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ミステリの祭典

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平均点:6.00点 書評数:1859件

プロフィール| 書評

No.359 7点 ガラスの麒麟
加納朋子
(2010/11/16 23:10登録)
日本推理協会賞受賞、作者代表作の連作短編集。
殺された一人の美少女をめぐって、6つのストーリーが紡がれていきます。
①「ガラスの麒麟」=まず、美少女麻衣子の殺人事件が発生。友人であるもう一人の女子高校生にも魔の手が・・・
②「三月の兎」=少女の学校の担任が本編の主人公。何となくうまくいかないことあるよねぇ・・・でもラストはホロリとさせられます。
③「ダックスフントの憂鬱」=神野先生の慧眼にビックリ! 
④「鏡の国のペンギン」=狙われるもう1人の女子高生・・・
⑤「暗闇の鴉」=もう一人の(元)美少女が登場。2人の美少女の存在がシンクロしていきます・・・
⑥「お終いのネメゲトサウルス」=殺人事件とそれを巡る謎に一応の解答が示されますが・・・ちょっと消化不良。
以上全6編。
作品中に何とも言えない独特の雰囲気がありますねぇ・・・トリックやロジックなどとはまったく無縁なのですが、単なるミステリーでは決してなく、読者の心の内に何事かを問いかけてくるような感覚とでも言ったらいいんでしょうか。
とにかく、一読の価値は十分有りだと思います。


No.358 6点 虚栄の肖像
北森鴻
(2010/11/16 22:49登録)
花師にして絵画修復師という別の顔を持つ男、佐月恭壱シリーズの第2弾。
作者らしい上質で気品のある連作短編集に仕上がっています。
①「虚栄の肖像」=古備前の甕とピカソの絵画、そしてそれを取り巻く人間の欲望や思い・・・何とも言えない重い雰囲気を醸し出してます。
②「葡萄と乳房」=佐月の元恋人と洋画の大家、藤田嗣治の未発表絵画・・・やっぱりラストは意外な展開に・・・
③「秘画師遺聞」=佐月も魅せられた女性の「縛り画」の作者の謎・・・作者とモデルの正体は意外な人物でした。
以上3編。
全編に渡ってピーンと糸を張ったような緊張感のある作品。
何となくスッキリしない展開やオチが多いので、若干残尿感を感じてしまいました。
あと、できれば本作は前作「深淵のガランス」読了後にお読みください。その方が登場人物の関係性が頭に入りやすいでしょう。(私は読む順番を間違えちゃいました)


No.357 6点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2010/11/16 22:33登録)
作者初期の青春ミステリー。
大学生の加賀恭一郎が連続殺人事件の謎に挑みます。
現場の見取り図や鍵の形状をわざわざ挿入した割りに、密室トリックはたいしたことはありません。
ただ、例の「雪月花ゲーム」のトリックについては、なかなか面白い仕掛けだと思います。まぁ、「茶道」自体馴染みのない世界ではありますが、ここまで懇切丁寧に説明されれば、読者にも十分推理可能ですし、フェアでしょう。
「青春ミステリー」としてもよくできてますね。あの年代の頃の悩みや苦しみ・・・何となく思い出してしまいました。
剣道や茶道の薀蓄話も適度に絡ませてあるのも好印象です。
評点は辛めですが、作者の初期代表作、そして加賀刑事の初登場作品として外すことのできない作品なのは間違いないところです。


No.356 7点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2010/11/13 00:03登録)
「死神」を主人公とする連作短編集。
今回も「伊坂ワールド」全開という感じで、独特のストーリーを味わうことができます。
①「死神の精度」=唯一の「見送り」なんですよね。これが伏線として最後に効いてきます。
②「死神と藤田」=ラストがよく分からなかったな。
③「吹雪に死神」=何と「雪の山荘」で連続殺人事件が発生! ですが、そこはやっぱり「伊坂作品」ですから・・・
④「恋愛で死神」=とってもいい話。なんで「見送り」にしないかなぁーと思ったら、そういうことですかぁ・・・
⑤「旅路を死神」=死神の行動&言葉が何ともいえずいい。
⑥「死神対老女」=ラストはサプライズが2つ。そうかぁ・・・そういうまとめ方かぁ・・・うまいなぁ!
以上6編。
「死神」が何ともいえない「いい味」出してます。是非続編を出して欲しいですね。


