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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1835件

プロフィール| 書評

No.1235 6点 小説スパイラル 推理の絆3 エリアス・ザウエルの人喰いピアノ
城平京
(2020/12/12 22:32登録)
『エリアス・ザウエルの人喰いピアノ』と呼ばれた古きグランド・ピアノ。華族の名家、柚森の令嬢・史緒はそのピアノによる奇怪な企みにからめとられ、かつてピアノ教室で一緒だった鳴海歩に救いを求めた…。ピアノに隠された秘密とは何か?そして歩の推理が導き出した真実とは!?ガンガンNETにて大好評掲載中の「名探偵鳴海清隆―小日向くるみの挑戦」から3編も同時収録。
『BOOK』データベースより。

中編と番外短編が三編。表題作『エリアス・ザウエルの人食いピアノ』の真相は本格とは言い難く、鳴海歩の過去に起こったちょっとした事件の顛末を描いた、軽めの作品です。どちらかと言うと短編のほうがメインになってしまっている感じですね。タイトル負けしている感が強く、おどろおどろしい古式ゆかしい本格物を期待すると裏切られます。その代り歩の兄である清隆が活躍する、問題編と解決編で構成された二作がかなり充実している印象です。

ノンキャリアで若き警部の名探偵、鳴海清隆と、大財閥小日向グループのお嬢様小日向くるみ、鳴海の部下で突っ込み役の羽丘まどかの三人のやり取りが楽しい番外編はよく練られた本格ミステリで、読者への挑戦の意味合いを兼ねた佳作だと思います。主にフーダニットですが、細かい伏線や小細工がなかなか憎らしい粋な短編ですね。表題作はともかく、こちらを評価しての点数となりました。


No.1234 5点 動機未ダ不明
汀こるもの
(2020/12/11 22:35登録)
「完全犯罪テクで悪人を始末せよ」裏活動に精を出す醍葉学園“推理小説研究部(通称・完全犯罪研究部)”が学校爆破事件で廃部に。平和が訪れると思いきや、懲りない部員たちは密かに裏活動再開!イジメ、オカルト、猫殺し、父親殺害計画…続発する事件を解決するべく最恐女子高生・杉野更紗たちがアブナイ正義で大暴走!元顧問・由利千早にもありえない災いが。
『BOOK』データベースより。

シリーズ第一作が未読であることもあり、完全犯罪研究部が一体何を目指しているのか不透明な部分があります。完全犯罪を成し遂げたいのか、未然に防ぎたいのか、両方なのか、イマイチ一貫性がないというかポリシーが奈辺にあるのか、しっかり見えてきません。まあどうでも良いんですけどね。こういった小説はキャラが大事なんですけど、これと言った個性が感じられません。それでいて高校生のくせに誰も彼もイカレているじゃないですか。事件そのものも魅力がなく、又起承転結の結に当たる部分、つまり謎の解決、結末が弱すぎてはっきり言って出来は贔屓目に見ても悪いです。

ですが100ページを超えて『インターミッション2』から漸く骨のある内容になってきます。そこまではもう読まなくても良いレベルじゃないかと思いますよ。良く辛抱してここまで読んだものだと自分を褒めてあげたいです。
ですので、前半3点後半7点で均して5点となりました。シリーズの他の作品は多分読まないでしょうね。


No.1233 6点 性格交換
吉村達也
(2020/12/09 22:30登録)
結婚三年目の南田礼子は、陰気な性格が夫に嫌われているのを察し、それを変えたいと思っていた。そんなある日、ネットで『性格交換案内所』という奇妙なサイトに出会う。自分と他人の性格を交換するという、常識では実現不可能と思える世界。しかし礼子は、その効能を信じ、会員登録をしてしまう。一方、堅物な夫の博は、もっと柔軟な性格になるべきと、弟から浮気を勧められ、いつもと違う人格で美人受付嬢と不倫の世界に。夫婦で第二の自分を求めていたころ、世間では性格交換によると思われる殺人事件が次々に…。
『BOOK』データベースより。

本人同士が会わずしてネット上で性格交換が出来るなど、あろうはずもないと言ってしまえばお終いですが、それを途中までは何となくあり得そうと思わせた時点で作者の勝ちですね。ただ登録をして性格を交換する相手が絞られ、いよいよ実行に移す段階でそれはないだろうといささか拍子抜けでした。簡単に理想の性格を手に入れるのは土台無理筋です、そんなに容易に人間の本質は変えられるものではありません。普通の感覚からすればそれは所謂詐欺に近い存在であると判断できるはずで、しかし振り込め詐欺に騙される人の様に、迷いながらも会員登録してしまう現実もあるのではないかと思わせられます。その意味で、ある程度のリアリティは感じます。

