますが。
④「ジャケット背広スーツ」=これも短編らしい切れ味。魅力的な謎。父親の推理というか想像力がスゴイですね。
⑤「昨日の敵」=②に通じるプロット。
⑥「理想的犯人像」=父親が語る「容疑者が犯人ではないというロジック」が見事。真犯人は結構強引に当て嵌めた感じ。(短編だし、しょうがないかな)
⑦「壜づめの密室」=面白いんですが、ボトルシップについてのくだりは動機がよく理解できませんでした。(そんなことするかな?)
以上、全7編。
どれも「さすが」というべき粒ぞろいの作品集でしょう。
本編以外にも、作者のあとがきや法月氏の解説も一読の価値十分です。


No.341 5点 黄金番組殺人事件
西村京太郎
(2010/10/24 00:16登録)
私立探偵左門字進シリーズ。
タイトル名は”ゴールデン・アワー殺人事件”。
本シリーズといえば「誘拐物」というわけで、毎回意外なプロットで楽しませてくれますが、今回は民放テレビ局の看板番組の出演者5名が収録中に忽然と消え、誘拐事件に発展・・・という設定。
誘拐方法も犯人像も謎のまま事件は進み、期待感は膨らみますが、他の佳作ほどの捻りはなく、ラストもやや平板な感じは否めません。その分どうしても評価は辛めに・・・
ただ、本作の白眉は当時(70年代後半?)の芸能人が何と実名で登場すること!(和田アキコや西条秀樹、なんと森繁久弥までも。許可取ってるの?)
しかも、和田アキコに至っては左門字に調査の依頼までしちゃいます。
さすが大物です。


No.340 6点 シャーロック・ホームズの回想
アーサー・コナン・ドイル
(2010/10/24 00:03登録)
「シャーロック・ホームズの冒険」に続く第2作品集。
新潮文庫版題名は「シャーロック・ホームズの思い出」となっています。
①「白銀号事件」=有名作。人は死んでいるが、いわゆる殺人事件ではないというパターン。ホームズ物らしい作品。
②「黄いろい顔」=結局、ホームズが解決する前に一件落着してしまいます。
③「株式仲買人」=プロット的には「赤毛連盟」に通じるもの。作者はこのパターン好きみたいですね。
④「グロリア・スコット号事件」=探偵ホームズが手掛けた最初の事件という位置づけ。(もちろん「緋色の研究」よりも前です)
⑤「マスグレーブ家の儀式」=これもホームズが私立探偵事務所開業後すぐの事件。ストーリーそのものはパッとせず。
⑥「背の曲がった男」=密室っぽい部屋で殺人が起こり、窓の下に妙な動物の足跡が残る・・・という魅力的な設定ですが、真相はそれほどでもない。
⑦「海軍条約文書事件」=機密書類紛失の謎を扱った内容。割合まとまっていて面白い。
⑧「最後の事件」=好敵手モリアテイ教授が登場。最後は活劇風にスイス山中の谷底へ・・・急すぎる!
他2編の全10編。
前作(「冒険」)の質の高さに比べれば明らかに落ちるし、短編らしい切れ味を感じない作品が多いことは確かです。
ただ、時代性を考慮すれば、作者やホームズの偉大さを否定するほどではないかと・・・


No.339 5点 黄金を抱いて翔べ
高村薫
(2010/10/17 22:39登録)
直木賞作家でもある作者のデビュー作にして、かつ日本推理サスペンス大賞受賞作。
銀行の地下に眠る「黄金」を狙う犯罪者グループが主役のコンゲーム的(?)・ミステリー。
ただ、ストーリーの3分の2は犯罪の「準備段階」に費やされ、特に幸田と北川を中心としたメンバー1人1人の背景やキャラクターを独特の筆致で浮かび上がらせています。
そのため、よくいえば「重厚でディテールに拘った作品」と言えますが、逆に「どうも読みにくい」印象が強く残り、同種のミステリーには欠かせない「スピード」や「疾走感」というものからは真逆の印象になってしまいます。
まぁ、これは「好み」の問題なので、どっちが優れているというべきものではないのですが、個人的に言えば、後者の読後感が強く残った作品になってしまいました。
ラスト、実際の強盗シーンが何か付け足しみたいになっているのも「勿体無い」と思います。