No.355 5点 死の鉄路
F・W・クロフツ
(2010/11/12 23:54登録)
フレンチ警部物の長編。
鉄道工事現場が作品の舞台となっていますが、これは作者の前職(鉄道技師)での経験がフルに生かされており、なかなか読み応えのあるストーリーにはなっています。
クロフツ作品らしく、容疑者1人1人のアリバイ&動機を丹念に調査し、その結果有力な容疑者が犯人として逮捕されますが、これが何と「誤認逮捕!」
最後はフレンチではなく、容疑者の恋人が真犯人を特定する有力な証拠に気付き、逮捕に至るという始末!
『主力の探偵役が結局事件を解決できず、他の登場人物が真犯人を指摘する』という展開がほかの作品でも見られますが、特に今回はそれがヒドイ!
この程度なら、当然フレンチ自身が捜査のうえ気付いて当然じゃないかと思わずにはいられません。読者に対してもこの事実が最後の最後にやっと提示されるので、その点でも不満が残ります。(動機も)
ちょっと貶し過ぎかな?


No.354 6点 101号室の女
折原一
(2010/11/12 23:42登録)
折原らしいテイストが手軽に楽しめる短編集。
全体的にはまあまあの出来でしょうか。
①「101号室の女」=よくある趣向ですが、そこは折原流にアレンジされてます。主人公と母親は後年作「暗闇の教室」でも登場します。
②「眠れ、わが子よ」=サスペンス感を盛り上げながら、ラストは反転させる・・・
③「網走まで」=「手紙」のやり取りを使った作者得意の展開。ラストでタイトルの意味が分かります。
④「石廊崎心中」=結末はすぐに分かりますが・・・
⑤「恐妻家」=交換殺人がモチーフ。妻がいなくなればという気持ちは分からないでもありませんが・・・
⑥「わが子が泣いている」=女ってこわいね!
⑦「殺人計画」=なかなか面白い趣向ですが、ラストは捻りすぎ?
⑧「追跡」=よくあるプロット。結末はすぐ読める。
⑨「わが生涯最大の事件」=折原らしいプロット&結末。ワンパターンといえばワンパターン。
以上全9編。
すべて平均的レベルという感想。「折原一入門編」としてはいいかもしれませんね。


No.353 7点 密閉教室
法月綸太郎
(2010/11/07 18:01登録)
記念すべき作者デビュー長編。
今回「新装版」で再読。
今さら読んでみると、なかなか意欲的で面白い作品だったんだなぁ・・・という印象。
もちろん、若さ故の「粗さ」や人物の描き込み不足といった欠点もあるんですが、学園内で起こった殺人事件を瑞々しい筆致で、かつロジックも十分及第レベルには評価できるかと・・・
本作の「肝」は「なぜ教室の机と椅子がすべて持ち去られたのか?」という謎に尽きますが(「密室」は付録ですね)、これだけのプロットをよくここまで膨らませたなぁとある意味感心しました。
主人公・工藤や友人との会話や、事件の背景や動機については、「まぁ、ちょっと現実性が薄いな」というところは否めませんが、これはこれで作者のステップとしてはよかったのではないかと・・・
法月綸太郎という作家を理解するためには、やはり本作は必読だと思いますね。


No.352 6点 サムソンの犯罪
鮎川哲也
(2010/11/07 17:49登録)
三番館シリーズの第2短編集(創元文庫版)。
前作に続いて、弁護士に雇われた私立探偵の「わたし」が三番館のバーテンダーの的確な助言を得て、事件を解決します。
①「中国屏風」=ちょっと違った角度で見たら、不可能が可能になる。言われてみると簡単なことですけど・・・
②「割れた電球」=これも発想の転換が見事。
③「菊香る」=双子登場でトリックはやはり双子絡みですが・・・たいしたことはありません。
④「屍衣を着たドンファン」=これも本シリーズ典型的な内容。あまり印象に残らない・・・
⑤「走れ俊平」=新宿通りをストリーキングした理由は? この謎がロジカルに明かされるところがいい。
⑥「分身」=珍しく殺人事件以外の内容。けっこう面白くて好き。
⑦「サムソンの犯罪」=短編らしい逆転の発想。
以上7編。
秀作が多かった前作に比べると、若干レベルダウンした印象。さすがにここまでワンパターンが続くと、読む方もちょっと変化球的作品が欲しくなる・・・