流石は吉村達也で、重くなり過ぎずサクサク読めます。そして丁度良いところでの場面切り替えは見事で、ああそこで次行くのかと思いながらも、そこからもまた面白いので中弛みもなく最後まで楽しめました。そのテクニックというか構成は心憎いばかりです。殺人事件まで絡んできて、俄かに性格交換サイトの信憑性が深まり、実際にそこにのめり込んでいく人の姿や行く末をも描いて、オチも着地点もしっかりしており、面白いホラーサスペンスの良作だと思います。


No.1232 6点 蟲と眼球と殺菌消毒
日日日
(2020/12/08 22:07登録)
あれからひと月―。「エデンの林檎」の不思議な力を手に入れながらも、仲間の鈴音や愚龍と共に日々平穏に暮らそうとするグリコのもとへ、賢木財閥から二人のエージェントが送りこまれて来る。その使命はなんと、「グリコの両親になること」!?慣れぬ「家族生活」にすっかり調子が狂うグリコ。一方その頃、町では手長鬼と名乗る怪人が残虐な事件を起こしていた。その犯行に超常のものを感じたグリコは、手長鬼と対決する決心をするが…。グリコの不器用な優しさが読む者の胸を打つ!未曾有の学園ファンタジー再開。
『BOOK』データベースより。

一作で完結するはずだったとあとがきで作者が書いている通り、やや無理やり感が無きにしも非ずのシリーズ第二弾。もう完全に主役はグリコになってます。鈴音や賢木の出番が少なすぎてやや不満ではありますが。それにしても色々詰め込みすぎて、その後はどうなったのか気になる、中途半端で終わっているエピソードもあって、所謂続編に続くって感じな終わり方ですね。
今回はグリコが擬似家族に馴染んで、うまく家庭生活をやっていけるのかがテーマとなっているのかと思いきや、それはほんの味付けに過ぎず、結果バトルがストーリーの中心になっています。手長鬼が最強の相手だと思っていたら大間違い、その後に更に強力な化け物を相手にすることに・・・。

ラノベなのにこれがラノベかと思うような、重くて暗い救いのない話に終始しており、かなり異色です。手長鬼の残酷すぎる過去や、憂鬱刑事嘆木の登場、次々に惨殺される少女たちといった魅力的な要素を孕みながらも、テンポが速すぎてじっくり腰を落ち着けて読む状況になりませんでした。
前作が面白過ぎた為、嫌でも期待が高まりましたが、やはりそれに比べると一枚劣る感は否めません。でも、エピローグには心揺さぶられるものがあり、半端に終わったエピソードも含めて、とても次回作が気になります。


No.1231 7点 ドールハウスの人々
二宮敦人
(2020/12/07 07:36登録)
大学生のソウスケは天才的な球体間接人形作家。こだわりぬいた作品は妖しい魅力に満ちていた。ところがある日、恋人のヒヨリを展示会に連れていったことから、狂気に満ちた連続殺人事件が幕を開けた。犯人は、親交のある人形作家か狂信的なファンか―。真犯人を追ううち、人形を愛する人たちの狂気の世界に呑みこまれ、ソウスケのすぐ近くまで魔の手が迫る。
『BOOK』データベースより。

作品の性質上ネタバレの危険性がありますので、あまり多くは語れませんが、如何にも二宮敦人が書きそうな作品ではあります。ジャンルとしてはホラー寄りのミステリでしょうかね。短い小説ですが、その世界観が濃密で特に人形に執着する人間たちの狂気がよく描かれていると思います。まあ、やられましたよ、それ以上は何も言えません。

途中までは舌足らずな表現をわざと駆使して、どうにも据わりの悪い小説だという印象でしたが、それも計算の内だと気付いた時には作者の罠に嵌っていたわけです。猟奇殺人の意味するホワイダニット、少ない登場人物の中で果たして誰が犯人かに興味を引っ張られ、それにプラスしてあくなき人形への偏愛をも描き切っています。
警察の動きがあまりに緩慢だとか、色々瑕疵はありますがかなり楽しめたのは確かなので、甘目に採点してこの点数に敢えてしました。


No.1230 7点 香菜里屋を知っていますか
北森鴻
(2020/12/06 07:39登録)
ビアバー香菜里屋は、客から持ちこまれる謎がマスター・工藤によって解き明かされる不思議な店―。常連客は、工藤による趣のある料理とともにこの店を愛していた。だが、その香菜里屋が突然たたまれてしまう。そして若かりし頃の工藤の秘密が明らかになる。シリーズ完結編。
『BOOK』データベースより。