No.338 7点 亜愛一郎の逃亡
泡坂妻夫
(2010/10/17 22:26登録)
憎めない迷(?)探偵、亜愛一郎シリーズのラストを飾る作品集第3弾。
①「赤島砂上」=裸体主義者の団体ということは、愛一郎も真っ裸だったということでしょうか?
②「球形の楽園」=短編ではよくお目にかかる趣向、トリック。やや安易すぎる気が・・・
③「歯痛の思い出」=ストーリーとしてかなり面白い。ギャグを織り交ぜたつまらない描写にも「こんな意味があったのか!」と思わされます。
④「双頭の蛸」=正直、トリックの仕組みがよく分かりませんでした。ただ、登場人物のやり取りは秀逸。
⑤「飯鉢山山腹」=トリックそのものは面白いけど、かなり偶然性に頼った無茶な計画のような印象。
⑥「赤の賛歌」=真相の看破は割合容易。作者らしい作品。
⑦「火事酒屋」=ロジックが鮮やかな一作。短編らしい切れ味が光ります。
⑧「亜愛一郎の逃亡」=シリーズの締めくくり。ついに愛一郎と三角形顔の老婦人の正体が明かされます。
以上8編。
作者らしい「稚気あふれた」作品が多く好感が持てますが、前2作以上に”お笑い系”要素が強く、ロジックやトリックという面ではややネタ切れを感じさせます。
個人的な好みでいえば、やはり、「狼狽」>「転倒」>「逃亡」という順番になっちゃいますね。


No.337 4点 疑惑
折原一
(2010/10/14 21:24登録)
長期間続いている「・・・者」シリーズからスピンオフした作品集。
①「偶然」=オレオレ詐欺ネタ。仕掛けはあっさりしたもの。軽~い作品。
②「放火魔」=よくある趣向。若干ひっくり返されますが、サプライズはほんの少し。
③「危険な乗客」=新宿発「ムーンライトえちご」の進行に合わせて2人の乗客の秘密があらわに・・・たいしたことはありません。
④「交換殺人計画」=これもちょっと中途半端かな
⑤「津村泰造の優雅な生活」=ラストは若干のサプライズとややブラックな読後感が残りました。
他ボーナストラック1篇の全6編。
他の書評で、「クドイ!」と書いている折原作品ですが、短編になると「クドサ」は消えましたが、逆に物足りない感じが・・・
これこそファン心理でしょうか? まさに”ないものねだり”かもしれません。


No.336 5点 さらわれたい女
歌野晶午
(2010/10/14 21:14登録)
初期のノンシリーズ。
文庫版解説の法月氏によれば、「葉桜~」に代表される現在の作風につながる出発点の作品ということらしいです。
世間で「誘拐もの」は玉石混交、いろいろな作品がありますが、レベル的にいえば決して高いとは思えません。
何より、いくら似ているとはいえ、ほんとに見間違うかなぁ・・・というのが大きな疑問です。そこがあっさり片付けられてるところは、納得性を下げてしまいます。
プロットそのものは、まあよくできていると思いますし、見せ方の問題だとすれば、ちょっと勿体無い気はしますね。
ラストも既視感たっぷりですが、法月氏のおっしゃるとおり、まさに作者のステップアップの第一歩というべき作品なのかもしれません。


No.335 7点 看守眼
横山秀夫
(2010/10/14 21:03登録)
さまざまな職業に従事する人間の矜持を描いた短編集。
相変わらず高レベルの作品が並びます。
①「看守眼」=刑事になりたかった男(退職した看守)の執念? 1つの物事を継続することの大切さを教えられます。
②「自伝」=展開がやや安易な気がする。
③「口癖」=他人より優位に立ちたいという主人公の心理・・・何となく分かる気がします。(悲しき小市民ですね)
④「午前五時の侵入者」=分かるなぁ・・・保身的な上司ってこういう反応をするんですよねぇ・・・
⑤「静かな家」=作者得意のマスコミネタ。自分のミスを隠したい気持ち・・・よく分かります。
⑥「秘書課の男」=女よりも男の”妬み”の方が嫌らしく感じてしまいますが、気持ちはよく分かる!
以上6編。
組織に生きる人間を描いた作品が多くて、どうしても自分の姿と重ねて読んでしまいます。
ただ、作品の質的には他の佳作よりは落ちる印象。


No.334 7点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2010/10/11 00:31登録)
H・M卿が活躍するカーター・ディクスン名義の有名作。
今さら言うまでもありませんが、「足跡なき殺人」のバイブル的作品です。
本作は「足跡なき殺人」(雪密室)の真相(トリックとは言いづらい)についての、H・M卿の推理に尽きるといっていいでしょう。
確かに見事なロジックで、特に「犬」の存在に係る心理トリックが効いてます。これこそ、本格ミステリーの醍醐味だと痛感させられますね。
ただ、カーの特徴なのか、訳のマズさなのか分かりませんが(多分両方でしょうが)、読みながら『一体、今どういう場面なのかピンとこない』ことの連続・・・
登場人物もモーリスとベネットを除いては、キャラクターがはっきりせず、ストーリーが頭になかなか入らない・・・
というわけで、この程度の評価。