No.351 5点 ふたたび渚に
西村寿行
(2010/11/07 17:32登録)
前作「遠い渚」に続いて、関守充介を主人公に据えた「渚」シリーズ。
作者の十八番といえば「ハード&ロマン」というわけで、今回もそれを見事に踏襲、主人公・関守が単身で巨大な悪に立ち向かい、様々な妨害に逢いながらもラストは悪を殲滅させます。
もちろん、お得意の「○○シーン」もサービス満点・・・その点でも十分満足させてもらえます。
確かにワンパターンと言えばワンパターンなんですけど、それが作者の魅力であって、これがないと「やっぱり寿行じゃない!」となるのがスゴイところです。
まさに行間から「男臭さ」が漂ってくるような作品。(まぁ、読者を選ぶでしょうけど・・・)


No.350 8点 龍臥亭事件
島田荘司
(2010/11/03 23:32登録)
350冊目の書評はこの作品で。
御手洗潔シリーズというよりは、情けない中年の象徴「石岡」覚醒&再生の物語・・・
まず最初から「何で光文社ノベルズで石岡が?」という初歩的な疑問を持ちながら読み進めていきますが、最後の最後で「あの人が○○だったのか!」という(ファンにとっては)驚きの真相が披露され、島田氏の「企み」に唸らされる結果に!
作者あとがきでも触れてますが、本作はいわゆる「コード型ミステリー」と島田流日本の昭和史の融合を狙った作品ということで、それを十分に感じるほどのエネルギーとクドさを十二分に堪能できるでしょう。
「見立て」の必然性の問題とか、いかにも島田流の大掛かりなトリックについては、そのクオリティ云々を含めて、今回はあまり気になりませんでした。
「津山三十人殺し」や、それを生んだ日本の風土・風習など、その正誤や是非はともかく、読み手に考えさせずにはいられない圧倒的なスケール感にはやはり脱帽するしかないような気がしますね。(当然、好き嫌い・合う合わない、はあるでしょうが・・・)
今回、久々にこの超長編を再読して改めて思いました。「島田ファン以外がこれを読破するのは相当キツイ」と!
何しろ、上下刊で千ページ強。これでもかと続く殺人事件のオンパレード! こんな作品書ける作家は他にいないでしょうねぇ。それを含めての評価。


No.349 7点 ポアロのクリスマス
アガサ・クリスティー
(2010/11/03 23:07登録)
ポワロ物の佳作。
時期的にはちょっと早いですが、中味もあまりクリスマスを意識した内容ではありません。
本作、「館」に集まった大家族や怪しげな使用人、ゲストも登場という具合にいわゆる「コード型ミステリー」の要素満載ですが、そこは”いかにもクリスティー!”というストーリー&プロットを十分に感じさせてくれます。
正直、前半~中盤まではやや平板で盛り上がりに欠けるような気がしたところへ、ラストで意外な真犯人が指摘されます。
既視感のある「意外さ」なのは確かですが、見せ方がうまいですね。簡単に騙されてしまいました。
「外から施錠された密室(?)」というのも理由付けを含めてなかなか面白いと思います。


No.348 5点 交換殺人には向かない夜
東川篤哉
(2010/10/30 22:49登録)
烏賊川市シリーズの第4長編。
鵜飼&戸村の迷コンビ(今回は別々ですが)を軸に、相変わらずドタバタ&ギャグのオンパレードでありながら、最後にはしっかり締めるといった展開。
今回は「交換殺人」をキーワードに3つの場面が交互に語られますが、ここにミスリードが用意されています。
途中まではなかなか事件も起こらずもどかしい展開ですし、事件発生のあとも、読者にはあまり材料が与えられず進行・・・しますが、ある人物に関する「仕掛け」が判明してさらに??
というわけで、割合トリッキーな作品だと思いますが、ちょっと平板な感じが拭えない気が・・・
「ミスリード」についても結構唐突だと思いますし、なんか全体的にうまく嵌っていないというか、背中がムズムズするような読後感(うまく表現できてないですが)・・・
個人的にはあまり感心しないですね。