これがシリーズ完結篇だったと気付かず、うっかり先に読んでしまいました。しくじったなあ。でもいずれ読むはずだったし、この作品を踏まえたうえで先行作をじっくり楽しむのもアリかとは思い、自分を納得させているところです。しかし、流石に評判が良いだけあり、格調高い文章で綴られる本作は、やや淡白な感は否めないものの、掉尾を飾るに相応しい作品集となっていると思います。そして、工藤の過去を知り、香菜里屋の最期を迎えるという場に立ち会えた事を感無量の想いで読み終得ることが出来、我知らず感銘を受けました。

そして最終話には驚きました。読者サービスの一環かも知れませんが、北森作品には欠かせない人やあの人が登場し、最後を盛り上げてくれます。やや散文的に過ぎる感はありますし、取って付けたような感覚は否めませんが、読者にとっては嬉しい誤算だったのではないでしょうか。それにしても、工藤の作る料理の数々は誰しもが一度は口にしてみたくなるようなものばかりで、やはり本シリーズを語る上ではなくてはならないアイテムとして機能していた事は書いておきたいですね。いずれ読むであろう、残りの未読作品も楽しみです。


No.1229 6点 微笑む人
貫井徳郎
(2020/12/05 23:04登録)
エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は事件をノンフィクションにまとめるべく取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で、不審死を遂げた人物が他にもいることが判明し…。戦慄のラストに驚愕必至!ミステリーの常識を超えた衝撃作、待望の文庫化。
『BOOK』データベースより。

久しぶりの貫井徳郎、相変わらずどんよりしてますね。しかし読み始めてからの吸引力は流石で、思わず物語に入り込んでしまいました。ノンフィクション小説風に纏め上げられて、仁藤という人物の過去を遡ることによって、その性格、人格を掘り下げようとしますが、調査すればするほどその人物像が浮き彫りになるどころか、曖昧になっていきます。一体どこに真実があるのか最後まではっきりしません。よって読後感は決してスッキリした物にはならず、結局仁藤俊実という人間を把握することが出来ないため、読者は結構なフラストレーションを抱えることになりそうです。

ストーリーとしては平坦ではなく、それなりに起伏もありミステリ的趣向も盛り込まれていたりして、読む者を飽きさせないような工夫は見られます。実際最後まで退屈することはありませんでした。だからと言ってこれが傑作であるとか問題作だとかは思いません。ミステリなのかサスペンスなのか社会派なのかすら判然としません。しかし、読後に何かが引っ掛かり何かを心に残す、嫌らしい作品だとは思います。それがこの人の持ち味でもあるでしょうしね。
それにしても本の置き場が無くなったから妻子を殺した、というのは果たして本当だったのか、そこだけははっきりして欲しかったと思いますよ。多分事実だったんでしょうけど。


No.1228 6点 怪盗は探偵のはじまり
てにをは
(2020/12/04 22:51登録)
父から怪盗ガ・ルーの名を受け継いだ高校生の渡瀬葉介は、ヨーロッパの至宝『アルトの鮮血』を盗みに入った美術館で、ブロンドの髪を三つ編みにした、青い瞳の少年に出会う。少年は探偵だと名乗り、その場に残された死体についてたずねるが、身に覚えのない葉介は風のように消え去るのだった。しかし、翌日何事もなく登校した学校で、転校生だという昨夜の少年、墨堂・ユリエル・綾虎に再会する!!
『BOOK』データベースより。

中編『アルトの鮮血』と長編『植物園黒魔術事件』から成るてにをはの新シリーズ?と言って良いのかどうか。『アルトの鮮血』は事件そのものよりも、どちらかと言うと登場人物、特に語り手の高校生兼怪盗の渡瀬葉介と転校生で探偵墨堂綾虎の人となりの紹介の意味合いが強い作品です。ロジックや伏線はほとんどなく、後出しの感は否めません。まあ軽い作風で読み易さは評価できると思います。そして、その後何と二人は○○を始めてしまいます、詳細は『植物園・・・』を参照という訳です。

その『植物園黒魔術事件』は作中でも書かれている通り、フーよりもホワイに特化した作品となっています。青春小説風の学内の描写を挟みながら、事件は謎めいた道具立てが揃って、まさに何故そのような状況が生まれたのかが強調されており、摩訶不思議な雰囲気を纏っています。しかし、犯人の目処は誰が見ても容易に付く事でしょう。問題はホワイダニットですが、これはそれなりに意表を突かれるものであり、ああなるほどと首肯せざるを得ない納得感はあります。
そして最後にオマケの様に付いている『エピローグの手触り』は青春の爽やかさを取り戻して、好感度を上げることに成功していますね。後味が良く、各登場人物に救いがあり結局落ち着くところに落ち着いて、一件落着ってな感じがとても好印象です。