No.333 9点 殺しの双曲線
西村京太郎
(2010/10/11 00:14登録)
ゾロ目(333番目)の書評は、個人的に氏の最高傑作間違いなしの本作で!
初期の本格ミステリーで、特に探偵役は登場しません。
冒頭で「双子トリック」の使用を堂々と宣言しながらも、中盤以降さらに読者を二重三重に欺くという最高レベルの「仕掛け」が炸裂します。
①なぜ、東京の街中で双子の兄弟が引き起こす連続強盗事件とクローズドサークルでの連続殺人が交互に語られるのか、②なぜ、名作「そして誰もいなくなった」を模倣しながらも、相違点も読者へ明らかにしているのか、その他魅力的な謎が目白押し、伏線も見事だと思います。
それでいて、無駄な部分は極力削ぎ落とされており、冗長なところは一切ないのも西村流本格ミステリー・・・
この頃は、印象的かつ画期的なプロットが光る作品をつぎつぎに生み出しており、やっぱり「並みの作家ではない」ことを十二分に感じさせられます。


No.332 6点 雪が降る
藤原伊織
(2010/10/10 23:57登録)
ミステリー色は薄めながら、作者らしい人物造形や深い余韻を残すラストが印象的な短編集。
①「台風」=ビリヤード勝負を背景に、謎の男が引き起こした殺人事件の想い出を振り返るストーリー。
②「雪が降る」=表題作に相応しい佳作。主人公とその同僚の関係は、氏の名作「てのひらの闇」の登場人物を思い起こさせます。
③「銀の塩」=ちょっと中途半端な気がするラスト。
④「トマト」=ショートショート。印象的だが意味はよく分からず。
⑤「紅の樹」=短編ながら作者らしさを感じるハードボイルド。これは「てのひらの闇」のベースとなった作品とのことです。(確かに主人公の名前や出自が共通)
⑥「ダリアの夏」=ハートウォーミングな一作。登場する子供がかわいい。
以上、全6編。
氏の作品に登場する主人公の造形って、だいたい共通してますね。『世間に対しては斜に構えながらも、心の奥底には熱い魂が・・・』 本作もまた同様。
ただ、個人的に短編よりも長編の方が持ち味が出る気がして、この評価です。


No.331 6点 ポンスン事件
F・W・クロフツ
(2010/10/05 22:55登録)
名作「樽」に続く2作目の長編。
探偵役はスコットランド・ヤードのタナー警部ですが、キャラクター的にはほとんどフレンチ警部とイコールのような印象です。
本作品、”いかにもクロフツ”といった作品。
当初有力視された容疑者2人については、タナー警部の丹念な捜査により、アリバイ成立!
ところが、その後登場した素人(容疑者の婚約者)の推理が的中し、何とアリバイが崩れる・・・という展開。何だか「樽」と似てますね。(タナー警部形無しです)
こういった作風自体は嫌いではないんですが、本作は他の佳作に比べると、やや捻りが足りない印象ですねぇ・・・
特に「殺人事件」そのものの真相が「あれ」では、ちょっと肩透かし・・・


No.330 9点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2010/10/05 22:46登録)
御手洗潔シリーズの大作第1弾。
久しぶりに再読しました。
初読時は超長編の割には、レオナ以外インパクトに欠けるような印象でしたが・・・
今回、再読してみて評価が一変。何と言うか、ミステリーやトリック云々ではなく、1編の読み物としての「レベルの高さ」を感じずにはいられませんでした。
他の大作(「水晶のピラミッド」など)に比べて、必要性を疑うようなサイドストーリーも最小限ですし、ある意味、全盛期の作者の力量を十二分に感じることができる佳作でしょう。
ただ、例の物理トリックだけが・・・
方向性としては、「北の夕鶴」や「疾走する死者」と同じですよねぇ。ただ、あまりにもこの偶然はできすぎ!(確率は極めて低いし、あり得ないレベル)
これでは「バカミス」と言われても反論できない。それだけが減点。
でもスゴイ作品。


No.329 6点 赤い病院の惨劇
川田弥一郎
(2010/10/02 00:38登録)
現役医師による長編ミステリー。
今回も、とある地方の大病院を舞台として連続殺人事件が起こるわけですが、真相解明や事件の背景の「鍵」は「ある医薬品」にあるという、純粋な医療ミステリーです。
探偵役は看護学校に通う18歳の素人女性2人というわけで、卓越した頭脳による天才的推理ではなく、ダミーの仮説を立てては壊すの繰り返しで、ラストには真相に行き着くという展開・・・
「見せ方」があまりうまくなくて損をしてますが、準密室からの死体脱出や衆人環視の中での殺人など、トリックのテーマとしてはなかなか唸らせるものはあると思います。
伏線もなかなか巧みなのに、今一つ盛り上がりに欠ける印象なので、ちょっともったいない気がしてなりません。(そこが、某海堂氏と違うところでしょうか?)

1848中の書評を表示しています 1501 - 1520