No.347 6点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2010/10/30 22:36登録)
加賀刑事物の短編集。
個人的には、久々に東野作品を読了しました。
①「嘘をもうひとつだけ」=まずはタイトルが秀逸。たった1つの違和感から真犯人を追い詰める加賀刑事・・・素敵です。
②「冷たい灼熱」=個人的には本作中ベスト。社会問題にもなった事件をうまく処理してますね。
③「第二の希望」=ラストでの加賀の台詞『それが・・・あなたの第二希望ですか』が見事!
④「狂った計算」=真相はやや意外。想定内だけど。
⑤「友の助言」=この中では一番落ちるかな?
以上5編。
すべての作品で真犯人はほぼ特定されており、「ハウダニット」に特化した展開。
どれも高いクオリティで「さすが!」と唸らされますが、突き抜けるほどの読後感ではないという感じ。


No.346 5点 ローマ帽子の秘密
エラリイ・クイーン
(2010/10/30 22:24登録)
国名シリーズ第1弾にして、名探偵E.クイーンが誕生した記念すべき作品。
戦時中とはいえ、行間に古き良きアメリカの香りを感じさせ、「劇場」での殺人という設定が作品の舞台効果を高めているような気がします。
ただ、後年の作品と比べると、クオリティの面で格段に落ちるなという印象。
本作は「帽子(=シルクハット)がなぜ消えたか?」という謎にほぼすべてが費やされており、それはそれで明快なロジックと言えなくもないのですが、それだけで自動的に真犯人が決まるという解法にはやはり違和感を感じてしまう・・・
ラストの解決場面でも触れていますが、エラリー自身、中盤部分ですでに真犯人を特定していたとのこと・・・であれば、その他の捜査場面は何だったのか?
その辺り、あまりにも一発勝負すぎて、どうしても「それだけ!」という読後感になってしまいました。
それにしても、警視は息子(エラリー)を褒めすぎ!


No.345 8点 高層の死角
森村誠一
(2010/10/27 23:46登録)
作者の「本格物」代表作。
今読んでも「古さ」を感じさせないところが見事!
超高層ホテルでの堅牢な密室と、東京-福岡間の鉄壁のアリバイという2つの大きな謎に熱血刑事が怯むことなく立ち向かいます。
密室トリックについては、途中で割りとあっさり解決してしまいますが、問題はアリバイトリックの方。真犯人が仕掛けた二重三重の「欺瞞」の壁を刑事たちが1つ1つ壊していく展開は、読者を飽きさせることなく解決まで導きます。
航空機のアリバイトリック自体は後年同種のものが多数出ていますから、正直それほどのサプライズはないのですが、ホテルのチェックインの仕組みを巧みに利用したアリバイトリックは賞賛に値します。(作者の経験の成せる技でしょう)
とにかく、時代を超越し、一読に値する名作という評価で間違いないと思います。
ラストが割りとあっさりしているところと、「動機」にちょっと違和感を感じる(そこまでするか?)のがやや残念!


No.344 5点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2010/10/27 23:28登録)
作者のデビュー作にして、学生アリスシリーズの第1弾。
今さらですが、久々に再読しました。
クローズドサークルでの連続殺人やダイイングメッセージ、さらには本シリーズには付き物の「読者への挑戦」など、ミステリーマニアの心をくすぐる材料が揃ってはいますが・・・
いかんせん”若い”ですし、詰め込みすぎて消化不良気味。
容疑者が総勢10名超(江神や推理研メンバー除く)というのもどうかと思いますし(しかも名前が覚えにくい)、ダイイングメッセージは写真付けてまで必要かなぁ?というレベル。
あとは、皆さんご指摘のとおり「動機」ですよねぇ・・・まぁ納得はいかないですね。
とまぁ、かなり辛口の評価になってしまいましたが、次作「孤島パズル」では見事にロジックの効いた名作を出しているわけですから、まぁこれはこれでよしとしましょう。


No.343 4点 高山殺人行1/2の女
島田荘司
(2010/10/27 23:17登録)
光文社の分数シリーズとしては、唯一吉敷刑事(当時)が登場しない作品。
ジャンル的には本格物ではなく、サスペンスですね。
作者のあとがきにもありますが、トラベルミステリー=鉄道という暗黙の了解を打ち破るべく、「ドライブミステリー」なるものに挑戦したのが本書とのことです。
ただ、サスペンスとしてもやや陳腐な内容で、主人公の女性が勝手に怯えているという印象が強く残るだけになってます。
ドライブ途中で起こる数々の不可解な現象が、一応ラストですべて説明付けられていますが、あまり感心はしませんね。
というわけで、ちょっと”やっつけ感”の残る小品という評価に落ち着いてしまいます。
車マニアの作者らしく、そっち方面の薀蓄が出てくるところだけが良かった。