No.1227 6点 ぼぎわんが、来る
澤村伊智
(2020/12/02 23:05登録)
幸せな新婚生活をおくっていた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか…。第22回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

王道を往くホラーですね。一章ごとに語り手が変わるプロットはなかなか巧緻で、思わず引き込まれます。しかし、あまり怖くはないです、まあ個人の感想ですが。徐々に迫ってくる正体不明の怪物にどう対峙するのかが読みどころです、それと同時にその怪物が一体何に由来するのか、どこから来たのかが語られ物語が上手く組み立てられています。

田原家を魔の手から守ろうとする真琴と野崎が正に命懸けでぼぎわんに立ち向かう姿が描かれる二章は、一章とは物事の見方が逆転して構成の妙を見せつけます。この辺りは新人とは思えない手腕を発揮していると思います。
そして真打、同じ霊媒で真琴の姉である琴子の登場シーンには痺れます。その格好良さには惚れ惚れしますね。その後のぼぎわんと琴子、野崎の対決はファンタジーの様なアクションシーンがふんだんに盛り込まれており、物語のクライマックスを迎えます。しかし、その描写がやや物足りなかったのは残念です。もっと上手く盛り上げられたはず、この作者なら出来たはずでしょう。
蛇足ですが、大いに意外だったのが解説を千街晶之が書いている事です。ホラー作品の解説を千街が?と驚きましたが、『ずうのめ人形』がミステリ寄りの作品だったことが関係しているようです。


No.1226 8点 ベーシックインカム
井上真偽
(2020/11/30 22:27登録)
日本語を学ぶため、幼稚園で働くエレナ。暴力をふるう男の子の、ある“言葉”が気になって―「言の葉の子ら」(日本推理作家協会賞短編部門候補作)。豪雪地帯に取り残された家族。春が来て救出されるが、父親だけが奇妙な遺体となっていた「存在しないゼロ」。妻が突然失踪した。夫は理由を探るため、妻がハマっていたVRの怪談の世界に飛び込む「もう一度、君と」。視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術の被験者に選ばれた。紫外線まで見えるようになった彼女が知る「真実」とは…「目に見えない愛情」。全国民に最低限の生活ができるお金を支給する政策・ベーシックインカム。お金目的の犯罪は減ると主張する教授の預金通帳が盗まれる「ベーシックインカム」。
『BOOK』データベースより。

これはカテゴライズが難しい短編集ですね。確かに体裁はSFかも知れませんが、根底には本格ミステリの魂が宿っていると思いますので、私はジャンルを本格ミステリに一票投じます。それにしても井上真偽はこの作品集で一皮剥けたと思います。全ての短編の作風が異なり、変幻自在の筆運びを披露しています。素晴らしいですね。どれもこれも途中で突然異世界に放り込まれたような感覚に陥り、これまで経験したことのなかったような驚きがあります。

四話目までは『小説すばる』に掲載されたもので、最終話が書下ろしです。この書下ろしの表題作の出来がまた良いんですよ。最初に違和感を覚え、あ、なるほどそういうことかと、まあよくあるタイプのアレだなと思いました。しかし、そこからの話の膨らませ方の手際がよく、それまでの作品を上手く利用してここまでの本格ミステリに仕上げた手腕は褒められるべきだと思います。名探偵ジャパンさんが書かれているように『このミス』や『本格ミステリベスト10』にランクインしていなかったのが不思議なくらいです。
一方でSFファンが読んだら物足らないのかなとは思います。しかし本格ミステリファンにとっては決して読んで損のない作品集だと私は考えています。


No.1225 7点 世界でいちばん醜い子供
浦賀和宏
(2020/11/29 22:15登録)
幸せだった純菜を、孤独な日々へと突き落とした“彼”との別れ。繋がりを失い、塞ぎ込んでいた彼女のもとへ一通の手紙が届けられる。その差出人こそ、2年前に巻き込まれた呪わしき轢き逃げ事件の関係者だった!恨み続けた犯人への手掛かりを掴んだ純菜は復讐を誓うが、同時に彼女の命は何者かの存在によって脅かされる。松浦純菜、絶体絶命の大ピンチ。
『BOOK』データベースより。

松浦純菜・八木剛士シリーズの番外編的な作品だと思っていたら、大間違いでした。まず純菜の一人称で語られるのが意外な点です。しかも八木は語られるだけで登場しません。終始「彼」という表現で出てきます。けれどそれで物足りない感覚は一切ありません。そこは純菜の内面が存分に描かれていることで十分補填されているからだと思います。そして多分彼女の身体の秘密が初めて語られた貴重な作品でもあります。私の中ではもっと早く、と言うか順番通り読みたかったなという思いはありますが、今回遅まきながら読んで心から良かったと思える一作でした。

