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ミステリの祭典

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臨場

作家 横山秀夫
出版日2004年04月
平均点7.06点
書評数17人

No.17 7点 まさむね
(2023/12/17 22:54登録)
 作者の短編集の中でも上位に位置付けたくなる、高水準の短編集。
 検視官を主人公として、事件の意外な結末を見抜くという基本線は勿論のこと、それに事件の関係者の心情もキッチリと噛ませつつ反転させていく構成力には感服いたします。ちょっと無理筋な点もなくはないけれども、とにかく読ませます。さすがは短編の名手。

No.16 6点 ALFA
(2023/09/02 08:43登録)
終身検視官の異名を持つ倉石調査官を主人公にした8編の短編集。一般人には縁のない検死の世界を覗けて面白い。
複雑なプロットで読ませる「真夜中の調書」、丁寧な伏線が埋め込んである「赤い名刺」などが本格味。

殺伐としたモチーフが続くなか、各編ともに人情の隠し味が仕掛けてある。ベタだが「餞」の人情味も捨てがたい。

No.15 6点 みりん
(2023/03/21 11:59登録)
超能力者倉石さんの鑑識技術を楽しめる短編集。

No.14 8点 パメル
(2020/04/13 11:05登録)
新聞記者や検視官、刑事、婦警など異なる視線で描かれた八編からなる短編集。
この八編の謎を浮かび上がらせるのは、終身検視官と呼ばれる、捜査一課調査官、倉石義男。彼はその眼力の鋭さで、不可解な死体の謎を次々と暴く。その間の倉石は、上司にも態度や物言いを変えず、我を貫く姿勢はなかなかのもので、魅力的に映る。
倉石が暴くのは、不可思議な死の謎だけではない。死と生は連動している。死の謎を暴くことは、生のある局面に触れることでもある。そして、一つ一つの小説が、人の生の重さを見事に描き出している。
「事件」を間に挟んで描かれる人間関係は、緊張感に包まれながらも、どこか温かい。無念な死を逆転させて、爽やかな生に深い意味を与える倉石はカッコ良さをも感じさせる。

No.13 7点 斎藤警部
(2019/07/15 12:54登録)
連城スピリットが垣間見える短篇連作。各話の主人公が異なるせいか、出だしで素敵な違和感を発散する例が多く魅力的。趣向を適度に凝らした各話の構成も訴求力高し。舞台は地方の田舎町(であることが実はミソなんだが、その割に所々田舎より都会の空気が匂ってしまっている。惜しい所)。 通しの裏主人公、”終身検視官”倉石警視(捜査一課調査官)の存在感屹立がとにかく凄い。


「赤い名刺」    7点
”どうしてバレたんでしょうか?”の小ネタ一発からここまで大仰な人間ドラマをでっち上げた、ってんじゃないでしょうね?でもドラマ面のサスペンスは実に迫るものがあり満足。まさかの犯人像も、主人公のナニしたナニに引っ掛けてそのトゥーマッチ意外性(アンフェアと感じさせること)を回避、このやり口が巧い。 

「眼前の密室」    8点
密室トリックは。。。犯罪実行に当たっての切実性と、あまりに意外な犯人設定とよく結び付き、更にはパズルとしても興味津々。冒頭シーンの「なんじゃこりゃ?」感もなかなか引き付ける。悪くないね。 

「鉢植えの女」    8点
安っぽさ×2と重さ×3でバランスは取れた。 ただ、やっぱあのダイイングメッセージ(はっぴいえんどの有名曲を思い出す)には、頭に’バカ’ と付けたくなるアンバランスを感じなくもない、のだが。。やっぱりこの真相奥行き感はいい。 

「餞(はなむけ)」    7点
殺人事件のトリッキーな遂行&看破のなんとも奇妙な軽さ(準バカミス?)と、もう一つの謎事象の胸に迫る重さが、ちょぃとちぐはぐでないか。。でも心は動いたな。 

「声」    8点
シリアスで陰惨な背景なのに不謹慎にも笑ってしまう捜査側の会話シーン(山田風太郎ならうまく昇華させてたろう)。。 まさかの叙述トリックかハハ。。。と”逆に油断”した隙を突かれた。。ここまで業の深い真相は、結末まで脳裏を掠めもしなかった。。。。  

「真夜中の調書」    8点
どうやって自白させたかのディープなハウダニット、かと思いきや、何故◯◯したのかのホヮイだった。。。。ワクワクする設定。アタイは仮説を立てた。仮説の通りだった。。。。にも関わらずその人情噺には流石にノックアウトだ。