No.342 7点 退職刑事1
都筑道夫
(2010/10/24 00:31登録)
作者の代表的シリーズ第1集。
退職した元刑事の父親が息子(警視庁刑事)の話を聞くだけで事件を解決するという完全アームチェア・ディテクティブ物。
①「写真うつりのよい女」=”なぜ被害者が男物のパンツをはいて死んでいたか”という1つの謎。ここから見事なロジックが展開されます。
②「妻妾同居」=個人的には本作でベスト。これも逆転の発想ですよね。まさに「アッ!」と言わされました。
③「狂い小町」=見事なロジック。ちょっと強引かなぁ・・・とも思いますが。
④「ジャケット背広スーツ」=これも短編らしい切れ味。魅力的な謎。父親の推理というか想像力がスゴイですね。
⑤「昨日の敵」=②に通じるプロット。
⑥「理想的犯人像」=父親が語る「容疑者が犯人ではないというロジック」が見事。真犯人は結構強引に当て嵌めた感じ。(短編だし、しょうがないかな)
⑦「壜づめの密室」=面白いんですが、ボトルシップについてのくだりは動機がよく理解できませんでした。(そんなことするかな?)
以上、全7編。
どれも「さすが」というべき粒ぞろいの作品集でしょう。
本編以外にも、作者のあとがきや法月氏の解説も一読の価値十分です。


No.341 5点 黄金番組殺人事件
西村京太郎
(2010/10/24 00:16登録)
私立探偵左門字進シリーズ。
タイトル名は”ゴールデン・アワー殺人事件”。
本シリーズといえば「誘拐物」というわけで、毎回意外なプロットで楽しませてくれますが、今回は民放テレビ局の看板番組の出演者5名が収録中に忽然と消え、誘拐事件に発展・・・という設定。
誘拐方法も犯人像も謎のまま事件は進み、期待感は膨らみますが、他の佳作ほどの捻りはなく、ラストもやや平板な感じは否めません。その分どうしても評価は辛めに・・・
ただ、本作の白眉は当時(70年代後半?)の芸能人が何と実名で登場すること!(和田アキコや西条秀樹、なんと森繁久弥までも。許可取ってるの?)
しかも、和田アキコに至っては左門字に調査の依頼までしちゃいます。
さすが大物です。


No.340 6点 シャーロック・ホームズの回想
アーサー・コナン・ドイル
(2010/10/24 00:03登録)
「シャーロック・ホームズの冒険」に続く第2作品集。
新潮文庫版題名は「シャーロック・ホームズの思い出」となっています。
①「白銀号事件」=有名作。人は死んでいるが、いわゆる殺人事件ではないというパターン。ホームズ物らしい作品。
②「黄いろい顔」=結局、ホームズが解決する前に一件落着してしまいます。
③「株式仲買人」=プロット的には「赤毛連盟」に通じるもの。作者はこのパターン好きみたいですね。
④「グロリア・スコット号事件」=探偵ホームズが手掛けた最初の事件という位置づけ。(もちろん「緋色の研究」よりも前です)
⑤「マスグレーブ家の儀式」=これもホームズが私立探偵事務所開業後すぐの事件。ストーリーそのものはパッとせず。
⑥「背の曲がった男」=密室っぽい部屋で殺人が起こり、窓の下に妙な動物の足跡が残る・・・という魅力的な設定ですが、真相はそれほどでもない。
⑦「海軍条約文書事件」=機密書類紛失の謎を扱った内容。割合まとまっていて面白い。
⑧「最後の事件」=好敵手モリアテイ教授が登場。最後は活劇風にスイス山中の谷底へ・・・急すぎる!
他2編の全10編。
前作(「冒険」)の質の高さに比べれば明らかに落ちるし、短編らしい切れ味を感じない作品が多いことは確かです。
ただ、時代性を考慮すれば、作者やホームズの偉大さを否定するほどではないかと・・・

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