正直、この話は純菜が八木を差し置いてロックバンド・メグローズのボーカルといちゃつく恋愛物だと勘違いしていました。ところがこれは立派な青春ミステリであり、本格ミステリだと断言して間違いないことに今更気づきました。評価は分かれるものと思われますが、個人的には大満足です。純菜の過去に何があったのか、本人の口から語られるとあって、流石に生々しさと彼女のやや歪んだ人間性なども垣間見られ、浦賀ファンとしては大きな収穫だったと言っても過言ではありませんでした。


No.1224 5点 僕の小規模な自殺
入間人間
(2020/11/28 22:48登録)
しがない大学生の俺のもとに、未来からの使者が来た。ただしその姿はニワトリだったが。そのニワトリが言う。『三年後に彼女は死ぬ』と。「彼女」とは、熊谷藍のことで、俺のすべてだ。その彼女が、死ぬだって…?だが机をつついてコケコケうるさいそいつはこうも言う、『未来を変えろ』と。どちらも真に受けた俺は、病魔に犯されて死んでしまうという彼女のために、三年間を捧げる決意をする。そして俺は、彼女の前に立ちこう言った。まずはランニングと食事制限だ!
『BOOK』データベースより。

懲りずに入間人間。『花咲太郎は閃かない』で懲りたはずなのに、何故か読みたくなる入間です。これは例えてみれば知る人ぞ知る『笑う犬の生活』の小須田部長の最終話にニュアンスが似ている気がします。スケールは大きいですが、結局人間ドラマに終始している辺りがですね。シチュエーションは若干違いますが、方向性に共通点があります。ただそれぞれの立ち位置は真逆ですが。

『小規模な自殺』というタイトルは即ち人類の滅亡を意味しており、その中に主人公の「俺」が含まれている訳です。その代わり彼女はただ一人助かるのです。その彼女が病死(しかも未知のウイルスによる!)しないようにまずはひ弱な身体を鍛えることから始まり、動物に成り代わった未来の人類を敵に回し、戦う俺。
まあそれなりに面白いと思いますが、どうにも彼女に魅力が感じられないので、説得力が足りないですねえ。彼女一人の為に全人類が滅んで良いのか、という重い命題にさして思い悩むこともなく、俺は彼女を選びます。果たしてそれでいいのか、と考えるのが普通の感覚でしょう、しかし、主人公のように人類全体の重みがピンと来ないのは私も同様です。だからと言って目の前の彼女を選択しても良いのか、これは悩むでしょうね。でもこれはあくまでラノベなので、そこまでシリアスにはなり切れないのです。
Amazonで評価が高いのは多分入間人間のファンがレビューを書いている為と思われます。大体こんな小説、一般読者は読みませんからね。


No.1223 5点 落下する花
太田忠司
(2020/11/27 22:44登録)
月読―それは、人が亡くなると現れる“月導”に込められた死者の最期の思いを読み取る特殊能力者だ。投身自殺した女子大生の月導に残されていた殺人の告白。それは若者たちの錯綜する思いが招いた悲劇だった―。表題作など4篇収録。月読・朔夜一心が活躍する傑作ファンタジック・ミステリー。
『BOOK』データベースより。

太田忠司はどれも突き抜けたものがないと言うか、低刺激というか、とにかくインパクトに欠ける印象が強いのですが、本作もそれは同様で、読んだ先から内容を忘れていくような作品でした。パラレルワールドでは人間界に於いて、人が亡くなった時に必ず「月導」が例えば溶けない氷とか大人用の箸と子供用の箸が捻じれたものとか言った具合に、様々な形で現れ、その意味合いを読む「月読」によって、その人の最期の想いを知ることが出来るという設定。この風変わりなSF的発想により、月読である朔夜が探偵役を務めますが、それは事故であったり自殺であったり殺人であったり様々な事件です。

シリーズ第一作も購入済みですが、この調子ではあまり期待できないかも知れませんね。どの短編ももう一捻りあるともっと面白い作品に様変わりしたのではないかと思うと、少々残念ではあります。人間も描けていないので、探偵役と言えども決して好ましい個性を有しているとは言い難く、ちょっとがっかりです。ただ、特異な設定のおかげで朔夜が難なく事件に関与できるので、その辺りは上手くクリア出来ていますね。