「黒星」    7点
事象トリプルで来ましたか。。。 しかもこ~んな変化球!! … 立体的で奥深い構成の人情譚だが、、ちょーっとリアリティ削ったかな。。倉石さん肴に少しやり過ぎたんでないの。こういう設定の人物描写にはほんっと微妙なバランス配慮が肝腎なわけで。。

「十七年蝉」   6点
最後の最後に来て、唐突なこじつけ臭漂う、薄らファンタジーか。 なのに心に残る。 (この題名ならトリッキィな数学趣向を絡めて欲しかったが、流石にムリチューか) 


本格ミステリと警察小説が融合しきれてない犯人設定やら何やらあるよな、と最初は思ったけど、別に両者の従来特性を融合する必要なんてこの世には無いんだよな。 それにしても、倉石検視官の、周囲の人間達が勝手に浮かび上がらせる絶妙な間接描写、および一人だけ完全ハードボイルド流儀の直接描写、この両輪が両輪ともイイんですねえ。。。。 それだけに、時折現れる妙~にバランス悪いとこ(えっ、その展開は、そのネーミングは、そのアレは、ちょっとシブくないよ~、みたいな)が残念でなりませぬ。 8点付けたいんだが7点です。

No.12 6点 take5
(2019/05/19 00:06登録)
警察物の短編集、大変読みやすいので、
お風呂で一気読み。
検視官という現場の推理者は、小説にもってこいです。
しかし第三の時効がやや上か。私見ですが。

No.11 6点 いいちこ
(2016/03/07 18:55登録)
探偵役の性格付けや尺の短さもあり、真相解明に至るプロセスの論理性で唸らせる作品は少ないが、抒情性の高さに加え、トリックのキレと鮮やかな反転の手際は実に見事で、本格短編として高水準のデキ

No.10 7点
(2014/07/27 15:01登録)
横山氏の本格系作品集の中では出色の出来栄えです。どの作品集も軒並み良しと言えますが、とくに本短編集は、いかにも本格という香りがする点がさらに良しです。ただ、この作家の場合、個人的には本格系作家というより、短編小説の名手というほめ言葉がまず思い浮かんできます。

「眼前の密室」は結末が意外すぎるとも言えるが、良作にはちがいない。テレビ版も面白かった。
個人的名作は、「鉢植えの女」。こういう小手先っぽいのは本来好きではないが、トリックがストーリーに溶け込んでいるのが良い。短編にしっかりとしたサブ・ストーリーが盛り込んであるのにも関心した。
「餞」は心温まる作品。こういうのをさりげなく挿入するところが心憎い。
「声」はとても印象に残る作品。この真相(実は藪の中)を現場の状況から判断して結論を出す倉石は、やはり超人。
「真夜中の調書」。倉石は天才か?ちょっとやりすぎなのでは?話はやや湿っぽい。
「黒星」。倉石が人格者でもあることを証明した作品。
最初の「赤い名刺」と、最後の「十七年蝉」。工夫はあるが、出来はごく普通。

映像版も、また良しです。テレビならではの一般受けしそうなキャラクタ作りがされています。原作のほうが抑え気味とはいうものの、倉石は強烈です。全般に短編小説ならではのクールな雰囲気が漂っていますが、ほろっとさせる作品を適度にバランスよく配合するなど、作品ごとに変化がつけてあり、読者の惹きつけ方は絶妙です。
ドラマのほうは回を重ねるごとに、お涙頂戴指数が徐々に度を越してきた感があります。倉石の潤んだ目が臭く感じられてきます。ちょっと芝居がかりすぎていたようです。

No.9 6点 simo10
(2013/09/16 22:19登録)
「クライシス・クライシ」、「修身検視官」の異名を持つ男、L県警検視官、倉石義男を主人公とした短編集です。以下の8話で構成されます。

①「赤い名刺」:検視対象者は倉石の部下一ノ瀬の不倫相手。倉石の手にかかれば自分の不倫がばれるかも、というハラハラ感が見所。犯人は読者にも分かるようにヒントが提示されています。
②「眼前の密室」:歌野氏の密室殺人ゲームのトリックの一つを彷彿とさせる。ただスズムシの論理がよくわからなかった。
③「鉢植えの女」:ミスターパーフェクトこと捜査一課長高嶋VSクライシス・倉石。どちらも偽装他殺を見破るが…。最初は一ノ瀬の卒業試験の方がメインかと思ったけど関連性はなかったのかな。
④「餞(はなむけ)」:退任を迎えるL県警刑事部長への倉石の餞の捜査協力。暖かいラストです。
⑤「声」:本人にはその気はなくとも男が欲望の目で見ずにはいられない悲しき魔性の女の人生。リアルにエロい。
⑥「真夜中の調書」:百万人に一人のDNAの型、血液型遺伝法則のいたずらから一つの事実が浮かび上がる。
⑦「黒星」:著者の描く女性警察官もしくは女性記者は苦労が絶えないなあ‥
⑧「十七年蝉」:十七年蝉自体はどんなものかは分かったが、ストーリー的な結びつきがよくわからん。強引過ぎない?