No.1222 6点 人間の尊厳と八〇〇メートル
深水黎一郎
(2020/11/25 23:09登録)
「俺と八〇〇メートル競走しないかい」―ふと立ち寄った酒場で、見知らぬ男から持ちかけられた異様な“賭け”の意外な結末。一読忘れがたい余韻をもたらす、日本推理作家協会賞受賞の表題作ほか、極北の国々を旅する日本人青年が、おもちゃ屋と博物館で遭遇した二つの美しい謎物語を綴る「北欧二題」など、バラエティ豊かな5篇を収録。本格の気鋭による初短篇集が待望の文庫化。
『BOOK』データベースより。

かなり出来不出来の差が激しい短編集だと思います。何と言っても表題作が最高ですね。量子力学の蘊蓄からの人間の尊厳を賭けた戦いが始まるかと思いきや・・・その論理展開には思わず頷きそうになりました。ところがそこへ思わぬ伏兵が現れて、邪魔するなよとか勝手に思っていましたが、その人物がストーリーの結末に一役買うというなかなか粋な一篇です。二段落としのオチが待っていて、思わぬラストに。これだけなら8点献上しましたが、均してこの点数に落ち着きました。

他に個人的に好きなのは『特別警戒態勢』『完全犯罪あるいは善人の見えない牙』はそれぞれ7点。甘いかもしれませんが好みの問題なので。面白さよりも意外性を優先して。残りの『北欧二題』『蜜月旅行』が5点。前者はお洒落さは買うけれど面白みに欠ける為。後者はミステリとして評価するとどうしても弱いと言わざるを得ない為。勿論読解力のなさには定評のある私なので、その辺はご理解頂きたいですね。あくまで個人の感想ですので。


No.1221 6点 湘南人肉医
大石圭
(2020/11/24 22:47登録)
湘南で整形外科医として働く小鳥田優児は、神の手と噂されるほどの名医だった。数々の難手術を成功させ、多くの女性を見違えるほどの美人に変貌させていた。しかし、彼は小さな頃から人肉に対して憧れを持っていた。そして、ある日、手術で吸引した女性の臀部の脂肪を自宅に持ち帰り、食べてしまう。それは麻酔が施されていたため、苦く、おいしいものではなかったが、人の肉を食べるという禁を破ったことに対して、優児は強いエクスタシーを感じた…。
『BOOK』データベースより。

エロ多めグロ控えめです。タイトル通り美容整形外科医小鳥田が、あの手この手で女を次々と誘き出し、自宅で車の中で殺害浴室にて解体、食べられる部位は全て食べ、残りは捨てる模様を描いています。料理方法も生やステーキ、焼き肉、ハンバーグなど様々で、女の冷凍した生首をテーブルに乗せ、それを眺めながらもりもり食します。なぜ彼がそのような行為に至ったかという切っ掛けから、過去の回想を含んで詳細に描かれており、その筆致は内容とは反比例し美麗なものとなっていると思います。
所謂サイコホラーと言えますが、小鳥田は人肉という特殊な希求や行為以外はごく普通の人間として扱われています。性格的にも破綻はなく、異常な欲求さえなければ単なる名医なのです。カニバリズムと言うより、女の肉を美味しく食しそれを嚥下することにより女と一体になれるという性的興奮を楽しむのが小鳥田の嗜好です。それは私的には何となく理解できる気もします、そういう自分が少し怖かったりして。

警察の動きがなく容疑者扱いもされない為、いったい話がどう転んでいくのかが掴めず最後までどのような結末を迎えるのかが想像できず、オチも読めません。ですから、最初から最後まで興味を持って読むことができましたし、途中でダレることもなく楽しめました。グロくはありませんが、エロ描写はなかなかのものなので、苦手な方は避けたほうが無難でしょう。ツッコミどころは多め。


No.1220 7点 狂乱家族日記 壱さつめ
日日日
(2020/11/22 22:55登録)
「その醜くも穢れきった指先で凶華様のたおやかな御腕を掴むという冒涜行為を今すぐやめろこのユダ的背徳者」ある日、凰火が出会ったのは、罵詈雑言をまき散らすネコミミ、シッポつきの可憐な少女だった。食べ物を掠め取り、大勢の警官に追われるこの人外少女・凶華は一体何者? そして――凰火を襲う最悪の運命とは!? 超常現象対策一課行動部隊長・乱崎凰火と奇天烈な「家族」との馬鹿馬鹿しくも温かい愛と絆と狂乱の物語!! 
Amazon内容紹介より。

作家日日日(あきら 注 文字検索するとちゃんと出てきます)はやはり本物なのか。本シリーズは番外編併せて24作でやっと完結しています。それだけ人気があったのかは分かりませんが、取り敢えずコンプリートを目指しています。アニメ化もされていますし、本作を読む限りこの人の書く文章とは相性が良さそうなので、まあ何とかなるでしょう。これは最早文字で読む漫画(褒めています)です。随所で笑えるし、いじめ(またか)なんかもヘッチャラ、敵も味方も救ってしまう凶華の無茶苦茶な作戦など読みどころ満載です。

今回含めおそらく今後も、家族愛を描いたものとなっていくであろうと想像されますが、かりそめ家族或いは即席家族の中で果たして誰がクロなのかという命題はそっちのけで、様々な事件が起こりそうな予感がします。
もうキャラが立っているとか云う次元を超えて、それぞれが個性の塊で性格描写もきっちりなされていますし、ラノベもこんなのばっかりだと楽しいなと思いますね、ええ。


No.1219 4点 ただ、それだけでよかったんです
松村涼哉
(2020/11/21 22:32登録)
ある中学校で一人の男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔です』という遺書を残して―。自殺の背景には、菅原拓によるKたち四人への壮絶なイジメがあったという。だが、菅原拓はスクールカースト最下位の地味な生徒で、Kは人気者の天才少年。また、イジメの目撃者が誰一人いないことなど、多くの謎が残された。なぜ、Kは自殺しなければならなかったのか。「革命は進む。どうか嘲笑して見てほしい。情けなくてちっぽけな僕の革命の物語を―」悪魔と呼ばれた少年・菅原拓が語り始めるとき、誰も予想できなかった、驚愕の真実が浮かび上がる。第22回電撃小説大賞受賞
『BOOK』データベースより。

そもそも物語の根底にある人間力テストが理解できません。そんな物が現代日本に実際に存在したとしたら、即人権問題に繋がりますよね。父兄がまず大騒ぎ、ネット、マスコミで叩かれて直ぐに取りやめになるでしょう。中学校の生徒をランク付けするなど噴飯ものですね。そんな設定に眉を顰めざるを得ません。それを除けば、もうこういった類の話には食傷気味でして、あまりに定型的過ぎてどうにも感心出来ません。
それと安直に「革命」の言葉を使っていますが、それだけの事で果たして革命になり得るのかなと思いますよ。電撃小説大賞受賞作だから、ラノベなのでしょうが、その割には出来損ないのミステリもどきみたいな印象を受けますが。内容は重めで暗く陰湿で青春らしさの欠片もありません。

これを評して驚愕の事実とかどんでん返しとか言うのは、大きな間違いです。完全に予定調和の世界でしょう。もうそろそろいじめ問題を軽く取り扱うのは止めにしませんか。必然性があれば別ですが、不用意に触れると怪我をしますし、あまりにありふれ過ぎていてうんざりです。
ただ一つ、誰がどんな役目を果たしているのか、には注目すべきものがあると思いました。


No.1218 6点 庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈
(2020/11/20 22:29登録)
死者の弔いのため、遺体を解体し様々な製品を創り出す「遺工」を家業とする庵堂家。父の七回忌を機に、当代の遺工師である長男・正太郎のもと久々に三兄弟が集まる。再会を喜ぶ正太郎だが、次男の久就は都会生活に倦み、三男の毅巳も自分の中の暴力的な衝動を持て余していた。さらに彼らに、かつてなく難しい「依頼」が舞い込んで―。ホラー小説の最前線がここに!第15回日本ホラー小説大賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

ホラーではないと思います。遺工師という一風変わった職業の長男正太郎と、主な語り手であり帰郷した次男、粗暴で口汚い三男のアットホームな物語です。とは言え勿論グロ描写に容赦はありません。かなり異様な小説ではありますね。異色と言うのも憚れるほどの怪作と呼んでもあながち間違いではありません。
読み始めて暫くはゴツゴツした文章やいかにも荒削りな作風に慣れるのに時間が掛かりましたが、読み進むにつれ馴染んできます。しかし、読者を選ぶ作品には間違いないと思います。こういうのが苦手な読者は少なからず存在するでしょう。冒頭から自ら切り刻んだ死体に添い寝する長男の姿で始まるわけですから、想像が付くとは思いますが。

それにしても、前振りが長くいつになったら本筋がスタートするのかとやきもきしましたが、100ページ過ぎ、豊島興業の美濃田会長が登場してから俄かに話が締まってきます。やっと面白くなってきて本編が始まったなと思いました。そこからサイドストーリーを挟み、一気呵成に物語が進行していき興が乗ってきます。
しかしながら、一番盛り上がり泣かせるべきシーンが呆気なさ過ぎてがっかりしました。一流の作家ならばここで読者を号泣させる事でしょう、残念です。そしてラストのあれは出来れば無かったことにしたかったところです、個人的には。何故そこまでして?という疑問は通用しないんでしょうね、この場合。まあその辺りも容赦なしです。その割には後味は悪くありませんでしたけれど。
しかし、これがホラー小説大賞?直木賞作家の仕事なのかと素朴な疑問が湧いてきてしまうのは私だけでしょうかね。