相変わらず読みやすいが、検視官が主人公ということで警務部が舞台のこれまでの作品に比べ、少し血生臭い雰囲気があります。全体的にレベルは高いけど個人的にはイチオシはなかったかな。

No.8 8点 haruka
(2011/05/29 12:28登録)
検視官に焦点をあてた短編集。どれもさすがの出来栄えだが、「鉢植えの女」の完成度は凄い。

No.7 8点 HORNET
(2011/01/10 11:29登録)
 同じ人物や部署を舞台にした連絡短編集はこの作家の得意技。全編に渡って貫かれている中心人物のキャラクターと,それに対立したりあこがれたりする周囲の人物とのかかわりが色濃く描かれていて読み応えがあります。今回も,倉石の「揺るがない」生き方,姿勢に引き込まれてしまいます。

No.6 8点 E-BANKER
(2010/11/27 23:03登録)
別名「クライシス・クライシ」の異名をもつ倉石検視官を軸として展開される連作短編集。
まさしく「横山短編集!」とでも言うべき良質の作品が目白押しの一冊。
①「赤い名刺」=倉石の部下、一之瀬の狼狽振りや心の動きが身に染みます。
②「眼前の密室」=個人的に本作ベスト。作者得意のマスコミネタを絡ませ、最後は意外な犯人と意外な動機が判明する展開。たいへん面白い。
③「鉢植えの女」=エリート刑事、高嶋課長と倉石のガチンコ対決。もちろん勝者は・・・
④「餞(はなむけ)」=横山流”心温まる話”。ラストがまたグッときます。
⑤「声」=映像化が似合いそうな作品。真相はかなりブラック・・・こういう女性は確かにいるんでしょうね。
⑥「真夜中の調書」=子を想う親の心・・・ですね。
⑦「黒星」=パーフェクトを誇った倉石が始めて付けた「黒星」・・・女性警察官を主人公にする話も作者の得意技。
⑧「十七年蝉」=17年ごとに発生する蝉の異常発生・・・倉石の優しさを感じさせる一作。
以上8編。
いやぁ、ホントうまくて面白いですねぇ・・・
短い作品の中で、登場人物ひとりひとりのキャラをきっちり書き分ける筆力やラストの余韻・・・「短編の名手」という形容詞は作者に捧げたいですね。

No.5 8点 おしょわ
(2009/07/04 15:26登録)
いろんな意味でいかにも横山氏の短編集らしくて楽しめました。

No.4 7点 江守森江
(2009/05/22 18:18登録)
ドラマを見てから読んだ。
連作短編集で各話短い割に濃い内容で素晴らしい。
小説の方はこれで終了しそうな終わり方だが、キャラを変えてるドラマはオリジナルな続編もあるかも?
※追記(’10年1月25日)
どうも短編で続編がポツポツと書かれている模様。

No.3 7点 白い風
(2009/04/10 21:22登録)
1本’終身検視官’の異名を持つ倉石を軸としてその周りの上司・部下また他の部署のメンバー、夜回り記者を絡めた短編集です。
「第三の時効」もそうだけど、横山さんの短編集は秀作が多いですね。
ドラマ化もされるそうなのでどのようなタッチになっているか楽しみにしています。

No.2 8点 あびびび
(2008/12/13 12:25登録)
この作者の短編集は外れがない。
今回はアウトローの検死官が主人公で、類稀なる検死能力を発揮して事件解明のお膳立てをする。
私生活、言葉使いはヤクザ並で、上司から煙たがられているが、部下からは信頼されており、あくまでも自分のスタイルを崩さない。

物語りも推理する部分がたくさんあり、警察内部の事情も絡んで本当に楽しめる。

No.1 7点 itokin
(2008/05/18 20:20登録)
テンポのある、読者を引きつける表現は独特の物で健在。
警察の特異な分野での物語も、氏にかかると立派な小説になるという事か。

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