No.1217 6点 外伝・麻雀放浪記
阿佐田哲也
(2020/11/18 22:35登録)
あの懐しい坊や哲、ドサ健が帰って来た、しかもより多彩でより猛烈なキャラクターのメンメンを引き連れて―。天才的なカンであらゆる博打に勝ち続ける街の女。絶対放銃しないが故に緊張に耐えきれずクスリに溺れる芸妓。苛烈な勝負の連続を通して人生の闘いを鮮やかに描きあげた阿佐田哲也会心の珠玉短篇集。他に色川武大「ひとり博打」を併録。
『BOOK』データベースより。

『麻雀放浪記』とは別物と考えたほうが良さそうです。9の短編のうちドサ健が登場するものが2作品のみで、あとは作者がすでに阿佐田哲也として執筆活動する以降の付き合い麻雀やカジノの話であり、終戦当時を背景にした頃の坊や哲とその対戦相手は登場しません。更に言うと『不死身のリサ』は他の短編集に収められていて既読でした。そして結局この作品が私には一番の出来と感じられました。しかし、そこはそれやはり阿佐田哲也の小説はどれも読み物として優れているので、あながち取るに足らぬ短編集という事は出来ないと思います。

それにしても、阿佐田氏本人の出てくる短編については、どれも成績はあまり振るわずやや浮きか敗北に終わっています。正直、かつての坊や哲の面影はありません。まあ自身ナルコレプシー(発作性睡眠症)などの病に侵されていた為、体力的にも若い頃に比べてしまえば身も蓋もありませんけどね。だからその辺りを差し引いて、温かい目で見る、読む必要性があると思います。そうなれば博打打ちとしてはお終いですが、だからこそ物書きに転身したのだと考えればなるほどとなるでしょう。作者の作品はどれも虚々実々の部分が大きいので、それも断言は出来ない訳ですが。


No.1216 8点 麻雀放浪記(一) 青春編
阿佐田哲也
(2020/11/17 22:33登録)
終戦後まもない昭和二十年十月、東京。坊や哲(哲也)の物語はここから始まる――。職にあぶれ街をさまよう哲は、麻雀の主のような男出目徳に出会い、徐々に技(イカサマ)を駆使した高レートの麻雀に惹かれていく。出目徳の下でイカサマ技術を覚えた哲は、長年のライバルドサ健のみならず出目徳すらも凌駕しようと、上野下車坂の「喜楽荘」で勝負を挑む。有り金全てを賭けた真剣勝負の勝者は……!? 麻雀史のみならず小説史にその名を残す金字塔「麻雀放浪記」の第一弾。
Amazon内容紹介より。

何度となく読み返した、私の学生時代のバイブルです。この度何度目かの再読でやはりこの作品はエンターテインメント小説の金字塔だと改めて感じました。本物の名作です。麻雀に限らず博打に於ける、バイニン同士の裏ワザが炸裂する戦いの数々はまるで目の前で展開されるかのように色褪せず、読む者を魅了します。まさに手に汗握る、血沸き肉躍るといういささか陳腐な表現すらピッタリくるような、戦後日本の勝負に命を懸けた博打打達の生々しい姿が躍動するように描かれています。

個人的に印象に残っていたサイドストーリーで登場した、ガン牌の清水のエピソードが意外にあっさりしていて、この先どうなるのかというところで呆気なく死んでしまうのには、あれ?という思いもしました。こんなんだったっけと言うのが本音。
全てが読み所と言っても過言ではない本作ですが、やはり坊や哲、ドサ健、出目徳、女衒の達による最後の闘牌は圧巻ですね。中でもワンランク下の打ち手でありながら、人間味溢れる女衒の達が私の中では意外にも存在感が大きかったのを今回確認できました。和田誠監督により映画化(1984年)されており、私はDVDも持っていますが、映画ではoxクラブのママだけでは色気に欠けるという配慮からか、ドサ健の女まゆみが結構重要な訳を与えられていますが、原作ではそれほど出番が多い訳ではありません。その辺り原作と映画を比較してみるとなかなか興味深い事実が浮き彫りになってきます。しかし、映画がかなり原作に忠実に描かれていたのは間違いないです。映画の撮影には阿佐田哲也氏自身が立ち会ったようで、坊や哲役の真田広之は自分の若い頃に似ているとおっしゃっていたそうです。

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